Japanese
English
特集 生体膜のバイオロジー
Ⅱ.構造
ラフト構造を介した細胞膜シグナル伝達
Signal transduction in cell plasma membranes via raft structure
鈴木 健一
1
Suzuki G. N. Kenichi
1
1岐阜大学研究推進・社会連携機構生命の鎖統合研究センター
キーワード:
1分子追跡
,
ラフト
,
GPIアンカー型タンパク質
,
シグナル伝達
Keyword:
1分子追跡
,
ラフト
,
GPIアンカー型タンパク質
,
シグナル伝達
pp.213-217
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200796
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1980年代後半にKai Simonsらは,trans-Golgi network(TGN)におけるタンパク質や脂質のソーティングの際に,脂質組成が周辺とは異なる膜領域が存在するという仮説を提唱した1)。彼らはその後,Nature誌の有名な総説によって,この概念を大大的に主張し,この膜領域のことを“ラフト”と名付けた2)。
ラフトは,ソーティングにおける役割に加えて,細胞の増殖や接着,免疫など,非常に広範囲にわたる生命現象において,細胞の形質膜上のシグナル伝達のプラットフォームとして働いていると考えられてきた。当初想定されていたラフト構造(図1)は,膜外層にスフィンゴミエリン,スフィンゴ糖脂質,コレステロール,GPI(glycosylphosphatidylinositol)アンカー型受容体(GPI-AR)などが,内層にSrc fmily kinase(SFK),Gタンパク質など,飽和脂肪酸修飾を受けたシグナル分子が濃縮されている,というものであった。すなわち,「形質膜上には,脂質の相分離によって常にミクロンサイズの大きくて安定なラフトが存在している。このようなラフトに局在している受容体にリガンドが結合すると,ラフトにシグナル分子もあらかじめ集められているため,効率よくシグナル伝達が起こる」というものであった。
Copyright © 2018, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.