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細胞膜は,厚さ約5nmから成るリン脂質二重膜から構成されている。このリン脂質二重膜は,疎水性の隔壁として働くため,極性の持つ水分子は透過しにくく,分子量の大きな分子(アミノ酸や糖)は透過できない。細胞膜には膜タンパク質が埋め込まれており,この膜タンパク質が物質輸送,エネルギー産生,情報伝達・変換といった細胞内外の重要な生体反応を担っている。膜タンパク質は受容体,チャネル,トランスポータなどの種類を有しており,膜貫通回数や構造も多種多様である。膜タンパク質はがんなどの重篤な疾病に関係していることから,国内外の多くの研究者によって膜タンパク質の構造と機能解析研究が行われている。薬剤ターゲット全体の半分が膜タンパク質であり,Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)が33%であり,イオンチャネルが18%である1)。細胞膜には,非常に多種類の膜タンパク質が存在しているため,目的の膜タンパク質の動作機序の素反応の解析は難しい。
そこで,リン脂質二重膜から形成された人工膜に目的の膜タンパク質のみを再構成し,素反応や薬剤応答の研究が盛んに行われている2)。特に,人工球体膜はリポソームと呼ばれている。リポソームは閉鎖小胞であるため,リポソーム内に物質を封入することが可能である。したがって,ナノサイズリポソームはドラッグデリバリーシステムの担体として利用されている。これまで,人工膜は自己組織的な手法によって作製されてきたが,再現性や均一性やハイスループット性などに問題があった。そこで,近年,化学・生物分析分野で用いられているマイクロデバイスの手法が,人工膜作製にも取り入れられるようになってきた。本稿では,筆者らが開発してきたマイクロデバイスを用いて作製した平面と球体人工脂質二重膜によるタンパク質機能解析について紹介する。
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