小児外科 54巻1号 (2022年1月発行)

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特集　外来で役立つ知識：頭頸部・体幹・四肢の疾患

頭蓋変形藍原　康雄 , 千葉　謙太郎 54巻1号 , 2022年1月 , pp.4-7

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はじめに

　今日，わが国での乳児健診における頭蓋顔面顎変形に対する医療従事者（小児科医，産科医，助産師）のアドバイスは，その変形率の程度に関係なく感覚的な助言が多いのが現状である。

斜視根岸　貴志 54巻1号 , 2022年1月 , pp.9-11

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はじめに

　斜視とは，両眼の視線が異なる方向を向いている状態を指し，視線方向によって，内斜視・外斜視・上下斜視などがある^1）。常時ずれている状態を斜視といい，自力で視線を揃えることができる状態を斜位という。検査してもずれの全くない状態を正位と呼ぶ。斜視と斜位が時間で混在する状態が間欠性斜視である。また，眼球運動制限のない共同性斜視と，麻痺や眼球運動制限のある非共同性斜視に分けられる。他に先天性・後天性で分類することもある。

耳介の先天異常―副耳，耳瘻孔，耳介変形― 柘植　琢哉 , 桑原　大彰 , 赤石　諭史 54巻1号 , 2022年1月 , pp.12-15

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はじめに

　外耳やその周囲の先天異常は比較的頻度が高く，日常診療においてもよく遭遇する。耳介の発生に関しては諸説認めるが，胎生6～7週に第1・第2鯉弓から発生する6個の小結節（耳介小丘）が癒合を重ねて形成される。この過程途中に障害が起きることで，外耳の形態異常が発生する。視診による形態的特徴に基づいて疾患名は決定され，診断に関する特異的な検査はない。したがって，耳介とその周囲の診察においては正常形状と各部の名称の理解が必要不可欠であり，図1を参照されたい。

舌小帯短縮症，上唇小帯短縮症伊藤　泰雄 54巻1号 , 2022年1月 , pp.16-19

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はじめに

　舌は，舌のなかだけに存在する4つの内舌筋と舌と骨をつなぐ4つの外舌筋からなる運動器で，それぞれの筋肉が固有の動きをして哺乳，摂食，発音，呼吸に関わっている^1）。しかし外からは容易にみえないために，舌の動きが舌小帯によって制限されていてもあまり関心が払われていないのが実情である。2001年に日本小児科学会が「舌小帯と哺乳は関係がない。手術を必要とする舌小帯はまれである」と報告^2）して以来，わが国では舌小帯切開はほとんど行われなくなった。

粘液囊胞，歯科疾患小方　清和 54巻1号 , 2022年1月 , pp.20-24

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はじめに

　小児の口腔軟組織で発症頻度の高い疾患は，粘液囊胞の他，舌小帯，上唇小帯などの小帯異常があげられる。また，小児口腔内の硬組織疾患では齲蝕の発生を認めることがあり，齲蝕が原因となる歯の歯周組織および顎骨周囲の感染症も多く認められる。

正中頸囊胞（甲状舌管囊胞）笠井　智子 , 高見澤　滋 , 野口　昌彦 , 永井　史緒 54巻1号 , 2022年1月 , pp.25-28

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はじめに

　正中頸囊胞（甲状舌管囊胞）は甲状腺の発生過程で生じる甲状舌管が遺残したものであり，頸部瘻孔の約70％を占めることから^1），外来で診察する機会が比較的多い疾患である。手術方法は本誌でもたびたび取り上げられていることから，本稿では外来での鑑別診断，ならびにインフォームドコンセントと最近の治療法を中心に述べることとする。

側頸瘻・囊胞横井　暁子 54巻1号 , 2022年1月 , pp.29-32

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はじめに

　小児の頸部病変は小児外科医がみる領域の一つである。側頸瘻・囊胞はそのうちの約20％を占める病変である^1）。

下咽頭梨状窩瘻・囊胞大脇　成広 54巻1号 , 2022年1月 , pp.33-35

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はじめに

　下咽頭梨状窩瘻は咽頭囊の遺残による先天性疾患で，小児に多く発症するが，新生児期に発症するものと，乳幼児期以降に発症するもので症状や対応が異なる。

先天性筋性斜頸平良　勝章 , 根本　菜穂 54巻1号 , 2022年1月 , pp.36-38

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はじめに

　出生時から乳幼児期にかけての斜頸については，症状の訴えが乏しく，原因を検索することが比較的難しい。また少子高齢化による医師側の小児の診察機会の減少もその困難さを助長させる要因の一つである。

漏斗胸，鳩胸吉田　篤史 , 曹　英樹 , 久山　寿子 54巻1号 , 2022年1月 , pp.40-43

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はじめに

　漏斗胸，鳩胸ともに胸郭変形疾患で，胸に凹みがあれば漏斗胸，胸が飛び出ていれば鳩胸である。これらの発生頻度は漏斗胸が800～1,000人に1人で鳩胸はその1/10～1/5である。この形態異常のほとんどが致命的なものではないため，過去は積極的には手術が推奨されなかった。1998年にNuss法が登場し，これまでの手術と比較して良好な胸骨挙上効果であること，QOLに対する社会的意識の変化などから，以前より積極的に手術を求めることが増えた。Nuss法の長期成績として心肺機能改善の報告^1）が散見されるようになり，形態改善だけでない手術の有効性も証明されている。胸郭形態を十分に評価して保存的治療あるいは必要時には矯正手術を検討すべきである。実際に外来で患児を診察すると変形の範囲や程度，左右差など個々の症例により実にさまざまな形態がみられる。

副乳，乳房疾患浜島　昭人 54巻1号 , 2022年1月 , pp.44-47

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はじめに

　外来で遭遇する乳房疾患の診断・治療においては，患者の性別や年齢，その時期の乳房の発達を考慮する必要がある。

臍ヘルニア，白線ヘルニア大塩　猛人 , 石川　正志 54巻1号 , 2022年1月 , pp.48-51

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Ⅰ．臍ヘルニア

　臍ヘルニアは小児の日常診療において，よく遭遇する疾患の一つである。臍ヘルニアは，臍脱後に臍が膨隆して臍輪を越えて，主として小腸の脱出を伴っている。おしめを交換する際に，また入浴時に，保育者は臍の膨隆をみる機会がある。そこで，保育者は臍の膨隆を心配してわれわれ医療機関を受診してくる。

臍ポリープ，尿膜管遺残症益子　貴行 , 矢内　俊裕 , 東間　未来 54巻1号 , 2022年1月 , pp.52-55

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はじめに

　滲出液を伴った赤色の臍部腫瘤を認める症例において，新生児期の多くは臍肉芽腫である。鑑別疾患として臍ポリープなど臍腸管遺残症や尿膜管遺残症があがる。臍肉芽腫は頻度が高く日常的に観察されるが，他の鑑別疾患は比較的まれである。乳児期以降には滲出液を自覚したり，臍炎が生じて排膿したり，腹痛精査で施行した超音波検査で発見されたりする。これらの病態のうち外来処置で治癒しうるのは，臍帯動静脈の切離端の肉芽腫様変化である臍肉芽腫であり，ほとんどが硝酸銀処置や結紮で治癒する。一方，外来処置で想定どおりに治らない場合に，上記の鑑別疾患を疑うことになる。

鼠径ヘルニア，大腿ヘルニア田山　愛 , 渡井　有 , 佐藤　英章 , 中山　智理 , 大澤　俊亮 , 木村　翔太 , 鈴木　孝明 , 蛇口　達造 54巻1号 , 2022年1月 , pp.56-59

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はじめに

　小児における鼠径部ヘルニアのほとんどが外鼠径ヘルニア（以下，鼠径ヘルニア）であり，小児期に手術を要する疾患のなかでも最も多い。一方，大腿ヘルニアはきわめてまれで，鼠径部のヘルニアのうち約0.1～0.9％の発生頻度である^1）。両者とも鼠径部のヘルニア（図1）^2）であり，鼠径ヘルニアと診断し手術を行ったが，実際は大腿ヘルニアでヘルニア囊が処理されておらず，術後に再発で気づかれ術前診断が誤っていたという事例があり，頻度は低いが診断時に注意をすべき疾患として大腿ヘルニアがあり，その診断は容易ではない。

先天性恥骨前瘻孔福原　雅弘 , 江角　元史郎 , 大西　峻 , 山口　修輝 , 佐藤　智江 , 伊崎　智子 54巻1号 , 2022年1月 , pp.60-65

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はじめに

　先天性恥骨前瘻孔（congenital prepubic sinus：CPS）は恥骨前部の皮膚に開口し，膀胱・恥骨・臍・尿膜管に向かう，もしくは連続する比較的まれな疾患である^1）。CPSの形態は多様であり，成因や疾患概念の定説がないのが現状であるが，感染や悪性化の予防のためには外科的な完全切除が必要な疾患とされている^1,2）。近年CPSに関する報告が散見されるようになってきているが，日常診療で遭遇することはまれである。当科では，特徴的なCPS症例を2例経験しており，それぞれの病態と治療をまとめ，さらにCPSの疾患自体についての考察を加え概説する。

小児のリンパ節腫大―化膿性リンパ節炎，菊池病など― 中岡　達雄 , 横山　智至 , 杉峰　啓憲 54巻1号 , 2022年1月 , pp.66-69

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はじめに

　小児外科外来には，リンパ節腫大を主訴とする患者がしばしば来院する。これらの大部分は治療を必要としない反応性腫大であるが^1），時に治療が必要な全身性，局所性疾患の初期症状として現れることがある。多くは内科的疾患であるが，小児外科の臨床現場では主に外科的介入の要否につき判断が求められる。小児外科外来でリンパ節腫大の診察を行う際の要点について概説する。

石灰化上皮腫浅野　裕香 , 真田　武彦 , 玉懸　美菜実 54巻1号 , 2022年1月 , pp.70-72

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はじめに

　石灰化上皮腫（calcifying epithelioma）は毛母種（pilomatricoma）ともいわれ，その名のとおり石灰化を伴う良性腫瘍である。毛母細胞由来と考えられ，健常な表皮下の真皮深層より脂肪層にわたる領域に発生する。

血管腫，母斑（脂腺母斑）桑原　広輔 , 加持　秀明 54巻1号 , 2022年1月 , pp.73-76

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はじめに

　血管腫や脂腺母斑は外来診療において比較的頻度の高い疾患である。血管腫においては近年，血管腫・血管奇形のカテゴリーとして新しい分類が定着してきている。また近年では外科的治療の他に内服療法やレーザー治療などの選択肢も増えてきている。

リンパ管腫（リンパ管奇形）加藤　源俊 , 藤野　明浩 , 城崎　浩司 , 山岸　徳子 , 工藤　裕実 , 梅山　知成 , 金森　洋樹 , 高橋　信博 , 山田　洋平 , 黒田　達夫 54巻1号 , 2022年1月 , pp.78-81

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Ⅰ．総　　論

　リンパ管腫（lymphangioma）は，リンパ液の溜まった大小の囊胞からなる良性腫瘍である。多くは先天性で，リンパ管の形成異常との観点から 1996年のISSVA分類^1）ではリンパ管奇形（lymphatic malformation）と分類された。

絞扼輪症候群須永　中 54巻1号 , 2022年1月 , pp.82-83

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はじめに

　絞扼輪症候群とは，四肢に特徴的な絞扼輪や先端合指症（有窓性合指症），切断などを呈する疾患である。羊膜の破裂により生じた索状物が絡みつくことによって起こるという説が有力であり，羊膜破裂シークエンスや羊膜索症候群とも呼ばれる。1,200～15,000人に1人の割合で発症し，遺伝性はないと考えられている^1）。

爪・爪周囲疾患（陥入爪・肉芽など）高山　かおる 54巻1号 , 2022年1月 , pp.84-87

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はじめに

　爪が巻いている状態を巻き爪，爪が短くて食い込んでいる状態を陥入爪という。それぞれの状態はしばしば混同されている場合が多いが，治療アプローチは違うため病態を正確に知る必要がある。

たかが肘内障，されど肘内障志賀　隆 54巻1号 , 2022年1月 , pp.88-90

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Ⅰ．症例提示

　2歳の女児が，夕方20cmの高さの椅子から転落し（母親は直接目撃していない），その後腕を痛がって動かさないことから，母親と救急受診した。体温36.8°C，脈拍110/分，SpO₂ 99％（RA）。患児はおとなしいが，母と意思疎通を普通に行えた。肘周囲に関節腫脹はなく，鎖骨から手関節周囲まで明らかな外傷はなし。頭部外傷，椎体の圧痛なし。歩行可能。

関節疾患（内反肘，外反肘，内反手，外反手）高木　岳彦 54巻1号 , 2022年1月 , pp.91-95

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はじめに

　小児の上肢関節疾患として先天性，後天性（外傷性）のものが知られるが外観上の訴えで受診する場合が少なくないため，本稿では疾患名ごとにではなく，内反肘，外反肘，内反手，外反手と形態ごとに概説する。

関節疾患（先天性股関節脱臼・O脚・X脚）福田　良嗣 54巻1号 , 2022年1月 , pp.96-99

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はじめに

　小児運動器疾患をみるにあたり，自己矯正能があるという利点と，成長障害に伴う機能低下や変形をきたす可能性があるという欠点を理解することが重要である。それゆえ，少なくとも成長終了まで経過観察することが望まれる。

結節性筋膜炎小林　完 , 金森　豊 , 古金　遼也 , 橋詰　直樹 , 森　禎三郎 , 狩野　元宏 , 渡辺　栄一郎 , 高橋　正貴 , 藤野　明浩 , 米田　光宏 54巻1号 , 2022年1月 , pp.100-102

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はじめに

　結節性筋膜炎は筋線維芽細胞の増殖からなる良性病変であり，さまざまな部位に発生する。通常は皮下に発生し，表在筋膜に付着するが，より深部に存在することもある。全体の約半数で上肢に発生するが，小児では頭頸部に発生することが多い^1）。従来は「腫瘍様病変」と考えられていたが2011年に融合遺伝子（MYH9-USP6）が同定され^2），真の腫瘍であることが明らかになった。腫瘍は急速に増大するため悪性腫瘍と誤診されやすい。20～40歳での発症が多いが^3），全体の10％が小児に発症するとされている^4）。

基本情報

小児外科
54巻1号
(2022年1月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0385-6313 東京医学社

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