- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
査読は,いろいろな意味でオープンにされることが少ない。査読を実施する立場になったとき,そのプロセスで誰かと相談することはないし,査読を受けた人が査読結果に対してどのように感じたかを知ることもない。自分の査読が役に立ったのかどうかも,修正論文を通して推測するしかない。私は昨年,日本看護管理学会から秀逸査読者賞という賞をいただいた。しかし,私の査読の何がよくて表彰して下さったのかわからない。思いつくのは,査読の期限を守ったことと,意見の相違レベルのことは投稿者の意見を尊重したくらいのことである。何となくベールに包まれたような査読のプロセスがオープンにされることは,査読をする人にも査読を受ける人にも,意味のあることではないかと思う。
質的研究論文のための査読セミナーの準備をする話し合いの中で,私たち研究班が作成した査読ガイドラインを用いて,参加者の方に初回投稿論文の模擬査読を実施してもらうのがよいということになった。その際,自分自身の初回投稿論文を模擬査読に提供してもよいと思った理由は,当時は,その論文が採択され,掲載前の校正中というタイミングのよさもあったが,査読のおかげで修正論文がよくなったと,私自身が思えたからである。
よい査読をしてもらったと思えることは,常にあるわけではない。査読を受ける立場で,査読がよいと感じるときはどのような場合かを考えてみた。それには,図のように4つの場合があると思う。以下に示すように,指摘を受けてから,
A.気づいてすぐに修正する/修正しない場合
B.気づいて,考えて修正する/修正しない場合
C.気づいて,調べて,考えて修正する/修正しない場合
D.気づいて調べて考えて,そこから再び考えて調べてを繰り返し,そのプロセスで新たな気づきや学びを得て修正する/修正しない場合
の4つである。査読を受けることによって新たな気づきや学びを得ることは,投稿論文の修正を完成させることと同じくらい大切だと思う。つまり,投稿者に何らかの気づきを与えてくれる査読が,よい査読といえる。
本稿にて査読のプロセスとして取り上げるのは,『日本看護学教育学会誌』に投稿した論文である。この論文は査読を経て,同学会誌27巻1号に掲載された(グレッグ,脇坂,林,2017)。初回投稿論文,掲載論文ともに,本特集での掲載については編集委員会の使用許可を得ている。また本稿では査読の具体的な指摘内容について紹介するが,それについては,本学会がブラインド査読を採用しているため,編集委員会を通して,査読者から本稿執筆の許可を得た。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.