皮膚病診療 39巻1号 (2017年1月)

特集 好発部位を外れた皮膚病

臨床例

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<症例のポイント>後天性真皮メラノサイトーシス(aquired dermal melanocytosis:ADM)は真皮メラノサイトの増生により後天性に生じる褐色、灰褐色あるいは紫褐色の色素斑の総称であり、顔面型・四肢型・背部型・広範囲型の4型に分類される。顔面に左右対称の色素斑を伴う例が多く、四肢のみに限局して生じた例は少ない。今回、左下腿片側のみに限局して生じた例を経験したので報告する。

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<症例のポイント>30歳の男性。15年前より躯幹の右側優位にBlaschko線に沿って配列する褐色角化性丘疹が存在していた。皮疹は夏に発汗により増悪し、冬に軽快するというサイクルが続き、増悪時にそう痒感を伴っていた。病理組織学的にDarier病と一致し、若年発症で特徴的な皮疹の分布から片側性Darier病と診断した。

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<症例のポイント>今回われわれは関節リウマチを合併し手掌と手指屈側に限局して生じた環状肉芽腫の1例を経験した。圧痛を伴う皮下結節を手掌や手指屈側に認めた際は環状肉芽腫も鑑別すべき病変の1つと考える。

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<症例のポイント>成人例の黄色肉芽腫は、小児例と異なり頻度が比較的まれであること、種々の悪性腫瘍に似た臨床像を呈することがあることから、臨床所見からの診断が困難な場合がある。自験例では好発部位とは異なる指尖部に発症したため、臨床所見からの診断は困難であったが、ダーモスコピー所見が診断の手がかりとなった。

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<症例のポイント>亀頭部に生じた壊疽性膿皮症の2例を報告した。亀頭部の壊疽性膿皮症は、膿疱・瘻孔・穿掘性潰瘍が多発する特徴的な臨床像を呈する。症例1は腹部、背部、右踵部にも病変を多発し、症例2は亀頭部に限局していた。症例1は合併疾患を有さず、症例2は多発性骨髄腫を合併していた。症例1は他科においてステロイドが投与されないまま陰茎部分切断に至り、症例2はステロイド大量投与が奏効した。亀頭部の壊疽性膿皮症は、ヘルペス、フルニエ壊疽などと誤診されることが多く、泌尿器科との緊密な連携および疾患の啓発が必要である。

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<症例のポイント>左下口唇に発生した脂肪腫を経験した。脂肪腫は日常診療においても比較的診察する機会の多い腫瘍の1つであるが、口腔領域における脂肪腫の発症頻度は低い。自験例の病理組織像は、粘膜下層の浅層に病巣があったことから臨床像が黄白色調を呈したと考えられた。

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<症例のポイント>硬化性萎縮性苔癬(lichen sclerosus et atrophicus、以下、LSA)は外陰部に好発する角化性白色丘疹または白色局面で、閉経期前後や閉経後の女性に多くみられる。まれに体幹、四肢、頭頸部に発生することがあり、今回頸部に生じたLSAの1例を経験したので報告する。治療としては副腎皮質ステロイドの外用や局所注射、タクロリムス軟膏の外用が試みられているが、難治であることが多い。

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<症例のポイント>木村病は主としてアジア人男性に生じる、良性の慢性炎症性疾患である。好発部位は顔面・頸部で、とくに耳下腺部に多く生じることが知られている。今回、好発部位ではない眉毛部に生じた木村病を経験した。近年、木村病とIgG4関連疾患との関連性が議論されているが、自験例では病変部へのIgG4陽性形質細胞の浸潤は少なかった。

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<症例のポイント>透析アミロイドーシス(dialysis amyloidosis、以下、DA)の原因蛋白はβ2ミクログロブリン、(β2-microgloburin、以下、β2-MG)とされている。β2-MGは関節軟骨や腱組織に沈着しやすいという特徴を有するため、DAの主症状として骨・関節症状が出現しやすく、自験例のように透析アミロイドーシスの皮膚病変が仙尾骨部に生じることはまれである。自験例を通して、加圧の大小により皮疹出現部位での皮疹形態の差が生じ、また、手根管症候群を有する透析患者はDAの皮膚症状を発症する可能性が高いと考えた。

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<症例のポイント>エクリン汗孔腫は手掌、足底に好発する良性の皮膚付属器腫瘍であり、病理組織学的にはエクリン汗腺の汗管導管部分の細胞に分化傾向を示す腫瘍細胞からなる。今回われわれは、発生部位としては比較的まれとされる顔面の発生例を経験した。また、全摘生検により腫瘍の再発はみられていない。

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<症例のポイント>左大腿部に生じた高齢女性のグロムス腫瘍を経験した。爪甲下に好発するグロムス腫瘍であるが、皮膚単発のグロムス腫瘍の本邦報告例322例を検討したところ大腿部は4例(1.2%)の報告しかなく自験例はまれな部位の発症であった。爪甲下以外にもさまざまな場所に出現するため、手指以外で圧痛を伴う皮下腫瘍をみた場合もグロムス腫瘍を鑑別にあげる必要があると考えた。

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<症例のポイント>本邦初の小児に単発で発症したsclerotic fibromaを報告した。Cowden病の合併を除外する必要があり、注意を要する。

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<症例のポイント>Spitz母斑は頭頸部、下肢に好発する母斑細胞母斑の一種である。中でも色素に富み黒色調の強いものは色素性Spitz母斑(pigmented spindle cell nevus,Reed母斑)と呼ばれる。自験例は、足底に生じた2.0×1.5mm大の小さな色素斑であった。ダーモスコピー所見では、病変辺縁のほぼ全周性に太いstreaksが存在し、中央部は汗孔を避けた黒色色素沈着を認め、digitate-typeのstarburst-like patternを呈した。病理組織学的には、両側病変辺縁の表皮下層に腫瘍胞巣が存在しており、ダーモスコピー所見の太いstreaksに対応していると考えた。自験例は、Spitz母斑としては初期病変であったため、中央部の色素沈着は汗孔を避けており、典型的なstarburst patternを呈する前段階であったと推察した。

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<症例のポイント>左手掌に発生した表在型の基底細胞癌を報告した。手掌に孤発した基底細胞癌の報告例(1960~2015年)は本邦10例、海外13例であった。本邦7例(70%)、海外9例(69%)は女性に発生していた。平均年齢は本邦で63歳、海外で60歳であった。手掌に孤発した基底細胞癌のうち先行病変を有した報告例は、本邦と海外を合わせた23例中、放射線皮膚炎1例、瘢痕2例、外傷3例の計6例(26%)であった。組織型は、本邦ではsuperficial type、海外ではnodular typeが多かった。

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<症例のポイント>隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:DFSP)は真皮から皮下組織に発生する線維組織球性悪性腫瘍である。局所再発しやすいが、遠隔転移は少ないことが知られている。隆起性皮膚線維肉腫の好発部位は体幹、とくに胸・腹部であり、外陰部に発症するのはまれである。隆起性皮膚線維肉腫に対する外科的切除においては、十分な切除マージンが必要である。腫瘍の深層への浸潤の把握が困難な外陰部では、MRI検査が有用である。

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<症例のポイント>左手関節に生じたメルケル細胞癌の1例を報告した。好発部位は高齢者女性の顔面、とくに頬部や眼瞼とされているが、手関節の発生はまれとされている。

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<症例のポイント>左拇指背に発生したmicrocystic adnexal carcinoma(以下、MAC)を報告した。MACは、頭頸部発生例が74~84%とされており、本邦約100例の報告中で指に発生した症例は自験例を含め2例と極めてまれである。サイトケラチン(以下、CK)染色(AE1/AE3、CK7、CK15)とBer-EP4染色は診断に有用であった。島状に集塊を呈する腫瘍細胞と、索状配列・管腔構造を呈する腫瘍細胞の間にCK7とCK15染色で染色性の違いがみられ、MACのpluripotentialな特徴を反映していると推察した。

英文抄録

editorial

皮膚科が変わるか 西岡 清

topics

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自己免疫性水疱症の中でもっとも頻度の高い水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid,BP)は,高齢者に好発し臨床的に瘙痒の強い浮腫性紅斑と緊満性水疱を特徴としている.副腎皮質ステロイドを主とする免疫抑制薬の全身投与を要する症例も多く,感染症等の合併症から不幸な転帰となることもまれでない.本邦における比較的最近の解析では,65歳以上のBP患者の1年後死亡率は39.5%と報告されている1). 近年の高齢化社会を背景に,BPに遭遇する機会が増えた印象をもつ皮膚科医も多いのではないだろうか.BPが他の自己免疫疾患と異なり高齢者に好発する理由は不明だが,加齢に加え脳梗塞やアルツハイマー病等の中枢神経系疾患の既往をもつと発症率が高くなることが報告されている2).また利尿薬など特定の薬剤に関連しBPが発症することも知られており3),ここ数年, 糖尿病治療薬として広く使用されているdipeptidyl peptidase-IV阻害薬(DPP-4阻害薬)投与患者に発症したBPが相次いで報告されている4).フランスにおける薬害データベース解析ではDPP-4阻害薬とBP発症に強い相関関係が示されており5),国内外に多数の患者が存在すると予想される.DPP-4阻害薬関連BPは臨床だけでなく免疫学的所見も通常のBPと異なる点が多く,とくに現在, 保険収載され広く臨床応用されている“抗BP180(NC16A)抗体検査” が陰性となる症例が多いことが特徴である.われわれの施設における解析では, 約7割のDPP-4阻害薬関連BP患者の抗BP180(NC16A)抗体は陰性であり6),臨床の場では診断に至っていない症例も少なくないと予想される.最近,筆者らの研究グループは,通常のBPだけでなくDPP-4阻害薬関連BPの診断にも有用な“全長BP180 ELISA法”を開発し6),すでに全国から多数の解析依頼を受けている.本稿では本検査法開発に至った背景と有用性について,DPP-4阻害薬関連BPの臨床と免疫学的特徴を交え紹介したい.(「はじめに」より)

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自己免疫性水疱症の中でもっとも頻度の高い水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid,BP)は,高齢者に好発し臨床的に瘙痒の強い浮腫性紅斑と緊満性水疱を特徴としている.副腎皮質ステロイドを主とする免疫抑制薬の全身投与を要する症例も多く,感染症等の合併症から不幸な転帰となることもまれでない.本邦における比較的最近の解析では,65歳以上のBP患者の1年後死亡率は39.5%と報告されている1). 近年の高齢化社会を背景に,BPに遭遇する機会が増えた印象をもつ皮膚科医も多いのではないだろうか.BPが他の自己免疫疾患と異なり高齢者に好発する理由は不明だが,加齢に加え脳梗塞やアルツハイマー病等の中枢神経系疾患の既往をもつと発症率が高くなることが報告されている2).また利尿薬など特定の薬剤に関連しBPが発症することも知られており3),ここ数年, 糖尿病治療薬として広く使用されているdipeptidyl peptidase-IV阻害薬(DPP-4阻害薬)投与患者に発症したBPが相次いで報告されている4).フランスにおける薬害データベース解析ではDPP-4阻害薬とBP発症に強い相関関係が示されており5),国内外に多数の患者が存在すると予想される.DPP-4阻害薬関連BPは臨床だけでなく免疫学的所見も通常のBPと異なる点が多く,とくに現在, 保険収載され広く臨床応用されている“抗BP180(NC16A)抗体検査” が陰性となる症例が多いことが特徴である.われわれの施設における解析では, 約7割のDPP-4阻害薬関連BP患者の抗BP180(NC16A)抗体は陰性であり6),臨床の場では診断に至っていない症例も少なくないと予想される.最近,筆者らの研究グループは,通常のBPだけでなくDPP-4阻害薬関連BPの診断にも有用な“全長BP180 ELISA法”を開発し6),すでに全国から多数の解析依頼を受けている.本稿では本検査法開発に至った背景と有用性について,DPP-4阻害薬関連BPの臨床と免疫学的特徴を交え紹介したい.(「はじめに」より)

蝶の博物詩

生態19 西山 茂夫

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今回のテーマは「紅斑について」です.紅斑をどのように捉えるべきか,非常に興味のあるところです.学会などでうかがっていると紅斑についての皆さんの捉え方にニュアンスの違いがありそうなので,それも非常に面白いことだなと考えています.まず初めに紅斑をどういうふうに定義するかというあたりから話を進めていただいて,あとは自由にご討論いただいたらと思います.たまたま今回,私は皮膚科の祖といわれているイギリスのWillanの教科書を翻訳させていただく機会がありました.彼の紅斑の定義は,「皮膚の限局した部位の持続的発赤で, 全身症状を伴うが,伝染性はない」, つまり感染症は含まないということになっています.19世紀の終わりころの話ですから,今とは全然違っていると思いますが,それ以後,いろいろなところで紅斑の定義がされてきたのだろうと思います.まず紅斑はどういうふうに定義していくのが一番いいのかというあたりからお話をいただきたいと思います.古い文献をみますと,Willanより前にCullenという人が分類していますが,当時のイギリスでは目にみえたものを中心に分類して,Willanが新しく定義したようです.彼の定義が各地に拡がっていき, フランスやドイツも同じようなかたちになっています.ただ,ドイツの場合はSchönlein先生がベルリンでチーフをやられておられたのですが,彼は病理学をものすごく重要視された.たぶんドイツの伝統は皮膚病理学にもとづく臨床所見というかたちがずっと続いているのではないかと私は勝手に考えました.そうした流れの中で定義が変わってくるのかなと思っています.そのあたりは西山先生,歴史的なことも含めて,どんなかたちになっているのでしょうか(「はじめに」より)

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平成28年2月27日(土),28日(日)に埼玉県さいたま市大宮ソニックシティにて開催いたしましたアトピー性皮膚炎治療研究会第21回シンポジウムについて,テーマの趣旨,発表内容の一部,研究会を振り返っての感想を報告させていただきます.

診察室の四季

初詣 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第139回 浅井 俊弥

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
39巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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