看護研究 51巻1号 (2018年2月)

特集 査読者の視点を学ぶ─質的研究論文のための査読セミナーから

『看護研究』編集室
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 2017年11月5日(日),聖路加国際大学にて「質的研究論文のための査読者向けセミナー」が開催されました。このセミナーは,萱間真美先生(聖路加国際大学)を研究代表者とする文部科研費による研究「看護学の質的研究論文査読ガイドラインと査読者教育プログラムの開発」の一環で行なわれました。本特集では,萱間先生をはじめとする研究班の先生方のご協力を得て,このセミナーを収録する形で取り上げることとしました。特集は,基本的にセミナーの流れに基づきつつ,セミナー後に寄稿いただいた論文等も含めて,再構成しています。

 今回のセミナーでは,模擬査読が行なわれました。セミナーに先立ち,参加者の方々にはモデル用原稿が送付され,個別に査読を行なう課題が与えられていました。当日はその課題をベースに,本特集でもご紹介する「査読ガイドライン」に基づいてグループごとに査読が行なわれ,各グループからの査読結果の発表とともに,ディスカッションが行なわれました。なお,モデル用原稿には,グレッグ美鈴先生(神戸市看護大学)が『日本看護学教育学会誌』に投稿された初回の論文が用いられました。この論文は査読を経て採択され,同学会誌27巻1号(2017年)に掲載されています。特集を組むにあたっては,査読者/投稿者の学びの促進と看護学の発展につながることを期し,グレッグ先生より上述のモデル用論文と『日本看護学教育学会誌』所収の論文の本誌掲載について快諾を得るとともに,『日本看護学教育学会誌』編集委員会からも転載の許諾をいただきました。グレッグ先生には,実際の査読プロセスについてもご紹介いただいています。

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 本稿は,「質的研究論文のための査読者向けセミナー」〔2017年11月5日(日)於:聖路加国際大学〕における萱間真美先生とグレッグ美鈴先生の講演を収録し,整理したものです。 (編集室)

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 本稿は,「質的研究論文のための査読者向けセミナー」〔2017年11月5日(日)於:聖路加国際大学〕における福島鏡先生の講演を収録し,整理したものです。 (編集室)

査読におけるマナー 麻原 きよみ
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 本稿は,「質的研究論文のための査読者向けセミナー」〔2017年11月5日(日)於:聖路加国際大学〕における麻原きよみ先生の講演を収録し,整理したものです。 (編集室)

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要旨

〔目的〕本研究の目的は,Appreciative Inquiry(AI)の立場から,急性期病院に就職して1年目の新卒看護師が臨床でどのようにうまく学んでいるのかを明らかにし,臨床での学びを促進する方法を検討することであった。

〔方法〕研究参加者は,新卒看護師として病院に就職した1年目に,うまく学べた臨床経験2年目の看護師11名であった。データ産出には,半構造化インタビューを用い,質的記述的分析を行った。

〔結果〕データ分析の結果,臨床での学びの経験として,23サブカテゴリと9カテゴリが抽出され,その内容から『戸惑いの時期』『学びが促進される時期』『学び方がわかる時期』にわけられた。また学びの影響要因としては,9サブカテゴリと6カテゴリが抽出され,これらは新卒看護師の要因と環境の要因にわけられた。

〔考察〕新卒看護師が臨床でうまく学ぶためには,戸惑いの時期を乗り越えるレジリエンス,安心して学べる人的環境を作る対人関係スキルが必要である。また組織の側には,新卒看護師の組織社会化を促す働きかけが必要である。

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 本稿では,「質的研究論文のための査読者向けセミナー」〔2017年11月5日(日)於:聖路加国際大学〕における模擬査読後のディスカッションと質疑応答についてご紹介します。ディスカッションでは,モデル論文に対するさまざまなコメントに加え,査読ガイドラインに対してさまざまな意見が提出され,質疑応答が行なわれました。モデル論文と査読ガイドラインへの意見について,セミナー後に萱間先生におまとめいただきました。また質疑応答については,当日のセミナーでの議論から掲載いたします。 (編集室)

査読を経て論文はどう変わるか [模擬査読において得られたことと査読をめぐって考えること・1]

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はじめに

 今回,私は質的研究論文の査読セミナーに参加する機会を得た。このセミナーは,企画者の萱間真美先生を中心に開発されている質的研究論文の査読ガイドラインについて,グループワークを通じて意見交換しながら,査読の質の向上をめざすものであった。グループワークでは,グレッグ美鈴先生が投稿された査読前の論文に対する模擬査読が,事前課題として各参加者に与えられており,その各自の査読結果をもとに議論がかわされた。投稿者がグレッグ先生であったことは,セミナーの最後に明かされ,きっとどの参加者も,驚きとともに,複雑な気持ちを抱いたことだろう。査読の過程は投稿者と査読者との間でなされるため,公開されることはまずない。査読を受ける前の論文を,模擬査読のために提供してくださったことで,模擬査読者の一人として貴重な体験をさせていただいた。改めて,グレッグ先生に深く感謝申し上げるとともに,ここでは,このセミナーに参加して考えたことを述べたい。

査読を経て論文はどう変わるか [模擬査読において得られたことと査読をめぐって考えること・2]

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私にとっての査読

 “査読初心者”ともいえる私にとって,査読は緊張する仕事である。

 投稿者が論文を投稿するまでに至った大変な過程を考えると,正当で有益なジャッジを行ない,ジャッジした内容をきちんと言葉で伝えたいと思う。同時に,もう一人の査読者を想像し,自分の査読結果があまりに格落ちするものであったらと危惧を抱き,査読結果に目を通される編集委員の先生の顔が浮かんでくる。そういう意味でも査読は,自分の研究能力を査定されているような気分にもなり,緊張を強いられる。

査読を経て論文はどう変わるか [模擬査読において得られたことと査読をめぐって考えること・3]

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言語化された査読基準

 私は今回,自身が査読を担当している各学会誌の編集委員長より案内をいただき,セミナーに参加することとした。案内にあったセミナー講師陣のお名前を拝見し,看護のなかで質的研究がどう扱われようとしているのか,また何をめざしていくのかといったことについて,直接話を伺うことができるチャンスであると捉えた。また,査読者としてはもちろん,投稿する立場にある者としても強く関心をもった。

 これまで私は,自身が携わる領域の論文を読んできたなかで幾度となく,研究報告などの形式で掲載されている論文に原著論文以上の価値を感じたり,その逆も然りだったりで,いったいどのような基準で査読や編集がなされているのか疑問に感じていた。また,一投稿候補者として,基準のつかめなさに不安を抱いてきた。もちろん新しいことに挑戦していこうとする限り,今後も持ち続ける不安だとは思うものの,セミナーに参加したことで,看護がめざす先について,その一端を共有できた感覚があり,これまで以上に勇気をもつことができたように思う。

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はじめに

 査読は,いろいろな意味でオープンにされることが少ない。査読を実施する立場になったとき,そのプロセスで誰かと相談することはないし,査読を受けた人が査読結果に対してどのように感じたかを知ることもない。自分の査読が役に立ったのかどうかも,修正論文を通して推測するしかない。私は昨年,日本看護管理学会から秀逸査読者賞という賞をいただいた。しかし,私の査読の何がよくて表彰して下さったのかわからない。思いつくのは,査読の期限を守ったことと,意見の相違レベルのことは投稿者の意見を尊重したくらいのことである。何となくベールに包まれたような査読のプロセスがオープンにされることは,査読をする人にも査読を受ける人にも,意味のあることではないかと思う。

 質的研究論文のための査読セミナーの準備をする話し合いの中で,私たち研究班が作成した査読ガイドラインを用いて,参加者の方に初回投稿論文の模擬査読を実施してもらうのがよいということになった。その際,自分自身の初回投稿論文を模擬査読に提供してもよいと思った理由は,当時は,その論文が採択され,掲載前の校正中というタイミングのよさもあったが,査読のおかげで修正論文がよくなったと,私自身が思えたからである。

 よい査読をしてもらったと思えることは,常にあるわけではない。査読を受ける立場で,査読がよいと感じるときはどのような場合かを考えてみた。それには,図のように4つの場合があると思う。以下に示すように,指摘を受けてから,

 A.気づいてすぐに修正する/修正しない場合

 B.気づいて,考えて修正する/修正しない場合

 C.気づいて,調べて,考えて修正する/修正しない場合

 D.気づいて調べて考えて,そこから再び考えて調べてを繰り返し,そのプロセスで新たな気づきや学びを得て修正する/修正しない場合

の4つである。査読を受けることによって新たな気づきや学びを得ることは,投稿論文の修正を完成させることと同じくらい大切だと思う。つまり,投稿者に何らかの気づきを与えてくれる査読が,よい査読といえる。

 本稿にて査読のプロセスとして取り上げるのは,『日本看護学教育学会誌』に投稿した論文である。この論文は査読を経て,同学会誌27巻1号に掲載された(グレッグ,脇坂,林,2017)。初回投稿論文,掲載論文ともに,本特集での掲載については編集委員会の使用許可を得ている。また本稿では査読の具体的な指摘内容について紹介するが,それについては,本学会がブラインド査読を採用しているため,編集委員会を通して,査読者から本稿執筆の許可を得た。

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要旨

〔目的〕本研究の目的は,病院に就職して1年目の新卒看護師が臨床でどのように学び方を獲得しているのか,またそれを促進する要因は何かを明らかにすることであった。

〔方法〕研究参加者は,新卒看護師として病院に就職して2年目の看護師であり,臨床経験1年目の学び方の獲得に関わる経験を語ることができた看護師11名であった。データ産出には,半構造化インタビューを用い,質的記述的分析を行った。

〔結果〕データ分析の結果,臨床での学び方の獲得に関わる経験として,23サブカテゴリと9カテゴリが抽出され,その内容から『戸惑う時期』『学びが促進される時期』『学び方がわかる時期』にわけられた。また学び方の獲得を促進する要因として,9サブカテゴリと6カテゴリが抽出され,これらは新卒看護師の要因と環境の要因にわけられた。

〔考察〕新卒看護師が臨床で学び方を獲得するためには,戸惑う時期を乗り越えるレジリエンス,安心して学べる人的環境を作る対人関係スキルが必要である。また組織の側には,新卒看護師の組織社会化を促す働きかけが必要である。

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 本稿は,「質的研究論文のための査読者向けセミナー」〔2017年11月5日(日)於:聖路加国際大学〕における木下康仁先生の講演を収録し,整理したものです。 (編集室)

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はじめに

 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis:EGPA)に好発する多発単神経炎は麻痺やしびれを伴い,耐え難い痛みのために日常生活動作に支障をきたすことがある。理学療法や作業療法などのリハビリテーション(リハビリ)は薬物療法と同様に重要な治療の一つであり,診断後の治療早期から実施することにより,神経障害の改善,進行の遅延が期待できる。また,補助療法としての温熱療法は神経・筋に対する作用と循環機能に対する作用により,しびれや痛みの緩和に対して有効である(櫻井,前田,2013)。近年では慢性疼痛に対して集学的疼痛治療プログラムが進歩し,その中で温熱療法を含む物理療法は直接的な生体反応の賦活に寄与するばかりでなく,疼痛緩和等による精神機能面に対する効果も担っている(牛田,2011;山下,2011)。

 入院生活ではリハビリを行なう時間は限られており,EGPAによる重度の神経障害を伴う患者の神経症状の回復は遅い。病棟において,看護の一環として施行している温熱療法の継続が身体的・精神的苦痛の改善において有効であった事例を経験したので,報告する。

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 病棟の看護師が,「認知症で話ができず,寝返りも打てず,歩くこともできず,家族の介護力も弱い」と評するAさん(80歳代,女性)を,在宅看護CNSが自宅を訪問した。

 目をそむけるAさんにCNSは「私との関係をはかりかねている」と判断し,まず語りかけたのは猫のミーコであった。CNSは,ペットに対する態度が信頼関係をつくることを知っていた。これでCNSはAさんとの「出会い」をつかんだ。

連載 理論構築を学ぶ─看護現象から知を生むために・7

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はじめに

 前号では,Meleis(2012)による理論構築の4つの方法に基づき,実践からの理論構築,ならびに理論に導かれた実践からの理論構築の2つについて主に述べられた。今回はそのほかの2つ,研究からの理論構築と,理論に導かれた研究からの理論構築(既存の理論を研究に適用し新たな理論を構築する戦略)について述べる。これに先立ってまず整理しておきたいのは,改めて研究と理論の関係とは何か,そして研究と理論と実践はどのように関係しているのかを考えることである。

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次号予告・編集後記

基本情報

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看護研究
51巻1号 (2018年2月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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