生体の科学 69巻3号 (2018年6月)

特集 生体膜のバイオロジー

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 生体膜は細胞内外の界面,あるいは細胞内の異なる分子環境の界面として,物質やエネルギー,情報の授受にかかわる細胞の基本構造である。生命現象を生体膜によって区画化された多様なコンパートメント間の連携ネットワークと捉えると,生体膜研究は脂質二重層構造に関する特定対象の研究にとどまらず,生命現象全般の理解に1つの視座を与える共通基盤領域であるということができる。本特集ではこうした「生体膜研究を通して多様な生命現象を捉える」という観点から,理論,構造,動態,機能,新技術に至る様々な生体膜研究を代表する第一線の研究者にトピックスを解説していただいた。

 理論の側面からは,鈴木(宏)論文において脂質二重膜のでき方とその物理的性質かがわかりやすく解説され,立川・望月論文ではこうした生体膜の物理的性質に基づいたオルガネラ形態の数理モデルが現段階での問題点と共に示されている。生体膜が作る構造として,西村・末次論文ではタンパク質を介した脂質膜の曲面形成機構が,大﨑論文では細胞質や核内に存在する脂肪滴の形成機構と役割が,鈴木(健)論文では1分子イメージングによって大きく変わりつつあるラフトの概念について,それぞれ解説されている。更にこうした生体膜構造の動的側面として,下川・高木論文では脂肪酸組成の変化による相分離からラフト生成機構に迫る研究が紹介されている。また,物質輸送を担う生体膜の動態として,田口論文ではエンドソームがどのようにリサイクルされて細胞内物流に寄与し,機能破綻でどのような疾患が引き起こされるのか,高橋論文では多様な速さや様式をとるエクソサイトーシスがどのような分子機構によって担われているかが解説されている。

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 細胞は,膜という境界があって初めて定義される。Cellという名称は,ばねに関するフックの法則でも有名なRobert Hookeが定めたとされるが,その語源そのものが“小部屋”である。細胞は膜で区切られていることで,中にある生体高分子やその他の分子を高い濃度に保ち,かつ自己を他の細胞と区別できる。昨今の,主に純粋な脂質膜小胞(リポソーム)を使った研究により脂質膜の性質や挙動が次々と明らかにされ,更には原始的な細胞モデル(プロトセルと呼ばれる)がつくられるようになってきた。必要最低限の分子のみを再構成してつくった細胞モデルは,そのシンプルさから初期の細胞の誕生に関する研究とも,またバイオテクノロジー応用に向けた機能を有する人工細胞をつくる研究とも相性がよく1),進展が続いている分野である。

 細胞の起源に関する諸説はさておき,これらの研究で扱われているモデル膜は,多かれ少なかれ現実の細胞が持つ生体膜の特徴を反映しているに違いない。本稿では,昨今の細胞モデル研究と,それを理解するのに必要な理論的背景の基礎を解説する。

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 近年のイメージング技術の発達によりオルガネラ形態の理解が進んでいる。三次元電子顕微鏡技術はオルガネラ形態の詳細を明らかにしつつあり,超解像顕微鏡は膜の動態とその要因となる分子の動きを可視化し始めている。では,従来の分子生物学的な手法とこの“形”や“動き”のデータはどのように結びつくのであろうか。そこには,形や動きを理解するためのロジックが必要であり,物理モデリングの手法が有用である。実際に,先行してライブイメージング観察が発展した発生生物学においては,物理モデルを用いた研究が定着している。

 本稿では,まだ一般的ではないオルガネラを記述する物理モデルの考え方を紹介し,幾つかの先例と共にその可能性について議論する。

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 Bin-Amphiphysin-Rvs(BAR)ドメイン含有タンパク質(BARタンパク質)は,ヒトにおいては約70種同定されている。BARドメインは湾曲した立体構造を持つ細胞質性の膜結合ドメインで,多量体を形成して膜の形を制御するユニークな性質を持つ。BARタンパク質はまた,細胞骨格の制御分子と相互作用して,アクチン細胞骨格と協働する。

 本稿では,BARタンパク質と細胞骨格を介した細胞膜の構造構築機構について概説する。

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 脂肪滴(lipid droplet;LD)は細胞質における中性脂質の貯蔵庫としての古典的な役割に加えて,脂質合成,シグナル伝達,バクテリアやウイルス増殖,タンパク質分解,オートファジーなどに関与することが明らかになってきた。肝細胞などにみられる核質脂肪滴は細胞質脂肪滴とは独立した機構で形成され,独自の生理的意義を持つと推測される。

 本稿では細胞質および核質での脂肪滴の形成機序と機能に関して,他のオルガネラ膜との相互作用の観点を交えて紹介したい。

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 1980年代後半にKai Simonsらは,trans-Golgi network(TGN)におけるタンパク質や脂質のソーティングの際に,脂質組成が周辺とは異なる膜領域が存在するという仮説を提唱した1)。彼らはその後,Nature誌の有名な総説によって,この概念を大大的に主張し,この膜領域のことを“ラフト”と名付けた2)

 ラフトは,ソーティングにおける役割に加えて,細胞の増殖や接着,免疫など,非常に広範囲にわたる生命現象において,細胞の形質膜上のシグナル伝達のプラットフォームとして働いていると考えられてきた。当初想定されていたラフト構造(図1)は,膜外層にスフィンゴミエリン,スフィンゴ糖脂質,コレステロール,GPI(glycosylphosphatidylinositol)アンカー型受容体(GPI-AR)などが,内層にSrc fmily kinase(SFK),Gタンパク質など,飽和脂肪酸修飾を受けたシグナル分子が濃縮されている,というものであった。すなわち,「形質膜上には,脂質の相分離によって常にミクロンサイズの大きくて安定なラフトが存在している。このようなラフトに局在している受容体にリガンドが結合すると,ラフトにシグナル分子もあらかじめ集められているため,効率よくシグナル伝達が起こる」というものであった。

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 細胞膜は細胞の内外を隔てる生体膜であると定義される。膜中には様々なタンパク質が埋まっており,イオン透過にかかわるイオンチャネル,ホルモンなどの情報分子を受け取る膜受容体,物質輸送にかかわる輸送体などが存在している。コンピュータの接続部分をインターフェースと呼ぶが,細胞膜も単なる境界や接触面ではなく,膜を介して物質の輸送,情報の伝達や変換が行われている言うなれば“バイオインターフェース”であり,その機能は膜の物理化学的性質の影響を少なからず受けていると考えるべきである。

 ここでは,細胞膜モデルである直径10μm程度の大きさの細胞サイズリポソームを用いた,膜相分離構造とその脂肪酸による影響についての研究を紹介させていただきたい。

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 エンドソームは,エンドサイトーシスによって細胞膜・細胞外から細胞内へ取り込まれた物質の輸送を担う細胞小器官(オルガネラ)の総称である。本稿では,細胞膜への物質のリサイクルを中心に行うリサイクリングエンドソーム(recycling endosomes;REs)に焦点をあて,その分子制御機構および機能破綻によって引き起こされる疾患について紹介する。

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 開口放出(エクソサイトーシス;exocytosis)は,分泌小胞と細胞膜が融合することにより,小胞内腔と細胞外が交通し,内容物が細胞外へ放出される過程である。水溶性の生理活性物質や神経伝達物質の放出を担い,生体の恒常性維持や知覚・活動に深くかかわっている。脂質二重膜の再構成を伴う,複雑な要素過程から成り立つが,近年,様々な分析測定法や遺伝子改変技術などを組み合わせることにより,その分子機構が解明されてきた。

Ⅳ.機能

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 心筋や骨格筋において細胞膜の脱分極が細胞内Ca2+濃度上昇へとシグナル転換されて,収縮反応が発生するしくみは興奮収縮連関と呼ばれる。一般の細胞群と比較してはるかに巨大な両横紋筋ではあるが,その興奮収縮連関では迅速に,かつ細胞深部に至るまで同時に脱分極〜Ca2+上昇のシグナル転換を成立させることが要求される。横紋筋細胞において特異的に構築される細胞膜および小胞体の特殊な膜構造は,このシグナル転換反応の効率化に必須な構造的基盤であると考えられる。

 本稿においては,横紋筋細胞における特殊膜構造と興奮収縮連関の対応と共に,特殊膜構造に残されている未解決課題についても概説する。

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 血管の内面を覆う内皮細胞は,血流に起因する流れずり応力や血圧によって生じる伸展張力などの血行力学因子に常に曝されている。内皮細胞は流れずり応力や伸展張力などの機械的な力の変化を細胞内の生化学的シグナルに変換し,細胞内部へ伝達(メカノトランスダクション)することにより,細胞の形態や機能,遺伝子発現の変化を伴う応答を引き起こす。これらの内皮細胞応答を介して心血管系の形態や恒常性が維持されている。例えば,血流量の変化に応じて血管径が変化するリモデリングが起こるが,これは血管壁にかかる流れずり応力を一定に保つ適応反応であることが実験的に証明された1)。また,血圧や血液の凝固・線溶を制御する生理活性物質の産生が亢進するなど,細胞の機能を修飾する2)。これらの内皮細胞の力学応答が障害されると,高血圧症や血栓症,動脈瘤,粥状動脈硬化症の発生につながる3)。しかし,力学的刺激をどのように内皮細胞膜がセンシングし,その変化を細胞内の生化学的なシグナルに変換するのか,特に,流れずり応力と伸展張力を区別するメカノセンサーの本体とその感知メカニズムは不明であった。

 本稿では,細胞形質膜が流れずり応力と伸展張力を区別できるメカノセンサーとして機能するという,内皮細胞のメカノトランスダクションの新しい概念を紹介する。

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 初期発生において,受精卵は様々なタンパク質の局在とそれに応答するシグナル伝達,そして遺伝子発現の差によって,どちらが頭でどちらが尾の方向か,あるいはどこが中胚葉でどこが外胚葉かという基本的な胚パターンが決められる。その後,胚は個々の細胞を協調的に移動させることで組織全体を大きく変形させ,複雑な構造の個体を構築する。細胞が移動するには,自らの力で動くにせよ,周囲の影響を受けて移動するにせよ,根拠となる力の発生が必須であり,その結果として細胞自体には力がかかる。細胞にかかる張力は,単に発生する力の強弱だけに依存するのではなく,細胞の物質的な特徴,例えば細胞膜付近の細胞骨格の密度や,細胞膜と相互作用する様々なタンパク質の有無や動態変化によっても変化すると考えられる。

 以上の観点から,胚の形態形成運動は,単純な個々の細胞の動きだけでなく,細胞の種類ごとの物理的な違い(細胞膜の硬さ,細胞質基質の弾性など)と,それに応じた細胞膜の張力変化がどのように起こるかも議論されるべきである。本稿では,細胞膜にかかる張力を生みだす接着装置の構造と細胞にかかる力の計測法についてごく簡単に概説したのち,筆者らが近年行っている,胚の細胞にかかる張力の非侵襲的計測に関する知見を紹介する。

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 セミインタクト細胞リシール技術は,細菌毒素を用いて細胞膜を一時的に透過性にすることで,タンパク質や核酸をはじめとする様々な膜不透過性分子の細胞内導入を可能にする技術である。導入された分子の機能を,まさにそれが働く“現場”である細胞内で,細胞構造,細胞小器官や細胞骨格の空間配置がほぼインタクトに保たれた環境で検証できるという,ほかにはない強みを持つ。

 本稿では,セミインタクト細胞リシール技術の概要と,それを応用した細胞質交換による糖尿病モデル細胞構築および画像をベースとしたフェノタイプ解析の実例について紹介する。

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 細胞膜は,厚さ約5nmから成るリン脂質二重膜から構成されている。このリン脂質二重膜は,疎水性の隔壁として働くため,極性の持つ水分子は透過しにくく,分子量の大きな分子(アミノ酸や糖)は透過できない。細胞膜には膜タンパク質が埋め込まれており,この膜タンパク質が物質輸送,エネルギー産生,情報伝達・変換といった細胞内外の重要な生体反応を担っている。膜タンパク質は受容体,チャネル,トランスポータなどの種類を有しており,膜貫通回数や構造も多種多様である。膜タンパク質はがんなどの重篤な疾病に関係していることから,国内外の多くの研究者によって膜タンパク質の構造と機能解析研究が行われている。薬剤ターゲット全体の半分が膜タンパク質であり,Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)が33%であり,イオンチャネルが18%である1)。細胞膜には,非常に多種類の膜タンパク質が存在しているため,目的の膜タンパク質の動作機序の素反応の解析は難しい。

 そこで,リン脂質二重膜から形成された人工膜に目的の膜タンパク質のみを再構成し,素反応や薬剤応答の研究が盛んに行われている2)。特に,人工球体膜はリポソームと呼ばれている。リポソームは閉鎖小胞であるため,リポソーム内に物質を封入することが可能である。したがって,ナノサイズリポソームはドラッグデリバリーシステムの担体として利用されている。これまで,人工膜は自己組織的な手法によって作製されてきたが,再現性や均一性やハイスループット性などに問題があった。そこで,近年,化学・生物分析分野で用いられているマイクロデバイスの手法が,人工膜作製にも取り入れられるようになってきた。本稿では,筆者らが開発してきたマイクロデバイスを用いて作製した平面と球体人工脂質二重膜によるタンパク質機能解析について紹介する。

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 細胞膜は均一な脂質二重膜ではなく,局所的に特定分子が会合した秩序構造を形成しており,この部位を膜マイクロドメインと総称する。膜マイクロドメインは,特定の機能分子がミリ秒単位で集合と離散を繰り返すダイナミックな構造で,シグナル伝達や細胞内タンパク質輸送など重要な生物現象のプラットフォームとして機能している。例えば,細胞増殖因子受容体のまわりには,シグナル伝達やエンドサイトーシスにかかわる分子群が集まり,一時的に機能クラスターを形成する。平静時の膜マイクロドメインの大きさは数10nm以下(数個〜数十個のタンパク質分子を含む)と小さいが,いったん刺激が入ると数百nm〜1μmと大きな分子アッセンブリーをつくることが知られている1)

 膜マイクロドメイン(脂質ラフトとも呼ばれる)の調製には,低温下で中性界面活性剤を用いて,細胞膜をホモジェナイズしてショ糖密度勾配超遠心にかけたときに浮遊してくる低密度画分detergent resistant membrane(DRM)を回収する方法2)がよく使われる。DRMには細胞膜外層に存在するスフィンゴ糖脂質,コレステロール,GPIアンカータンパク質に加えて,細胞膜内層に存在するsrcファミリーキナーゼやGタンパク質などのシグナル分子が濃縮され,膜マイクロドメインが単離されたかのようにみえるが,DRMは界面活性剤によるアーティファクトだという指摘がある3)。また,不均一で多様な膜マイクロドメインを一括して集めているため,DRMに回収される分子群が同一の機能クラスターのなかに会合していると思い込んではならない。

連載講座 生命科学を拓く新しい実験動物モデル−16

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 奄美大島のみに生息する国の天然記念物で絶滅危惧種のアマミトゲネズミ(図1)は,進化の過程でY染色体を失っており,極めてまれな性染色体構成(雌雄共にXO型)である。性決定様式や染色体構成,あるいは生物進化など様々な観点から,たいへん興味深い研究対象であるが,その希少性からアマミトゲネズミの直接解析は現実的でなく,多くの謎が未解明のままである。

 筆者らはメスのアマミトゲネズミ尾部先端の細胞からiPS細胞を樹立し,マウスとの異種間キメラ作製を介してアマミトゲネズミの卵子と精子を作ることに成功した。このことは,アマミトゲネズミが性染色体進化の過程で獲得した能力を反映していただけでなく,種の完全絶滅に備えるための一手段として,iPS細胞の活用が有効であることも示唆している。

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 遺伝子とその発現産物を要素とする機械論的な生命科学の進歩によって,あたかも電子回路のように遺伝子を制御するネットワークを人為的に構築し,細胞機能を再構成する合成生物学(synthetic biology)が注目を集めている1)。“There's plenty of room at the bottom”の標語のもと,自然の模倣を最適な戦略としながら細胞の設計原理にせまる新たなアプローチである。

 本稿では,筆者らが得た知見をもとに,セルフリー系(無細胞系)における合成生物学の進展について紹介する。

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Ⅰ.本研究を始める前に思っていたこと

 過去100年の生物学研究を俯瞰すると,真正細菌や真核細胞で働く共通の生体システムのしくみが明らかにされ,多細胞生物で観察される様々な生命現象を支える複雑なしくみが徐々に解明されてきたといえる。その結果,生体システムの破綻のしくみを解き明かし,生体システムのしくみを利用した人工生命の創造を行うことを目指し,実行する時代の到来が現実味を帯びてきた。

 そのような現代にあって,生物学の長年の課題であった数十億年前の生体システムのしくみ,およびその進化の謎を解きたいと学生のころから思い描いていたことを実現できたらと本気で思い始めていた。

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 医学教育の教科書としての「標準」シリーズは揺るぎない地歩を築いてきた。しかし,その第一冊を占めるべき解剖学が欠けているのは異様でもあるし,不思議に思っていた。解剖学を専門とする者として残念に思っていたところであり,本書の刊行を見て安堵している。

 前世紀末の頃,解剖学の立ち位置は定まっていなかった。系統解剖学が部位別に編成替えされ,機能および臨床要素が重視され,写真ならびにカラー印刷技術の発達の影響を受けて,解剖学書は衣替えし,多様化が進んだ。しかし,何となく落ち着きが悪い。多彩であっても主軸が欠けている感が強い。そうした状況の中で妥当な着地点を見いだしたのが,本書のように思われるのである。

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目次

次号予告

財団だより

あとがき 栗原 裕基
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 「故二柱の神,天の浮橋に立たして,其の沼矛を指し下して畫かせば,鹽こをろこをろに畫き鳴して引き上ぐる時に,其の矛の末より垂り落つる鹽の累積なり島と成る」

 古事記冒頭の天地開闢神話のように,原初の地球のどこかで,自然の力が揮った矛から脂質二重膜のつくる液滴が垂り落ちて細胞が生まれたのかもしれない。混沌から秩序が生まれたその瞬間から,生体膜構造はさまざまな機能を細胞に賦与しながら現在まで連綿と受け継がれてきた。学生時代に読んだ香川靖雄先生の著書「生体膜と生体エネルギー」を今改めて繙くと,序文には「生体膜は未知の分野であり,ここに生命現象の解明の鍵がひそんでいる」と書かれ,本の最後は非平衡が動的秩序発生の原動力とするIlya Prigogineの「散逸構造理論」の紹介で結ばれている。生体膜による自己の区画化による生命の独立と生体膜を介したエネルギー変換構造の発展は,まさにPrigogineの「混沌からの秩序」形成の過程といえるが,多くは未だ謎に包まれ未知の領域は宇宙のように膨張し続けている。40年前の問題提起と方向性は今も変わることはない。

基本情報

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生体の科学
69巻3号 (2018年6月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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