特集 その研究を世界へ—国際学会で発表しよう 2
—Poster:指導教員の立場から—新たな研究の萌芽となる国際学会発表—聖路加国際大学における経験
堀内 成子
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.363-369
発行日 2019年8月15日
Published Date 2019/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201662
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風土
看護学の特徴が,科学に裏付けられた学問であり,そして実践科学であることは誰もが賛同することである。現代において,学術議論の共通用語は,(残念ながら)日本語ではなく英語である。看護学の基礎教育を学ぶ学部生,研究者としての基礎を学ぶ大学院修士課程の院生,研究者としての自立をめざす大学院博士後期課程の院生は,既存研究の検索を国内外に求める作業は日常である。データベースの検索言語は英語である。英語を使って,学術コミュニティに参加していくことは当たり前であるという風土が必須である。
英語を用いて問題を議論し解決することは,帰国子女や留学経験者といった少数の特定の人が行なうことではなく,誰でもが行なう方法である。私は,2000年代前半から,母子保健や助産関連のテーマでアフリカからの留学生の看護・助産教育の機会を得てきた。その経験からは,共通言語はお互いの第二外国語である「英語」でしかわかり合えないと体感した。文献を読む,研究を行なう,最終成果物としての研究論文を仕上げるという共通の目的に向かう必要なコミュニケーションの道具としての英語。苦手とか,難解という概念を捨て,生きていくため,わかり合うために英語を用いるプロセスでは,誤解もあり,また腑に落ちる瞬間もある。第二外国語でわかり合う楽しさや失敗は,世界観が広がる体験であり,他人に対して寛容になっていく自分の変化が面白い。第一言語で話せる日本人学生であってさえも,理解できない行動や考え方があるのと同様に,第二外国語の英語を用いる留学生とのやり取りは,何も変わらない。
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