看護研究 52巻5号 (2019年8月)

特集 その研究を世界へ—国際学会で発表しよう 2

上別府 圭子
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 この特集は,日本看護系大学協議会(JANPU)国際交流推進委員会主催セミナー「スマートな国際学会発表を目指して2」をもとに,組まれたものである。昨年,関西で開催された1回目の「スマートな国際学会発表を目指して」のセミナーの評判が高かったため(本誌51巻6号,2018所収),第2弾を東京で開催することとした。

 看護研究を学ぼうとする大学院生には,将来,教育・研究者になることを志望する者と実践に軸足を置くことを指向する者がある。そのどちらにとっても,研究を国際学会で発表することで得られるものはとても大きい。それが個人の研究力を高めるだけでなく,自己評価を高め,経験世界を拡げ,未来へのエネルギーとなっていることが,本特集を読めばわかっていただけるだろう。教員はそれぞれの学生の資質を見極めながら,時に励まし,時にコツを教授し,時に作業を共にし,時にケアし,時に待ち,環境を整備することで,学生の育ちを支え応援する。

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 本稿では,筆者が博士号を取得後に大学院生を指導する立場になってから10年弱の試行錯誤の経験を振り返り,大学院生の国際学会での発表を促進するためのポイントについて述べたい。具体的には,現所属の慶應義塾大学での経験ではなく,前所属である東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科看護学専攻看護システムマネジメント学分野での経験を振り返る。内容はあくまで筆者の認識に基づくものであり,事実誤認がないように気をつけたが,もしも誤りがあった場合は,すべての責任は筆者にあることを申し添えておきたい。なお,本稿は2019年3月に開催された日本看護系大学協議会(JANPU)主催によるセミナー「スマートな国際学会発表を目指して2」の講演内容に大幅に加筆したものである。

 次節より,試行錯誤の中で国際学会発表の促進につながった取り組みを,①組織の状態に合わせて環境を整える,②全員に無理に勧めすぎない,③自分も質の高い研究・国際的活動をめざすという3つのポイントにまとめて述べていく。

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はじめに

 私は,2019年3月に行なわれた日本看護系大学協議会(JANPU)の国際交流推進委員会企画による「スマートな国際学会発表を目指して2」において,国際学会での口演を行なうための準備や学びについて発表する機会をいただいた。その際に,参加者から具体的な国際学会に参加するための準備や発表の実際,英語の学習方法について知ることができたとの感想をいただいた。私のつたない経験を話すことが役に立つのかと思っていたが,国際学会へ挑戦したいと考えていても,具体的にどのように準備するのがよいのか迷っている方もいると感じた。本稿では,国際学会での発表に向けて実際に私が行なってきた発表の準備やスライドの作成方法,英語の学習方法について紹介していく。

 まず初めに,私の大学院生時代の研究活動について簡単に紹介したい。私は,7年間の看護師経験のなかで看護管理者のリーダーシップがスタッフに与える影響の大きさを実感し,看護管理の研究を行ないたいと思い,東京医科歯科大学大学院で看護システムマネジメント学分野に進学した。進学後は,看護管理者のリーダーシップについて研究を行ない,修士課程では,看護師長のリーダーシップスタイルとスタッフナースの情緒的コミットメントの関連を質問紙にて調査した。そして,博士課程では,看護師長とスタッフにインタビューを実施し,病棟変革を促進する看護師長の特性を明らかにするために質的研究を行なった。

 修士課程から博士課程修了までの6年半の間に,合計4回の国際学会において口演を行なう機会を得ることができた(表1)。国際学会で4回も口演を行なったと聞くと,留学経験があったり,もともと英語が堪能だったりといったイメージを持たれるかもしれないが,私は留学経験もなく,「スマート」とはほど遠い,地道な努力を続けながら発表を行なってきたと自己評価している。

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はじめに

 本稿は,2018年3月に日本看護系大学協議会(JANPU)の国際交流推進委員会企画により開催された研修会「スマートな国際学会発表を目指して2」における発表を基に記している。

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はじめに

 2019年3月に,日本看護系大学協議会(JANPU)国際交流推進委員会主催のセミナー「スマートな国際学会発表を目指して2」で,2018年に韓国で開催された第21回EAFONSでの発表までの経緯や実際の発表などをお話しさせていただいた。

 私は英語が堪能なわけではなく,本当に私でよいのか迷ったが,EAFONSで発表したときの指導教員の1人からのお誘いでもあり,もし私の実体験をお話しすることでこれから発表する方々が参考になることが少しでもあればと考えた。他の発表者の皆さんとは異なり,準備も実際の発表のときにも,先生方のきめ細やかなサポートを受け,何とか発表することができたが,学会1週間前に「やっぱりできない」と先生方に発表を辞退したいと告げたり,3日前から緊張とストレスで声が出なくなったり,と本当にご迷惑をおかけしながらの国際学会への挑戦だった。

 本稿では,セミナーでの発表をもとに国際学会で発表しようと思ったきっかけや,抄録から発表までの流れ,学会で発表してみて感じたこと・学んだことを紹介する。

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はじめに

 病院から大学に異動して4年目,自分が指導した大学院生が国際学会で発表するのは今回が初めてであった。私自身も国際学会への参加は久しぶりで,国際学会での発表や指導のポイントを解説するには力不足である。しかし,国際学会での発表経験が少なくても,目的の設定や準備によって大きな収穫を得られることを紹介することで,国際学会発表への後押しになればと願う。特に,今回は研究分析を進めるために学会発表を利用したもので,このような参加の仕方もあることを紹介できればと思う。

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はじめに

 修士課程2年目が始まったばかりの2018年春,指導教員の武村雪絵准教授より,海外の学会で研究内容を発表するお話をいただいた。その頃,私は修士論文執筆に向けて質的研究のデータ分析を行なっており,大量のデータに埋もれながら分析の糸口を見いだそうとしていた。私は看護系大学に進学する前に他大学で語学を専攻していたので,発表のための英語練習に注力する必要性がそれほどなかったことや,もともと修士論文は英語で執筆する予定だったこともあり,国際学会で発表することは大変よい機会であると捉えた。しかし,学会は自らの研究成果を発信する場である。分析中の未完の研究について何をどう学会で公表できるのだろう,という不安は大きかった。結果的に,先生方の指導のおかげで,同じデータを異なる視点で分析した演題を6月に登録し,10月に学会発表をすることができた。

 本稿では,国際学会発表までのプロセスや,今回の経験が自分の修士論文のデータ分析や論文執筆にどう活かされたのかについて振り返りたい。今後国際学会発表を控えている方や検討されている方にとって,私の経験が少しでも参考になれば幸いである。

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風土

 看護学の特徴が,科学に裏付けられた学問であり,そして実践科学であることは誰もが賛同することである。現代において,学術議論の共通用語は,(残念ながら)日本語ではなく英語である。看護学の基礎教育を学ぶ学部生,研究者としての基礎を学ぶ大学院修士課程の院生,研究者としての自立をめざす大学院博士後期課程の院生は,既存研究の検索を国内外に求める作業は日常である。データベースの検索言語は英語である。英語を使って,学術コミュニティに参加していくことは当たり前であるという風土が必須である。

 英語を用いて問題を議論し解決することは,帰国子女や留学経験者といった少数の特定の人が行なうことではなく,誰でもが行なう方法である。私は,2000年代前半から,母子保健や助産関連のテーマでアフリカからの留学生の看護・助産教育の機会を得てきた。その経験からは,共通言語はお互いの第二外国語である「英語」でしかわかり合えないと体感した。文献を読む,研究を行なう,最終成果物としての研究論文を仕上げるという共通の目的に向かう必要なコミュニケーションの道具としての英語。苦手とか,難解という概念を捨て,生きていくため,わかり合うために英語を用いるプロセスでは,誤解もあり,また腑に落ちる瞬間もある。第二外国語でわかり合う楽しさや失敗は,世界観が広がる体験であり,他人に対して寛容になっていく自分の変化が面白い。第一言語で話せる日本人学生であってさえも,理解できない行動や考え方があるのと同様に,第二外国語の英語を用いる留学生とのやり取りは,何も変わらない。

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はじめに

 私は,現在,聖路加国際大学大学院の博士後期課程の3年生であるが,分娩件数2,200件ある,都内の周産期総合医療センターで勤務する常勤の助産師でもある。夜勤も月に5〜6回は行なっている。職場のスタッフや大学院の同級生には,「よく両方やりますね」,「いつ寝ているのですか」と声をかけられることが多いが,両立できているかは別として,よく寝ており,オン・オフははっきりしている。

 私が大学院を検討し始めたのは,助産師6年目であり,「臨床で生まれるさまざまな疑問やもやもやは,臨床のスタッフが取り組まないと解決しないのではないか」と思ったのが始まりだった。ちょうどその頃,看護協会で行なわれていた実習指導者講習会に参加しており,この講習の1コマに「エビデンス」をテーマにした講義があり,担当が聖路加国際大学の片岡弥恵子先生(ウィメンズヘルス・助産学教授)であった。英語の論文が資料として配られ,「ぽかーん」としたことを覚えているが,臨床の疑問を解決するためには,研究をやる必要があることはわかった。ここからまずは,修士課程に入学しようと思ったが,どこの大学院に行けばよいのか見当がつかない,管理職でもない,一スタッフが働きながら大学院に行くことは認めてもらえるのだろうかなど,いくつもの壁があった。もともと本を読んだり,文章を書いたりすることがあまり好きではないタイプであり,本当に研究ができるのかという不安はあったが,難しい文章は書けないため,逆に臨床の人にわかりやすい論文ができるかもしれないとポジティブ思考に変換し試験の準備をした。

 この結果,2014年4月(助産師7年目)に聖路加国際大学大学院の修士課程に入学し,堀内成子先生の研究室で学ぶこととなった。入学後は,やっと取り組みたいテーマが研究としてできるということがとても嬉しく,忙しかったが,さまざまな領域の同級生と話し合える機会も多く,楽しかった。そして2017年に修士課程を修了し,気づいたらそのままの勢いで博士課程に入学していた。

 私は,これまで修士論文でのデータをもとに,日本で行なわれている日本母性衛生学会や日本助産学会等において,5回の口演発表を経験してきた。口演発表では,限られた発表の時間の中で,わかりやすいスライドづくりと発表が求められるが,回数を重ねるたびに,「どんな質問をしてくれるのだろうか」とワクワクするまでになってきた。

 国際学会については,修士3年生でケニアの学会〔East Central Southern African College of Nursing(ECSACON), 12th Biennial Scientific Conference〕で,同級生の発表を聞いたり,学会の雰囲気をつかんだりした。私が初めて参加したこの国際学会では,発表時間は過ぎていても堂々と発表し続けたり,質疑応答もたくさんあり,盛り上がっていた。また,音楽が流れればお祭りのように踊りだす,おやつの時間はみんな集まるなど,「失敗」なんて言葉はなく,自分の思ったことを話すことが大切であり,いい意味でとても自由だった。

 博士2年生では,共著者としてイタリアで行なわれた学会(4th World Nursing & Healthcare Conference, Rome)に堀内先生とともに参加し,堀内先生の口演発表を聞いたり,ポスター発表について経験した。ポスター発表は,時間内にポスターの前で足を止めてくださった方に近づいて声をかけるスタイルだった。まるで,洋服屋で洋服を選んでいるお客さんに「どうですか?」と声をかけにいくという感じだが,堀内先生のところにはいつも人がやってきて,気づくと話が盛り上がっている。その姿は,ディズニーランドでいうミッキーマウス的な存在だな,といつも私は思っている。

 今回,私は,22nd East Asian Forum for Nursing Scholars(EAFONS)という学会にてポスター発表をした。国際学会で自分自身が発表するというイメージはあまりなく,他人事のように考えてきたが,看護技術の習得過程のように,見学・見守り・自立の順番になるように,指導教員である堀内先生が,国際学会での発表に向けて着々と準備をしてくれていたことに,いまになって気づく。

 今回は,2019年1月に行なわれた,EAFONSにおけるポスター発表までのプロセスについて紹介したい。

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承前

 「ケアの意味を見つめる事例研究」の目的は,「共有・転用可能な,看護実践の質を向上させるための知の構築」であるが(山本,2018,p.411),取り上げられる事例は,個別の事例である。というのは,「複数事例ではなく個別の事例で,個別性の高い文脈の詳細を伝えて初めて,『ああなるほど,そういう看護の仕方もあるのか!』というような共鳴や触発を実践者に起こす場合も多いように思われた」からである(山本,2018,p.405)。

 この場合,個別の一事例から得られた知見が,その事例だけでなく,他のさまざまな事例にどのようにあてはまるのかという問題が生じるであろう。これは,「転用可能性(transferability)」の問題である。個別事例を読んで読者が自ら自身の事例に適用(転用)することはしばしば生じるが,この適用(転用)は読者に任されている(Greene, 1990, pp.236-237)。それゆえに,事例研究者(事例執筆者)にとって「知識の転用(transfer)は,依然として理解されがたい」ということになるだろう(Stake, 2005, p.456)。

 ところで,個別の一事例でも,多くの他人に役立つことが指摘されている(河合,2013[1976])。このような場合に,その個別事例は何らかの「普遍性」をもつのではないかと河合(2013[1976], p.210)は主張する。

 このような「普遍性」と「転用可能性」の基礎的な関係について,マックス・ウェルトハイマーの遺著『生産的思考』(Wertheimer, 1945/矢田部訳, 1952)が考察している。ウェルトハイマーが扱っているのは,いわゆる「洞察(insight)」の問題系である。「ケアの意味を見つめる事例研究」も,「優れた看護実践の知の共有」を「目的」としている以上(齋藤,山本,家髙, 2018, p.461),何らかの「洞察」に関わっていると考えることができる。

 『生産的思考』の第1章「平行四辺形の面積」は,長方形の面積の求め方を学んだ5歳半の子どもが,平行四辺形の面積を解く例を紹介している。最初この子どもは,左右の平行な斜辺が長方形と異なるために「わからない」と答え,悩んでいたが,しばらくして,左右の平行な斜辺がお互いに合致することに気づき,平行四辺形を垂直に切って長方形にしたのであった(Wertheimer, 1945, pp.45-49/矢田部訳,1952,pp.60-65)。

 つまり,最初は思考を妨げていた項(左右の斜辺)が,あるとき,「それぞれ合致する辺」という「別の意味」をもつことで,平行四辺形全体が再組織化されたのである。このような「全体の有意味な構造」を生じさせる「構造的変化」が「洞察」である。この問題状況(平行四辺形の求積)の中で,状況のそれぞれの項がお互いに関連し合い,「全体の有意味な構造化」をこの子どもは経験したのであった。

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はじめに

 国際化社会で人の移動がますます活発になる中,医療現場でも外国人患者に対応する場面は増え,国際看護,異文化看護の重要性は高まってきています。日本においても医療・看護の対象となる患者の文化的背景が多様化すると予測され,対象者の文化的背景を考慮したケアの充実が求められています。

 異文化看護に関する国際学会には,アメリカを中心に活動しているTranscultural Nursing Society(異文化看護学会;以下,TCN)とヨーロッパを中心に活動しているEuropean Transcultural Nursing Association(欧州異文化看護協会;以下,ETNA)があります。TCNはMadeleine Leininger博士(1925-2012)主導のもと,1974〜1975年に研究,教育,実践が行なわれるようになり,学会として創設されました。筆者は2013〜2015年にTCNの国際学術集会に参加し,本誌に学会報告をしました(齋藤,2014)。そのときは,予想していたよりもアメリカからの参加者の割合が多かったので,ヨーロッパでの異文化看護の実際についても知りたいと考え,第6回ETNA国際会議に参加,発表することにしました。本稿では,この組織と学術集会について紹介します。

連載 インタビューデータ分析の質向上のためのNVivo活用術・3

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 前回は,発言者別のデータをもとにカテゴリをつくって概念化を行なうところまでご紹介した。NVivoを効果的に活用することで,分析の質向上を図るためのヒントを得ていただけたのではないかと思う。

 今回は,概念間の関連を分析して現象の全体を説明しうるコアカテゴリを抽出するプロセスにおいて,分析をより深めるためのNVivoの活用法について解説する。

連載 集まる つながる 広がる 若手研究者のバトン・7

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若手研究者は,今日も看護の未来に向けて疾走中。

ここはそんな同じ目標を抱く者同士が,ぷらっと立ち寄り語り合う場所。

誌面をフィールドに,思いをバトンに乗せて語り継いでいきます。

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目次

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今月の本

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次号予告・編集後記

基本情報

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看護研究
52巻5号 (2019年8月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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