Brain and Nerve 脳と神経 46巻7号 (1994年7月)

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はじめに

 運動性発語障害は構音障害,失構音,運動性失語からなる。構音障害と運動性失語とは明らかにその性質を異にする。失構音は一方で構音障害と境を接し,他方で運動性失語と往々にして重畳する。即ち,構音障害と運動性失語と失構音の三者は失構音を間に挟む形で運動性発語障害の概念を形成している(図1)。本稿ではこの中で構音障害と失構音に焦点を当て,その症候の特徴を分析し,病態と対比しつつ概説する。

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I.はじめに

 現今用いられているてんかん症候群の国際分類5)は,1989年10月インドニューデリーで開かれた国際抗てんかん連盟(International League AgainstEpilepsy;ILAE)総会で承認された。この分類の基本的な枠組みとなる2つの二分法(dichotomy)に基づく四分法(4—part classification)の考え方—てんかんを病因から特発性と症候性とに二分し,さらに発作型から全般発作か部分発作をもつてんかんに二分する—とそれぞれの範疇に属する症候群は,第一次試案(1985)4)に提示されているので,すでに10年の歳月を経たことになる。

 これまで著者らはこの分類の概要を紹介し,その有用性とともに問題点についても指摘してきた22,28〜34,40,43)。本稿ではてんかん分類が今日の形をとるに至るまでの歴史を概括し,現在の分類の基本的な考え方と問題点を概説する。

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 ヘルメット型脳磁計を用い,健常人20名と脳疾患患者56例において,聴覚誘発脳磁界を左右同時測定した。音刺激後約100msの磁界反応(N100m)の頂点潜時は刺激耳に対し対側半球では同側半球よりも有意に短い。健常人19例と脳疾患例47例で認められた典型的なN100mの頭皮上分布は,いずれの耳刺激でも左右一対の電流双極子型であった。電流双極子モデルにより,N100m信号源はMR画像上の側頭葉後部上面に推定された。シルヴィウス裂面からの高さを標準偏差でみると,健常人2.0mm,脳疾患例4.9mmであった。健常人1名と脳疾患例9例において,一側半球におけるN100m反応消失を認め,聴力検査で検知できない機能異常が示唆された。ヘルメット型脳磁計は非侵襲的であり,かつ高い時空間分解能で左右の聴覚機能を評価できることが示された。

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 CO2吸入による脳細胞外pH(pHe)の変化を測定し,CBFおよびICPの変化とあわせて,CO2を用いた脳acidosisの問題点について検討した。Ratを対象に調節呼吸下にCO2とO2の混合ガスを吸入させ呼吸性acidosisを負荷した。CO2濃度は0%,-5-%,-10-%,-20-%,-25-%と段階的に変化させた。pHeはpH感受性電極を大脳皮質に刺入し継時的に測定した。CO2吸入開始とともにpHeは速やかに低下し,一定濃度のCO2にてほぼ一定値を維持した。pHeは−0.10±0.03(5%),−0.31±0.08(10%),−0.49±0.09(20%),−0.64±0.10(25%)とCO2濃度に応じて低下した。pHeと動脈血pHの低下幅はほぼ同程度であった。CBFは5%CO2にて2倍を越え,CO2の増加に対するその後のCBF増加はわずかであった。ICPの変化はCBFの増加に類似していた。CO2吸入によるacidosisは脳pHeを確実に下げ,調節性にも富み可逆的でもあるが,全身的な因子に加えCBFやICPの変化が強く影響すると考えられた。

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 頸部頸動脈血栓内膜摘除術を施行した43症例でのMatas testを,stump pressure,cross-circula—tionの良否および脳血流(CBF)で評価した。Matas test中のCBFマップは,両側低下群,患側高度低下群,患側軽度低下群,無変化群に分類され,さらにMatas test施行不能群を加えた5つの頻度は各々8,10,14,7,4例であった。患側中大脳動脈領域の血流は,高度低下群で平均37から24ml/100g/minへと最も著明に低下した。施行不能群および高度低下群のstump pressureでは各々平均24,30mmHgと他の3群との間で有意な差が認められた。Cross-fillingがpoorな症例の血流は37から27ml/100g/min,goodな症例では39から34ml/100g/minに低下し,stump pressureと総頸動脈圧の比はpoorな症例が0.32,goodな症例が0.47で有意な差が認められた。以上より,約30%の症例で頸動脈遮断により著明な脳虚血が生じ,criticallevelとして灌流圧では体動脈圧の30%,CBFでは30ml/100g/minが示唆された。

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 成猫5匹を用い,定位脳手術で中隔野にカイニン酸(KA)を微量注入して辺縁系発作重積を誘発し,その発作の行動および脳波上の特徴をlong-term EEG/Video monitoringにより経時的に記録,分析した。

 KA注入3〜5分後より発作が始まり,辺縁系発作重積となった。脳波上は中隔野より始まった発作は,同側海馬,扁桃核へ波及し,ついで反対側にも波及した。7日以上経過すると突然激しく怒り出す「怒り発作」がみられるようになり,この発作時には,同側中隔野,海馬,扁桃核に同期する高頻度のrhythmic spikeが認められた。中隔野にカイニン酸を微量注入することで辺縁系発作を誘発できたが,慢性的に「怒り発作」がみられることが特徴的であり,中隔野の感情への関与が示唆された。

学会印象記

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 本年3月26日から30日まで「第11回国際パーキンソン病シンポジウム」が,ローマのヒルトンホテルで開催された。これは3年ごとに開かれているパーキンソン病ならびに関連領域に関する国際シンポジウムで,前回第10回は楢林博太郎順天堂大学名誉教授の会長で東京で行われている。ヒルトンホテルはローマの7つの丘の1つに位置する大変眺望の良いホテルで,数年前にはMovement Disorderの総会がここで開かれている。

 3月26日は午後4時半からopening ceremonyが行われ,それに引き続いてLondonのDr.G.SternとDr.C.D.Marsdenがそれぞれ教育講演を行った。Dr.Sternはパーキンソン病のHistoryならびに現在・未来のパーキンソン病の研究の動向についてoverviewを行い,Dr.Marsdenはパーキンソン病における外科的治療についてのreviewを行った。何れも広範な話を要領よくまとめられたもので,聞き手にとってはそれぞれの領域の現状を知るのに大変有益な教育講演であった。

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 死亡時40歳男性。16歳,上肢運動障害にて発症。以後,慢性進行性に経過した小脳性運動失調症が終始症状の中核をなし,22歳頃より性格変化を主体とする精神症状を合併した。33歳頃より律動性骨格筋ミオクローヌス(RSM)が出現。40歳,誤嚥のため急死。全経過24年。兄にも同様な神経症状が認められ,病理学的にオリーブ小脳系に主病変を有していたことから,常染色体劣性遺伝性Holmes型cortical cerebellaratrophy(Holmes型CCA)と診断された。過去の文献例より,若年発症のHolmes型CCAには痴呆を合併する特徴がみられ,中でも本症例に認めた側頭葉白質,脳幹網様体の病変は特異的所見と考えられた。また,小脳皮質病変は虫部より半球に強く,これも若年発症群に共通した特徴であった。本症例は,RSMとの関連が指摘されているGuillain-Mollaret三角,黒質,被殻には病変を認めず,その発現には高度な小脳病変による小脳核—視床系の解放現象が関与していると思われた。

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 臨床上,痴呆は軽度であったが発作的易怒,興奮の情動障害が目立った症例の剖検検索で,内嗅領域と扁桃核を中心とする大脳辺縁系のニューロピルに嗜銀性顆粒状構造(argyrophilic grain)の分布と同領域の軽度海綿状態が認められた。Argyrophilic grainは抗タウ陽性,抗ユビキチンに一部陽性で,免疫電顕ではtubulo-vesicularな構造を示していた。この病理所見はこれまでにargyrophilic grain dementiaとして報告されている症例に一致しており,本例の老年性変化は生理的範囲内にあり,血管性変化としては線条体の小ラクネ以外に梗塞などはないので,特異な臨床症状の病理学的背景として大脳辺縁系に多発するargyrophilicgrainを中心とする変化が疑われた。

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 現在本邦では比較的稀とされる頭蓋内結核腫の1例を報告し,そのMR像と組織所見を対比検討した。

 症例は46歳,女性。左顔面の痙攣にて入院した。単純CTでは右前頭葉皮質下に,周辺に浮腫を呈し,僅かにhigh densityの直径約1.5cmの腫瘤を認め,造影剤にて均一にenhanceされた。MRIでは,同部位は同心円状の3層構造を示し,中心部はT1WIにてiso,T2WIにてlow,第2層はT1WIにてlow,T2WIにてhigh,第3層はT1WIにてiso,T2WIにてlow intensityを示し,Gd-DTPAにて第2層が均一にenhanceされた。転移性脳腫瘍を疑い,全摘出術が施行された。組織所見では中心部は乾酪壊死巣,その外側はLanghans巨細胞や類上皮細胞による肉芽腫と浮腫を呈する層,最外側では膠原線維が被膜様に増生しており,結核結節であることが判明した。各部位はMRIで認められた3層構造に対応すると考えられた。

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 von Hippel-Lindau病の家族発生した2家系,5症例について報告した。第1家系は母娘のいずれも視神経,小脳,脊髄に多発性腫瘍がみられ,第2家系は,父親がvon Hippel病,小脳腫瘍,子供の兄妹にいずれもvon Hippel病と小脳,延髄,脊髄に多発性血管芽腫を認めた。腹部内臓病変として5例中腎細胞癌,膵嚢胞を各1例に認めた。家族発生したvon Hippel-Lindau病の本邦報告例は自験の2家系を含め21家系103例であった。家族発生例の特徴として①脊髄,延髄など中枢神経系に多発する傾向であった。②腹部内臓とくに腎細胞癌,副腎腫瘍,副睾丸腫瘍および膵,腎,肝の嚢胞などの合併が多かった。③家系によって発生する病変,部位などに類似性があった。④家族発生は継代するにしたがって発症年齢が若年化する傾向であった。

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症例呈示

 症例 K.T.46歳,男性(92-76225)。

 主訴 痙攣。

基本情報

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Brain and Nerve 脳と神経
46巻7号 (1994年7月)
電子版ISSN:2185-405X 印刷版ISSN:0006-8969 医学書院

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