「脳と神経」への手紙
脊髄髄膜型神経梅毒の1例
神崎 昭浩
1
1鳥取市立病院神経内科
pp.661
発行日 1997年7月1日
Published Date 1997/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901141
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神経梅毒は早期に診断し治療を開始することで取り返しのつかない廃疾を予防できる。今回,ギランバレー様に急性に起こった両下肢の弛緩性麻痺を示した脊髄型神経梅毒の1例を経験したので報告する。
患者は37歳女性で,頭痛と嘔気の後に両下肢脱力が出現し,その5日後に入院した。入院後,配偶者がばら疹を伴った梅毒であることが判明した(配偶者は6カ月前に感染しこの時に患者も感染)。入院時,体温36.1℃,皮疹など一般理学的所見に異常なかった。意識は清明で脳神経系は異常なかった。筋力は両下肢遠位部優位に低下し(右優位),足の背屈はできなかった。下肢で両側のアキレス腱反射が消失し,膝蓋腱反射が低下していた。上肢は正常範囲であった。病的反射はなかった。感覚は四肢の遠位部優位に全感覚鈍麻を認めた。Gowers'徴候陽性で,つぎ足歩行はできなかった。髄膜刺激徴候,協調運動障害,錐体外路症状,膀胱直腸障害はなかった。血清の梅毒のTPHA2,560倍以上,ガラス板法64倍,凝集法32倍,FTA-ABS 640倍であった。髄液では細胞248/mm3,蛋白110 mg/dl,糖45mg/dl,IgG 42.4 mg/dlと上昇し,梅毒のTPHA640倍,凝集法2倍であった。筋電図では下肢で神経原性変化を認めた。CMAP, SNAP, F波は正常範囲であった。頭CT,胸・腰MRIは正常範囲であった。
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