助産婦雑誌 37巻5号 (1983年5月)

特集 母性への援助の質を問う

母性への援助の原点 前 隆代
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援助関係の成り立ち

 日常,私たちは援助という言葉を頻繁に使っているが,はたして援助という言葉にわれわれはどれだけの意味を含めて看護を行なっているのであろうか。今回,母性に対する援助をどう考えるかというテーマをいただき,よい機会なので改めて考えてみたい。

 援助というからには,援助する人,される人の両者によって援助関係は成り立つと考えられる。

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はじめに

 女性が妊娠し,出産するのは自然な生理現象であると思われている。その反面,不妊症をはじめ,妊娠にともなうさまざまな合併症や,出産時における母児双方の生命の危険性あるいは奇形児出産など治療・援助の必要なケースもある。われわれ産婦人科の医療・看護に従事する者は,これらをまず予知し,予防・治療・看護を行なうことが,第一に果たすべき役割である。本事例は,妊娠26週より強い不安感をもつようになり妊娠継続を拒否しはじめ,妊娠31週に入って帝王切開による早期娩出を希望して入院,その後の治療と看護により妊娠38週まで妊娠を継続,無事出産したが,児はダウン症であったケースである。このケースは妊娠,分娩,産褥の各期において,その主訴に特異な心理的変化を示し,そのケアにあたってはむずかしい対応を迫られ,今後の看護上も学ぶ点が多かった。そこで本事例に対する看護のプロセスを御報告し,読者の方々の忌憚のない御意見をいただきたいと思う。

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はじめに

 保健所における母親学級は,母性が妊娠中,健康な生活を送り,丈夫な子どもを産み育てられるよう援助するために開催されています。しかし,妊娠・出産・育児に関する情報が無数にある現在,地域の保健所はどのような母親学級を住民に提供していくべきかという点で,大きな課題をかかえています。そこで当保健所が試行錯誤をくりかえしながらこれまで行なって来た母親学級の全容をまとめ,見直す機会を得ましたのでここに発表し,皆様の忌憚のないご意見をお聞かせいただくことで,新たな出発としたいと考えております。

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はじめに

 母乳哺育が見なおされ,母乳哺育確立のために助産婦は日々努力している。母乳哺育は単に身体的・栄養学的な利点のみならず,母と子の間に培われる,よりよい母子関係の成立にとってより重要であることは言うまでもない。

 しかし,今,児にとって母乳を与えるのが最もよいと思っているのは妊産婦自身であることを,助産婦は忘れてはいないだろうか。妊産婦には母乳に関して種々の悩みがある。母乳で育てたいが,果たして十分出るだろうかと思う。職業をもつ者にはずっと母乳を与え続けられまいというあきらめもある。母乳の重要性を十分理解し,母乳で育てたいと思いながらも,母体の健康上の理由で与えられない母親もあろう。また,乳房マッサージの辛さに耐えられず母親失格を自認しつつ,母乳を与えることをあきらめようとする母親もあり得る。

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はじめに

 今日の日本は,核家族化,出生率の減少により子どもの数も一世帯あたり1人ないし2人となってきた。そのためか妊婦の中には,自分の子を抱くまで赤ちゃんを抱いたことがないという人が多くなっている現状である。そうした環境においては母性意識,つまり,子をかわいがり見守り,人間らしくこの上もない愛情をもって育てていこう,子のために自分たちもりっぱに生きていこうという考えが育つのはむずかしい。

 子にとって,生まれて初めて出会うのは親であり,子は親を見ながら育つので,親は子にとって人生の教師である。乳幼児期は父親よりも母親に全面的に依存するので,母親の影響は大きい。その母親たち,これから母親になろうとする人々にとって,母子を中心に家族が協力しあい健全で明るい生活が営めるよう適切な指導が受けられることは,意義深い。母性に対し看護を行なう役割にあるわれわれには,適切な指導を受け持つ責任がある。

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母乳援助で何を大切に考えているか

 松本 きょうの座談会は,母乳哺育援助ということを素材にして,その中から,母性への援助ということは何なのか,または,母性への援助ということで忘れてはならないこととか,大事にしなければならないことなどについて考えていきたいと思います。

 私たちみんな助産婦なのですけれども,母乳哺育を援助するとき,この援助というのはすなわちお母さんと赤ちゃんに対する援助だと思うんですけれども,そこで,一番基本として銘々が考えていることは何なのかというあたりから,それぞれにお話しいただけたらと考えます。

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前号では地域に定着した活動をつづける諏訪マタニティークリニックの母子医療を紹介したが,本号では産褥期の乳房管理がどのように行なわれているかに焦点をあてて追ってみた。

諏訪マタニティークリニックでは,昨年,根津八紘院長と藤森和子婦長が桶谷式乳房治療手技を基礎に理論化した<藤森式産褥乳房管理法>を発表して話題となったが,理論として総合化していくためには5年の歳月を要したとのことである。今は諏訪マタニティークリニックというと,‘母乳’というので出産の場として選ぶ人も多いほどに乳房管理は普及を遂げているようである。ちなみに,外来を訪れる人は1日に15-20人,指導料は再診という形で500円とのこと。

連載 ペリネータルケア・5

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 胎児は出生によって,胎内生活から胎外生活へという環境の劇的変化を受ける.出生直後,新生児の体内では胎外生活に適応するための生理学的な変化がダイナミックに生じる.すなわち,各臓器における機能の変化と代謝過程の再組織化である.新生児はこのような変化の過程をうまく経過してはじめて,新しい環境で成長発達していくことができる.ところが,このような生理学的適応過程を病気の症状と鑑別することはしばしば困難である.また一方,できるだけ早期に適切なケアを行なわなければ瑣細なことがきっかけとなって容易に異常を来たしてしまう.したがって,出生直後からのケアの質が重要となってくる.

トピックス

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 桶谷そとみ氏が高岡から大阪府泉南市へ移られてから,すでに1年半が経過した。高岡を引きあげるときには健康もすぐれず,これ以上手技を続けていくのは無理なのではないかと考えていらしたとのこと。しかし,泉南市へ落ち着いてからも全国のお母さん方から訪問を受け,問い合せも多くこの地で手技を続けることになった。現在「桶谷式乳房管理法研鑽会」も軌道にのり,大きいとはいえないが研修のための室もつくり,全国から訪れる研修生を受け入れている。

 本誌では5,6年前桶谷式手技の記事を詳細に紹介してきた経緯があったが,その後本誌担当となった私にとって,桶谷氏はまだ見ぬ大きな存在として,お会いできる機会のくることを望んでいた。

産科内分泌学入門・2

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 子宮とはまったく不思議な,とてつもない器官である。どんどん成長していく胎児を保護しながら,胎児に何のストレスもかけずに急速に肥大,膨張する。最大となった時は,重量で非妊時の10倍,容積にいたっては実に500倍にもなる。そして時期が熟せば全精力を費やして,胎児とその付属物を娩出する。

 数ある器官・臓器の中でも,これほどのドラマチックな働きをするものはちょっと類がない。数ミリリットルの精液を排出するのが関の山という男性にとって,この女性特有の恐るべき生殖能力は,一種の畏怖として映る。

妊婦と喫煙・2

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 前稿に引き続き,本稿では妊婦の喫煙が児の胎内発育に及ぼす影響に関連して,在胎期間,胎児発育,胎盤,流産,先天異常などの問題をとりあげたい。

Hawaii Report

妊娠中絶法をめぐって 池上 千寿子
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 1983年1月22日,ワシントンで中絶反対の集会が行なわれ,2万6,000人の男女・子どもが参加したことは,日本でもすでに報道されたことと思います。

 この1月22日という日は,中絶反対者にとっては,魔の"悲劇"の日であり,中絶支持者にとっては,コペルニクス的転換となった記念日なのです。ここで中絶反対という立場をもっと正確にいうと「中絶を法律で規制し,胎児の生きる権利を法律的に保護しよう」(胎児は自ら権利を主張できない)というもので,反対に,中絶支持とは,「中絶するかどうかは,もっぱら個人がその良心に従って選択すべき問題であり,法律で定める(定められる)ものではない」という立場です。

第19回ICM大会講演翻訳シリーズ・9

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はじめに

 訓練された助産婦というものは,いかなるヘルス・チームにおいても,基礎となる重要な要素である。助産婦という仕事は,社会の健康福祉に多大な影響を与えるものであり,その仕事の性質というのは,訓練教育の質によって左右されるものである。

連載小説 田中志ん物語・終りなき旅・11

第3章 産声讃歌 島 一春
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乳色の朝

 昭和5年2月,志んは三女フミを産んだ。

 こんどは男の子ではないか,と伊八は期待していたらしい。

Medical Scope

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 胎児水腫hydrops fetalisということばは助産婦であるなら,一度は聞いたことがあるでしょう。妊娠の後半期に急に羊水過多になり,胎児死亡となってしまったり,出生後もすぐに死亡してしまう,全身の著しい浮腫と胸水,腹水のたまった大きい水ぶくれの胎児のことです。その全身像から胎児水腫という名前がついたのですが,最近になって,この胎児水腫をめぐる大変にホットな話題や論文が,世界の周産期医学の雑誌や学会をにぎわせるようになりました。今月から,この話題をゆっくりと時間をかけて解説することにします。

 まず,胎児水腫というと私たちの観念では,胎児時代に死亡してしまったり,生まれても絶対に育つことのない先天異常であると考えられてきました。しかし,それが胎児時代の治療や,生後の適切な治療によって立派に生存して成長する道が開け,少数ながら治療の成功例がでてきたのです。これが,先に言ってしまったのですが,胎児水腫に対する最近のホットな話題の結論なのです。

基本情報

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助産婦雑誌
37巻5号 (1983年5月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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