病院 77巻8号 (2018年8月)

特集 ダイバーシティ・マネジメント—多様性に対応する

巻頭言 今村 英仁
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 「病院のダイバーシティ・マネジメント(以下,DM)」を特集テーマとして取り上げるに当たり,筆者は当初,「そもそも病院にDMは関係があるのか」,さらに「必要なのか」という疑問を抱いていた.巻頭言を記している今,それは「これからの病院経営にDMは必要不可欠だ」という確信に変わった.

 さまざまな人種のスタッフが集まって仕事をする多国籍企業でDMが必要なのは誰でも理解できる.それがなぜ今,日本の病院経営でも必須なのだろうか.日本の病院で働くスタッフはほとんどが日本人であり,ダイバーシティがないように見える.そこが落とし穴なのである.現代の病院は実にさまざまな職種のスタッフが集まる職場になった.たとえ日本人同士であっても,それぞれの職種の文化が大きく異なるために意思疎通がうまくいかないことも多い.それが高ずると,職種間で断裂が生じたり,上下関係が生じたりした結果,スムーズな医療提供ができない事態に陥りかねない.さまざまな職種の集まる病院を,別々の国々の人種が集う多国籍企業と捉えてみてはいかがだろうか.

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●政府は人材多様化に関連する政策を立て続けに打ち出している.企業においても組織における多様な人材と多様な働き方を管理する手法である「ダイバーシティ・マネジメント」は重要な経営課題として大きな注目を集めている.

●推進に当たっては個人の差異と制約を意識し,組織による統合を意識した上で多様性のある状態を作り,人々の対等な関わりと組織参加に焦点を当てることが必要となる.

●病院とは知識・スキル,経験,処遇などが大きく異なるさまざまな職種からなるユニークな組織であり,ダイバーシティ・マネジメントの先駆者でもある.さらなる知恵と工夫によって多様な人材の活躍を促進することで病院経営の未来を切り拓くことが期待されている.

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●長時間労働は健康を損ねるだけでなく,仕事と家庭生活との両立を困難にし,少子化の原因や女性のキャリア形成を阻む原因,男性の家事・育児を阻む原因となっている.

●2017年3月,抜本的な働き方改革を目指した「働き方改革実行計画」が策定された.その中で「医師については,時間外労働規制の対象とするが,医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である」とされ,規制の適用を施行後5年間猶予し,2年後を目途に規制の具体的な在り方,労働時間の短縮策などについて新たに検討することとされた.

●医療の世界においても働き方改革が必要である.その中でも抜きんでて長時間労働なのは医師である.働き方の改革が求められることは当然であるが,応召義務や養成に時間がかかるなど医師の働き方改革は通常とは異なる困難さがある.

●わが国の保健医療が,医療従事者の負担と倫理観に過度に依存したシステムであってはならない.喫緊の課題として今まさに長時間労働を行っている医師の業務を軽減するため,他職種へ業務移管(タスクシフティング)をする必要がある.

●医師の特殊性とは何か整理し,それに応じた新たな仕組みを考えていくことが必要である.

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●ダイバーシティ・マネジメントとは,「市場環境の変化にもかかわらず,競争優位を築く(=組織の価値創造),『競争力向上のための人材活用』」である.

●組織の価値創造のために,病院組織の常識にとらわれない人材確保が必要である.

●多様な人材が活躍できる土壌づくりを仕掛けると,そこから職員が価値を創造し始める.

●当院では,価値創造を基本とした上で,マグネットホスピタルとしてさらなる進化をとげるために,ひと成長型組織の推進,チーム医療の推進を図っている.

●プロフェッショナルとしての医師の働き方改革に臨む重要なポイントとして,マネジメント改革が挙げられるのではないか.

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●ダイバーシティ・マネジメントは,優秀な職員確保のためには必要不可欠な手法である.

●新専門医制度は地域医療崩壊を加速させる可能性を秘めている.

●職員採用は中長期的視野に立ち,職種ごとに計画的な採用が求められる.

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●訪日外国人観光客の診療においては,言語・文化・慣例の違いがあり,多くの時間と労力が必要となる.

●旅行保険会社との情報交換には,さらに時差の問題なども加わり,負担が大きい.言語や未収金に関する問題の他にも,さまざまな問題が生じている.本稿では,そのような問題と当院の対応を網羅的に記した.

●今後も増え続けるであろう外国人患者診療に対して,行政の理解と支援が必要と考える.

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●精神科病院は障害を持つ人の就労を支援する立場であるが,また,雇用する立場にもなれる.

●双方の立場において,全ての人がその人らしく働くことを目指すことは,組織におけるダイバーシティ・マネジメントの発展につながっていく.

●精神科病院で障害者雇用を推進していくためには,リカバリー概念の波及と段階的な導入が必要である.

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日本の病院は,24時間働く均質な集団によってこれまで保たれてきた.

しかし今後,減りゆく人材を確保し生き残るのは,多様性を受け容れ,強みに変える病院だろう.

岡山大学病院「MUSCATプロジェクト」で女性医師の柔軟な働き方を進める片岡氏に聞く.

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 医療現場でも取り組まれる働き方改革.切り札の一つがチーム医療だ.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・44

医療福祉建築賞2017 筧 淳夫
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■はじめに

 日本医療福祉建築協会は,1991年に医療福祉建築賞を創設し,2017年で27年目に当たる.2017年度は,2013〜2015年度の3年間に竣工した作品が選考の対象となった.応募作品の総数は29作品(うち病院15作品,診療所5作品,保健・福祉施設等9作品)であり,昨年に比較して診療所の応募件数が微増していた.

 今回の1次選考においては11作品を現地視察の対象として決定し,現地調査の後に,2次選考において表1に示す5作品について建築賞の授与を決定し,1作品について準賞として選定した.

 なお,選考委員は今年から,伊藤正(鹿島建設),伊藤恭行(名古屋市立大学),岡本和彦(東洋大学),武村雪絵(東京大学),正木義博(神奈川県済生会),三浦研(京都大学)と筧淳夫(工学院大学・筆者)の7名である.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・24

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■はじめに

 人口の高齢化とそれに伴う傷病構造の変化は,わが国のみならずアジア諸国共通の問題となっている.特に,わが国以上に急速に少子高齢化が進んでいる台湾や韓国では,わが国の医療保険制度や介護保険制度を参考に国民皆保険制度を確立し,さらにそれを発展させており,例えば医療情報のIT化やその活用体制など,現在ではわが国がこれらの国から学ぶべき点も多くなっている.

 本稿では,少子高齢化に対応するために,柏プロジェクトなどわが国の地域包括ケアの先進事例を参考にし,病院を中心に地域包括ケアシステムの構築を積極的に進めている台湾の事例について紹介する.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・3

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■固定残業代制度と変形労働時間制度

 今回から2回にわたり,病院の労務管理に効く制度として,固定残業代制度と変形労働時間制度の2つをご紹介したい.

 これらは,正しく使えば有用であるが,特に固定残業代制度については,誤解・誤用されている場面によく遭遇する.固定残業代制度の誤用は,経営上の大きなリスクとなる.使い方によって特効薬にも毒にもなるのが,まさに固定残業代制度である.

連載 多文化社会NIPPONの医療・11

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 今回取り上げるのは,日本語で対応しても難しいメンタルヘルスの話題である.手術をして経過をみて退院というクリニカルパスに記載されるような,あるいは手技を覚えて血糖測定とインスリン注射といった一定のルールやパターン認知で管理ができる健康問題と全く異なる超難問といっていい.

 丁寧な問診から始まる会話において,日本語と母国語で微妙に異なるニュアンスや文化・習慣への配慮など,慣れた通訳でないと対応が難しいこともある.そもそも,英語以外の言語となれば医療通訳の確保が必須だが,仮に見つかったとして,一般診療より長くボリュームも大きなやりとりを依頼したら一体どれくらいの費用がかかるのか.それは全て医療機関が負担するべきなのかといった問題も生じる.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!—病院と地域のかかわりを学ぶ旅・[22]

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 静岡県浜松市天竜区佐久間町には,保健師さんを支援室に雇用し,保健師の強みを生かした“切れ目なく支える”地域連携の取り組みを構想し,先進的に実現している国保病院があるんだ! 連載第22回目の今回は,保健師の特性と自分の特徴を生かして病院支援室で活躍する,浜松市国民健康保険佐久間病院の守下聖さんにお話を聞きました!

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基本情報

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病院
77巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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