病院 77巻9号 (2018年9月)

特集 キャリアとして選ばれる地域病院

巻頭言 山田 隆司
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 超高齢社会が進み,全国各地で地域包括ケア体制の整備が重視されている.医療に関しては,単一の疾患に対する画一的で短期間のサービス提供でよかったこれまでの急性期中心の医療から,回復期・慢性期・終末期といった継続的かつ多くの障害や疾患を併せ持つ患者の在宅復帰までの個別的なきめ細かいサービス提供が求められるようになってきた.これからの医療者は,より幅広い健康問題に対応し,患者の生活背景を踏まえ,多職種と連携して適切な介入をすることが必須となる.個々の地域でそれぞれの地域ニーズに応えられる医療人をどう育成するかが喫緊の課題となっている.本特集では,地域で教えるという医療人育成の面で先駆的な仕事をしてこられた方々に執筆をお願いした.医師のキャリア形成の上で選ばれるような病院や地域となるための知恵を学びたい.

 吉村論文では医学生の臨床実習をもっぱら地域の病院を活用することで職業人としての臨床医の育成に力点を置いた精力的な取り組みが報告されている.川本論文では長く地域病院に従事した立場から,地域でこそ教えられる地域包括ケア,在宅を含めた終末期ケアなどを教育・研修の中心として特徴付ける視点が述べられている.川島論文では地域病院で必要とされている病院総合医に求められる資質・技能・能力について述べられており,病院の方向性・期待を明確に若手医師に伝えることの重要性が説かれている.

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●地域医療実習では,地域社会で求められる保健・医療・福祉・介護などの活動を通して,地域医療と地域包括ケアシステムを一体的に構築する必要性・重要性を学ぶのが狙いである.

●地域にある病院および診療所を核として診療参加型臨床実習を提供するためには,指導医のみならずスタッフや患者の協力が不可欠である.

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●地域病院は,卒後研修制度において基幹病院との連携は不可欠である.大学をはじめとした複数の基幹病院と連携を図り,学生や研修医時代から病院の魅力を伝えていくことが,キャリアとして選ばれる病院になるには不可欠である.

●キャリアにおいて,「地域をケアする」とはどのようなことかを若いうちから学んでおくことは重要である.地域病院だからこそ,そこでしか学ぶことのできない地域包括ケア,多職種連携により行われる在宅医療や生活習慣病対策,終末期医療への取り組みなどの特色あるプログラムの提供が可能である.

●キャリアとして選ばれる地域病院には,そこでの熱心な指導が受けられ,手技の取得や研究活動も可能で,給与が保障され,他者からの評判が良いこと,さらにはワークライフバランスが良いことなどが重要である.

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●病院総合医に求められる役割は,医師不足や医師偏在の問題を含む立地条件や病院規模によって多様化する.

●病院総合医育成には,求められる仕事(ミッション)を明確にし,共有することが重要である.そのミッションがいかに円滑に遂行できるか,困難を乗り越えてもそのミッションを担いたい医師の人数で業務が規定されることもある.

●医師を確保しなければ教育・育成は成り立たない.医師確保のキーワードは,立地と興味とワークライフバランスにある.医師の興味と病院の目指すミッションが同じ方向を向き,達成されていくと医師確保につながる可能性がある.活躍する病院総合医を輩出していかなければ,医師が集まることも想像し難い.このため,病院総合医が勤務しやすい環境づくりが最大のポイントになる.

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●医師を集められる病院になる最重要点は以下の二つである.

1.院内で活発に勉強会を行い知識の共有を行うこと.

2.全国に積極的に役立つ知識を発信,またはオープンの勉強会を開催すること.

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●人材確保に王道はなく地道な自助努力が必要である.また,一見関係のない連携も人材確保につながることがあり,連携強化も重要である.

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●地方の小病院は外来,入院,訪問診療,予防活動などを総合的に行うプライマリ・ケアを学ぶ場として,学生や医師の育成に貢献できる可能性がある.

●地域医療を担う魅力ある病院であるためには,全ての責任を一人の医師が負う形ではなく,医師がチームで地域に責任を持つという仕組みを工夫することが有用と思われる.

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地域に必要な気概ある医師を確保し育成するには,病院としてどのような戦略が必要なのか.

「劇的救命」を掲げて救急の研修を充実させ全国から研修医を集めてきた今氏に,今後の地域病院の運営の方向性を語っていただく.

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要旨

 株式会社日本能率協会総合研究所は,日本大学商学部髙橋淑郎教授と共同で,定期的に「病院の経営課題等に関する調査」を実施している.最新調査である2017年度調査(発送数8,410病院,回答数509病院,回収率6.1%)より,病院の人事評価制度に関する調査結果について報告する.

(主な調査結果)

・6割以上の病院が人事評価制度を有し,特に400床以上の病院では9割弱で導入されている.

・処遇への反映方法に関しては,病床規模で相違点は少なく,むしろ収支状況別での相違点が着目された.

・約4割の病院が,現行の人事評価制度は事業環境や経営戦略等と適合していないと考えている.

・人事評価制度の課題としては,7割以上の病院が「評価者の評価スキル」を課題と考えており,また「評価基準があいまい」「評価者の負担が大きい」という回答も多かった.

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 藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)は,UR都市機構中部支社や豊明市と共に「けやきいきいきプロジェクト」を立ち上げ,近隣の豊明団地を舞台にさまざまな試みを行っている.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・45

不知火病院 海の病棟 岡本 和彦
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■はじめに

 不知火病院の特徴は,大きく分けて以下の点が挙げられるだろう.まずストレスケアを他の疾病のケアと分けたこと,次にそのための専用病棟を建てたこと,そしてその設計をいわゆる建築家に依頼したことである.ならびに,竣工後に患者に対する建築的な影響について調査が行われたことは,本連載の趣旨からも特筆すべきである.以下,この順に沿いながら,この建築がどのように病院運営上の特徴を生み出したかを解説する.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・23

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■何が問題だったのか

①自治体消滅に直面する町

 富山県朝日町は,富山県の東端,新潟県との県境に位置する町である.「日本の渚百選」にも選ばれている日本海のヒスイ海岸から標高3,000m級の北アルプス朝日岳・白馬岳に至る自然豊かな地域である.

 江戸時代以降,親不知・子不知という難所を控えた越中の東端という地理的条件から,関所が設けられ宿場町として栄えてきた.歴史のある町であるが,地方の自治体の典型で,大幅な人口減少に直面している.1989年に18,396人であった人口は,2016年に11,936人となった(富山県人口移動調査).人口減少の原因は,出生率の低さと若年層を中心とした人口流出である.2008〜2012年の朝日町の合計特殊出生率注1は1.35と富山県内でも最も低かった注2.また,2015年の町の人口の社会減は-94人で,人口の0.7%が町外に流出していた注3.特に,20〜24歳の層が,進学や就職により町外に流出していた.このままでは朝日町は,人口減により消滅することが確実であった.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・11

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 岩手県盛岡市にある中津川病院(以下,同院)は慢性的な赤字が続いていた.その要因には低迷する病床利用率があり,年間平均で40%台となるときもあった.さらに,4年前には医師不在となる危機に直面するなど,一時は病院の存続も危ぶまれた.

 そのような状況から一転,2017年度の平均病床利用率は85.3%と,収支はまだ赤字ではあるものの,大幅に改善した.業況改善の背景には大きな経営方針の転換がある.今回は閉鎖もやむを得ない状態から現在の状況に回復するまでの過程について,3つのステップに分けて見ていきたい.

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 前回は,病院の労務管理に効く制度として,固定残業代制度と変形労働時間制度の2つがあること,このうち固定残業代制度は,誤用すれば経営上の大きなリスクとなる一方,正しく使えば有用であることをご説明し,その有効要件に触れた.

 固定残業代制度は,取り入れている病院も相当数あるが,有効要件を1つでも満たさないと無効となり,逆に,病院経営上命取りとなりかねない,まさに取扱い要注意の制度である.今回も前半で,実務対応のポイントを含めて,より詳細に有効要件をご説明する.

 後半では,変形労働時間制度についてご説明する.

連載 多文化社会NIPPONの医療・12

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 外国人患者の受け入れ体制整備のプロセスで,医療機関が第三者機関による認証の取得を検討することがある.受審や更新にかかる労力や費用も必要となるため,「取る必要があるのか」「取るとどういうメリットがあるのか」といった質問が多い.今回は,問い合わせの多いJMIP,JCI,ハラル認証の話題について紹介したい.

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基本情報

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病院
77巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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