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はじめに
私は,現在,聖路加国際大学大学院の博士後期課程の3年生であるが,分娩件数2,200件ある,都内の周産期総合医療センターで勤務する常勤の助産師でもある。夜勤も月に5〜6回は行なっている。職場のスタッフや大学院の同級生には,「よく両方やりますね」,「いつ寝ているのですか」と声をかけられることが多いが,両立できているかは別として,よく寝ており,オン・オフははっきりしている。
私が大学院を検討し始めたのは,助産師6年目であり,「臨床で生まれるさまざまな疑問やもやもやは,臨床のスタッフが取り組まないと解決しないのではないか」と思ったのが始まりだった。ちょうどその頃,看護協会で行なわれていた実習指導者講習会に参加しており,この講習の1コマに「エビデンス」をテーマにした講義があり,担当が聖路加国際大学の片岡弥恵子先生(ウィメンズヘルス・助産学教授)であった。英語の論文が資料として配られ,「ぽかーん」としたことを覚えているが,臨床の疑問を解決するためには,研究をやる必要があることはわかった。ここからまずは,修士課程に入学しようと思ったが,どこの大学院に行けばよいのか見当がつかない,管理職でもない,一スタッフが働きながら大学院に行くことは認めてもらえるのだろうかなど,いくつもの壁があった。もともと本を読んだり,文章を書いたりすることがあまり好きではないタイプであり,本当に研究ができるのかという不安はあったが,難しい文章は書けないため,逆に臨床の人にわかりやすい論文ができるかもしれないとポジティブ思考に変換し試験の準備をした。
この結果,2014年4月(助産師7年目)に聖路加国際大学大学院の修士課程に入学し,堀内成子先生の研究室で学ぶこととなった。入学後は,やっと取り組みたいテーマが研究としてできるということがとても嬉しく,忙しかったが,さまざまな領域の同級生と話し合える機会も多く,楽しかった。そして2017年に修士課程を修了し,気づいたらそのままの勢いで博士課程に入学していた。
私は,これまで修士論文でのデータをもとに,日本で行なわれている日本母性衛生学会や日本助産学会等において,5回の口演発表を経験してきた。口演発表では,限られた発表の時間の中で,わかりやすいスライドづくりと発表が求められるが,回数を重ねるたびに,「どんな質問をしてくれるのだろうか」とワクワクするまでになってきた。
国際学会については,修士3年生でケニアの学会〔East Central Southern African College of Nursing(ECSACON), 12th Biennial Scientific Conference〕で,同級生の発表を聞いたり,学会の雰囲気をつかんだりした。私が初めて参加したこの国際学会では,発表時間は過ぎていても堂々と発表し続けたり,質疑応答もたくさんあり,盛り上がっていた。また,音楽が流れればお祭りのように踊りだす,おやつの時間はみんな集まるなど,「失敗」なんて言葉はなく,自分の思ったことを話すことが大切であり,いい意味でとても自由だった。
博士2年生では,共著者としてイタリアで行なわれた学会(4th World Nursing & Healthcare Conference, Rome)に堀内先生とともに参加し,堀内先生の口演発表を聞いたり,ポスター発表について経験した。ポスター発表は,時間内にポスターの前で足を止めてくださった方に近づいて声をかけるスタイルだった。まるで,洋服屋で洋服を選んでいるお客さんに「どうですか?」と声をかけにいくという感じだが,堀内先生のところにはいつも人がやってきて,気づくと話が盛り上がっている。その姿は,ディズニーランドでいうミッキーマウス的な存在だな,といつも私は思っている。
今回,私は,22nd East Asian Forum for Nursing Scholars(EAFONS)という学会にてポスター発表をした。国際学会で自分自身が発表するというイメージはあまりなく,他人事のように考えてきたが,看護技術の習得過程のように,見学・見守り・自立の順番になるように,指導教員である堀内先生が,国際学会での発表に向けて着々と準備をしてくれていたことに,いまになって気づく。
今回は,2019年1月に行なわれた,EAFONSにおけるポスター発表までのプロセスについて紹介したい。
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