臨床泌尿器科 72巻6号 (2018年5月)

特集 副腎疾患の基礎と臨床─最前線を知る

企画にあたって 西本 紘嗣郎
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 副腎疾患は主に,内分泌内科医,内分泌外科医,および泌尿器科医に取り扱われます.したがって,これらの科のそれぞれの先生方が,副腎疾患の基礎と臨床を十分に理解して診療を行うことは重要です.しかし,近年の医療情報の急速な増加とそれに伴う医療の複雑化は,網羅的に,かつ一定の深さで,疾患を理解することを困難にしています.特に泌尿器科医にとっての副腎疾患は,単なる外科治療の対象であり,「その基礎研究や臨床診断は内分泌内科医が中心になって行うもの」という風潮になりつつあるのではないかと感じております.

 本特集は「副腎疾患の基礎と臨床─最前線を知る」と題しました.各筆者に原稿を依頼する際には,専門医試験を受験する泌尿器科医が副腎疾患の基礎と最新の臨床について理解しやすくなることを主眼として,執筆をお願いしました.副腎に関するステロイド合成酵素,発生学,ガイドライン,再生など,それぞれの分野の第一線で活躍されている先生方に執筆していただいています.ぜひ本書を手に取って,最新の副腎研究・臨床の世界を楽しんでいただけたら幸いです.

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▶ポイント

・アルドステロン合成酵素CYP11B2は,原発性アルドステロン症の病変検出と病理学的確定診断におけるキー酵素である.

・CYP17は,コルチゾール合成とアンドロゲン合成の両方に関わるキー酵素であることから,CYP17阻害薬による前立腺癌のコントロールではステロイドホルモン動態に注意を要する.

・副腎性アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)と硫酸DHEAは,より強力なアンドロゲンの前駆体であり,副腎癌の血中マーカーである.

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▶ポイント

・副腎皮質はSF-1,DAX-1などの転写因子が作用することで,中胚葉由来の副腎性腺原基より発生・分化する.

・副腎皮質の分化の過程で点突然変異が起こることで生じるMcCune-Albright症候群ではコルチゾール産生性両側副腎腺腫によるクッシング症候群を呈する.

・同様に副腎皮質の球状層に生じたとされる若年性原発性アルドステロン症を経験した.

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▶ポイント

・Ad4BP/SF-1は副腎組織の発生,および副腎皮質各層におけるステロイドホルモン産生を統括的に制御する.

・副腎で産生される弱いアンドロゲンは,標的組織で強いアンドロゲンに代謝されてその機能を発揮する.

・近年は,副腎アンドロゲンそのものが生理学的機能を有するとの報告がなされている.

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▶ポイント

・アルドステロン産生腺腫の半数以上でKCNJ5,ATP1A1,ATP2B3,CACNA1D遺伝子のいずれかに体細胞変異がみられる.

・日本を含む東アジアではアルドステロン産生腺腫のKCNJ5変異陽性率が高い.

・顕性クッシング症候群を生じる副腎皮質腺腫においてPRKACA遺伝子の活性型変異が高率に認められる.

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▶ポイント

・副腎皮質は球状層,束状層,網状層の3層構造をとり,それぞれアルドステロン,コルチゾール,および性ホルモンを産生する.

CYP11B2の特異的免疫染色が可能となり,原発性アルドステロン症の病理学的解析が可能となった.

・PAの前駆病変と推測されるAPCCは,加齢に伴い増加することが示された.

褐色細胞腫の病理学 木村 伯子
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▶ポイント

・WHO2017の分類では褐色細胞腫・パラガングリオーマはすべてが転移の可能性を有する腫瘍であるために,良性・悪性というタイトルはつけないことになった.

・悪性度分類(GAPP)によって転移のリスクを診断することが重要である.

・コハク酸脱水素酵素複合体Ⅱのサブユニット(SDHx)は転移や多発,家族発生に深く関与している.

・遺伝子変異と形質発現はクラスター1とクラスター2の2群に分けることができる.

〈臨床〉

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▶ポイント

・わが国では,RIAやELISAを用いてステロイドを測定されることが多い.

・近年,イムノアッセイを用いた性腺ステロイドホルモンの測定系の不確かさが明らかになり,質量分析計を用いたアッセイ系への変更が推奨されている.

・コルチゾール,アルドステロンにおいて迅速測定に特化したNon-RIAキットも登場している.

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▶ポイント

・初診高血圧症例全例を対象に,積極的にPRA・PACを測定する.

・副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling : AVS)を行って,ALDの過剰原因が両側性か片側性か,鑑別する必要がある.

・日常高血圧診療にて,PAを決して見逃すことのないよう,ガイドラインを活用して早期診断・早期治療が望まれる.

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▶ポイント

・サブクリニカルクッシング症候群の診断基準が改訂された.

・診断基準改訂とともに,サブクリニカルクッシング症候群において積極的な手術を考慮する目安である「取り扱いめやす」も改訂された.

・自律性コルチゾール分泌の可能性のある副腎偶発腫ではグルココルチコイド補充療法が推奨される.

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▶ポイント

・褐色細胞腫の診療ガイドラインとして本邦では「褐色細胞腫診療指針2012」,米国では“Clinical Practice Guideline for Pheochromocytoma and Paraganglioma”が発表されている.

・本症の診断は,①褐色細胞腫に矛盾しない腫瘍の存在,②カテコールアミン分画あるいはメタネフリン分画の明らかな高値,③病理診断,④MIBGシンチグラフィーで腫瘍に取り込みあり,などに基づいて確定する.

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▶ポイント

・代表的な副腎疾患である褐色細胞腫・クッシング症候群・原発性アルドステロン症には,両側副腎疾患となる一型がそれぞれに存在し,近年それらの病態が明らかになってきている.

・両側副腎摘除術後はステロイド補充療法が必須になり,致死的な合併症である急性副腎不全症を起こす可能性がある.

・再生医療につながる幹細胞の研究が盛んに行われているが,副腎皮質は他臓器と比較すると遅れをとっており,今後の研究成果が期待される.

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▶ポイント

・治療の要は熟練した外科医による初回手術時における腫瘍の完全切除である.

・切除不能例においては,エトポシド,ドキソルビシン,シスプラチン+ミトタン(EDP-M)併用療法を行う.

・年間15例以上の副腎腫瘍の手術実績を有し,副腎皮質癌の診療体制の整った医療施設での治療が推奨される.

綜説

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要旨

 近年のロボット支援下手術の普及に伴い,高解像度3D画像,多自由度鉗子を用いた鏡視下手術の特性を活かした小径腎細胞癌に対する低侵襲手術としてRAPNが行われるようになり,本邦でも2016年4月の保険収載後にきわめて急速に普及しつつある.RAPNにおける短期手術成績,腎機能保持や腫瘍制御などについて従来の腹腔鏡下腎部分切除術のそれと比較することで現況でのRAPNの有用性を明らかにし,さらにロボット手術の特性を活かした今後の発展と留意点を概説する.

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目次

バックナンバーのご案内

次号予告

編集後記 近藤 幸尋
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 一般的に泌尿器科は,「男性の科」というイメージがいまだに強いようです.先日,骨盤臓器脱に伴う尿失禁の女性患者さんに,「女性の排尿関係の専門医に診ていただくようにしましょう」と話をすると,「泌尿器科に紹介元から紹介されたこともびっくりしたけれども,女医さんがいるのにもびっくりしました」という指摘を受けました.いやいや,泌尿器科の認知度も低いし,内容に関してもう少し宣伝が必要であると痛感しました.

 当教室には,現在関連病院を含めて5名の泌尿器科を専門とする女性医師がおります.男女比でみてみると,10%にも満たないことがわかりました.それでは日本の女性泌尿器科医はどうかというと,日本泌尿器科学会のホームページによると,ここ数年は女性の入会者の割合は17%ということです.つまり,約6人に1人は女性医師ということになります.確かに泌尿器科学会では2006年に女性泌尿器科医を支援するために「女性泌尿器科医の会」という会が学会主導で発足され,総会でのシンポジウム企画や全国アンケート調査,学会開催時の託児所設置などを行ってきました.2014年1月に「女性泌尿器科医の会」を発展的に解消し,「男女共同参画委員会」として新たに活動を開始することになりました.このような運営により現在は増加しているとのことです.

基本情報

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臨床泌尿器科
72巻6号 (2018年5月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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