臨床皮膚科 54巻4号 (2000年4月)

カラーアトラス

Pseudocyst of the auricle 手塚 匡哉
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 患者 49歳,男性

 家族歴・既往歴 特記事項なし.

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 1997年7〜9月の3か月間に,当科を受診した伝染性膿痂疹26症例について原因菌,およびそのうち25症例について薬剤感受性,19症例についてコアグラーゼ型,ファージ型,表皮剥脱素の検索を行った.全例で主な分離菌として黄色ブドウ球菌(以下黄色ブ菌)が検出され,そのうち黄色ブ菌単独が20例,溶血性連鎖球菌とともに分離されたものが3例,その他3例であった.25症例26株の黄色ブ菌について薬剤感受性試験を施行したところ,4症例からはメチシリン耐性黄色ブ菌(以下MRSA)が分離された.うち2症例はMRSA単独検出症例で,2症例とも一見痂皮化途上を思わせる湿潤傾向に乏しい皮疹が拡大する特徴的な臨床像を呈した.

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 外陰部広範囲の萎縮性硬化性苔癬(lichen sclerosus et atrophicus,以下LSA)に有棘細胞癌を併発した57歳女性例を報告した.両側大陰唇外方から肛門近傍にかけてLSAに典型的な局面があり,局面内の陰核左方には拇指頭大のびらんを認めた.組織学的にも局面はLSA,びらん部は有棘細胞癌(squamous cell carcinoma,以下SCC)と確認され,その境界部では,表皮内角化細胞に異型性がありロイコプラキアの状態であった.LSAの部分を含めたSCCの拡大切除術および化学療法を施行5か月後にリンパ節に転移し,両鼠径リンパ節郭清術を施行した.LSAとびらん部との境界部の組織像から,SCCはLSAからロイコプラキアの状態を経て生じたものと考えられ,文献的に考察した.

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 1998年に経験した15歳以上の麻疹6例を報告した.症例1,4,6は幼児期の麻疹ワクチン接種を確認できた.麻疹ワクチン接種歴のある例はない例より,麻疹の症状や検査値異常が軽い傾向がみられ,とくに異型リンパ球の出現で大きな差がみられた.麻疹ワクチン接種歴のある例のHI抗体価とIgG(EIA)抗体価は急性期に陽性で,回復期は高値となった.麻疹ワクチンの接種歴があっても,また急性期のHI抗体価が8倍以上あっても,麻疹の可能性があるので注意が必要である.

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 特発性血管浮腫の患者には,angiotensinconverting enzyme(ACE)阻害剤は禁忌であると報告されている.今回,ACE阻害剤の内服で血管浮腫が誘発され,検査の結果,遺伝性血管浮腫(hereditary angioedema:HAE)と診断した症例をここに報告する.63歳,女性.妊娠中から血管浮腫を繰り返していた.狭心症,高脂血症の既往があり,加療中であった.夜間胸痛を自覚し,近医にてニトログリセリンを舌下した.帰宅後および翌朝にアラセプリル(セタプリル®)を内服したところ,その夕方に左頬部の腫脹を自覚した.顔面の腫脹が増強し,呼吸困難も生じたため当科に入院した.血液検査にて,C1エステラーゼインヒビターが5.0mg/dl以下,活性は25%以下であった.患者の長女にも,生後より顔面の血管浮腫の既往があり,家族歴を考慮して本症例をHAEと診断した.血管浮腫とACE阻害剤との関係について若干の考察を加えた.

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 37歳,女性.1996年より月経痛のためにアンピロキシカム(フルカム®)13.5mgの屯用を始めた.1998年1月よりアンピロキシカム内服のたびに下口唇が腫脹し,水疱が出現するようになった.5月下旬の初診時には下口唇を中心に黒色痂皮が付着し,一部びらんを認めた.アンピロキシカムの内服誘発試験は陽性で,アンピロキシカムによる固定薬疹と診断した.なお無疹部で施行したアンピロキシカム,ピロキシカム,テノキシカムそれぞれの原末,チメロサール,チオサリチル酸,塩化第二水銀の貼布試験と光貼布試験はすべて陰性であった.

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 52歳,女性.約20年前から顔面,四肢および口唇を主体に全身の色素沈着を認めていた.初診の約2週間前から発熱,食欲不振,体重減少が出現した.検査値で血中ACTHの高値,血中コルチゾールの低値を認め,Addison病と診断した.抗副腎抗体は陰性.画像検査で副腎の石灰化像を認めた.デキサメタゾン0.5mg/日の内服を開始したところ検査値の正常化とともに約3か月で色素沈着の著明な改善をみた.

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 61歳,男性.播種状円板状エリテマトーデスとして治療中,血中デスモグレイン1抗体が陽性で,組織学的,免疫組織学的に紅斑性天疱瘡の所見を示し,臨床的に疱疹状天疱瘡の所見を示す小水疱が出現した.ジアフェニルスルフォンの投与により水疱は消失したが,貧血とともに発熱,膜性増殖性糸球体腎炎が出現し,全身性エリテマトーデスに移行した.ステロイドパルス療法により腎症は改善し,2年半後の現在プレドニゾロン7.5mg/日投与により皮疹の再発もなく,良好にコントロールされている.

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 39歳,女性,タイ人.1998年1月より,顔面,前胸部に自覚症状のない,辺縁に帽針頭大の小水疱が並んだ拇指頭大までの角化性紅斑が出現.TPHA 320 x,抗核抗体(-).組織学的に不全角化,基底層の液状変性,表皮下水疱,メラニンの滴落,真皮上層の血管拡張,付属器周囲にリンパ球浸潤が認められた.蛍光抗体直接法にて表皮・真皮境界部にIgG,IgA,IgM,C3ともに陰性.プレドニゾロン1日15mg内服およびロコイド軟膏単純塗布を開始.4週間後には皮疹は色素沈着を残し軽快.プレドニゾロンを漸減・中止し,約1年後の現在再発はみられていない.全身性エリテマトーデスでは水疱形成は時おりみられるが,円板状エリテマトーデスに水疱を生じたとの報告はいまだみられない.

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 多発性筋炎,進行性全身性硬化症,Sjögren症候群,慢性関節リウマチを合併した成人女性のオーバーラップ症候群で,手関節,趾指関節部への石灰沈着を合併した症例を経験した.石灰沈着に対し,制酸剤として用いられているaluminium hydroxide(商品名:アルミゲル®)を内服し,著明に石灰沈着が減少した.

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要約 コントロール不良の糖尿病を有する36歳の女性の背部に発生したacquired reactive perforating collagenosisの症例を報告した.皮疹は小豆大の紅色丘疹で中心に角化性痂皮を伴い,上背部中央には乏しい.瘙痒があり,掻破痕が著しい.組織学的に,表皮は肥厚し錯角化を伴う厚い角層が固着し,表皮を貫くように数条の膠原線維と弾力線維が若干の細胞成分を伴って変性しつつ真皮乳頭から角層へと突き抜けるような像を認めた.皮疹がほぼ背部に限られていること,短期間に突然出現し掻破痕があることから,長期糖尿病による微小循環障害で発症準備状態であったところに発汗などが端緒となり,掻破により皮膚が損傷を受け,変性した膠原線維を生体内でうまく処理できずに経表皮的に排除しようとして皮疹が形成されるに至ったと考えられる.

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 プロブコールが奏効した顔面の扁平黄色腫の1例を報告した.症例は46歳主婦,ステロイド外用の既往はない.初診の約10年前より両下眼瞼に黄色腫が出現し,徐々に頬部に拡大した.総コレステロール,LDLの上昇は軽度ではあるが,高脂血症の診断基準のIIa型高脂血症を認めた.プロブコール1日500mgの内服開始3か月後には色調の軽快を認め,17か月後には眼瞼部を除きほぼ消退した.総コレステロールは投与1か月後に,LDLは10か月後に正常化した.

Steatocystoma simplexの3例 木村 俊次
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 症例1:52歳,男性.3年来右大腿伸側に単発.症例2:45歳,女性.10年来項部に単発.症例3:61歳,男性.10年来右腹部に単発.いずれも示指頭大,常色で可動性あり.自覚症状なし.いずれも表面に小陥凹を有する.組織所見:3例とも重層扁平上皮から成る角質性嚢腫で,顆粒層を形成せずに波状ないし鋸歯状の角質層に移行する.症例1は壁と近接して,症例2は壁内に,成熟脂腺がみられ,症例3は内腔に脂腺細胞と思われる細胞塊を認めた.本嚢腫は当科16年間に3例で,同期間中のsteatocystoma multi—plex(SM)の26例,表皮様嚢腫の約1,600例に比べて,稀なものといえる.本嚢腫とSMとの異同についても論じた.

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 42歳,男性.1996年から1998年の間に頭部,顔面,体幹,四肢に22個の基底細胞上皮腫を認め,切除した.組織型はいずれも表在型を示した.砒素摂取歴,放射線照射歴はなく,悪性腫瘍の合併,基底細胞母斑症候群にみられる所見も認められず発生誘因は不明であった.

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 症例は51歳,女性.生来左前腕に血管腫があり,乳児期に部分切除を受けた.20歳頃より同瘢痕部上に,黒褐色局面が出現し,次第に隆起拡大した.病理組織検査にて基底細胞様の腫瘍細胞塊を認め,その辺縁は柵状の配列を認めた.周囲では裂隙の形成を認め,基底細胞癌と診断した.基底細胞癌が放射線曝露,日光曝露などから生じることは広く知られているが,今回のように血管腫切除後瘢痕部に基底細胞癌が生じることはきわめてまれであり,文献的考察を加え報告した.

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 69歳,男性.6年前,外科医院にて足白癬に対して限界線照射治療が約8か月間続けられた.限界線照射治療開始後2か月目より両足背,両足底に慢性放射線皮膚炎が出現し,限界線照射治療開始後5か月目より,右足底に限界線照射が原因と思われる角化症が出現した.限界線照射治療後3年目に右足底の角化症の部位に有棘細胞癌が発生した.本症例は限界線照射により放射線角化症が生じ,それが有棘細胞癌に移行したものであり,限界線照射は廃止すべきである.

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 46歳女性(第1例)と71歳女性(第2例)の2例のNantaの骨母斑を報告した.第1例は左口角部の皮下硬結を伴った黒褐色米粒大の小結節で,組織学的に真皮上層に骨化像と複合母斑を,真皮深層にケラチン様物質を入れる異物肉芽腫性慢性炎症を伴っていた.第2例は右頬部の米粒大の黒色小結節で,組織学的に真皮内母斑巣とその直下に骨形成を認め炎症を欠いていた.第1例は毛包角質嚢腫とその破壊による炎症が,第2例は母斑細胞巣が直接的に骨形成を誘導したと考えた.

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 症例:10歳,女児.右母指爪に特別な誘因なく黒色色素線条が出現してきた.4歳時,某病院を受診し,切除したほうがよいと言われ不安になり,徐々に拡大したため,同年当科を受診した.受診時,右母指爪の尺側3mm程度を残し,中央部1/3が黒褐色,橈側1/3は黒色で,爪甲の凹凸,爪甲層状剥離を認めた.また,後爪郭では青色が透見された.家族の強い希望と,小児の爪甲色素線条が自然消失した報告例を踏まえ外来で慎重に経過観察することとした.7年7か月後,橈側2mmを残し,色素線条はほぼ消失し,また爪の変形も消失した.過去の報告には生後まもなく出現した爪甲色素線条に爪変形を伴っていたものを経過観察した報告は見あたらず,貴重な症例と考え報告した.

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 27歳,女性の右鼠径部に生じた皮膚子宮内膜症の1例を報告した.外科的手術の既往はなく右鼠径部に半年前皮下結節が出現し初診時拇指頭大であった.圧痛を伴うが月経周期に一致した症状はない.組織学的に子宮内膜症に特徴的な腺腔構造と間質が認められた.子宮周囲にも子宮内膜症を合併しGnRH誘導体である酢酸ブセレリン点鼻にて経過観察中である.本邦皮膚科領域では鼠径部に生じた報告は稀であるが,成人女性の圧痛を伴う腫瘤の鑑別診断として考慮する必要を考えた.

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 生後1日の男児.後頭部に広基有茎性で25×16×25mmの隆起性腫瘤を認め,臨床的に髄膜瘤が疑われたがMRIで頭蓋内との交通は認められなかった.皮膚生検では腫瘤上部の病理組織像は皮膚リンパ管腫の様相を呈していた.6か月まで患児の成長を待って全摘術を施行し病理組織の全体像を詳細に検討したところ,腫瘤底部にmeningothelial cellとpasmmoma bodyを認めた.以上の所見より本症を原発性皮膚髄膜腫の亜型であるrudimentary meningoceleと診断した.rudimentary meningocele自体稀な疾患であるが,生下時に頭部腫瘤を認めた症例はきわめて珍しいと思われた.

連載

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次の外陰部の皮膚疾患に関する記載のうち正しいものはどれか.

①紅色陰癬は陰股部に好発する真菌症でWood灯で緑黄色の蛍光を発する.

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“A Day In My Office”

 “A Day in the Life of…”は本や映画等でおなじみですが,今回はアメリカの皮膚科医のスタイル(私自身を例に取らせて頂きます)についてお話ししましょう.最近はグループ開業(複数の皮膚科医で一つの医院/設備や従業員を共有する)がほとんどで,私のようにソロで開業し,しかもコスメチックなことは一切やらない皮膚科医が少なくなりました.私は通常午前8時15分頃オフィスへ到着し,コーヒーを飲みながら診察前に電子メールを調べたり,また私が読んでしまった医院で購読している雑誌(コンピュータ,美術,車,オーディオ,日本経済新聞/英語版に至るまでありとあらゆるもの)を待合い室に出し,診察は9時に開始します.通常午前中10人,午後12,3人ほどの患者を診ており,excision surgeryも看護婦なしで一人でやっています.その場合は午前,午後の最後に45分をさいて11時15分か4時15分から始めるようにして他の患者に迷惑がかからないようにし,一人では手に負えないときはMOHSや形成外科といった専門医に回しています.

 診察の場合ですが初診の患者さんはやはり再来よりもずっと時間が掛かってしまいます.というのも病気の一般的な説明に始まり,ありとあらゆる治療の可能性等を詳しく説明して納得させねばならず,またこれが乾癬の患者さんだったりするとさらに時間を要します.しかしその反面再来の場合はわずかな時間で済みますので,もっと仕事,家族,学業や恋人のことなど患者の楽しいことがらについておしゃべりをし,楽しい時間を過ごしています.お互いに得るところが多く,私も患者も両方ハッピーです.また患者は私がコンピュータ好きだということをよく知っていて,度々病気ではなくコンピュータの話を聞きに来る患者もいるほどです.以前に申し上げたと思いますが,ここアメリカでは以前にも増してペーパーワークが増えておりますが,幸いに私の医院では私がやらなくてもよいように従業員がやってくれますので,お陰で私は思う存分に患者と時間を過ごすことができます.

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 難治な褥瘡などの皮膚潰瘍に対し,我々は歯ブラシを用いた自称ブラッシング療法を行っている.適切な前処置と栄養管理・体交指導のもとでブラッシング療法を行い,著しい感染創,腱・骨・骨髄が露出するなど多くの重症褥瘡を治癒または在宅治療に導けた.また外傷性潰瘍や3度熱傷などの難治性皮膚潰瘍についても良好な治療結果が得られた.

基本情報

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臨床皮膚科
54巻4号 (2000年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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