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はじめに
昨今,学術誌の投稿で,報告ガイドラインに則った執筆が規定されるようになっています。報告ガイドラインとは,「明確な方法論を使用して開発され,ある特定の研究を報告するときに,著者の手引きとなるチェックリストやフローダイアグラム,または構造化されたテキスト」とされています註1(友滝,2020)。歴史的にはCONSORT(ランダム化比較試験の報告ガイドライン)やSTROBE(観察研究の報告ガイドライン)が有名ですが,システマティックレビュー・メタアナリシスの報告ガイドラインは,PRISMA(Page et al., 2021a)がよく参照されています。
本特集は主にスコーピングレビューを取り上げているので,「スコーピングレビューは,システマティックレビューやメタアナリシスと違うので,報告ガイドラインは関係ないのでは?」と,一見思われるかもしれませんが,PRISMAの拡張版(extensions)としてPRISMA-ScR(Tricco et al., 2018)という,スコーピングレビューのための報告ガイドラインが発表されています。
スコーピングレビューはレビュースタディの方法の1つです。そのため,実際に行った研究がスコーピングレビューであれば,どのようなテーマにも,PRISMA-ScRは使いやすい報告ガイドラインといえます。その一方で,近年,レビュースタディに関連する様々な報告ガイドラインが発表されています。もし自分の研究により適した報告ガイドラインがあれば,読者の皆さまのレビュースタディと報告の質の改善,そして,当該分野における研究の知見の体系化にも寄与することが期待されます。
そこで本稿では,PRISMAとPRISMA extensionsを概観するとともに,PRISMAの研究チーム以外の研究者らが開発している報告ガイドラインも含めた,報告ガイドラインの様々な検索方法も紹介します。また,とくに看護学研究者に有益であると思われるPRISMA extensionsとして,スコーピングレビューの報告ガイドライン(PRISMA-ScR)(本誌pp.190-193),文献検索に関する報告ガイドライン(PRISMA-S)(本誌pp.194-197),アウトカム測定のためのCOSMINに関する報告ガイドライン(PRISMA-COSMIN for OMIs)(本誌pp.198-205),複雑性介入の報告ガイドライン(PRISMA-CI)(本誌pp.206-211)について,本特集の別稿にて詳細に紹介します。
なお,報告ガイドラインの歴史的な経緯や,報告ガイドラインのポータルサイトEQUATOR Network註1の紹介,また報告ガイドラインを使用するときの注意点や具体的な活用場面の詳細は,Altmanらの記事(Altman & Simera, 2016)や本誌2020年の特集「看護研究における報告ガイドライン1・2」(53巻1,2号)もご参照ください。本稿が,「レビュースタディの論文を執筆する場合に,どの報告ガイドラインを参照すればよいのか? どのように活用すればよいのか?」という疑問の解消に向けて参考になれば幸いです。

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