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はじめに
未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)に対して網膜光凝固(以下,光凝固)が有効な事実を初めて報告したのはわが国の永田ら1)である。その当時は,キセノンアーク光凝固だったので周辺部網膜の光凝固には高度の技術が必要だったが,その効果は現在のレーザーと比べて遜色ないものであり,凝固斑が大きいことから治療に要する時間は短く,患児への負担が少ないという大きな利点があった。治療が行われるにつれて未熟児網膜症の進行についての理解が進み,未熟児網膜症厚生省分類が確立されるに至った2)。また一方では,光凝固に抵抗し急速に網膜剝離へと進行する激症型未熟児網膜症が存在することも知られ,厚生省分類Ⅱ型と定義された。これらにより,わが国には世界に先駆けて未熟児網膜症の診断治療・体制が確立された。
それに対して,欧米,特に米国においては光凝固の有効性に関する検証が不十分とする意見があり,光凝固の普及は遅れたが,その後,多施設共同前向き無作為化症例-対照試験としてCRYO-ROP study(Cryotherapy for Retinopathy of Prematurity Cooperative Group)が行われた3,4)。CRYO-ROPでは現在も使われている国際分類(International Classification of Retinopathy of Prematurity:ICROP)を定め5),一定の段階に至ったものを限界域網膜症(threshold retinopathy)として冷凍凝固で片眼を治療した結果,未治療では50%が網膜剝離に進行するのに対して治療例では25%と網膜凝固の有効性が明らかになった。光凝固も冷凍凝固同等あるいはそれ以上に有効で,後極部病変の治療が容易などの利点が多いので,治療の主体は光凝固に移っている6~8)。また,網膜凝固により失明を免れても視力不良な例がほとんどであることから,より良好な視力を得るため,さらに失明率を軽減するために,より早い時期(pre-threshold)のハイリスク症例の治療を行うET(early treatment)ROP studyが行われ,より早期の治療が有効であると確認された9)。
さらに,国際分類の病期に従わず急激に網膜剝離に至り,しばしば光凝固に抵抗する厚生省分類Ⅱ型相当の重症型が確認され,aggressive posterior ROP(以下,AP-ROP)として認められた10)。
以上のような変遷を経て,光凝固は未熟児網膜症に対する最も有効な治療法として世界に認められるに至った。しかし未熟児の全身管理技術は日進月歩であり,より未熟な患児の数は増加し続けているため,より重症の未熟児網膜症への対応が求められているのもまた事実である。そこで改めて未熟児網膜症に対する光凝固の実際を述べたい。
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