臨床眼科 63巻2号 (2009年2月)

特集 未熟児網膜症診療の最前線

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はじめに

 近年,日本では出生数が年々減少している反面,低出生体重児の出生数は増加している。在胎期間,出生体重により発生率は異なるものの,低出生体重児は,発育・発達における障害が生じやすいハイリスク群である。近年の周産期医療の進歩により,出生体重1,000g未満の超低出生体重児の生存率は改善しているが,このような重症児の救命が可能となったことにより,脳性麻痺や精神発達遅滞などの障害を抱えて生存する例が増加している。また,低出生体重児においては,重度の神経学的後障害がなくとも,学童期の軽度発達障害の発症が高いことが指摘されている。本稿では,特に未熟な超低出生体重児を中心に未熟児診療の現状を述べる。

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はじめに

 近年,周産期医療の進歩,ハイリスク新生児管理の向上により1,000g未満の超低出生体重児の出生率および生存率が上昇する傾向にある1,2)。以前にも増して未熟性の高い児が未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)の発症母集団に含まれるようになった結果,重症未熟児網膜症の増加が懸念されるところである。実際,修正在胎32~33週以前,網膜血管の発達初段階で急性発症する劇症型未熟児網膜症が注目されている。治療適応については米国における早期治療を推奨する研究報告の影響が大きく,わが国でも厚生省新分類Ⅰ型の治療基準より早い病期で治療を行う施設が増えている。

 翻って筆者が未熟児網膜症の管理を行う兵庫県立こども病院の診療状況をみると,近年,Ⅰ型未熟児網膜症進行例の減少がみられるのみならず,Ⅱ型未熟児網膜症の発症も減少傾向にある。加えて,当院では早期治療の対応をとっていないため治療率も激減している。そこで,本稿では当院における未熟児網膜症の経年変化を示すとともに,診療状況改善の主たる要因と考えられる新生児酸素管理の新しいプロトコールについて解説を行う。また,先の米国の研究報告および早期治療に対する筆者の解釈と考えを述べる。

レーザー光凝固の実際 林 英之
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はじめに

 未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)に対して網膜光凝固(以下,光凝固)が有効な事実を初めて報告したのはわが国の永田ら1)である。その当時は,キセノンアーク光凝固だったので周辺部網膜の光凝固には高度の技術が必要だったが,その効果は現在のレーザーと比べて遜色ないものであり,凝固斑が大きいことから治療に要する時間は短く,患児への負担が少ないという大きな利点があった。治療が行われるにつれて未熟児網膜症の進行についての理解が進み,未熟児網膜症厚生省分類が確立されるに至った2)。また一方では,光凝固に抵抗し急速に網膜剝離へと進行する激症型未熟児網膜症が存在することも知られ,厚生省分類Ⅱ型と定義された。これらにより,わが国には世界に先駆けて未熟児網膜症の診断治療・体制が確立された。

 それに対して,欧米,特に米国においては光凝固の有効性に関する検証が不十分とする意見があり,光凝固の普及は遅れたが,その後,多施設共同前向き無作為化症例-対照試験としてCRYO-ROP study(Cryotherapy for Retinopathy of Prematurity Cooperative Group)が行われた3,4)。CRYO-ROPでは現在も使われている国際分類(International Classification of Retinopathy of Prematurity:ICROP)を定め5),一定の段階に至ったものを限界域網膜症(threshold retinopathy)として冷凍凝固で片眼を治療した結果,未治療では50%が網膜剝離に進行するのに対して治療例では25%と網膜凝固の有効性が明らかになった。光凝固も冷凍凝固同等あるいはそれ以上に有効で,後極部病変の治療が容易などの利点が多いので,治療の主体は光凝固に移っている6~8)。また,網膜凝固により失明を免れても視力不良な例がほとんどであることから,より良好な視力を得るため,さらに失明率を軽減するために,より早い時期(pre-threshold)のハイリスク症例の治療を行うET(early treatment)ROP studyが行われ,より早期の治療が有効であると確認された9)

 さらに,国際分類の病期に従わず急激に網膜剝離に至り,しばしば光凝固に抵抗する厚生省分類Ⅱ型相当の重症型が確認され,aggressive posterior ROP(以下,AP-ROP)として認められた10)

 以上のような変遷を経て,光凝固は未熟児網膜症に対する最も有効な治療法として世界に認められるに至った。しかし未熟児の全身管理技術は日進月歩であり,より未熟な患児の数は増加し続けているため,より重症の未熟児網膜症への対応が求められているのもまた事実である。そこで改めて未熟児網膜症に対する光凝固の実際を述べたい。

強膜バックリング手術 初川 嘉一
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はじめに

 強膜バックリング(scleral buckling procedure:SBP)は,牽引性網膜剝離をきたしたstage 4の重症未熟児網膜症に対する基本的な手術法として従来から用いられてきたことは以前に報告したとおりである1)。近年,stage 3の未熟児網膜症に対する早期手術が一般的になってきているが2),近年stage 4A,4Bの重症未熟児網膜症に対しても早期硝子体手術(pars plicata vitrectomy:PPV)やLSV(lens sparing vitrectomy)の有効性が報告されてきている3~9)。しかし,牽引性網膜剝離を発生した重症の未熟児網膜症に対して,増殖組織の再発をきたさないような精度の高い硝子体手術を行うことは,未熟児網膜症を扱う多くの病院ではきわめて困難である。本稿では,網膜剝離をきたした未熟児網膜症に対して,これまで行われてきたバックリング手術の有効性と限界について検討したい。

硝子体手術の功罪 近藤 寛之
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はじめに

 近年,米国の多施設前向き臨床研究の成果に基づき,重症な未熟児網膜症に対して厳重な管理がなされてきている。その結果,より早期に十分な網膜光凝固治療を行うことで,多数の症例が網膜剝離に進行することが阻止されている。また,網膜症の活動性が早期に軽減することで,網膜剝離が黄斑部に波及する前(stage 4A期)に硝子体手術を行うことが可能となった。このような早期手術には,欧米で普及しはじめた水晶体温存手術や,わが国でAzumaらが提唱したⅡ型網膜症(aggressive posterior retinopathy of prematurity:AP-ROP)に対する水晶体切除併用手術がある1,2)。早期手術は,これまで行われてきた硝子体手術と比べてより高いレベルの視機能の獲得が期待される。今後は,いかにして早期に手術を行うかが重要なテーマとなると思われるが,早期手術の歴史は浅く,適応をはじめ不明な点も多い。

 一方,これまで行われてきた硝子体手術は,新生血管の活動性の高い時期を避け,増殖性病変の瘢痕化を待ってから行う手術であり,本稿では「瘢痕期手術」と呼称する(活動期に手術を行うと術中・術後に大量の出血を起こし不成功となる危険性が高い)。瘢痕期手術は長年の手術結果の蓄積があるが,その長期成績については悲観的な結論も多く問題点も多い。しかし,進行した未熟児網膜症に対する最後の治療手段であり,できる限りよい視機能を得られるようにするという課題は残されている。本稿では瘢痕期硝子体手術の治療成績を,今日の視点で再検討しその功罪を論じる。

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はじめに

 2005年に改定された未熟児網膜症の新国際分類1)では,従来日本で提唱されていたいわゆる劇症型がaggressive posterior retinopathy of prematurity(以下,AP-ROP)と規定された。その特徴は,眼底の血管の伸びがzone Ⅰやzone Ⅱの後極までと非常に短く,網膜動静脈が全象限で拡張・蛇行し,血管のシャントを形成して,通常のstage 1から順にstage 3に進行するような経過をとらずに急速に網膜剝離に至ることである。

 われわれ眼科医はこれまでこのような重症型に対して,光凝固を行っても進行を止められる例が少なく,しばしば全剝離となり,白色瞳孔となっていく経過を見守るしかなかった。しかしその治療法として,2006年にAzumaら2)によってAP-ROPに対する早期硝子体手術が紹介され,良好な術後視力が得られる可能性が示唆された。本稿では早期硝子体手術について,抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)療法との併用例なども含めて紹介する。

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はじめに

 血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は血管新生のメカニズムにおいて中心的な役割を担うタンパクである。未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)においては虚血網膜でVEGFの発現が増大,その結果として新生血管が発生し,硝子体出血,増殖膜,そして網膜剝離などを生じる。そのため,VEGFを標的とした治療法は,この疾患を治療するうえで非常に重要な手法の1つとなりうる。

 本稿では,虚血によるVEGF発現と新生血管発生のメカニズムを述べるとともに,未熟児網膜症眼内におけるVEGFとそれを標的とした治療の可能性について述べる。

今月の表紙

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 症例は9歳男児。生後6か月で近医小児科を受診したときに,眼球振盪(眼振)と赤目を指摘され,眼科を受診した。初診時に白子眼底,中心窩低形成,眼振が認められた。9歳となり,学校生活上での不自由が生じてきたため,視力向上の可能性を求め当院受診となった。

 当院初診時の視力は右0.09(0.2),左0.15(0.2)で近視性乱視であった。両眼底に脈絡膜血管が透見され,中心窩低形成,振子様眼振が認められた。斜視はなく,大まかな立体視は可能であった。皮膚,頭髪,虹彩は低色素であり,眉毛には白色化が認められた。以上から先天性の眼皮膚白子症(oculocutaneous albinism)と診断された。根本的な治療法はないので,継続的な援助となった。

連載 日常みる角膜疾患・71

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症例

 患者:70歳,女性

 主訴:両眼の霧視感

 既往歴:胃癌,癌性腹膜炎

 現病歴:2007年に胃癌に対して手術を受け,同年8月から抗癌薬(TS-1®,80mg/日)の内服を開始した。投薬のプロトコールは3週間投与,1週間休薬で行われた。TS-1®内服開始3か月後頃から視力低下を自覚し,同年12月初旬に当科を受診した。

 受診時所見:視力は右0.2(n.c.),左0.15(n.c.),眼圧は右11mmHg,左10mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査ではフルオレセイン染色にて,両眼の角膜で上方と下方の角膜輪部から中央に向かう上皮表面の不整と点状表層角膜症様病変を認めた。左眼では角膜中央部付近で偽樹枝状病変も認めた(図1)。

 治療経過:ヒアレイン0.1%点眼液®とタリビット眼軟膏®を処方して経過観察を行ったが角膜所見の改善は得られなかった。TS-1®を処方している外科の主治医と相談のうえ,2008年1月初旬よりTS-1®をUFT®に変更した。その後,角膜所見は徐々に改善してほぼ正常となり,視力は右1.0 p(1.0),左0.5(1.0 p)に回復した(図2)。

連載 網膜硝子体手術手技・26

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はじめに

 今日われわれが,ほとんどいかなる網膜剝離をも治癒させることが可能になったのも,先人達の治療法の開発に注いできた,たゆまぬ努力の恩恵を受けているからである。裂孔原性網膜剝離の治療を述べるにあたり,その歴史を振り返ることは意義のあることと思われるので,本題に入る前に簡潔にその歴史を述べたい。

 近代的な網膜剝離の治療は,硝子体の牽引により生じた網膜裂孔が網膜剝離の発生機序であると考え,烙刺法により網膜復位が得られるという画期的な最初の報告を1919年にJules Goninが行ってから始まり,それまでほぼ不治の病であった網膜剝離が治療で治るようになった。

 その後,眼球壁を網膜に近づける目的で眼球壁を短縮する強膜切除術や強膜短縮術が行われていたが,Ernst Custodisが1949年にジアテルミーと人工材料(ポリビオール)によるエクソプラントを用いた最初の強膜内陥術を始め,米国では1951年にCharles L. Schepensらによって行われた。1965年にHarvey Lincoffがバックル材料にシリコーンスポンジを使用し,冷凍凝固との併用による治療法を開発し,その後インプラント,エクソプラントによるさまざまな術式が考案されたが,シリコーン素材を用いた基本的な流れは現在にまで続いている。

 硝子体手術はopen sky法から始まったが,1971年にRobert Machemerにより開発された経毛様体扁平部硝子体切除術が発展するにつれ,網膜剝離の治療も強膜内陥術ではなく硝子体手術を第一選択とする術者がかなり増えてきたと思われる。しかし,硝子体手術による網膜復位の失敗は急速な増殖硝子体網膜症への進行を意味し,安易な治療法の選択により単純な網膜剝離が難治な疾患になってしまう危険性をはらんでいる。

 昨今の硝子体手術隆盛の時代にあっても,網膜剝離治療をこれから覚えようという術者にとって,強膜内陥術の習得は基本的で必須の治療法であると思われる。

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 患者が「目が痛い」「目の中にチラチラと黒いものが飛び交うのです。何とかしてください」という具合に主張したいことがたくさんあるのに対して,医師もまた言いたいことがたくさんあります。

 「決まった薬は忘れずに飲むべき」「予約時間は守るべき」「ちゃんと言うことを守ってほしい」「もう少し要領を得た話し方をすべき」という具合に,口には出さないけれども患者に対する注文はお腹いっぱいたまっているのが現状でしょう。

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要約 目的:Terson症候群に併発した両側の外転神経麻痺に手術が奏効した症例の報告。症例:55歳男性が両眼の視力低下と外転神経麻痺で紹介され受診した。3か月前にくも膜下出血があり,手術を受けたあと視力低下を自覚した。矯正視力は右手動弁,左0.15で,両眼に軽度の外転不全と硝子体出血があった。Terson症候群と診断し,硝子体手術を両眼に行った。視力は直後から回復したが,内斜視による複視を自覚した。8か月後に左眼に後転短縮手術を行い,複視はほぼ消失し,右1.0,左1.2の最終視力を得た。結論:Terson症候群には外転神経麻痺が併発することがある。これによる複視には手術による眼位矯正を考慮する必要がある。

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要約 目的:10年以上にわたる正常眼圧緑内障の視力と視野の経過報告と,視野進行に関係する因子の検討。対象と方法:10年以上の経過を追った正常眼圧緑内障64例64眼を対象とした。男性37例,女性27例で,年齢は53~85歳(平均69歳)である。眼圧,屈折,点眼スコア,手術歴,角膜厚,家族歴,Humphrey視野計による視野,logMAR視力などを検索した。結果:初診時から2段階以上の視力低下が64眼中13眼(20%)にあり,うち3眼では緑内障進行による中心視野障害によると判断された。信頼性がある視野追跡ができた51眼では,MD(mean deviation)の平均スロープは-0.14dB/年であり,19眼(37%)ではスロープ平均が-0.42dB/年で,有意に負であった。視野進行に有意に関連する患者の背景因子はなかった。結論:10年以上の経過観察で,正常眼圧緑内障の視力と視野の進行悪化に関連する因子は特定できなかった。

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要約 目的:角膜感染症での塗抹物鏡検の結果の報告と評価。対象:過去2年間に入院して加療した重症角膜感染症44例46眼を対象とした。男性28眼,女性18眼で,平均年齢は49.2±24.7歳である。塗抹物の鏡検と培養結果を比較した。結果:塗抹の鏡検では32眼中19眼(59%),培養では44眼中26眼(59%)で陽性であった。両検査を同時に行った32眼では,両検査ともに陽性が14眼,陰性が9眼で,計23眼(72%)で結果が一致した。陽性となった病原微生物では,塗抹の鏡検では真菌が7眼(22%),培養では細菌が11眼(34%)と頻度が最も高かった。結論:角膜感染症では塗抹の鏡検と培養は相補的な関係にある。塗抹の直接鏡検では短時間で病原微生物の有無が判定でき,培養検査と同時に行うことで,早期の診断と治療が可能になる。

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要約 目的:結核性リンパ腺炎に対する6か月間の抗結核治療中に網膜静脈周囲炎が生じた症例の報告。症例と所見:42歳男性が視力障害で受診した。6か月前に頸部リンパ腺が腫脹した。生検で結核性リンパ腺炎と診断され,4剤併用による抗結核療法を受けていた。矯正視力は右1.5,左1.2で,左眼に軽度の硝子体混濁があった。1か月後に両眼の眼底周辺部に網膜出血,左眼に網膜血管の白線化が生じた。網膜静脈周囲炎と診断し,プレドニゾロンと抗結核薬3剤の内服を始めた。5か月後に網膜の無血管領域にレーザー光凝固を行い,以後の経過は良好である。結論:結核に対する全身治療中に結核性網膜静脈周囲炎が生じる可能性があり,眼底所見に留意する必要がある。

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要約 目的:黄斑円孔に対する内境界膜剝離手術の補助剤としてブリリアントブルーG(BBG)を使用し,インドシアニングリーン(ICG)とトリアムシノロンアセトニド(TA)と比較した報告。対象と方法:特発性黄斑円孔に対し硝子体手術を行い,3か月以上の経過を追えた50例50眼を対象とした。10眼にBBG,26眼にICG,14眼にTAを併用した。BBG群では25Gシステムで硝子体を切除し,液空気置換後に100%SF6 1mlを注入し,7日間腹臥位を維持した。視力はlogMARで評価した。結果:BBGの術中1回塗付で内境界膜はよく染色できた。術後3か月で視力平均値は有意に改善し,6か月間保たれた。円孔の閉鎖率と視力の推移には,3群間に差がなかった。BBG群には,術後の黄斑機能低下と視野欠損はなかった。結論:黄斑円孔に対する硝子体手術にBBGを使用し,内境界膜を安全に染色することができた。

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要約 背景:双手硝子体手術のために開発された手術用顕微鏡OMS800-OFFISSの観察レンズを+40Dから+120Dに変更し,イルミネーターを使うと広角システムになる。顕微鏡の光学部と観察レンズを独立して動かせるので,レンズを角膜上の視野が最も広い部位に固定したままで操作できる。目的:本装置による術中の可視範囲の報告。症例:過去1年間に本装置で硝子体手術を行った1,056眼を対象とした。有水晶体眼49眼,偽水晶体眼174眼,無水晶体眼833眼である。結果:これら1,056眼で大きな問題なしに本装置を使用できた。連続110眼で,103眼(94%)では強膜を圧迫せずに鋸状縁が観察でき,他の7眼でも基底部が観察できた。結論:本装置では広角観察が可能であり,光学部と観察レンズの独立可動ができ,硝子体手術時の眼底観察に有用と評価される。

書評

外来の眼瞼手術備忘録 井出 醇
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 「眼窩疾患シンポジウム」に参加している眼科医たちは,眼形成外科医の強者,曲者ばかりである。本書の著者,釣巻穰博士は,この第16回学会を主催された。いうまでもなく眼形成外科についての経験と実力を評価されたからである。

 氏は自治医科大学の助教授から大宮医療センターの眼科医長を歴任され,その後約8年の開業歴がある。経歴の前半は当然のこととして,開業歴8年の後段のほうがさらに重要である。眼科開業は(特に眼形成外科医は),いまや恒常化しつつある「モンスターペイシェント」に対応できる知識と胆力を必要とするのはもちろん,その前にトラブルを発生させない予防能力が要求される時代だからである。そのためには多数の経験を積むしかない。その意味で氏の経験のエッセンスを披瀝された本書は,眼科研修医,一般開業医,そのなかでも“occasional surgeon”にとって最適の指南書である。

べらどんな

ベラドンナ
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 「シーボルト事件」は1828年(文政11年)に起こった。

 ドイツ人シーボルトは,オランダ東インド会社の医師として1823年に来日した。長崎郊外の鳴滝に診療所を兼ねた学塾を開き,医学と博物学を教え,日本での洋学の発展に大きな貢献をした。彼が瀉血をしている絵が長崎県立美術館に残っている。1826年にはオランダ商館長の江戸参府に同行し,江戸滞在中には蘭学者たちと親交を結んだ。

やさしい目で きびしい目で・110

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 学会の目的はもちろん,最新の診断や治療を学ぶことです。しかし,それ以外にもいろいろ「お楽しみ」があります。おいしいものを食べる,他の病院の先生方とおしゃべりする,それも楽しみです。でも私の一番の楽しみは,観劇!!

 特に私は宝塚歌劇が大好きです。数年前に神戸での講演会の後,ふらっと立ち寄った宝塚歌劇を観たことがきっかけで,思いっきりファンになってしまいました。タカラヅカの魅力は,夢とロマンあふれる豪華な舞台,美しくカッコいい出演者,現実を忘れ夢の世界に入り込める,観劇すると元気が出てくる,などなど語り出すと止まりません。

ことば・ことば・ことば

軟骨
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 牛乳を水で薄め,それが露見しないようメラミンを加えるという話は,すぐには理解できませんでした。メラミンは軽くて強い合成樹脂の食器に使うとばかり思っていたからです。

 調べてみるとmelamineは簡単な化合物でした。分子式がC3H6N6で,分子量は126です。もっと具体的にいうと,ベンゼン核の6個ある炭素のうち3個が窒素になり,3個の炭素それぞれにNH2がついています。これにホルマリンを作用させると硬い樹脂になります。われわれが知っているメラミンはこれで,1940年に合成されました。

文庫の窓から

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中医臨床経典という位置づけ

 2008年3月の『中医臨床』(参考文献5)の姜興俊氏へのインタビュー記事で「先生が特にお好きな古典はどのようなものですか」という質問に対して,氏は『内経』『傷寒論』『金匱要略』『千金方』『寿世保元』『臨床指南医案』『外感温熱篇』『湿熱病篇』『温病条弁』『医林改錯』などを精読し,なかでも『内経』と『千金方』,および葉天士,薛生白,呉鞠通らの書に影響を受けた,とあった。そして,臨床で出会う寒熱併存・虚実兼挟・上下同病・表裏倶傷などの錯綜した複雑な証に『千金方』の温清併用・補瀉同施・上下兼顧・表裏同治などの雑合の法が解決に結びつき,それゆえ姜氏は『千金方』を中医臨床経典と位置づけていると述べられているが,これは『千金方』を一言で表した的確な言葉なのではないかと思う。

 『千金方』の論や方は大部分は漢から六朝時代のものを集めている。が,その出典はあまり明らかにされず,自家の経験も述べられているので,清代の徐大椿のように『千金方』の処方は必ずしも神農に基づかず,効くものも効かないものもある(『医学源流論』)として批判する向きもある。とはいえ『外台秘要方』『医心方』『太平聖恵方』『聖済総録』はことごとく『千金方』を引用しているし,医経に準ずるものとして,その姉妹編である『千金翼方』とともに重要な医籍に違いない。

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あとがき 坂本 泰二
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 これを書いている2009年1月現在,周りは不況,派遣切りなど暗いニュースばかりです。マスコミによれば,これは過去数年間にわたる新自由主義に基づいた政策の誤りが原因だそうです。確かに,過去数年はさまざまな分野で規制緩和が行われました。医療界でも,混合診療の議論,株式会社の参入,広くとらえれば新臨床研修制度もその範疇に入るでしょう。病院も収益を上げることが求められ,専門化というと聞こえはよいですが,要は高収益性分野のみを診療し,他は顧みない行為が堂々とまかり通っていたような印象があります。

 眼科領域でいえば,未熟児診療などは顧みられなかった分野の代表かもしれません。実際に未熟児診療に携わる眼科医は限られるので致し方ない面はありますが,眼科専門医を標榜するにはこの知識は必須です。未熟児診療が専門でない眼科医も,現状について一般の方に説明する必要はありますし,専門でないのでわからないというのは責任放棄でしょう。今回の特集は,未熟児診療です。近年,治療面で著しい進歩があった反面,未だに難治であることが,わかりやすくまとめられていますので,未熟児診療の最新知識の獲得に役立ててください。

 ジャック・ウェルチの著作を読んで,医局運営の参考にしようと考えていた自分を振り返ると,偉そうなことは言えませんが,今後は利益追求より,もう少し公の理論に基づいた医療が主流になるのではないでしょうか。

基本情報

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臨床眼科
63巻2号 (2009年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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