臨床眼科 69巻10号 (2015年10月)

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要約 背景:サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎は,免疫機能が低下した患者に発症することが多い。目的:CMV網膜炎が発症した1症例の初診時に,免疫機能が正常であった報告。症例:58歳女性が両眼の飛蚊症と眼脂で受診した。皮膚サルコイドーシスとして光線療法を受けていた。所見と経過:矯正視力は左右眼とも1.0で,左眼の前房に軽度な細胞浮遊があった。左眼の周辺部に網膜静脈周囲炎があり,ステロイド点眼を行った。緩徐に増悪し,血液検査でCMV抗体価の上昇が判明し,バルガンシクロビルの内服で改善した。初診から6か月後に左眼に網膜裂孔が多発した。硝子体手術中に採取した硝子体検査で,CMVのDNAが陽性であった。結論:免疫機能が正常でも,サイトメガロウイルス網膜炎が発症することがある。

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要約 背景:白内障手術でのトリパンブルーによる前囊染色は,角膜内皮細胞への障害が少ないとする報告がある。目的:白内障手術でのトリパンブルー前囊染色の角膜内皮細胞への影響の報告。対象と方法:過去33月間に0.1%トリパンブルーによる前囊染色を施行してTorsional phaco®使用白内障手術を行った74名98眼を対象とした。エメリーの核硬化度は,1度1眼,2度46眼,3度45眼,4度6眼であった。手術3か月後の角膜内皮細胞の減少率を調べた。トリパンブルー染色なしで白内障手術を行った300眼を対照とした。結果:術後の角膜内皮細胞減少率は,核硬化度2度では1.7%,3度では2.8%,4度では1.8%であった。対照群では,それぞれ2.0%。1.8%,3.3%であり,両群間に有意差はなかった。結論:白内障手術から3か月後の角膜内皮細胞の減少率は,トリパンブルーによる前囊染色を行った症例と行わなかった症例間で有意差はなかった。

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要約 目的:緑内障眼に挿入したエクスプレス®が虹彩に癒着し,房水流出口が閉塞して眼圧が上昇した症例の報告。症例:開放隅角緑内障がある79歳女性の右眼圧が30mmHgに上昇し,エクスプレス®挿入による線維柱帯切除術と白内障手術を同時に行った。眼圧は8〜16mmHgで安定したが,15か月後に20mmHgに上昇した。エクスプレス®が虹彩に癒着し,房水流出口が閉塞していた。虹彩にアルゴンレーザーを照射し,虹彩と房水流出口にNd:YAGレーザーを照射した。エクスプレス®と虹彩との癒着が解除され,房水流出口の膜様組織は消失し,眼圧は15mmHgに下降した。以後12か月間の経過は良好である。結論:緑内障眼に挿入したエクスプレス®が虹彩に癒着し,房水流出口が閉塞して眼圧が上昇した症例にレーザー照射が奏効した。

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要約 目的:緑内障に対するエクスプレス®挿入を,単独または白内障手術と同時に行った際の早期成績の比較。対象と方法:緑内障に対してエクスプレス®を挿入した24例29眼を対象とした。17眼には単独,11眼には白内障手術を同時に行った。単独群の17眼中12眼にはすでに眼内レンズが挿入されていた。術後6か月までの眼圧,点眼スコア,生存率を両群で比較した。結果:術前の眼には両群間に有意差がなかった。手術6か月後の眼圧は,単独群では12.4mmHg,白内障手術群では13.5mmHgで,有意差がなかった(p=0.481)。点眼スコアはそれぞれ1.6と2.0で,術前よりも有意に低下し,両群間に有意差がなかった。術後の眼圧が5mmHg以下または22mmHg以上,または眼圧の下降率が20%未満を不成功とした時の成功率は,それぞれ88.2%と81.8%で,両群間に有意差がなかった。結論:緑内障に対するエクスプレス®挿入の6か月後の成績は,同時白内障手術の有無とは関係しなかった。

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要約 目的:原発開放隅角緑内障に対し,トラボプロスト点眼薬の眼圧下降効果が不十分な症例に,トラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼に切り替えた効果の報告。対象と方法:広義の原発開放隅角緑内障34例34眼を対象とした。男性14例,女性20例で,年齢は26〜82歳,平均64歳である。0.004%トラボプロストで十分な眼圧下降が得られず,0.004%トラボプロストと0.5%チモロール点眼に変更した。変更の2年後までの眼圧とHumphrey視野,ならびに副作用を検索した。結果:変更前の眼圧の平均値は16.9±3.3mmHgであり,変更から2年後まで,3か月ごと2年後の測定で,変更前よりも有意に下降した(p<0001)。視野のMD値は,1年後と2年後の測定で,変更前と差がなかった(p=0.3361)。副作用は5例(15%)に生じ,霧視,光視症,角膜上皮障害,結膜充血がその内容であった。10例(30%)で,視野障害の進行(5例),不十分な眼圧下降(1例)などの理由から,点眼継続から脱落した。結論:原発開放隅角緑内障に対し,トラボプロストからトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合薬の点眼に切り替え,2年間にわたり眼圧が有意に下降し,視野に変化がなかった。副作用は軽微であった。

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要約 目的:黄斑浮腫がある網膜中心静脈閉塞症に対するベバシズマブの硝子体内投与後の視力の変化の報告。対象と方法:過去2年間にベバシズマブの硝子体内投与を行った黄斑浮腫を伴う網膜中心静脈閉塞症44例44眼を対象とした。男性19例,女性25例で,平均年齢は71歳である。必要に応じてベバシズマブの硝子体内投与を追加した。32眼が虚血型,12眼が非虚血型で,虚血型には汎網膜光凝固を行った。全例で3か月以上の経過を観察した。視力はlogMARで評価した。結果:44例中5例に血管新生緑内障が発症し,20例に網膜剝離が併発した。視力の平均値は治療前0.93,治療後0.76で,有意に改善した(p=0.018)。中心窩厚の平均値は治療前483μm,治療後338μmで,有意に減少した(p=0.0002)。結論:黄斑浮腫のある網膜中心動脈閉塞症に対してベバシズマブの硝子体内投与を行い,視力が有意に改善し,中心窩厚が有意に減少した。

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要約 目的:網膜中心静脈閉塞(CRVO)に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体注射(IVR)の効果の報告。対象と方法:CRVOに伴う黄斑浮腫にIVRを行い,6か月間以上観察可能であった12例12眼を対象とし,初回IVR後1,3,6か月の視力と中心網膜厚,追加治療について検討した。対象の内訳は初回治療眼が8眼,ベバシズマブからの切り替え例が4眼である。結果:全症例におけるIVR前の視力の平均logMAR値は0.72で,治療1,3,6か月後には0.43,0.37,0.35と有意に改善した。治療前の中心網膜厚は610.7μmで,治療1,3,6か月後には287.9μm,330.2μm,281.5μmと,いずれも有意に改善した(p<0.01)。注射回数は平均3.0回であった。6か月後に小数視力0.5以上となった症例は全体の58%を占めた。結論:短中期的にはCRVOの黄斑浮腫の軽減と視機能の改善にIVRは有効である。

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要約 目的:黄斑浮腫がある網膜静脈閉塞症に対してラニビズマブの硝子体内投与を行い,硝子体手術を実施またはしなかった症例での成績の報告。対象と方法:過去41月間にラニビズマブの硝子体内投与を行った黄斑浮腫を伴う網膜静脈閉塞症30眼を対象とした。網膜分枝静脈閉塞症17眼,網膜中心静脈閉塞症13眼である。硝子体手術は,それぞれ17眼中10眼と13眼中6眼に行った。視力はlogMARで評価し,平均10か月以上の経過を追った。結果:網膜静脈分枝閉塞症では,注射群,手術群ともに,有意に視力が改善し,中心窩厚の平均値も,両群ともに減少した。網膜中心静脈閉塞症群では,視力の平均値に有意な変化はなかった。結論:黄斑浮腫がある網膜静脈分枝閉塞症に対するラニビズマブの硝子体内投与と硝子体手術では,ともに中心窩厚が減少し,視力が改善した。

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要約 目的:角膜乱視のある白内障硝子体手術においてトーリック眼内レンズ(T-IOL)の有効性を検討する。対象と方法:当科で白内障硝子体手術を施行した,明瞭な不正乱視のない角膜乱視1.5D以上,術後最高矯正視力0.7以上,目標屈折正視〜−0.5Dの黄斑上膜症例15眼を対象とした。T-IOL使用7眼と乱視矯正機能のないIOL使用8眼の2群に分け,自覚および他覚乱視度数,矯正視力に対する裸眼視力の割合の3項目につき術前および術後2,4,8,12週間目において後ろ向きに検討した。結果:T-IOL群は術後全期間において自覚および他覚乱視度数が有意に小さかった。結論:角膜乱視のある白内障黄斑上膜症例ではT-IOL使用で,より良好な裸眼視力になると考えられる。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するトリアムシノロンアセトニド(マキュエイド®)硝子体内投与の短期治療成績と副作用の検討をした。対象と方法:DMEに対してマキュエイド®を単独投与した患者24例30眼(42〜83歳。眼内レンズ挿入眼25眼,汎網膜光凝固術施行24眼)。方法として,マキュエイド®単独硝子体内投与前,投与後1か月,3か月の視力(logMAR),中心窩網膜厚,眼圧について比較検討した。結果:投与前,投与後1か月,3か月のそれぞれの中心窩網膜厚は486.5±151.48,299.8±103.48,328.4±122.54,視力(logMAR)は0.6±0.24,0.3±0.24,0.3±0.23と有意に改善した(p<0.05)。眼圧上昇は2例にあったが,点眼でのコントロールが可能であった。白内障の進行はなかった。結論:マキュエイド®は防腐剤を含まないステロイド製剤としてDMEの治療の選択肢となり,効果の継続が期待できる。

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要約 目的:Werner症候群の成人に発症した囊胞様黄斑浮腫にトリアムシノロンの硝子体内注射が奏効した報告。症例:66歳の男性が右眼視力の低下で受診した。9年前に遺伝子検査でWerner症候群と診断された。両眼の白内障手術を5年前に受けた。所見と経過:矯正視力は右0.1,左1.5で,眼圧は右32mmHg,左16mmHgであった。前眼部に異常はなく,両眼に眼内レンズ挿入があった。右眼に囊胞様黄斑浮腫があった。トリアムシノロンの硝子体内注射で囊胞様黄斑浮腫は消失したが,視力には変化がなかった。その後14か月間に2回の囊胞様黄斑浮腫の再発があったが,いずれもトリアムシノロンの硝子体内注射で改善した。結論:Werner症候群の成人に発症した囊胞様黄斑浮腫にトリアムシノロンの硝子体内注射が奏効した。

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要約 目的:Vogt-小柳-原田症候群(VKH)の症例に中心窩下の脈絡膜新生血管(CNV)が生じ,ラニビズマブの硝子体注射が奏効した報告。症例:56歳の女性が9年前に発症し遷延化したVKHで受診した。ステロイドの内服と点眼を受けていた。所見:矯正視力は右0.6,左0.4で両眼に虹彩炎の所見と夕焼け状眼底があった。経過:水晶体再建術を行い,視力は左右とも1.2に回復した。4年後に変視症が生じ,視力は右0.2,左0.5になり,蛍光眼底造影と光干渉断層計の所見などからCNVと診断した。ラニビズマブの硝子体注射を6か月間に3回行い,視力は0.5に回復した。以後6か月後の現在まで,経過は良好である。結論:遷延したVKHに発症したCNVに対し,複数回のラニビズマブ硝子体注射が奏効した。

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要約 目的:涙道癌に陽子線治療を行った1症例の報告。症例:72歳男性が5か月前からの右涙道部の腫瘍で受診した。前医での生検で涙道部の低分化腺癌と診断されていた。所見と経過:磁気共鳴画像検査(MRI)で,右眼の涙囊から眼窩内下方に連続する不整形の腫瘤があった。陽電子放出断層撮影(PET)で,右涙囊部と右頸部リンパ節に集積があった。TS-1®内服と2か月間の陽子線照射を行った。治療から16か月後に右眼に眼痛と前房出血が生じ,眼圧が上昇した。放射線網膜症と診断した。2か月後に視力は0になった。以後4か月後の現在まで経過を観察中である。結論:涙道癌に対する抗癌薬投与と陽子線照射で,視力は温存できず,骨転移が生じた。

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 症例は79歳,男性。生来両眼のコロボーマのため弱視であったが,1週間前からの右眼のかすみを訴え当院紹介受診となった。家族歴に特記事項はなかった。初診時視力は右30cm/n. d.(矯正0.02),左5cm/n. d.(矯正15cm/n. d.),眼圧は右12mmHg,左13mmHgであった。25年前に両眼の白内障手術を他院で施行されており,右眼は眼内レンズ挿入眼,左眼は無水晶眼であったとのことだが,当院受診時右眼の眼内レンズは写真のごとく囊ごと眼底に落下していた。治療として硝子体手術および眼内レンズ摘出術を施行した。術中,周辺硝子体は正常の硝子体基底部から脈絡膜欠損部の後縁に連続して付着しており,あたかもそこが基底部であるかのようにshavingを行った。術後は合併症なく,視力右(0.02)と安定している。

 写真は初診時の右眼。撮影にはOptos社製200Txを使用した。巨大コロボーマのさらに下方にIOLが落下していたため,限界まで下方視させて撮影した。画角200°と広角に撮影できるOptosの特徴を生かし,また下方の虹彩に欠損があるため下方周辺部がより広角に撮影できたことでコロボーマに沈む眼内レンズを鮮明に捉えることができた。

連載 今月の話題

眼科医療におけるビッグデータ 川崎 良
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 これまで医学生物学領域におけるビッグデータといえば,ゲノム解析などのバイオインフォマティクスなどが中心だったが,その範囲は医療の分野にも広がっている。今後,眼科医療の領域でも注目される医療情報ビッグデータの可能性に期待しつつ,「なぜ今,眼科医療とビッグデータなのか?」をともに考えていきたい。

連載 知っておきたい小児眼科の最新知識・10

ERGでわかる小児網膜疾患 近藤 峰生
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point

1)ERGが診断の鍵となる小児の網膜疾患がある

2)小児からERGを記録するために新しい皮膚電極ERGが開発されている

3)b波の振幅がa波より小さい「陰性型」に特に注意する

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第14回

下眼瞼内反症手術—虎の巻! 西本 浩之
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はじめに

 まず,はじめに一言。「逆さまつ毛と侮るなかれ」。ただ抜くだけでは,一時的な改善にすぎず,根本的治療にはなりません。まつ毛には異物迷入の阻止効果があり,また美容的要素にも関与しているため,それなりに大切な「組織」です。眼瞼構造は上下とも似ているため,どちらかの眼瞼手術をマスターすれば,他方側への近道にもなります。上下の相違点は,瞼板高の違い(上が約8mm,下が約5mm)で,下眼瞼手術のほうが術野が狭くなることと,水平方向の影響を受けやすいことです。

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 《眼科臨床エキスパート》シリーズの一冊として発刊された前田直之先生,天野史郎先生編集の『知っておきたい屈折矯正手術』は,現代の屈折矯正手術の最先端が詳しく解説された大変勉強になる本である。

 先般,LASIKに関して消費者庁より非科学的なネガティブな報道がなされ,現在,わが国においては屈折矯正手術に関する正しい理解が得られていないことに大変危惧を感じている。欧米では屈折矯正手術が眼科診療の25%以上の重要度を持っており,患者のニーズに応え満足度の高い診療を提供するためには屈折矯正手術は欠かせない分野である。この本は,屈折矯正手術の重要性から実践までが丁寧に解説された素晴らしいテキストブックである。

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 臨床研究をするに当たりどの統計手法を使うべきなのだろうか? 論文を読むたびに目にする統計手法は正しい手法なのだろうか? それぞれの統計解析の意味はいったい何なのだろう?—論文を読む際,また自分自身が臨床研究をするに当たって,このような疑問を感じたことはありませんか。私がそのような疑問を抱えた時に巡り合ったのが,2011年に新谷歩先生が週刊医学界新聞に寄稿された「今日から使える医療統計学講座」シリーズでした。

 統計学の教科書をひもとくと,一つ一つの統計解析に関して解説が詳細に述べられていますが,臨床研究をするに当たりどのように統計テストを選択していくかを解説しているものは非常に少ないと感じます。

やさしい目で きびしい目で・190

素敵な昭和一桁の3先生 森井 香織
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 不惑を迎え,仕事も家庭もある程度落ちついてきたかな? なんて思う私を,「まだまだ甘いわ!」と厳しく打ち砕いてくださる3人の先輩方がいらっしゃる。

 まずは私のウクレレの師匠である荒尾一夫先生(昭和7年生)。とある企業の経営者であったが50歳を機に後進に譲られ,長年の夢であった歌手に転身。シャンソン,ハワイアンをメインに現在も活躍されている。ウクレレの腕もさることながら,歌手だけに歌声が本当に素晴らしい。なんとお肌もつやつや,しわなし! 歌うための腹式呼吸法がいいんだよとのこと。実は私もお肌つやつやを夢見て「ウクレレ弾き語り」を師事しているはずであるが,どんなに練習しても「ウクレレは聞こえますが,声は聞こえません……。」とご注意を受ける始末である。そんな不肖の弟子である私も先生の指導のおかげで,昨年ビルボードライブ大阪のステージでウクレレを演奏! 憧れのステージでの演奏にとても感動した。私も先生のお年まで研鑽をつめば,武道館くらいでコンサートできたりして……?

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要約 目的:瞳孔散大によって隅角閉塞増悪の危険がある症例(閉塞隅角群)に「投薬禁忌がある由を記載したカード」を,隅角閉塞の危険のない症例(開放隅角群)に「投薬禁忌がない由を記載したカード」を携行させ,他科受診の際に提示させる試みについての報告。対象と方法:閉塞隅角群37名,開放隅角群141名,計178名を対象とした。試用後,①緑内障の使用禁忌薬について知っていたか,②実際にカードを提示したか,③カードが役立ったか,について質問した。さらに,提示できなかった症例について,性別,年齢,緑内障病型,視野障害(MD値),点眼治療の有無,通院期間のうち関与する要因を検討した。結果:①事前に禁忌薬の知識があったのは52名29%,②実際に提示したのは117名66%,③役立ったと回答したのは99名56%であった。提示しなかった症例は,開放隅角群が閉塞隅角群に比べ有意に多かった(p<0.05)。結論:カード携行は患者の病識向上と他科への連携改善に有用であった。開放隅角群では利用率が低いため,注意が必要である。

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要約 目的:太田母斑に併発した脈絡膜悪性黒色腫の1例の報告。症例:71歳の女性が1か月前からの左眼の視力低下で紹介受診した。幼児期から左眼周囲の皮膚に色素沈着があった。所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.02で,左眼周囲の皮膚に青褐色の色素沈着と強膜の色素沈着があった。左眼は浅前房で,脈絡膜腫瘤があった。PET-CTで左眼に集積像があり,MRIのT1強調画像で高信号,T2強調画像で低信号であった。5-S-CDが25.2nmol/lと上昇し,脈絡膜悪性黒色腫が疑われた。眼球摘出術が行われ,病理学的に太田母斑に合併した脈絡膜黒色腫と診断された。強膜にはメラニンを有する母斑細胞のみがあり,腫瘍細胞はなかった。初診の4か月後に転移性肝腫瘍で患者は死亡した。結論:太田母斑に脈絡膜悪性黒色腫が発症した稀有な症例である。

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要約 背景:硝子体浸潤を伴う脈絡膜悪性黒色腫はわが国では稀である。目的:硝子体浸潤を伴う脈絡膜悪性黒色腫の1例の報告。症例:73歳の男性が左眼の眼底の隆起性病変で紹介受診した。2年前から左眼の飛蚊症を自覚していた。所見と経過:矯正視力は左右眼とも0.6であった。左眼には前部硝子体に色素細胞が浮遊し,眼底耳側に3乳頭径大の茶褐色隆起性病変があり,その頂点に黒褐色病巣があった。この隆起性病変は,フルオレセイン蛍光眼底造影の後期で色素漏出,インドシアニングリーン蛍光造影で過蛍光であり,黒褐色病巣は終始低蛍光であった。悪性黒色腫と診断し,左眼を摘出した。病理学的に,類上皮型の脈絡膜悪性黒色腫であり,腫瘍の大きさは8mm×8mm×5mmで,腫瘤の頂点で腫瘍細胞が網膜を穿破して硝子体腔に浸潤していた。結論:本症例はわが国では稀な,硝子体浸潤を伴う脈絡膜悪性黒色腫であった。

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要約 目的:真菌性結膜炎の1例報告。症例:42歳の健常女性。右上眼瞼結膜の充血と隆起,多量の眼脂を認めた。培養検査でScedosporium apiospermumが検出され,生検で炎症性肉芽と結膜囊内の真菌塊を認めた。ボリコナゾール点眼,結膜下注射,瞼結膜隆起の切除を行い,治療開始後4か月で治癒した。結論:難治性結膜炎では真菌性結膜炎を念頭に置く必要がある。

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欧文目次

べらどんな 蝶の視覚
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 『昆虫記』のファーブル(Jean-Henri Fabre)は,1915年10月11日に91歳で逝去した。いまから100年前であるが,その前年に始まった第一次世界大戦の最中で,ほとんど注目されなかった。

 『昆虫記』は10分冊からなる。ファーブルが55歳の時から,ほぼ3年おきに出版された。何種類もの和訳があるなかで,岩波文庫のが知名度が高い。20分冊として昭和5年(1930)に刊行がはじまり,昭和17年(1942)の第一分冊で完結した。第一分冊が最後になったのは,総索引をつけるためである。

ことば・ことば・ことば あちら
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 今年はダンテ(Dante Alighieri,1265〜1321)の生誕750年になります。

 「神曲」には,「あの世」の様子が具体的に記述されています。通常は,地獄,煉獄,天国と翻訳されていて,それぞれの生前の行いにより,場所と罰の具体的な内容が指定されます。

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あとがき 稲谷 大
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 このあとがきを執筆締め切りは8月末なのですが,私の在住する福井では,猛暑がやっと和らいできたところです。今年の夏は,記録的な猛暑日だった地域もあり,読者のみなさんもクタクタだったのではないかと思いますが,この10月号がみなさんのお手元に届く頃には,日本各地ずいぶん秋らしくなってきていることと思います。さて,今月号で,第68回日本臨床眼科学会講演集はすべて掲載されました。ちなみに今年度の学会原著論文の総掲載数は134本となりました。今年もたくさんの原著論文を投稿していただきありがとうございました。

 今号に掲載された学会原著論文を拝見しますと,複数の論文が掲載されているテーマは,緑内障インプラントのエクスプレスと,黄斑浮腫に関する治療薬の報告でした。どちらもわが国で広く行われている治療法ですが,疾患を根治させる治療法が未確立であるため,治療法やアウトカムに関してはさまざまな報告があります。ぜひ,それぞれの原著論文やそれらの論文が引用している文献などを読み比べていただければと思います。

基本情報

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臨床眼科
69巻10号 (2015年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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