臨牀透析 31巻8号 (2015年7月)

CKDにおけるサルコペニア・フレイル対策

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フレイルは加齢とともにさまざまな臓器における予備能が減少し,外的なストレス因子に対する脆弱性が高まった状態であり,要介護状態に陥るリスクが高く,死に至るリスクも高いため,その対策は健康長寿を達成するうえで重要な概念である.しかしながら,その定義,病態生理や早期発見のためのバイオマーカーの意義,適切な介入方法などについてはまだ知見が十分とはいえない.フレイルには身体的,精神心理的,社会的な要因があるが,慢性腎臓病においてその頻度が増加し,透析患者でその合併が多く,腎疾患患者の予後改善のために知っておくべき概念である.

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サルコペニアは筋量の減少に加え,筋力の低下や身体機能の低下を含むものとされ,QOL低下,死亡のリスクを伴うものとして定義されている.アジア人を対象としたサルコペニアの基準をもとに,一般住民を対象としたコホートデータによると,高齢者男性の9.6%,女性の7.7%がサルコペニアと判定された.日本人高齢者におけるサルコペニアの有病者数推計値は,男性が約132万人,女性が約140万人であった.サルコペニアへの介入においてはさまざまな研究が進められているが,運動と栄養を複合した方式がより効果的である.

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近年,慢性腎臓病(CKD)患者の予後を改善することを目的として,サルコペニアの予防・治療が注目されている.筋肉量は,筋蛋白合成経路であるinsulin/insulin-like growth factor 1(IGF-1)シグナリングと筋蛋白の異化経路であるユビキチン・プロテアソーム系やmyostatinの作用が相互に拮抗することで維持されている.また,IGF-1は筋線維が損傷した場合に筋線維の再生・肥大の中心的役割を担っている.CKD患者では,代謝性アシドーシス,低栄養状態,炎症,インスリン抵抗性,アンジオテンシンIIの増加などさまざまな病因により,筋蛋白合成経路が抑制されるとともに,筋蛋白の異化が亢進した状態にあり,サルコペニアに陥りやすい.今後,CKDの病因によるサルコペニアの機構がさらに解明され,予防・治療法が開発されることが望まれる.

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透析患者は,原因疾患および腎不全の病態や透析療法に起因する因子が複雑に関連した異化亢進をきたしやすい状態にある.さらに近年の高齢化からサルコペニアやフレイルを高率に合併している.これらは透析患者のQOLや生命予後に大きな影響を及ぼす.近年,骨格筋減少機序に,筋肉合成および分解のバランス異常の関与が明らかになってきており,これらの機序を基とした医学的介入も期待されている.現時点で筋肉消耗性疾患への対策としてもっとも有効と思われる方法は,定期的な運動に加え,十分量のエネルギーと分枝鎖アミノ酸を中心としたたんぱく質,必須脂肪酸を確保することである.サルコペニアやフレイルの予防・改善には,簡便なスクリーニング・診断法の開発を含めた今後の研究促進が望まれる.

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フレイル高齢者に多いサルコペニアと持久力低下の原因は,加齢,活動,栄養,疾患に分類できる.サルコペニア・フレイルへの対応はその原因によって異なり,リハビリテーション栄養の考え方が有用である.サルコペニアと持久力低下の原因によってレジスタンストレーニング,持久性トレーニングを行うべき場合と禁忌の場合がある.不要な安静や不適切な栄養管理による医原性サルコペニアの予防が重要である.誤嚥性肺炎の治癒後には,低栄養などが原因でサルコペニアの摂食嚥下障害を認めやすい.そのため,誤嚥性肺炎では嚥下関連筋のレジスタンストレーニングとともに,入院当日からの早期離床,早期経口摂取,適切な栄養管理が大切である.

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透析患者の運動療法の普及と定着には,身体的に不活発な生活自体が重大な健康障害因子であり,安静は決してゼロリスクではないことを医療スタッフ,患者が理解したうえで,まずは現状のマンパワー,機材,環境の中で日頃の身体活動を増やすことから始め,体力や身体機能の向上に合わせて緩徐に漸増していくというのが,始めやすく,継続しやすい方法の一つだろう.具体的なプログラムやメニューは施設ごとに個別性があるので,当事者の創意工夫に委ねられる部分が大きい.しかし参加者とプログラム提供側双方の負担を減らし,メリットを増やすことを意識しつつ試行錯誤を重ねることで,患者のみならず医療スタッフ側も,楽しさとやりがいを感じられる運動療法へと育て上げていけるのではないだろうか.

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サルコペニアやフレイルは最近とくに注目されてきている.今後,高齢者の増加とともにCKD患者も増加する可能性が高く,その対策は重要である.残念ながら,CKD患者におけるサルコペニアやフレイルに対する栄養療法のエビデンスは乏しいが,現時点でもっとも有効な対策は,十分なエネルギー量を確保したうえで,分岐鎖アミノ酸を中心としたたんぱく質を摂取し,効率的な運動療法を行うことと考えられる.さらに,これまでの知見からCKD患者に限らずサルコペニアやフレイルに対しての栄養療法としては,たんぱく質,必須アミノ酸,分岐鎖アミノ酸,n-3系不飽和脂肪酸,カルニチン,ビタミンD,グレリンといったものが有用である可能性がある.

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フレイル(虚弱)の要因として,低栄養,サルコペニアが挙げられる.サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量・筋力の減少を引き起こす病態であり,ADLや身体活動能力が障害される.サルコペニアの進行により転倒・骨折につながり,フレイル,要介護状態を引き起こす危険因子となる.日本人高齢者にはビタミンDが不足しているとの報告が散見される.このビタミンD不足・欠乏は筋力や転倒との関連が認められており,サルコペニアと密接に関連している.また近年,骨格筋にビタミンD受容体が発現していることが報告されており,サルコペニアに対し確実な治療薬がないなかで,活性型ビタミンD製剤はサルコペニアの治療薬としての可能性に大きな期待が寄せられている.

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日常診療において,透析患者のサルコペニアに対して使用できる薬剤は限られる.唯一,蛋白同化ステロイド薬が"慢性腎疾患による著しい消耗状態"に対して適応がある.しかし,本薬には男性化,肝機能障害,心血管病の進展,前立腺がんの増悪などの副作用があり,European Best Practice Guideline(EBPG)の栄養ガイドラインでは投薬期間は3~6ヵ月を推奨している(エビデンスレベルII).L-カルニチンは,進行期の膵がん患者のサルコペニアに有効と報告されているが,透析患者における有用性は明らかでない.最近,ミオスタチン受容体中和抗体,選択的アンドロゲン受容体モジュレーター,グレリン受容体作動薬などの新規薬剤が開発されており,臨床試験では高齢者やがん悪液質のサルコペニアに対して有効なことが報告されている.現在,血液透析患者を対象とし,抗ミオスタチン受容体抗体(PINTA 745)のランダム化比較試験が行われており,その結果に注目される.

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血液透析(HD)患者21例(男性12例、女性9例、45~83歳、平均68歳を対象に、HD患者のにおけるHD中の末梢循環を灌流係数(PI)で測定し、PIと臨床パラメータの関係からPIの臨床的意義について検討した。透析歴は中央値54ヵ月(0~450ヵ月)で、腎不全の原疾患は糖尿病が9例、心血管疾患合併が12例であった。測定曜日を変えた個人でのPIの再現性は良好であった。手指と足趾の経時的変化のパターンは概ね同様であった。HD中のPIの経時的変化は個々の患者で異なり、PI値が時間とともに上昇していく例2例、変わらない例8例、下降していく例10例、手指は低下するが足趾は上昇する例1例と大きく分けて4パターンがみられた。年齢、性別、透析歴とHD開始時のPI値(PI0)に関係はみられなかった。心血管疾患のある患者では、そうでない患者に比べPI0が手指、足趾ともに有意に低値を示した。HD中のPI変化率が≦-0.1であるPI維持群(n=5)およびPI変化率<-0.1であるPI低下群(n=6)でのパラメータを比べたが、2群間でHD開始時と終了時の収縮期血圧、心拍数に有意差を認めなかった。しかし、PI低下群で開始時より終了時で血圧が上昇している例が多くみられた。PIは再現性良好で、HD中の循環モニターとして利用可能である。また、PIは併存疾患、除水操作、抗凝固薬の種類など多くの臨床的要因に影響されることが示唆された。

基本情報

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臨牀透析
31巻8号 (2015年7月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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