臨床泌尿器科 72巻7号 (2018年6月)

特集 エキスパートが本音で語る! 膀胱癌診療の最前線

企画にあたって 菊地 栄次
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 診療ガイドライン指針に支えられ,膀胱癌臨床は体系化され,安定化した.しかし,診断・治療に難渋する症例は少なくない.診断効率・治療成績の向上を目指し,現在までに診断・予後予測マーカーの探索,より低侵襲な診断・治療機器の開発,新規抗がん治療戦略の構築が進められてきた.その一部は成果を示し,実臨床に導入され始めようとしている.まさにいま,これら新規診断・治療法により膀胱癌診療が大きく変わろうとしている.今回,膀胱癌診療の最新情報を読者にお届けする絶好のタイミングであると考え,本特集を立案した.

 膀胱癌診断に関しては,小島崇宏先生に2017年5月に体外診断用医薬品承認の取得がなされたウロビジョン検査の概略と今後の展望を,福原秀雄先生に5-アミノレブリンを用いた光力学診断(PDD)の最新情報を,秋田大宇先生にCTU,MRI,FDG-PET/CTなどの膀胱癌画像検査の最新情報を,そして都築豊徳先生に2016年版WHO分類の概念整理,尿路上皮癌の分子生物学的分類を解説いただいた.

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▶ポイント

・ウロビジョンは,膀胱癌再発の診断補助のための遺伝子検査として国内で初めて承認された.

・国内臨床性能試験において術後膀胱癌再発の検出に関するウロビジョンの感度は尿細胞診と比較して高かった.

・今後の臨床試験の蓄積により,ウロビジョンの結果を考慮したNMIBCの再発リスク分類の構築や膀胱鏡の施行間隔の設定などが期待される.

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▶ポイント

・特定に光感受性物質と専用の光力学診断装置を用いることで,術中に光力学診断が可能となる.

・光力学診断を用いることで,これまで視認困難な病変を可視化できる.

・光力学診断により病変の範囲を正確に把握でき,正確な手術が可能となる.

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▶ポイント

・CT Urographyによる膀胱癌の検出能を向上させるためには,適切な撮像方法と読影方法が必須である.

・膀胱癌の筋層浸潤評価には,3テスラMRI装置による拡散強調像を含めたプロトコールが最適である.

・膀胱癌の治療前評価にFDG-PET/CTを行う意義については,今後も検証を続ける必要がある.

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▶ポイント

・WHO/ISUP分類は予後と深く関連した尿路上皮癌の異型度分類である.

・尿路上皮内癌の亜型は浸潤癌のみに生じる.予後と明確な関連性は明らかではない.

・さまざまな尿路上皮癌の分子生物学的分類が提唱されている.治療との相関性が十分ではなく,費用が高額であることから,その有用性についてはまだ検討段階である.

〈膀胱癌治療の最前線〉

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▶ポイント

・膀胱腫瘍の一塊切除は正確な病理診断が可能である.特に深達度診断の正確さに優れている.

・手技のポイントは,十分なマージンを確保すること,初めに深く粘膜切開を行うこと,粘膜片に適切なトラクションをかけて効率よく腫瘍底切除を行うことである.

・膀胱腫瘍一塊切除によって診断できる,T1,high grade膀胱癌の粘膜筋板浸潤の有無は,癌の進展(progression)や予後を予測できる可能性がある.

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▶ポイント

・骨盤内の膜解剖を意識し,膀胱下腹筋膜と尿管下腹神経筋膜に裏打ちされた膀胱側腔,直腸側腔を展開することで,側方靱帯を同定する.

・膀胱は,膀胱下腹神経筋膜と腹膜に覆われた状態でen-blocに摘出可能である.離断すべき構造物は,膀胱と前立腺(女性の場合は,子宮と腟)への血管と神経組織である側方靱帯,尿管,尿道だけである.

・膀胱の側方靱帯は,外側の血管系と内側の神経束とに分けて処理することが可能である.この際,内腸骨(内陰部)動脈の起始部から血管を剝離,処理することで,内腸骨領域のリンパ節も膀胱とen-blocに摘出し,出血を抑えた根治性の高い手術につながる.

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▶ポイント

・ロボット支援膀胱全摘除術は,開放手術に比べ手術時間はかかるものの,出血量は少なく,より低侵襲な術式であると思われる.

・ロボットによる尿路変向術は,手技がやや煩雑であるため,チームとして術式に成熟した段階で導入したほうが安全であると思われる.

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▶ポイント

・膀胱温存療法は,膀胱全摘適合症例に対する選択的膀胱温存と,膀胱全摘不適合症例に対する補完的根治治療としての膀胱温存に大別される.

・適切な適応基準とプロトコールで行われる膀胱温存療法の生命予後は膀胱全摘と同等と報告される.

・膀胱温存療法の普及を妨げる要因の1つは,膀胱全摘とのランダム化試験の欠如である.ランダム化試験は実現困難であるため良質なコホートを用いた比較研究の蓄積が必要と思われる.

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▶ポイント

・現時点では,切除不能または転移を有する膀胱癌に対する一次治療の標準はシスプラチンベースの全身化学療法である.

・Neoadjuvant化学療法には生存期間延長効果のエビデンスがある.Adjuvant化学療法には十分なエビデンスはないが,有用性はあると考えてよい.

・現在実施中の免疫チェックポイント阻害薬に関する臨床試験の結果により,今後化学療法のポジションが変化する可能性がある.

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▶ポイント

・2017年12月に進行膀胱癌の二次治療として抗PD-1抗体ペムブロリズマブが承認された.

・シスプラチン既治療進行膀胱癌に対するペムブロリズマブの生存延長効果は腫瘍細胞上のPD-L1発現に依存しなかった.

・今後,抗PD-1/PD-L1抗体は進行膀胱癌に対する一次治療,術前後補助療法,化学療法との併用療法などへと適応拡大していく可能性がある.

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 80歳男性.尿閉と肛門の奥の痛みを主訴に当科受診.造影MRIにて左精囊にニボーを有する液体成分を含有した径60mm大の腫瘤病変を認め,精囊内出血が疑われた.経直腸的超音波画像ガイド下経会陰的血腫ドレナージ術および精囊生検を施行.腫瘤の著明な縮小が認められた.生検では悪性所見は認められなかった.精囊内出血に対し,経直腸的超音波画像ガイド下経会陰的血腫ドレナージ術が有効である可能性が示唆された.

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 73歳女性.既往歴なし.5日前よりの右腰背部痛を主訴に当科受診.単純CTにて右腎周囲の液体貯留,総胆管結石を指摘され入院,炎症反応高値であり安静,抗菌薬加療が開始された.入院後の造影CTでは右後腹膜腔の液体貯留の拡大を認めた.排泄層では尿路は保たれていた.第6病日に超音波ガイド下に穿刺を行い,排液中の胆汁成分を確認,胆道後腹膜瘻の診断に至った.今回は総胆管結石に起因した胆道内圧の上昇,それに伴う胆汁性囊胞の穿破が原因と考えられた.

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目次

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次号予告

編集後記 小島 祥敬
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 外科医の醍醐味は,手術というダイナミックな医療技術によって,劇的な治癒を実現することです.しかし,それが失われる時代がそこまで来ているかもしれません.

 The future of employment : How susceptible are jobs to computerisation?(雇用の未来 : コンピュータ化によって仕事は失われるのか?).2014年にOxford大学の人工知能(AI)研究者であるMichael A. Osborne氏らが発表した論文です.本論文では,10〜20年で多くの職業がAIに置き換わり,雇用者の47%の仕事が消滅するという衝撃的なデータが発表されています.将来消滅するであろうとされる職業は,スーパーのレジ係,銀行窓口係,医療事務員などが予想されているようです.

基本情報

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臨床泌尿器科
72巻7号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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