皮膚病診療 36巻9号 (2014年9月)

特集 内分泌異常と皮膚病

臨床例

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<症例のポイント>Basedow病患者に合併した重度な脛骨前粘液水腫(pretibial myxedema、以下、PTM)の1例を報告した。両下腿に硬性浮腫と多毛、病理組織学的所見で真皮にムチン沈着がみられたことからPTMと診断した。両側の脛骨前面から足背にかけて乳頭状小結節が多発集簇して、象皮症様の外観を呈していた。保存的な治療として弾性包帯による圧迫とステロイド外用療法を行った。

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<症例のポイント>環状肉芽腫は膠原線維の変性を主体とする原因不明の肉芽腫性疾患で、このうち汎発型は皮疹が1つの解剖学的部位に限局しないものと定義されている。さまざまな病因が示唆されているが、明らかな病因が判明しておらず、治療法は確立されていない。汎発性環状肉芽腫は糖尿病などの代謝性疾患との合併例が多く報告されているが、近年自己免疫疾患との関連も指摘されている。今回われわれは、Basedow病の診断とほぼ同じくして発症し、トラニラスト内服が奏効した汎発性環状肉芽腫の1例を経験したので報告する。

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橋本病患者にみられた脛骨前粘液水腫により潜在性のBasedow病の存在が示唆された1例を報告した。脛骨前粘液水腫はBasedow病のまれな合併症で、脛骨前面から足背にかけてもっとも多くみられる皮膚病変であり、橋本病患者にみられることはきわめてまれである。皮疹出現時の甲状腺機能は亢進、低下とさまざまであり、皮疹と甲状腺機能に直接的な関係は認めなかった。脛骨前粘液水腫はホルモン自体よりも抗体が原因であるという報告があり、自験例も甲状腺刺激抗体、TSH受容体抗体ともに高値で、抗体が発症の素因になった可能性が示された。

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<症例のポイント>円形脱毛症は橋本病を合併しやすいことが知られており、合併例では重症型が多いことも指摘されている。橋本病は病初期には自覚症状がなく、甲状腺ホルモン値も正常であることが少なくない。橋本病の治療に伴い円形脱毛症も改善する症例があるため、とくに円形脱毛症の重症例や難治例では定期的な血液検査を行い、橋本病の発症を見落とさないことが重要である。われわれは円形脱毛症の治療中に橋本病を発症し、その治療に伴って一時的に円形脱毛症が改善したが、その後、橋本病の悪化がないにもかかわらず再発した症例を経験したので報告する。

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<症例のポイント>内臓悪性腫瘍の皮膚転移の中でも比較的まれである甲状腺癌の皮膚転移の1例を経験した。サイログロブリン、TTF-1による免疫組織学的染色が診断に有効であった。甲状腺癌の手術後、長期間経過してから皮膚転移をきたす症例もあり、注意が必要と思われた。

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<症例のポイント>verrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy(VSLDN)は、糖尿病に伴う神経障害をもつ足に好発する良性腫瘍で、臨床的・病理組織学的に疣状癌などとの鑑別が困難である。自験例では鼠径リンパ節腫脹を認め、部分生検のみでは悪性腫瘍の鑑別が困難だった。リンパ節生検と腫瘍の全摘を行うことで術後潰瘍治癒に数ヵ月を要したが、悪性腫瘍が完全否定でき、保存的治療の際に問題となる悪性腫瘍発生の危険性が激減した点は評価してもよいと考える。

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<症例のポイント>骨髄露出療法は難治性趾端・指端潰瘍患者の大切断を免れるための治療法である。広範囲の潰瘍、またASOや透析治療中である2例に対して骨髄露出療法を施行し、改善を得た。骨髄露出療法は従来狭小な病変に対して使用していたが、広範囲な糖尿病性潰瘍に関しても改善を得た。また、ASOや透析を施行している糖尿病性潰瘍の患者にも骨髄露出療法を施行することにより改善がみられた。患者への侵襲が少なく、試みてもよい治療の1つである。

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<症例のポイント>右副腎腺腫によるCushing症候群の精査中に出現した色素性痒疹の1例を報告した。Cushing症候群に伴う耐糖能異常を示したが、ケトーシスは認めなかった。発症要因として発汗や皮脂分泌亢進が考えられた。皮疹は自然消褪し、副腎腫瘍摘出後は再燃なく経過した。

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<症例のポイント>Addison病に副甲状腺機能低下症を合併した自己免疫性内分泌腺症候群(autoimmune polyendocrine syndrome;APS)1型を報告した。自験例では慢性カンジダ症は認めなかった。自験例では蛍光抗体直接法(DIF)で汗腺にIgG、C3の沈着を認め、蛍光抗体間接法(IIF)でも陽性であり、外分泌腺である汗腺にも何らかの自己抗体が作用している可能性が示唆された。内分泌疾患に慢性カンジダ症、色素沈着、脱毛症、白斑の合併があれば、APSも鑑別に考える必要がある。

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<症例のポイント>月経周期に一致して消長する皮膚症状を呈する疾患の1つに、まれではあるがautoimmune progesterone dermatitis(APD)がある。今回われわれは、基礎体温表を基に月経周期と皮疹の関係を明確にし、プロゲステロンとエストロゲンの皮内テストを施行することで診断に至った1例を経験した。APDの確立された治療法はないが、自験例では性ホルモン薬に比べて若い女性へも比較的使用しやすいDDS内服での加療を試みた。

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<症例のポイント>手足に初発、増数傾向の角化性小丘疹を主訴に受診し、甲状腺腫大と巨頭を認めたため、遺伝子検査を経て診断に至った20歳代のCowden病患者である。甲状腺、乳腺、卵巣、子宮、消化管に悪性腫瘍は認めなかったが、甲状腺に複数の腺腫が存在したため、速やかに甲状腺全摘術が行われた。自験例は先天性肺動脈弁低形成による特発性主肺動脈拡張症を有した。Cowden病と肺動脈弁低形成の合併は、自験例のようなPTEN遺伝子の点変異では報告がなく、ほかの遺伝子異常の有無を確認する必要がある。

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ステロイド性抗炎症薬(ステロイド薬)は副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドをもとに合成されたもので,極めて強い抗アレルギー作用,抗炎症作用,および免疫抑制作用を示す.その歴史は長く,現在では自己免疫疾患や気管支喘息,アトピー性皮膚炎などの治療にはステロイド薬を中心とした薬物療法が確立されている.その一方で,ホルモンとしての作用により,重篤な副作用を発現することもあり,今なおステロイド薬の作用機序および新たな薬物の開発研究が行われている.本稿では,ステロイド薬に関する研究の最近の知見について概説する.(「はじめに」より)

topics

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日常の診療の中で,慢性蕁麻疹はもっとも頻度の多い疾患の1つである.患者の多くは,蕁麻疹の原因は何かに対するアレルギー反応であり,皮膚科やアレルギー科を受診することで,その原因が特定できると考えている.また,蕁麻疹が他の疾患の一症状なのではないかという不安を抱えていることも少なくない.一方で,慢性蕁麻疹のほとんどが原因を特定することはできず,ガイドラインをみてもスクリーニングとしての検査は推奨されていない.そのような中で,自己免疫性甲状腺炎と慢性蕁麻疹の関連は以前よりしばしば指摘されており,両疾患の合併の頻度とその関連について検討を行った.(「はじめに」より)

the case of the month

Addison病 日野 治子
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<症例のポイント>色素沈着がきっかけで精査し、Addison病が判明した。既往に結核の治療歴があり、結核に起因すると推測した。色素沈着は全身にびまん性に生じ、関節背、過去の創部などに顕著であった。内分泌学的検査で診断確定した。治療は、生涯コルチゾン内服を継続する必要がある。

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<症例のポイント>薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)の治療後に慢性甲状腺炎を合併した症例を報告した。自験例では、DIHSの発症から約2ヵ月後に慢性甲状腺炎の発症が確認された。抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性であり、自己免疫学的機序による発症が示唆された。DIHSに合併した自己免疫性甲状腺炎の既報告例では、甲状腺炎はDIHS発症の1~3ヵ月後に発症することが多く、DIHS治癒後もしばらく注意深く経過観察することが重要と考えられた。

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75歳男。2型糖尿病、高血圧症で通院中であった。左第IV趾の痛みが悪化した。左第IV趾の糖尿病性足病変二次感染の診断で治療を開始した。末梢血管造影で左前脛骨動脈90%、後脛骨動脈100%狭窄を認め、末梢血管インターベンション(EVT)を施行した。SPP値は左足背77mmHg、左足底49mmHgまで上昇したが、左第IV趾基部背側は20.0mmHgと低値のままであった。左第IV趾MP関節離断術を行った。炎症反応の改善や感染徴候の減少を認めたが肉芽形成はみられず、その後の経過で、左足底中央部に膿貯留を認めた。足底の切開を追加し、さらに第IV趾中足骨の骨掻爬術を施行した。その後、再度足底の小切開を追加し、外用治療を継続した。第III趾基節骨および中足骨の骨髄露出・閉鎖療法と足底潰瘍部への吸引水疱蓋移植術を施行した。骨髄露出部の肉芽増生と足底の上皮形成の拡大があり、現在は上皮化を認めている。

基本情報

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皮膚病診療
36巻9号 (2014年9月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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