産科と婦人科 89巻7号 (2022年7月発行)

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特集　産科診療の進む道-診療ガイドラインの先にあるもの-

診療ガイドライン産科編で今後取り組むべき課題板倉　敦夫 89巻7号 , 2022年7月 , pp.693-697

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｢産婦人科診療ガイドライン産科編｣は、産科診療に従事する医師を対象としたエビデンスとともにコンセンサスを重視しているかなり特異な診療ガイドラインである。Mindsが定める診療ガイドラインの定義とは異なっているが、産科診療の特殊性からやむを得ない部分も大きい。完全にMindsの作成手法を踏襲することはできないであろうが、システマティックレビューを取り入れるなど、今後ガイドラインとして成長させていく必要があると考える。

分娩誘発･頸管熟化方法新垣　達也 , 関沢　明彦 89巻7号 , 2022年7月 , pp.699-701

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ジノプロストン腟内留置用製剤(プロウペス腟用剤10mg)は子宮頸管の熟化を促進する子宮頸管熟化剤である。ほかの子宮収縮薬や器械的頸管熟化処置との同時使用は行わず、薬剤使用中は過強陣痛(子宮頻収縮)や胎児心拍数異常に注意して、分娩監視装置による連続モニタリングを行う。既存の器械的熟化処置とジノプロストン腟内留置用製剤との優劣は明らかでない。頸管熟化法の選択は、各々の方法の特性を踏まえて、状況や施設に応じてなされるべきである。

硬膜外麻酔による無痛分娩の現状と課題鈴木　俊治 89巻7号 , 2022年7月 , pp.703-709

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わが国の無痛分娩管理体制は、産科医が1人のみの診療所から総合周産期センター、あるいは平日日勤帯のみの計画分娩型から24時間対応のオンデマンド型まで様々であり、各々で合併症の種類や頻度に特徴がある。このような状況の中、無痛分娩に関連した特に重要な周産期合併症および今後の課題について概説する。

産科出血への対応兵藤　博信 89巻7号 , 2022年7月 , pp.711-717

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産科危機的出血は現在でも日本の母体死亡の一番の原因であるが、｢産婦人科診療ガイドライン産科編｣や｢産科危機的出血への対応指針｣などにより系統的に対処されることで少しずつ減少している。出血への対応は突き詰めていけば、原因を検索し止血処置を行うことと、血液や凝固成分の喪失状況を評価し補うことに集約されるが、それを速やかに効率よく、かつ安全に行うためには、医療者の習熟、設備や施設、搬送体制の整備が重要である。

切迫早産管理の動向田嶋　敦 , 谷垣　伸治 , 小林　陽一 89巻7号 , 2022年7月 , pp.718-722

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早産は多因子疾患であり、それぞれのリスクに応じた対応が求められている。最近の研究からは既往症や前回の分娩の状況から早産のリスクが評価されるようになった。また腸内細菌叢の研究からその改善による早産予防の可能性、羊水検査による子宮内感染の診断により新たな治療戦略の可能性が模索されている。現在使用されている治療方法としては、リトドリン塩酸塩、黄体ホルモンの使用方法について指針が変更される可能性がある。

一絨毛膜性双胎の管理村越　毅 89巻7号 , 2022年7月 , pp.723-730

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1絨毛膜双胎は胎盤吻合血管による特徴的な疾患群が存在する。吻合血管の役割と吻合血管に起因する疾患の病態を理解することが大切である。特に双胎間輸血症候群においては適切な胎児治療により予後が改善されている。また、1絨毛膜双胎一児発育不全や双胎貧血多血症では胎児の状態の慎重な観察により適切な娩出時期を判断することが大切である。胎児治療可能な疾患についてはその適応を理解する。

妊娠高血圧症候群の診療田中　幹二 , 大石　舞香 89巻7号 , 2022年7月 , pp.731-736

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妊娠高血圧症候群の発症予知･予防、管理の実際など｢産婦人科診療ガイドライン産科編2020｣に必ずしも記載はないが重要と思われることを中心に概説した。発症予知については2020年に保険収載されたsFlt-1/PlGFについて、発症予防については低用量アスピリン療法の実際について記載した。また、近い将来ガイドラインに記載されることを期待して、妊娠高血圧症候群既往女性の長期フォローの重要性についても概説した。

静脈血栓塞栓症の予防と管理杉村　基 89巻7号 , 2022年7月 , pp.737-742

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過去20年間の世界の周術期深部静脈血栓症･肺血栓塞栓症(DVT/PTEあわせてVTEと表記する)予防対策では妊娠関連VTEを含め、ヘパリン系薬剤である薬物抗凝固療法の適応拡大が行われてきた。しかしヘパリン系薬剤による予防的抗凝固療法に関しては適応をより広くとる英国と適応に制限をもたせる米国間に差が存在する。日本の｢産婦人科診療ガイドライン産科編｣は日本国内のコンセンサスに基づくが、現行の診療ガイドラインの先には国際的議論との整合性を模索することになる。

胎児健常性評価法の課題と方向性松岡　隆 89巻7号 , 2022年7月 , pp.743-745

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｢胎児心拍数波形の分類に基づく分娩時胎児管理の指針｣に基づく分娩管理は、客観的判断を示し、多職種による分娩管理において共通言語として有用である。しかし、ワンポイントの胎児心拍数波形パターン認識による方針決定には意味がなく、臨床背景と病態整理を加味した方針決定が必要である。

胎児治療の動向と近未来和田　誠司 , 小澤　克典 , 左合　治彦 89巻7号 , 2022年7月 , pp.747-752

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胎児治療は母体を通して胎児を治療する医療である。双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下レーザー手術が広く知られているが、その他の治療法も少しずつ周産期専門施設では行われるようになってきており、胎児輸血、胸腔-羊水腔シャント術はすでに保険収載されている。先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児鏡下気管閉塞術は国際臨床試験の結果が公表され、日本においての方針を検討する時期に来ている。臨床研究として実施されている下部尿路閉鎖に対する胎児膀胱鏡、脊髄髄膜瘤胎児手術、先天性大動脈弁狭窄に対する胎児大動脈弁形成術は早期安全性試験として実施されている。

出生前診断･遺伝学的検査の現状と近未来佐村　修 89巻7号 , 2022年7月 , pp.753-757

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非侵襲的出生前胎児遺伝学的検査は確定検査ではないため、確定検査である絨毛検査や羊水検査の重要性は変わらない。また最大の合併症である流産のリスクは従来考えられていたより低いと近年報告されている。確定検査と非確定検査の特徴を知り、遺伝カウンセリングを行った後に施行することが重要である。今後も、胎児超音波診断や遺伝解析の発展により手技だけでなく、施行する者は、適切な情報提供を行うためにも最新の情報を知る必要がある。

周産期メンタルヘルスケアの問題点と今後の方向性笠井　靖代 , 増田　祥子 89巻7号 , 2022年7月 , pp.758-762

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妊産婦のメンタルヘルスケアの重要性が、妊産婦の自殺や児童虐待、長期的な子どもの発達への影響などを背景に認識されている。ハイリスク妊産婦を妊娠中から抽出するとともに、精神疾患合併女性に対するプレコンセプションケアが肝要となる。医療者は、妊産婦の個別の状況を理解し、情報を共有し十分な話し合いにより双方向性の治療･支援方針を決定していくshared decision makingを心がけたい。また妊産婦を取り巻く社会環境を、ジェンダーギャップを克服する視点で変革することが望まれる。

社会的リスクを有する妊婦への対応水主川　純 89巻7号 , 2022年7月 , pp.763-767

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社会的リスクは妊婦の健康に影響し、そのリスク指標として生活･社会背景、健康に関する行動、精神状態があげられる。社会的リスクは周産期予後や子どもの養育にも影響し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下においては、ドメスティック･バイオレンス被害の増加や深刻化への懸念が指摘された。妊婦にかかわる医療従事者と関係機関の職員は、それぞれの妊婦が有する社会的リスクだけでなく、社会情勢の変化も鑑みた連携による支援が重要である。

連載

医療裁判の現場から(第33回)　経口避妊薬(低用量OC)を服用した患者が、脳梗塞を発症し、左上下肢運動機能障害等の後遺症が残ったのは、医師が同剤添付文書記載の禁忌、使用上の注意に違反して同剤を処方したことによると主張したものの、裁判所がこれを認めなかった事例山田　隆史 89巻7号 , 2022年7月 , pp.768-771

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症例

急速に進行する子宮体癌肺転移による呼吸困難感にペムブロリズマブが著効した1例荻本　宏美 , 辻江　智子 , 池田　佳代 , 吉田　晋 , 脇本　昭憲 89巻7号 , 2022年7月 , pp.773-778

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48歳、未産婦。子宮体癌、臨床進行期分類IVB期の診断で、TC療法6コース後、子宮全摘術、両側付属器を含む手術を行い、病理組織結果は子宮類内膜癌、G3、IVB期、ypT4pN2M1であった。術後20日目に呼吸困難感が出現し、CTにて多発肺転移を認めた。高頻度マイクロサテライト不安定性のため、ペムブロリズマブを投与、1コースで呼吸困難感は消失、2コース後のCTで肺転移巣の縮小を認めた。その後肺病変は増悪することなく経過したが、脳転移が出現し、死亡した。

当院で経験した急性虫垂炎合併妊娠の13例古井　憲作 , 岡田　真由美 , 河合　要介 , 梅村　康太 , 安藤　寿夫 , 河井　通泰 89巻7号 , 2022年7月 , pp.779-783

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妊娠中の虫垂炎は身体所見が非特異的であり診断に苦慮する。当院で妊娠中の虫垂炎と診断し手術を行った13例につき有用な画像検査を検討した。腹部超音波で3例、MRIで1例、CTで9例(重複あり)虫垂炎の診断に至り、13例とも良好な経過が得られた。また、虫垂炎診断スコアについても検討しその有用性を認めた。診断スコアをもとに虫垂炎を疑い適切な画像検査を選択することが速やかな診断･治療に結びつくと考えられた。

基本情報

産科と婦人科
89巻7号
(2022年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9792 診断と治療社

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産科と婦人科 89巻7号 (2022年7月発行)

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