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自己免疫性水疱症の中でもっとも頻度の高い水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid,BP)は,高齢者に好発し臨床的に瘙痒の強い浮腫性紅斑と緊満性水疱を特徴としている.副腎皮質ステロイドを主とする免疫抑制薬の全身投与を要する症例も多く,感染症等の合併症から不幸な転帰となることもまれでない.本邦における比較的最近の解析では,65歳以上のBP患者の1年後死亡率は39.5%と報告されている1). 近年の高齢化社会を背景に,BPに遭遇する機会が増えた印象をもつ皮膚科医も多いのではないだろうか.BPが他の自己免疫疾患と異なり高齢者に好発する理由は不明だが,加齢に加え脳梗塞やアルツハイマー病等の中枢神経系疾患の既往をもつと発症率が高くなることが報告されている2).また利尿薬など特定の薬剤に関連しBPが発症することも知られており3),ここ数年, 糖尿病治療薬として広く使用されているdipeptidyl peptidase-IV阻害薬(DPP-4阻害薬)投与患者に発症したBPが相次いで報告されている4).フランスにおける薬害データベース解析ではDPP-4阻害薬とBP発症に強い相関関係が示されており5),国内外に多数の患者が存在すると予想される.DPP-4阻害薬関連BPは臨床だけでなく免疫学的所見も通常のBPと異なる点が多く,とくに現在, 保険収載され広く臨床応用されている“抗BP180(NC16A)抗体検査” が陰性となる症例が多いことが特徴である.われわれの施設における解析では, 約7割のDPP-4阻害薬関連BP患者の抗BP180(NC16A)抗体は陰性であり6),臨床の場では診断に至っていない症例も少なくないと予想される.最近,筆者らの研究グループは,通常のBPだけでなくDPP-4阻害薬関連BPの診断にも有用な“全長BP180 ELISA法”を開発し6),すでに全国から多数の解析依頼を受けている.本稿では本検査法開発に至った背景と有用性について,DPP-4阻害薬関連BPの臨床と免疫学的特徴を交え紹介したい.(「はじめに」より)
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