Brain and Nerve 脳と神経 39巻7号 (1987年7月発行)

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総説

脳とアラキドン酸カスケード清水　孝雄 39巻7号 , 1987年7月 , pp.597-613

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I．はじめに—アラキドン酸カスケード

　食事より摂取したアラキドン酸からは，図1に示したような多彩な生理活性物質が産生される。プロスタグランディン（以下，PGと略），トロンボキサン（TX），ロイコトリエン（LT），リポキシン（LX）等を総称してエイコサノイド（炭素数20個の脂肪酸誘導体の意味）と称する^1〜4）。これらの物質はホルモンとは異なり，ある細胞で産生されると，血液に乗って全身を巡るのではなく，ごく近傍の細胞に作用し，速やかに代謝される。局所ホルモンあるいは，オータコイドと呼ばれる所以である。神経伝達物質，ホルモン，そしてこのオータコイドは厳密に境界分け出来るものではないが，便宜上の分類を表1に示す。本稿は，初めにアラキドン酸カスケードの概説を行い，次に脳と神経系におけるエイコサノイドの代謝と作用について，最近の知見を筆者らの成績を含めてまとめたものである。

　LT生合成の詳細なメカニズムについては筆者の文献5を，また細胞情報伝達系の中での役割については，文献6に記されている。さらにLT全般の最新の研究については，月刊誌「代謝」（中山書店）の昭和62年3月号で詳細に記述されているので参照されたい。また必要な方は別刷りを請求して頂きたい。

書評

—編集　景山　直樹（名古屋大学名誉教授）　井村　裕夫（京都大学教授・内科）—下垂体腺腫高倉　公朋 39巻7号 , 1987年7月 , pp.614

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　わが国では，下垂体腺腫の診断，検査法と治療をまとめた成書が無く，永らく期待されていたが，本書はその要望に応えて出版された好著である。

　下垂体腺腫の診断についてみると，画像診断ではX線CTとMRIの登場で飛躍的な進歩を遂げ，一方内分泌機能検査の面ではradioim-munoassay法の普及に伴い，容易に，また正確に診断がつけられるようになり，治療経過も充分に追跡することが出来るようになった。病理組織学的には酵素抗体法の技術が確立したために，細胞レベルのホルモン産生の状態から，下垂体腺腫の病態を詳細に追求出来るようになっている。治療面では，顕微鏡下の経蝶形骨胴手術法により，下垂体腺腫が摘出されるようになったが，本法の利点は正常下垂体を残して，腫瘍だけを摘出可能にしたことと，開頭に伴うさまざまな合併症の発生を除いて安全な治療を進めることが出来るようになったことである。またbromocriptineの登場は，本腫瘍に画期的な治療の進歩をもたらした。Bromocriptineはprolactinの産生を制御するばかりでなく，腫瘍そのものの増殖を抑制して縮小する作用を持っているが，このような，ある腫瘍に特異的で，しかも確実な作用を有しながら，他の臓器にはほとんど影響を与えないような薬剤の登場はoncologyの面からも特記すべき優れた研究成果であると言えるし，腫瘍の治療だけでなく，内分泌疾患の治療の将来に大きなimpactを与える発見とも言えよう。従って下垂体腺腫の治療上，手術治療を行うべきか，内分泌学的治療で完結すべきかの新しい議論が持ち上がって来たわけである。

—R．T．ジョンソン　著　監訳　植木幸明（新潟大学名誉教授）　翻訳　金沢光男（医療法人（財）公仁会理事長）—神経系のウイルス感染症半田　肇 39巻7号 , 1987年7月 , pp.685

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　本書はJohns Hopkins大学の神経学教授であり，微生物学教授でもあるDr．　R．　T．　JohnsonのViralinfections of the nervous system（神経系のウイルス感染症）の邦訳である。監訳は故植木幸明新潟大学名誉教授，翻訳者は医療法人（財）公仁会理事長金澤光男博士である。

　神経系のウイルス感染症に関する書物は数多いが，本書は臨床家を対象として，ウイルスによる神経系感染症の根本に横たわる機構を理解すれば治療法も自ら導かれるという前提に立って，神経系感染症の生物学に重点をおいて書かれた本である。Johnson教授は1950年代後期に神経系の急性感染症の診断と疫学の研究からウイルス学にとりくみ，1960年早期には実験的ヘルペス，狂犬病，アルボウイルス感染症の病理発生について，1960年後期にはウイルスの催奇性の問題について研究し，その後ウイルスの持続感染〜slowvirus infectionに関心を持ち，ウイルス感染症の実験病理学の研究に従事した。この30年間の研究の成果をまとめたのが本書である。基礎的にも臨床的にも偏ることなく，両領域を網羅し，簡潔に分り易くまとめられている。

原著

Neocarzinostatinによるmeningea gliomatosis modelの治療吉田　達生 , 清水　恵司 , 生塩　之敬 , 最上　平太郎 , 坂本　幸哉 , 栄川　隆信 39巻7号 , 1987年7月 , pp.615-619

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　抄録　これまでの知見により，neocarzinostatin （NCS）がglioma細胞に対して特異的に殺細胞姓を示し，正常のglia細胞に対しては腫瘍細胞に対する有効濃度では障害を及ぼさないことが判明しており，meningeal gliomatosis （MG）に対するその髄腔内投与療法の可能性が示唆されている。そこで我々は，NCSの髄腔内投与によるMGの治療の妥当性に関する検討を行うためにC6 glioma細胞を用いてMGモデルを作成し，NCSによる化学療法実験を行い，この薬剤の抗腫瘍効果を調べた。その結果，腫瘍細胞移植後1日目にNCSの髄腔内治療を行った群では，1μg／kgという低濃度でMGモデルラットに対する延命効果（％ILS＝52.1）が出現し，10μg／kg投与群ではその効果はさらに著明となった（％ILS＝108.5）。一方，NCSによる治療を腫瘍移植後3日目に行った群では，治療効果が減少し，5日目の治療群では，NCS 100μg／kgという高濃度にもかかわらず延命効果は全く認められなかった。これよりNCSはMGの初期に対しては低濃度によっても著明な延命効果を現すことが示され，MGに対するNCSの髄腔内投与療法の有用性が証明された。

Pycnodysostosisの1症例—CTによる頭蓋の観察姉川　繁敬 , 戸次　鎮昭 , 古川　保浤 , 横田　清司 , 鳥越　隆一郎 39巻7号 , 1987年7月 , pp.621-626

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　抄録　大腿骨骨折にて入院した13歳のpycnodysostosisの男性で，入院時に施行された頭部単純撮影において縫合の離開が認められたため，CTにより精査を行った。その結果，intramembranous ossificationにより形成される頭蓋穹隆部ならびにその中に存在する前頭洞・側頭骨含気蜂巣・上顎洞は，endochondral os—sificationにより形成される頭蓋底部ならびにその中に存在する蝶形骨洞・篩骨洞に比し形成が不良であった。一方，頭蓋底部は縫合・synchondroses共に正常形態を示した。さらに，頭蓋骨の外板ならびに板間層におけるHansfield numberの比較では正常に比べ板間層の値が著明に高かった。これらのことから，本疾患の病態はintramembranous ossificationとendochondral ossification双方の障害であるものと考えられ’membranous ossificationの障害によるとされているcleidocranial dysostosisならびにendochondralossificationの障害によるとされているachondroplastic dwarfismの中間に位置する疾患であると考えられた。

グリオーマに対するβ-インターフェロンならびにγ-インターフェロンの抑制効果—基礎実験における検討中村　治 , 野村　和弘 , 丸尾　幸嗣 , 上山　義人 , 松谷　雅生 , 高倉　公朋 39巻7号 , 1987年7月 , pp.627-632

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　抄録　β-interferon （IFN）ならびにγ—IFNの抗腫瘍効果をin vitro, flow cytometry，ヌードマウスモデルを用いて検討した。in vitroではβ-IFNは濃度依存性に腫瘍抑制効果を示すのに対し，γ-IFNではほとんど効果がみられなかった。一方DNAヒストグラムに及ぼす影響については，β-IFNではS期，G2M期への集積傾向が強いのに対し，γ-IFNでは，ヒストグラム上の変化はほとんど認められなかった。ヒトglioma移植ヌードマウスにおける検討では，β-IFN投与群での治療群／対照群体積比（T／C）が44％であるのに対し，γ-IFN投与群のそれは80％であり，γ-IFNの抑制率は低かった。β-IFNについては，既に報告したように，glioma 6株中2株に有意な腫瘍抑制効果を認め，本glioma株においても効果がみられた。一方γ-IFNの本glioma株に対する効果—少くとも直接効果は乏しいと考えられるが，γ-IFNについては，免疫防御機構を介した作用が強いと言われており，その薬力学的作用についての解明が肝要である。

経口的アルミニウム（Al）投与家兎脊髄での組織学的，組織計測学的研究と元素分析紀平　為子 39巻7号 , 1987年7月 , pp.633-641

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　抄録　筋萎縮性側索硬化症（ALS）の多発地区では土壌，飲用水中のCa,Mgの低値とAlの高値が報告されている。本研究では環境要因とALS多発との関連を検討する目的で，特に経口的投与Alの神経毒性につき検討した。家兎に低Ca, Mg食，高AI水を投与し組織学的，組織計測学的検討および放射化分析による脳脊髄内Ca, Alの定量を行った。また家兎にAlを直接脳内投与し経口投与での変化と比較した。低Ca, Mg高Al状態下で飼育した家兎脊髄に好銀性類円形構造物の有意な増加を認め，電顕的に10nm神経原線維（NF）の凝集した腫大軸索として観察された。直接脳内投与の場合とはNFの蓄積部位が異なるが，凝集したNFの微細構造は類似していた。Alの定量では脊髄内に高値を認めるに至らなかった。しかし，形態上および組織計測的検討の結果より，低Ca,Mg食による二次性副甲状腺機能亢進状態下で経口投与したAlが脳に取りこまれ，最も感受性の高い脊髄内軸索に変化を来したと考えた。またAl経口投与で認められた変化はALSの初期変化とされるspheroidに類似する所見で，ALSの初期病変発現にAlの関与が推察された。ALSの病因解明にAlと共にCa, Mg等の相互作用の検討が重要と考えられた。

パーキンソン病における神経心理学的障害について—新修正Wisconsin Card Sorting Testと聴覚刺激によるP300成分の分析山田　達夫 , 片山　薫 , 平山　惠造 39巻7号 , 1987年7月 , pp.643-647

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　抄録　25名のパーキンソン病患者（PD）群と年齢の一致した15名の健常対象（C）群に新修正WisconsinCard Sorting Test （WCST）と聴覚刺激によるP300成分の測定を行い，両群を比較した。その結果PD群はC群に比し，新修正WCSTの成績は有意に低下し，mental setの変換と維持の両側面の障害が認められた。P300成分については潜時と振幅ともにPD群とC群との間には有意差がみられなかった。PD群ではP300潜時と新修正WCSTの成績のうち，保続数とmental setの維持の障害との間に相関を認めた。運動障害度はこれらと相関しなかった。P300潜時とWCSTには共通の認知過程のあることが推定され，また新修正WCSTはパーキンソン病の知的機能障害の検討に簡便で有用と考えた。

高酸素血症と脳循環—クモ膜下出血例における検討大田　英則 , 根本　正史 , 川村　伸悟 , 波出石　弘 , 日沼　吉孝 , 鈴木　英一 39巻7号 , 1987年7月 , pp.649-656

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　抄録　大気圧下純酸素吸入（1ATA・O₂）による脳血管反応性（O₂　response）を53例の脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血例で検討した。CBFはValmet社製rCBF Analyzer BI−1400を用いて10mCi¹³³Xe静注法によりISIを算出した。全測定回数は100回で全脳平均血流量（mCBF）を用いて検討した。測定条件はRest （安静時）−1ATA・O₂で行った。O₂　response障害は発症後1カ月以内の症例で，ICP亢進，水頭症，広範脳障害などが障害因子であった。2カ月目に入ると障害の程度にかかわらず反応性は正常化した。重相関分析によるCBFに対するPaO₂，　PaCO₂，血圧の寄与率は全体で24％，PaO₂のそれは21％で，PaCO₂，血圧の関与は極めて小さかった。1ATA・O2下におけるCBF減少はPaO₂の上昇によるvasoconstrictionによるものと考えられた。15回のICPとCBF同時測定ではRest ICPが高いほど高酸素血症によるCBF減少率は低かった。O₂　responseは脳血管反応性テストとして臨床応用価値が高いと考えられるが，二次元的CBF測定法では限界がある。今後はpositron emission CT （PET）による検討がO₂　responseの本態解明に有用であろう。

多発性筋炎60例の臨床的ならびに筋病理学的検討福永　秀敏 , 納　光弘 , 坂下　泉 , 鮫島　久美 , 井形　昭弘 39巻7号 , 1987年7月 , pp.657-661

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　抄録　多発性筋炎60例（確実例55例，疑い例5例）の臨床的特徴と筋病理変化についてまとめた。そして筋病理変化より多発性筋炎の病型分類と悪性腫瘍合併の可能性を指摘しうるかどうか検討した。まず臨床的には，男女比は1：2と女性に多く，発症年齢は40歳台，50歳台に多い。病型別（Waltonの分類）では，I型45％，II型28.3％，III型15％，IV型11.7％で，悪性腫瘍の合併は7例で全例50歳以上であった。臨床症状では，近位筋優位（78％）の四肢（下肢92％，上肢83％）の筋力低下，皮膚症状57％，筋痛48％，頸筋力低下40％，関節痛23％となっていた。次に多発性筋炎で最もよくみられる筋病理変化としては，筋線維壊死（86.7％），細胞浸潤（78.3％），線維化（73.3％），basophilia （71.7％），中心核の増加（70％），moth-eaten（67％）となっていた。各病型別の筋病理変化の比較では，III型ではI型やII型に比し，筋線維壊死や細胞浸潤など多発性筋炎に特徴的な所見に乏しい印象をうけた（統計学的には有意の差はみられず）。またIV型（悪性腫瘍合併例）では，perifascicular atrophyの頻度は少なく，筋線維壊死，細胞浸潤，線維化がそれぞれ100％に認められたことが注目された。

N-methyl−4—phenyl−1,2,3,6—tetrahydropyridineによるマウスの実験的パーキンソニズム—ノルエピネフリン系の役割西　克典 , 近藤　智善 , 楢林　博太郎 39巻7号 , 1987年7月 , pp.663-672

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　抄録　C57黒マウスにMPTP 300 mg／kgを投与して実験的パーキンソニズムを作製し，L-DOPA投与による変化を運動量，螢光組織化学，化学的定量で解析した。一部のマウスにはMPTPに加えてNE終末を選択的に破壊するDSP4を追加投与した。MPTP投与により黒質線条体DA系に比較的選択性を有したDAの高度の減少がみられた。L-DOPA投与後はMPTP投与マウスにおいて，i）運動量の著しい増加，ii） NE系でのDA産生の増加がみられ，iii） DSP4によるNE終末の破壊で運動量の増加も強く抑制された。以上よりこのモデルのL-DOPAによる運動効果発現にNE系が強く関与していることが示唆された。NE系の運動効果発現の機序について考察を加えた。

腰部クモ膜下腔圧測定法の有用性についての検討絹田　祐司 , 石川　正恒 , 平井　収 , 吉田　真三 , 今高　清晴 , 小林　修一 , 半田　肇 39巻7号 , 1987年7月 , pp.673-678

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　抄録　頭蓋内圧（ICP）測定法の一つに腰部クモ膜下腔圧（LSP）の測定があり，われわれは正常圧水頭症などの占拠性病変がなく脳ヘルニアの危険の少ない症例に適用している。本法は簡便で患者への侵襲が少ない利点があるが，ICPをどの程度反映するかが問題である。そこで成猫を用い大槽より生理食塩水を注入しLSPとICP （epidural pressure；EDP）の関係を調べた。steady state infusionではLSPとEDPの相関は良好でLSPはEDPの少なくとも80％以上の値を示した。bolus injectionでもLSPとEDPの圧変化は高い相関を示し，LSPは急激な圧変化も十分追従し得た。しかしcomplianceについては低圧時にLSPのものがEDPのものより大きく計測される傾向があった。脈圧については圧の上昇に従い，LSPとEDPの脈圧も同様に大きくなるが，LSPの脈圧はほぼ一定の差をもってEDPの脈圧より小さかった。以上より，低圧時のcomplianceや脈圧の問題もあるが，LSP測定法は少なくとも平均圧や圧波に関してはICPを十分反映すると考えられた。

非手術glioblastoma multiformeの頭蓋外転移—PAP法による転移部腫瘍の証明および臨床病理学的考察緒方　昭彦 , 田代　邦雄 , 鐙谷　武雄 , 阿部　弘 , 松野　吉宏 , 中村　恭二 , 柏葉　武 39巻7号 , 1987年7月 , pp.679-685

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　抄録　Malignant astrocytomaの頭蓋外転移はまれであるが，大部分，腫瘍摘出術あるいはshunt手術などを施行した後の転移であり，外科的処置を加える前に頭蓋外転移を認めたものは文献的に数例しか報告されていない。症例は68歳の男性で右下肢の歩行障害より初発し，1ヵ月後右上肢の脱力が出現，外科的治療，放射線治療を加える前に死亡。全経過8ヵ月であった。剖検の結果，左大脳前頭頭頂葉より発生したglioblastoma multiformeが右気管支下幹，右肺中下葉，両側肺門リンパ節，気管分岐部リンパ節，肝，腎，心，脾の脈管内に転移し，肺の腫瘍組織におけるGFAP染色にて陽性を示し，malignant astrocytomaの頭蓋外転移巣におけるGFAP染色の重要性を示唆した。

N-isopropyl-p—［¹²³I］iodoamphetamine single photon emission computed tomographyの脳腫瘍における臨床的有用性—各種画像との比較検討橋本　研二 , 菊池　晴彦 , 山形　専 , 鳴尾　好人 , 小泉　孝幸 , 西村　恒彦 , 林田　孝平 , 林　真 , 唐澤　淳 39巻7号 , 1987年7月 , pp.687-693

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　抄録　脳腫瘍における局所脳血流量を知る目的で，髄膜腫8例，glioblastoma multiforme 3例，oligo-astrocytoma 2例，他7例，計20例の脳腫瘍に対し延べ27回，N-isopropyl-P-［123I］iodoamphetamine（IMP）による　single photon emission computed tomography （SPECT）を行い，脳血管造影，X線CT，^81mKrおよび^99mTcによるSPECT所見と比較検討した。5例においては術前後に検査を行い腫瘍周辺部の血流変化を検討した。SPECT撮像はIMPの静注後20分，2時間，6時間後より開始した。腫瘍部分は2例がhot areaとして12例がcold areaとして示された。hot areaとして示された2例も2時間以後の撮像ではcold areaとして認められることにより腫瘍部分でのIMPのwashoutの亢進が示唆された。他検査との比較では，Tc-SPECTにて示された血液脳関門の破壊や，脳血管造影にて示されたvascularityの多寡とは必ずしも一致しなかった。一方，腫瘍周辺部の血流低下はよく示され，経時的な術後の改善が捉えられた。三次元的局所脳血流イメージを非侵襲的に容易に得ることが出来るという点で脳腫瘍に対してIMPによるSPECT像は有用と思われる。

話題

脳の放射線障害松谷　雅生 39巻7号 , 1987年7月 , pp.694-696

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　脳の放射線障害についての従来の捉え方は，照射中に生じるacute reaction，治療終了後数週〜数カ月の間のearly delayed reaction，数カ月から数年後に発生するlate delayed reactionの3つであった。

　①Aeute reaction 1回線量4-10 Gyによって生じる頭痛，嘔気，頭蓋内圧亢進症状などであるが，現在広く行われている1回2Gy，週5回7〜8週の照射計画（総量70〜80Gy）では生じない。

海外文献抄録

Wilson病31例の検討—MRI上の形態学的変化との相関，他大友　英一 39巻7号 , 1987年7月 , pp.698-699

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　31例のWilson病（男17，女14）について詳細な神経学的および内科的検査を行った。

　症状出現は12〜34歳，平均21±5歳，評価時の年齢は18〜40歳，平均28±6歳であった。

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編集後記平山　惠造 39巻7号 , 1987年7月 , pp.701

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　本誌は，神経系に関する基礎から臨床に至るまでの，広範囲な領域を収載する対象としている。また臨床分野についていえば神経内科と脳神経外科の両領域にまたがっているのも特色の一つである。本号はこれらの点がよく表現された号であろう。

　総説には脳の基礎科学的論文が掲載され，11の原著論文には，神経内科領域の臨床的問題をとり上げたもの，病態機序に関連したもの，脳腫瘍についての臨床的または治療の研究に関するものが，それぞれ3,4篇ずつ収録されている。

基本情報

Brain and Nerve 脳と神経
39巻7号
(1987年7月発行)

電子版ISSN：2185-405X 印刷版ISSN：0006-8969 医学書院

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