臨床放射線 63巻7号 (2018年7月)

特集 小児画像診断における放射線被ばく低減への取り組み

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小児は成人より余命が長く,画像検査に伴ういろいろな侵襲に対する感受性が高いため,画像検査の「正当化と最適化」により心がけなければならない。成人より明らかに影響が大きいのは放射線被ばくによる発癌リスクであるが,画像診断による放射線被ばくで検査数,総線量ともに大きいのはCT検査である。過去にはCTのような低線量域の被ばくでは,発癌リスクが増大するという証拠はないとされていたが,近年小児CT検査被ばくにより様々な癌発生リスクが上昇するという論文が次々と発表された1-4)。個々のリスクは決して高くはないが,全体としての発癌リスクの増加が示唆される結果を出している。この事実をもってしても,CTの有用性が揺らぐわけではないが,小児担当医と診断担当医はこの事実を真摯に受け止めて小児CT検査に臨まなければならない。正当化と最適化とは,要約すれば,他の放射線を使わない検査に変えることができず本当に必要なCTのみに厳選し(正当化),検査そのものはできるだけ低い線量で必要な情報が得られるように画像の品質をコントロールして行う(最適化)ことである。

日本における小児CTの現状 宮嵜 治
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周知のように我が国のCT装置の普及率は世界一である。Ideguchiらは原著論文の中で日本のCTスキャンの台数はコンビニエンスストアの店舗数とほぼ等しいと述べている1)。我が国のCT台数はおよそ13,000台ほどであり,これは全国における1つのコンビニチェーンの店舗数とほぼ近似している(図1)。

自分の暮らしている地域のコンビニの数を思い出してみればこれと同じだけのCTの台数がこの街にあるのかと思うと複雑な気持ちになる。

世界的にCT被ばく,特にCT被ばく過多の意識が高まった2001年からすでに17年が経過している。本稿ではこの20年弱の期間において我が国と世界が経てきた,主に臨床面における小児CT被ばく低減の歩みを振り返ってみたいと思う。そのトピックとして基本をなす “最適化の現状” と “正当化の現状” に加え国際的にみた現状やリスクコミュニケーション,また将来の展望について解説する。

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小児心臓CTというと多くの放射線科医は無縁の世界だと考えていることが多いが,大学病院はもちろん,一般病院でも,小児科がある病院では先天性心疾患の小児を撮影する機会は突然訪れる。先天性心疾患の有病率は1%,複雑先天性心疾患で0.1%程度と高い。また,大学病院や専門病院で手術を終えた子どもたちが,医療連携や転居により地域の病院に受診する機会も増えているからである。CTの寝台に寝ているほんの小さな子ども,速い心拍数,わかりにくい血行動態。診断参考レベルにも小児心臓CTの線量は書いていない。年に1回あるかないかの検査を前に,失敗してはいけないと,成人並みの線量で何心拍も何相も撮影してしまう,というのはよく聞く話である。

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小児整形外科領域では胸部・腹部写真に加え,全身骨が撮影対象である。診断価値を損なわずに被ばくを低減する放射線防護の最適化が肝要だが,“小児は大人を小さくしたものではない” といわれ,特殊なスキルが要求される。本稿では,小児整形外科領域における放射線被ばく低減法を3つ紹介する。

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CTは優れた診断能とアクセシビリティを兼ね備えた画像診断機器として現代医療に大きな便益をもたらしており,様々な臨床状況下で必要不可欠な役割を担っている。一方でCTは被ばく線量の高いモダリティでもあり,急速な検査数の増加と相まって潜在的な発癌リスクへの懸念が高まってきている。中高年期と比べて新生児期から青年期では放射線感受性が高く,CT検査にあたり特別な注意を払う必要がある。とりわけ頭部CTは若年者において最も高頻度に実施されるCT検査であり,検査の正当化と最適化が集団全体の医療被ばく低減に大きく寄与するものと考えられる。本稿では若年者頭部CTと発癌リスクに関するこれまでの議論を振り返り,検査の正当化や最適化の意義を再考しつつ,低管電圧撮影や逐次近似画像再構成法など最近の被ばく低減技術の頭部領域における応用について概説する。

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小児の画像診断における被ばく低減のためには,本当に必要な検査のみを小児の特性にあわせて施行する,検査の「正当化」と「最適化」が必須となる1)。検査の「最適化」については,すでに多くの施設でALARA(as low as reasonably achievable)の原則に基づき,線量の低減が行われていると思われる。しかし検査の「正当化」については,放射線科医と検査をオーダーする小児科医,さらに患者の家族まで含めた幅広いコミュニケーションが必要となり,実践には一段高いハードルが存在する。

当院では2010年7月より小児頭部外傷の診療にNICEガイドラインを導入した。これは2000年代以降高まってきた医療被ばく低減の動きに呼応したものである。それまで当院ではCTを撮るかどうかは個々の医師の判断に任されており,軽症例に対しても「念のため」のCTが多く行われていた。NICEガイドライン導入でそれがどのように変化したか。ガイドライン導入の経緯と導入前後のCT件数をまとめた。

また2014年からは小児の腹痛診療に積極的に超音波検査を活用する試みも開始した。超音波検査は被ばくのリスクを気にせず,繰り返し検査を行うことが可能で,小児の腹痛診療では第一選択となる検査である。超音波検査の活用でCT件数がどう変化したかもあわせて紹介する。

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アレルギーは,免疫応答を背景とした全身的,局所的障害であり,様々な環境由来の抗原が引き金となって生じる。過敏性肺炎は,肺を障害の首座としたアレルギー疾患である。好酸球浸潤を伴う肺疾患は,肺に好酸球浸潤を伴い,その発症にアレルギーの関与が疑われる疾患群である。いずれも,肺にびまん性陰影を呈しうる。本稿では,びまん性陰影を呈するアレルギー性肺疾患として,過敏性肺炎と好酸球浸潤を伴う肺疾患の画像診断について概説する。

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結合組織を構成する細胞外基質の代表には膠原線維と弾性線維があり,この2つは,体内に広く存在し,各種の細胞,組織,器官を支持,もしくはその構成要素となっている1)。遺伝性結合組織疾患とは,結合組織の生成や構造に関わる遺伝子の異常が原因で起こる一連の疾患をいい,骨・皮膚・血管壁の脆弱性に伴う特徴的な病態を呈する。大動脈解離や大動脈瘤破裂などは結合組織の脆弱性が原因で生じる致死的な心血管イベントの代表で,これらの疾患に罹患している患者の突然死の原因になりうるが,このような致死的なイベントが起こってはじめて罹患していることがわかる症例も散見される。

緊急性を要する遺伝性結合組織疾患の代表的なものとしてMarfan syndromeやvascular Ehlers-Danlos syndrome,Loeys-Dietz syndromeがある。これらの疾患は類似した臨床症状や画像所見を呈することがあるが,その一方でその疾患に特異的な症状や画像所見も認める。画像診断医の役割は,上記疾患の特徴的な画像所見について熟知し,臨床医にできるだけ早い時期からその存在を伝えることであり,それがその後の治療方針の決定に寄与し,ひいては患者の予後を改善させることにつながる。

本稿では,上記3疾患の臨床症状や画像所見などについて,当院で経験した症例に文献的考察を交えて概説する。

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Castleman病とは,1950年代にマサチューセッツ総合病院の病理医であるCastlemanらによって報告されたリンパ節腫大を特徴とするまれなリンパ増殖性疾患である1)。局所のリンパ節腫大が認められる限局性Castleman病(LCD)と複数のリンパ節腫大が認められる多中心性Castleman病(MCD)に分けられる。MCDはAIDS由来のカポジ肉腫病変から検出されたHHV-8の関連が報告されている2)。日本国内では少なく,ほとんどが特発性のMCD(iMCD)とされている。Castleman病はリンパ節の病理所見により,硝子血管型,形質細胞型,混合型に分けられ,MCDの多くは形質細胞型,混合型を示す3)。iMCDの典型では全身倦怠感,盗汗,発熱,食欲低下,体重減少で受診する。身体所見は多発リンパ節腫大,肝脾腫,胸腹水などの浮腫性変化,貧血を認め,腎不全を起こすこともある。血液所見では貧血,低アルブミン血症,多クローン性γグロブリン血症,IL-6高値,炎症反応亢進などを認めるとされる4)5)

TAFRO症候群とは,2010年に高井らがはじめて報告した病態で,thrombocystpenia(血小板減少),anasarca(全身性浮腫),fever(発熱),reticulin fibrosis(骨髄線維腫),organomegaly(肝脾腫・リンパ節腫大などの臓器腫大)という5つの症状の頭文字から名づけられている6)。近年になって臨床病理学的な特徴づけがされつつあるが,MCDと重なる部分も多く,現状ではMCDの亜型とされている。現在提唱されている診断基準を表1に示す7)8)。画像所見を主体とした報告自体少なく,いまだMCDとTAFRO症候群の画像的な差異の詳細は不明である。そこで,我々は後ろ向きにMCDとTAFRO症候群の画像所見をPET-CTを含め比較検討を行ったので報告する。

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Robinow症候群は様々な奇形を伴う非常にまれな遺伝子疾患であるが,最近報告例が増えつつある。胎児様顔貌,低身長,尿道下裂などの臨床所見が特徴とされている1)。画像所見に関しては,単純X線所見に関しては多くの報告があるが,頭部MRI所見に関してのまとまった報告はない。今回,我々はRobinow症候群の2例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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肺過誤腫は,ほとんどが肺野に発生するものであるが,まれに気管・気管支内にも発生する。今回我々は,CTで内部に脂肪濃度を認めた気管支内過誤腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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ガドリニウム造影剤による造影MRIは,病巣の評価や治療方針の決定において重要な役割を果たす。CTで用いられるヨード造影剤に比べ副作用頻度が少なく比較的安全とされるが,ごくまれに重篤な副作用を引き起こす。今回我々はMRI造影剤であるガドブトール(ガドビスト®)による重篤な非心原性肺水腫を経験したので,我が国初の報告として文献的考察を加えて報告する。

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抗菌薬セフトリアキソン(CTRX)の投与によって胆嚢内に胆石様の物質が生じることが判明しており,比較的早期に自然消失するため偽胆石と呼ばれる。今回セフトリアキソンによる偽胆石の症例を経験したので報告する。

連載

今月の症例 小山 雅司
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画像所見 造影CT(図1):十二指腸水平部から近位空腸の壁が肥厚している。十二指腸空腸移行部に,壁の造影効果が限局性に低下した領域を認める(図1C▷)。同部周囲の後腹膜や前腹壁下に大小の結節状ガスが散在している(図1A~C⇨)。前傍腎腔の吸収値は上昇して液状を呈し,腹水も認められる。

腹部単純X線(図2):仰臥位(図2A),立位(図2B)とも腸管ガスの形状や分布,実質臓器影に異常なく,遊離ガスや腹水を認めない。立位では左半身の緊張を和らげるように軀幹が左に傾いており,痛みの原因が左に存在することがうかがえる。

右第9肋骨の側方には化骨を伴う変形と硬化像を認める(図2C⇨)。第8肋骨にも淡い硬化像が疑われる(図2C▷)。

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編集後記

基本情報

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臨床放射線
63巻7号 (2018年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0009-9252 金原出版

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