臨床皮膚科 53巻6号 (1999年5月)

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 患者 39歳,女性

 初診 1995年9月13日

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 1997年12月より1998年4月までの5か月間に成人麻疹15例を経験し,そのうち2例に麻疹肺炎を合併した.症例6:22歳女性,胸部X線撮影にて線状から網状,小粒状陰影が出現.症例11:27歳女性,胸部X線撮影上の同様の異常陰影に加え,血液ガス分析にてPaO2の低下を認め,ステロイドの全身投与にて改善.2例とも胸部CT撮影にて麻疹による間質性肺炎と診断された.本邦における成人麻疹肺炎の報告は,これまでに10数例と少なくまれとされていた.しかし,実際の肺炎合併率は年齢により異なり,本邦でも胸部X線上3〜50%に異常がみられたとの報告がある.成人麻疹例では常に麻疹肺炎の合併を念頭に置き,胸部X線撮影を励行することが肝要である.また診断に際しては,vaccine fail—ureによる抗体価の変動が存在するため,予防接種歴の有無とペア血清による抗体価の有意な上昇を確認する必要がある.

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 指趾に生じた食道癌の皮膚転移2例を報告するとともに,本邦で過去10年間に報告された転移性皮膚癌について原発腫瘍と転移部位の関係を検討した.症例1:53歳,男性.下部食道癌に対し食道全摘出術,胸骨前胃再建術および腹部リンパ節郭清術を受けた.8か月後,右母趾腹に圧痛を伴う紅色結節が出現し,さらに左中指尖,右環指尖,左足底にも同様の結節が新生した.症例2:62歳,男性.下部食道癌に対し術前化学療法中,左示指尖に圧痛を伴う皮下結節が出現した.これらは組織学的に扁平上皮癌で,食道癌の皮膚転移と診断した.転移性皮膚癌の出現部位は原発腫瘍により異なる傾向がある.指趾の転移性皮膚癌は稀であり,自験例を含めこれまで本邦では12例の報告がある.食道癌の皮膚転移についての本邦報告例14例の部位は,11例が頭部・顔面であったほか,3例で指趾に生じており,指趾へ皮膚転移をきたす原発腫瘍として考慮されるべき悪性腫瘍であると考えた.

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 北海道北見市に在住の60歳男性に生じたアルベンダゾールによる脱毛症の1例を経験した.C型慢性肝炎に併発した肝多包虫症に対しアルベンダゾールの内服治療を開始したところ,内服約2か月後に全身に急激な脱毛が生じてきた.脱毛部の組織学的所見では成長期毛包の消失が認められ,残存する毛包は漏斗部より上方で開大し,層状あるいは無構造様物質で占められていた.アルベンダゾールの内服中止により脱毛は改善し,毛髪は完全に回復した.薬剤性脱毛症と休止期脱毛について文献的に考察を加え報告する.

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 62歳,女性.両上肢の白色丘疹性皮疹ならびに白色局面を主訴に受診.組織学的に典型的な硬化性萎縮性苔癬(LSA)の像を呈した.全身の皮膚を診察したところ,陰部にも典型的なLSAが見いだされた.陰部ならびに陰部外LSAの合併の報告は欧米と比べ本邦では少なく,本邦の陰部外LSAでは陰部皮疹の合併が見逃されている可能性が示唆された.陰部LSAは扁平上皮癌の素地ともなりうることから,陰部外LSAを診た場合,たとえ患者が自覚していなくとも積極的に陰部の診察を行うことの重要性が示唆された.また自験例ではテストステロン含有軟膏にて加療し,瘙痒は軽快しており,同薬剤の有効性が示唆された.

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 76歳の男性.頭頂部に限局した類天疱瘡の1例を報告した.拇指頭大の緊満性水疱部より生検を行い,病理組織学的には表皮真皮境界部に解離を認め,真皮内に好酸球を混じる細胞浸潤がみられた.皮疹部の蛍光抗体直接法では基底膜部にIgGとC3が線状に沈着していた.蛍光抗体間接法では160倍陽性であった.現在,0.05%酪酸クロベタゾン軟膏外用および黄連解毒湯エキス内服にて水疱新生はほとんどみられない.

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 67歳,女性.39℃の発熱と上肢,体幹,掌蹠の紅斑を主症状とし,フェリチン高値,CD 4/CD 8の著明な低下が認められた.成人Still病と診断し,プレドニゾロン50mg/日投与を行うも無効で,シクロスポリン5mg/kg/日の併用が著効した.シクロスポリン単独投与では再燃したため,現在は両者の少量併用投与を行っている.コントロールが困難な成人Still病では,シクロスポリンは投与する価値がある薬剤と考えた.

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 皮膚筋炎に伴う間質性肺炎には,急速に進行し治療に抵抗する予後不良の症例があり,臨床的にも間質性肺炎の治療は重要な課題である.今回,われわれはステロイド内服治療中に間質性肺炎の急性増悪がみられ,シクロスポリンAによる治療を開始したが,その7日後にカリニ肺炎を併発し,死亡した1例を経験した.皮膚筋炎における間質性肺炎の治療およびカリニ肺炎併発について考察した.

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 58歳,男性.工事現場で作業中,熱傷を負い,近医で分層植皮術を受けた.残存する下腿の潰瘍,熱傷後の瘢痕に対して当科で治療を行った.下腿潰瘍は難治で種々の外用療法,外科的治療を要した.入院中の検査で筋緊張性ジストロフィーが見いだされた.本疾患が創傷治癒に与える影響について若干の文献的考察を加えた.

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 69歳,女性.左頬部の母指頭大の黒色腫瘤(基底細胞癌),上口唇部の大豆大腫瘤(日光角化症)に対して全身麻酔下に切除術を行い,鎖骨部より採皮して遊離植皮術を施行した.手術翌日,初めてトイレに歩いて行った際,気分不良,胸部不快感,圧迫感が出現し転倒した.肺動脈造影で,右肺の上中下葉,左肺の下葉に多数の塞栓像が認められ肺塞栓症と診断した.ウロキナーゼ,ヘパリンにより血栓溶解療法,抗凝固療法を行い軽快した.下肢静脈造影で左下肢の深部静脈に血栓像を認めた.肺塞栓症は,高齢,肥満などの危険因子を有する場合には,比較的軽微な手術後や長期臥床,悪性疾患などが誘因となって発症し得る疾患として念頭におく必要がある.さらに,発症すれば重篤な経過をとる症例が多いため予防的処置を講ずることが大切と思われた.

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 57歳,女性.左膝部に母指頭大,地図状の瘢痕浸潤様局面,四肢・下腹部に皮下結節,背部・腰部に米粒大の紅褐色丘疹を集簇性に認めた.腰部丘疹部は病理組織学的に表皮直下から真皮上層部分に結節状,小型の乾酪壊死を伴わない肉芽腫を多数認め,皮下結節部も同様の乾酪壊死を伴わない肉芽腫の形成を真皮下層から皮下組織に認めた.胸部X線像で両側肺門部リンパ節腫脹を認め,血清リゾチームは高値を示し,ツベルクリン反応は陰性であった.瘢痕浸潤,皮下型,腺病性苔癬様皮疹を伴ったサルコイドーシスと診断した.プレドニゾロンを30mgより投与し,左膝部の瘢痕浸潤は軽度瘢痕を残したが,他の皮疹はすべて消退した.3つの異なる皮膚病変の重複例であるばかりでなく,腺病性苔癬様皮疹という稀な病型を含んでいた点,これらの複数の皮膚病変が同時に,また広範囲に出現した点において非常に稀な例と思われた.

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 77歳,男性.肺ノカルジア症に続発した皮膚ノカルジア症の1例を報告した.1995年1月頃より肺炎,肺線維症の診断を受け,抗生剤,ステロイド内服により治療されていた.同年9月,呼吸不全に合併し,全身に米粒大までの膿疱が多発した.膿疱の皮膚生検組織では,表皮内,皮下に膿瘍がみられ,膿瘍内に,グラム陽性,PAS陽性,好酸菌染色弱陽性を示す菌糸状桿菌を認めた.膿疱,組織の培養よりNocardiaが検出され,生理学的性状より.Nocardia brasiliensisと同定した.また喀痰からは,皮膚と同様にN.brasiliensisが分離されるとともに結核菌も検出された.自験例は肺結核を併発した肺ノカルジア症に皮膚ノカルジア症が続発したと考えられた.

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 35歳,女性.頭部に長期ステロイド剤外用の後に,圧痛のある紅斑局面を生じ,受診した.紅斑局面内に束状の毛髪が密集してみられ,病変部から黄色ブドウ球菌が検出された.同部からの皮膚生検にて単一の毛孔開口部に向けて複数の毛幹が伸びていく像や毛包周囲の炎症性細胞浸潤および線維化の像を認めた.この特異的な臨床像と組織像からtufted hair folliculitisと診断した.ステロイド剤外用の中止と,黄色ブドウ球菌に感受性を示したミノサイクリンの内服で,圧痛は消失し,病変の拡大を認めないが,瘢痕性局面は残存している.

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 Wilson病にてD-ペニシラミンを内服中の30歳,女性に発症した蛇行性穿孔性弾力線維症の1例を報告した.項頸部に米粒大の角化性紅色丘疹が蛇行状に配列し,組織学的に好塩基性変性物質の経表皮的排出像と鋸歯状に変性した弾力線維の増生を認めた.D-ペニシラミンによる蛇行性穿孔性弾力線維症は比較的まれであり,これまでに海外では18例,本邦では6例の報告がある.発症機序は,D-ペニシラミンがエラスチンの架橋結合を阻害することによる弾力線維の形成障害と推測されている.現在までのところ確実な治療法はなく,基礎疾患のほとんどがWilson病であることからD-ペニシラミンの投与中止も難しく,代替薬もないのが現状である.

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 症例1:45歳,女性.強い瘙痒を伴う小豆大褐色丘疹で一部は融合し局面を形成.症例2:36歳,男性.下腿,躯幹に軽度の瘙痒を伴う毛嚢一致性の褐色丘疹.共に糖尿病による慢性腎不全のため透析中.組織学的に症例1は膠原線維と弾性線維の,症例2は膠原線維の経表皮排出像を認めた.糖尿病,腎不全に伴うperforating dis—orderの病因の一つとして,自験2例の観察により掻破,細菌感染等の外的刺激が重要と思われた.

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 1歳,女児.家族内に同症を認めない.生下時より四肢および背部を主体に膿疱を伴う紅斑が多発.臨床像,末梢血好酸球数増加,および左大腿部の生検組織における表皮向性を伴う好酸球浸潤と,有棘層上層の好酸球性膿疱の形成より,incontinentia pigmentiと診断した.G-band法による染色体検査で異常は見られなかった.紅斑,膿疱は角化性丘疹を一過性に生じた後,大理石模様状に色素沈着を生じた.生後7か月頃,右眼の白内障と眼球内の白色組織塊を指摘されるも有効な治療法がなく失明に至った.

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 44歳,男性.初診の3年前より左胸部に淡紅褐色の丘疹が生じ,漸次増大した.初診時,小豆大の表面平滑な淡紅色結節を認めた.組織学的検査では表皮は軽度萎縮し,表皮直下から真皮下層にかけてリンパ球,異型性のない組織球様細胞とTouton型巨細胞よりなる肉芽腫を認めた.

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 52歳女性の左手背(症例1)および61歳女性の左腰部(症例2)に生じたencapsulated fatnecrosisの2例を報告した.臨床的には,両症例とも自覚症状のない可動性を有する単発性の皮下結節として認められ,組織学的には脂肪組織の変性および壊死像を示し,明瞭な線維性被膜に被包された組織であった.また被膜部分はelastica—van Gieson染色で淡紅色を呈し,膠原線維から成っていた.本症はencapsulated fat necrosis以外にnodular-cystic fat necrosis, mobile en—capsulated lipomaなどの疾患名での報告も多いが,本症の本態が膠原線維で被包された脂肪壊死であり,腫瘍(脂肪腫)ではないこと,また自験例を含め他の報告例でも病巣全体あるいは一部が嚢胞状(cysticな)構造を認めない症例が多いことなどから,われわれはencapsulated fat necrosisという疾患名が最も適当と考えた.

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 46歳男性の顔に生じたpalisaded encap—sulated neuromaの1例を報告した.左口角部に径3〜4mmのドーム状小結節があった.組織学的に表皮直下から真皮内に境界明瞭な結節性病変があり,紡錘形の細胞が束になって交錯していた.腫瘍内にBodian染色で神経軸索がみられた.本邦で3例目の報告である.

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 56歳女性の右腹部に生じた顆粒細胞腫瘍の1例を報告した.患者は2年前に同部の結節を当科にて摘出した.術後創部周囲に徐々に浸潤を触れるようになり再度摘出術を受けた.2回とも病理組織学的に胞体内に多数の好酸性顆粒を持つ腫瘍細胞よりなり,顆粒細胞腫瘍と診断した.免疫組織化学的検索において腫瘍細胞はS−100蛋白,neuron-specific enolase陽性であった.また,初回の手術時に病理組織学的に切除できたと考えられたにもかかわらず再発した点から,本腫瘍の切除の際には十分にsurgical marginをとる必要があると思われた.

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 36歳女性,前額やや左寄りに認められたneurothekeomaの1例を報告した.組織学的には典型的で,Argenyiらの提唱するmyxoid型と思われた.免疫組織学的にはS−100蛋白(−),neuron-specific enolase(−),vimentin(+)であった.本腫瘍は本邦において稀な末梢神経腫瘍である.さまざまな名称で呼ばれているが,病名の統一が必要と思われた.

連載

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147

次の組み合わせのうち正しいものはどれか.

①壊死性筋膜炎 Vibrio vulnificus

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判りやすい論文の表記,面白く使用されている日本語

 あなたは今までに皮膚科雑誌を読んでいて略語がよく分からなかったことはありませんか.LP(Lichen Planus)とかBP(Bullous Pemphigoid)などはよくご存じだと思いますが,BPもひょっとしたら他の雑誌ではBlood Pressureなのかもしれません.そうなると一度略語の最初に使われた意味をもう一度洗い直したほうがよいようですね.私からの提案としては,論文の初めに略語を説明する場所を設けてみてはどうかということです.The Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD,BlueJoumalとも呼ばれています)でも近いうちにこの方針がとられるようですから,ぜひ皆さんも論文を雑誌に投稿される時には考慮されてみてはいかがでしょうか.

 また論文の中で分析結果の詳細を記述したとします.“Group A had 16.3%+/−11.5%(95%CI53.8%to 74.9%)and group B had 26.4%+/−4.3%(95%CI25.8% to 44.3%)”を読んで,あなたはこの意味が判りますか?どうかぜひ図式に書き表して読者に判りやすくして下さい.JAADも判りやすい図式方式を取り入れる方針をすぐに始めるようです.この際すべての雑誌に取り入れてみてはいかがなものかと私は思います.

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 初診時すでに衛星病巣を認め,頭皮に原発した血管肉腫に対してインターロイキン2の局注と静注を併用したものの,結果的にS状結腸,骨,肺転移をきたし,血気胸のため死亡した1例を経験した.本症例では頭皮を頭蓋骨外板を含めて広範囲切除し,人工真皮で被覆した後,遊離分層植皮術を行った.手術は根治的ではなかったものの,真皮様組織の上に植皮を置くことで全層皮膚に近い外観が得られ,頭皮の被覆法の一つとして有用と考えられた.

基本情報

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臨床皮膚科
53巻6号 (1999年5月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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