臨床泌尿器科 44巻3号 (1990年3月)

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はじめに

 細胞骨格は,すべての真核細胞の形態形成,細胞分裂,運動などの多くの機能を支配している構造物である。この細胞骨格の構成要素としては,その太さにより,①微小管(microtubule,直径25nm),②中間径フィラメント(intermediate fila-ment,直径7〜11nm),③ミクロフィラメント(microfilament,直径6nm)の三種類の線維性構造物が知られており,その存在状態は細胞周期や環境条件の変化に応じて変化する。一方,細胞の悪性化に伴い,細胞の形態の変化や増殖異常,接触阻止(contact inhibition)の消失などが認められ,これらの変化に細胞骨格の変化が関係していることは容易に推測できる。このため,細胞骨格の研究は癌化のメカニズム,癌細胞の性格,転移のメカニズム等を知る上で大きな役割を果たすと思われる。

 尿路性器悪性腫瘍における細胞骨格の研究は比較的少なく,その中心は中間径フィラメントに関したものである。そこで,本稿では尿路性器悪性腫瘍における中間径フィラメントについてまとめてみたい。

手術手技 難しい手術

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 腎盂尿管移行部の狭窄に起因する水腎症に対する治療としては,余剰腎盂の一部を腎盂尿管移行部とともに切除し,新しく残余腎盂と尿管を再吻合するAnderson-Hynes法が一般的である。しかし,小児では通過が改善されると拡張した腎盂の自然縮小が予想以上に著しく,通常腎盂尿管移行部のみ切除し,腎盂尿管吻合が行われる1,2)。本術式はほぼ確立されており,その手術成績も優れているが,ときに,術後の吻合部通過不良の症例に遭遇する。この原因としては,1)新しく形成された腎盂尿管移行部の位置が不適当であるか,2)血行障害,感染,尿浸潤などで生じる瘢痕による再狭窄などが考えられる。これらの不成功例に対する再手術として1)に対しては新しく形成する腎盂尿管移行部の位置を腎盂の最も低い部分に再形成する必要があり,2)に対しては狭窄部分を十分に切除し,健常な部分での再吻合や瘢痕部分が広範囲であれば,腎杯尿管吻合など他の方法で再建する必要がある。また最近,腎盂尿管移行部狭窄に対する内視鏡的治療が試みられており,再狭窄症例もその重要な対象となろう。本稿では観血的再形成術にしぼり,その術式の詳細を紹介する。

講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・21

陰茎(3) 佐藤 達夫
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動脈

 陰茎内部の血管の形態について研究者の関心をひきつけてきたのは主として組織学的構築であり,血液をもたらす親動脈の陰茎外部における経路と配置は,なおざりにされてきたきらいがないでもない。ここでは内および外陰部動脈の枝分かれを中心に,この課題を考えてみよう。

 陰茎は本来,排泄腔から発生し腹側に転位した器官であるから,排泄腔付近の動脈を引き連れてくるのが本すじである。内陰部動脈がこれに相当し,陰茎の動脈血の大半を供給する。陰茎の皮膚は会陰のほかに大腿のつけ根と連絡している。したがって,皮下には大腿動脈の枝が進入してくる。外陰部動脈がこれである。内外両陰部動脈の経過と分布についてまとめておく。

Urological Letter・564

TURのもう一つの症候群
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 1987年5月に,著者は右手の尺骨神経領域に一時的しびれとひりひりする痛みを感じた。この症状はくり返し起こり,本を読んでいる間,机に肘や前膊をついていると,あるいは患者さんの診察中,内視鏡検査,TURPを行っている時などに増悪することに気がついた。神経学的検査で筋電図からは前腕や肘の神経がやられているわけではないが,頸部のX線で,軽度の関節炎のあることがわかり,CTスキャンでは,C5-6-7の脊椎管内に骨の増殖による狭窄のあることがわかった。

 この問題について以前の同僚のDr.J.M.Bairdに話したところ,驚いたことに,彼もまた,左の示指の感覚を喪失した経験があるとのことだった。これはTURPの終わりに,肛門内に左示指を突込んで仕上げをすることに関係するものと思われる。

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 対側腎に腎機能障害を有する腎癌症例2例に対しDMSA腎シンチグラフィーを施行し,術前に部分切除術後の残存腎機能を予測した。その結果,術後1カ月での腎摂取率実測値は予測値より低値を示したが,術後4カ月以上における実測値と予測値との差は予測値の10%以内であった。DMSA腎シンチグラフィーは腎部分切除術前の術後残存腎機能評価に有用であると思われた。

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 成人男性の陰嚢水腫10例に対して,穿刺吸引後に再発防止を目的として塩酸ミノサイクリン注入療法を施行した。6カ月以上の経過観察にて70%の消失率が認められた。注入後90%に強度の疼痛が出現した。しかし鎮痛剤の使用にてコントロール可能であり,また全身的,重篤な副作用の出現は認められなかった。本法は,簡便で有用な治療法と考えられた。

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 尿失禁クリニックの現状を分析し,報告する。過去35か月間に1015名の女性患者(29名/月)が尿失禁または頻尿を訴えて我々の特殊外来を訪れた。年齢分布は40歳代が最多(32%)で,50歳代,60歳代と続く。患者の74%は東海三県に居住していた。尿失禁の重症度は,42%が1時間当たり10.1g/時間以上の尿失禁(高度および極めて高度)を示した。診断は腹圧性尿失禁が70%と過半数を占め,次に切迫性尿失禁の13%であった。治療法は薬物療法を35%に,手術を25%に,治療不要と判定した症例は20%である。今後は尿失禁に関する情報を一般大衆に提供するとともに非薬物,非外科的治療法の研究開発が必要であり,我々泌尿器科医は尿失禁に対する理解を一層深めるべきである。

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 右腎上極を除く広範な領域に腎動静脈瘻を認めた1例を報告した。本症例のごとく,腎中央部から下極にかけて腎動静脈瘻を認める例は文献的にも極めて珍しい。治療については腎動脈塞栓術は困難であると思われたので,腎摘除術を施行した。

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 子宮癌の術後に尿管膣瘻をきたした症例にLe Duc-Camey法による逆流防止術を併施した尿管回腸膀胱吻合術を行った。術後,婦人科手術に基因すると思われる神経因性膀胱に対し,間欠的自己導尿法が行われた。術後画像検査にて尿管逆流はみられず,上部尿路の形態は正常に保たれた。また,術後,数回にわたり膀胱炎を発症したが,腎盂腎炎には至らなかった。Le Duc-Camey法による逆流防止術が本症例の上部尿路の保護に有用と思われた。

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 清潔間欠自己導尿法の登場により二分脊椎の尿路管理が飛躍的に進歩したことは周知の事実である。しかし,十分な清潔間欠導尿法の患者教育並びに定期的な外来での経過観察がなされて,始めて適切な尿路管理ができるのである。今回我々は自己導尿施行中に誤って押し込んだと思われる陰毛が核となり膀胱に異物結石を形成した症例を経験したので報告した。

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 6歳,女児。膀胱刺激症状と外尿道口よりの腫瘤突出を主訴に来院。超音波,IVP,CTにて膀胱腫瘍が疑われ,経尿道的に切除したところ腺性膀胱炎であった。本症は腺癌への転換の可能性もあり,厳重な経過観察が必要である。本症の場合,特に非侵襲性の経腹的超音波が有用であった。

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 74歳,女性。肉眼的血尿にて来院。拇指頭大,有茎性の膀胱腫瘍が発見され,TURを施行した。組織学的には,腫瘍の大部分は紡錘形細胞より成り,筋層内へ浸潤していた。移行上皮癌と腺癌が島状に存在しており,一部軟骨組織もみられた。免疫組織化学的染色により,上皮性成分と非上皮性成分の存在が明らかで,悪性中胚葉性混合腫瘍と診断した。後に膀胱全摘出術,回腸導管形成術を施行し,化学療法(CAP)2コース行い経過観察中である。

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 患者は3歳の女児で,外陰部の腫瘤を主訴として来院した。血管腫の疑いにて経過観察中,尿線散乱等の排尿障害,腫瘤の増大傾向を認めるようになったため,全麻下に腫瘤摘出術を施行した。病理組織学的には毛細血管腫であった。男性の陰嚢に発生した血管由来の腫瘍および腫瘍様病変の報告は散見するが,女性の外陰部のそれの報告はきわめて少なく,我々の調べ得た限り本邦報告例は自験例を含め2例目で,血管腫としては初めての報告と思われる。

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 40歳,女性。高血圧と背部痛を主訴として受診。超音波検査で後腹膜腫瘍を認め,内分泌学的検査,CTと核磁気共鳴画像(MRI)の検査で,腹部大動脈付近に発生した異所性褐色細胞腫と診断し,胸腹部斜切開経胸膜的に腫瘍を摘出した。本症例の局在診断にMRIが非常に有用であったので,MRI診の特徴を報告した。

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 症例は56歳,男子。左側腹部痛の精査中,左腎腫瘍を疑われ入院した。入院後左胸水を認めたため胸腔穿刺を行ったところ尿が得られた。静脈性腎盂造影,逆行性腎盂造影,CT検査より,後腹膜腔腫瘍のため尿管狭窄,腎盂破裂をきたし,更に腎盂外に溢流した尿が胸膜腔に浸潤し胸腔内尿貯留を形成したと判断した。疼痛軽減のため,先ず腎周囲のドレナージをおこなったところ胸腔内の尿が消失した。全身状態の改善を待って腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は左腎門部下方より出て尿管を巻き込み腎下極に浸潤していた。さらに空腸部腸間膜,膵尾部にも腫瘍を認めた。病理学的にはB細胞型非ホジキンリンパ腫,LSG分類上び漫性大細胞型であった。胸腔内尿貯留を形成したという報告は少なく本邦では本例が3例目である。

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 避妊の目的で精管結紮術施行後,妊娠した4例を報告する。1例は精管結紮後,まだ末梢に残存する精子にて妊娠したもので,3例は精管の再疎通である。当院の精管結紮術は63例で,再疎通率は4.8%であった。術後,精液検査に来院する患者は51.9%であった。

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 症例 56歳,男性。

 初診 1989年8月15日。

 家族歴 特記すべきことなし。

 既往歴 35歳時より糖尿病。1985年5月より慢性膵炎。1986年6月慢性膵炎・脾膿瘍にて膵尾部切除・脾臓摘出術。

 現病歴 1989年糖尿病の加療目的にて某病院に入院,腹部エコー・CTにて左副腎部の腫瘤を指摘され当院第一内科に転入し,手術目的にて泌尿器科に転科となった。自覚症状は特に認められなかった。

 検査所見血糖値130mg/dlであったが,その他の血液一般,血液生化学検査に異常を認めなかった。血清ホルモン値はアドレナリン0.01ng/ml以下,ノルアドレナリン0.31ng/ml,ドーパミン0.20ng/ml以下,尿中VMA定量1.5mg/dayと正常でありコルチゾール13.4μg/dl,ACTH38pg/ml,17—KS9.0mg/ml,17—OHCS8.3mg/ml,アルドステロン147pg/ml,rapidACTHtest,dexamethazonesuppres-siontestも正常であった。

教室だより

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 順天堂の歴史は古く,1838(天保9)年,両国の薬研堀で,3年間の長崎留学を終えた佐藤泰然が蘭方塾(和田塾)を開いたことに始まる。同じ天保9年は,大阪で緒方洪庵が蘭学塾(適塾)を開いた年でもあった。2代目の佐藤尚中が,現在ある神田川沿いのお茶の水に,私立病院の先鋒として順天堂医院を開院したのが,今からかれこれ百十年程前のことであった。

 順天堂というと,一般の人の中には,医学部(病院)よりも体育学部の箱根駅伝やオリンピック・ゴールドメダリスト鈴木大地を連想する人も多いと思われる。順天堂にはこのように,医学部と体育学部があるわけであるが,「健康」というテーマにおいて,両学部はつながりを持っているのである。

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 京都府立医科大学は1872(明治5)年に設立された京都府療病院を前身とし,3年後には創立120年目を迎えようとしています。1880(明治13)年に移転した現在地は,東を鴨川のせせらぎに,西を京都御所の広大な緑地に囲まれた,京都市内でも屈指の環境のよい場所です。このような長い歴史を有する本学にあって,泌尿器科学教室の歴史は比較的新しく,1964(昭和39)年に皮膚泌尿器科学教室より分離独立して創設され,初代教授には故小田完五教授が就任されました。その後,1976(昭和51)年には東北大学から渡辺泱教授が着任され現在に至っています。

 渡辺教授の着任以来,早くも14年が経とうとしていますが,その間多数の入局者を迎え,当時は小世帯であった当教室も今では総勢が60人近い大所帯になるにいたりました。教室員の増加に伴い関係病院の数も大幅に増加し,現在では西は九州宮崎から東は静岡にいたるまで,総計25病院に泌尿器科医を送るまでになっています。

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 本誌43巻9号の小松和人先生らの「陰嚢RIイメージングが診断に有効であった急性陰嚢症」を読ませていただいて,2,3感想を述べたい。

 99mTc-pertechnetateを用いた陰嚢血流シンチが診断に有効であったとして2例報告されている。1例目は局所にRIの集積があったのに手術所見は精索捻転で,発症後数時間の受診にも拘らず,精巣は不可逆的変化を呈していた。2例目は発症後7日目で局所にRI集積を認めたが,40日後に再検し,程度は軽いながらもなおhot spotを認め,手術はせずに様子をみているというものである。

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 膀胱尿管逆流症において,1952年のHutchが逆流防止術の成功を報告して以来,数多くの術式が発表され,手技の相違はあるにしろ,もはや泌尿器科医であれば誰でも行いうる確立された治療法となっている。

 我々の施設でも1981年より現在までに73例,118尿管に対し逆流防止術を施行しており逆流の再発,対側への逆流の出現など6例の比較的軽度な合併症を認めたのみで,とくに1987年以後Cohen法を採用してからは,合併症は全く経験していない。

基本情報

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臨床泌尿器科
44巻3号 (1990年3月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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