胸部外科 72巻7号 (2019年7月)

特集 肺区域・亜区域・複雑区域切除の工夫と実際

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昨今,肺癌の致死率の高さに対する社会の認識度向上により,肺癌においても早期発見・早期治療へ大きくシフトしてきているといって間違いない.現に,以前に比べて肺癌手術におけるⅠ期肺癌の占める割合が格段に高くなってきている.

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近年,微小肺癌や転移性肺腫瘍に対する胸腔鏡下(VATS)肺区域切除術を行う機会は増加している.肺区域切除術を行ううえでもっとも重要なことは,解剖学的に正しい区域間面を同定することと,十分な切除マージンを確保することであろう.区域間同定に関して古典的には換気虚脱法が行われてきたが,肺気腫など背景肺の状態によっては困難な場合も多い.われわれは2009年に赤外光胸腔鏡(IRT)とインドシアニングリーン(ICG)静脈内投与を併用した新しい方法(IRT-ICG法)を開発し,これまで臨床使用成績を含め報告してきた1).近年では国内外の各社から赤外光内視鏡が市販されており,われわれの施設でも肺区域切除術の際の術中ナビゲーションとして使用している.一方,より重要なことは十分な切除マージンの確保であり,これは正しい区域間の同定より優先されるべきことである.現状では切除マージンの確保は病変の触診によってのみなされているが,病変のサイズ・位置・性状によっては十分な触診ができないケースも多い.特にVATSの場合はなおさら触診が困難である.それゆえ,触知困難な病変に対するVATS肺区域切除術の際には,なんらかの術中ナビゲーションシステムが必要となる.われわれは触知不能肺病変に対するVATS肺区域切除術の際に,ハイブリッド手術室におけるcone-beam CTを用いることで実際の切除マージンが予測できることを報告した(術中CT支援法)2).本稿では,触知不能肺病変に対するVATS肺区域切除術の際にIRT-ICG法と術中CT支援法を併用することで,実際に術中ナビゲーションシステムとしての有用性があるかどうかを検討した.

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2018年2月よりインドシアニン・グリーン(ICG)の「血管および組織の血流評価」適応が追加されたことにより,呼吸器外科領域ではICG蛍光内視鏡を用いて肺区域間同定を行う肺区域切除の報告が増えてきている.本法では側副気道の影響を受けない明瞭な区域間同定が可能となり,従来の含気虚脱ラインを指標とした方法では同定困難な気腫肺でも使用可能で,また正確な同定が可能であることから,複数の区域間面からなる複雑区域切除にも適していると考える.このため当科では現在,ICG蛍光ナビゲーションで区域間を同定し,また肺瘻防止の観点から原則的にすべての区域間を自動縫合器で切離する完全鏡視下肺区域切除を行っている.本稿ではICG蛍光ナビゲーションと自動縫合器により区域間作成を行った完全鏡視下肺区域切除の有用性・安全性を後方視的に検討したので報告するとともに,当科での実際の手術手技・工夫についても紹介する.

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近年,末梢小型肺癌や転移性肺腫瘍などに対し区域切除術が多く行われるようになった.安全性,根治性を担保しつつ肺機能を温存することが可能であれば最適の選択肢となりうるが,そのためには手術適応の判断および実際の手術手技に十分な注意を払うことが必要である.当科では三次元CTとインドシアニングリーン(ICG)蛍光イメージングを用いた完全胸腔鏡下肺区域切除術を行っている.三次元CTは,術前に切除マージンの確保が可能かどうか予測する際に有用であり,術中には血管や気管支の解剖を把握する際に役立つ.ICG蛍光イメージングは,正確な区域間の同定を可能とし,切除マージンの確保に有用である.本術式の適応と手技上の工夫,手術成績について報告する.

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肺区域切除術は末梢小型肺癌,特に均一なスリガラス状結節(GGN)や部分充実GGNに対し,肺葉切除にかわりうる術式として,妥当性が報告されてきた1,2).また,多発肺癌や第二癌など肺機能の温存が必要な症例の増加や,心肺機能低下例など併存疾患を有する症例の増加を背景に,非小細胞肺癌に対する区域切除の対象となる症例は近年拡大しつつある.

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早期肺癌や転移性肺腫瘍に対して肺縮小手術(SLR)を行う症例が増えてきた1).しかし,腫瘍からの切離マージンを確保した解剖学的SLRが確立されたとはいえない.われわれはこれまでにインドシアニングリーン(ICG)の経気管支注入による近赤外線(NIR)胸腔鏡下肺区域切除という新たな手術法を開発・報告した2).われわれは2014年以降,3D画像解析システムVincent(富士フイルム社,東京)を用いて,SLRのシミュレーションを行い,至適マージン2 cmを確保した切除範囲を設定した.問題は,このシミュレーションどおりのSLRをどのように行うかである.そこで,10倍希釈ICGを切除肺関連気管支に注入し,蛍光内視鏡によるSLRを実施し,その有用性について評価した.

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肺(亜)区域切除において区域間を同定する手法として,従来の含気虚脱法に加えて,近年ではインドシアニングリーン(ICG)蛍光法が臨床応用されている.肺を含気させ術野を崩すことなく,虚脱肺のまま区域間を描出できることは,特に近年普及する完全鏡視下手術において大きな利点となる.あらかじめ区域肺動脈が結紮された肺区域の血流欠損を蛍光描出するICG静注法に加えて,気管支鏡下に区域気管支にICGを散布して切除対象肺区域を蛍光描出する気管支内注入法も一部臨床応用されている.また2019年5月現在の最新式手術支援ロボットda Vinci Xi(Intuitive Surgical社,Sunnyvale)にもICG蛍光観察機能が搭載されるなど,今後ICG蛍光法の呼吸器外科への臨床応用は加速すると考えられる.本稿ではICG静注法と気管支内注入法の双方の利点と欠点について考察し,またロボット手術におけるICG蛍光法の実際も紹介する.

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小型肺癌に対し,肺葉切除と同等の治療効果を期待して縮小手術が行われるようになり,異時多発肺癌に対する繰り返す肺手術の場合や,肺葉切除困難な症例などに対して,しばしば縮小手術が選択される.縮小手術では腫瘍の位置や切除範囲の同定が重要であるが,触知困難な小型肺癌に対しては難渋することも多い.近年,胸腔鏡手術が普及しているが,特に両者の両立は困難である.われわれは,術中部位同定困難が想定される多発スリガラス結節(GGN)に対し,術前にバーチャル気管支鏡ガイド下で肺表面に複数箇所マーキングするvirtual-assisted lung mapping(VAL-MAP)を用い,胸腔鏡下左上区切除を施行した1例を経験したので報告する.

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近年検診や診断法の進歩により,いわゆる小型肺癌が増加している.早期発見例や含気率の高い肺野末梢型小型腺癌の増加に伴い,縮小手術により根治できると考えられる症例が増加し,積極的縮小手術への応用が見直されてきている.国内では日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)0802やJCOG0804の多施設共同解析が行われ,その結果がまたれるところであるが1),最近では積極的縮小手術の良好な予後が報告されるようになってきており,今日における実臨床での有力な選択肢となっている.また,低肺機能などの併存疾患のリスクが高い患者で肺葉切除が困難な場合に,消極的な目的で縮小手術が選択される2).

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肺癌に対する標準手術は,肺葉切除と肺門部および縦隔リンパ節郭清とされてきた1).しかし,最近20年ほどの画像診断の進歩により小型肺癌が発見される頻度が増加し2~4),肺葉切除と縮小手術の後方視的解析の結果5~8)から,実臨床においては症例を選択したうえで肺癌に対する縮小切除が行われるようになってきた.特に区域切除においては術式を行ううえでさまざまな工夫がなされている.しかし,区域切除と肺葉切除を比較する無作為化比較試験の結果が得られていないため,わが国のガイドラインにおいては小型肺癌に対して区域切除が推奨されているものの9),科学的根拠はない.さらに長期予後に関しては,区域切除は小型肺癌か全身状態が不良である肺癌例に対して多く行われている現状を鑑みると,区域切除後の長期予後についてはまだ検討する余地があると推察される.

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原発性肺癌の外科治療の第一選択は肺葉切除とリンパ節郭清術であるが,早期小型病変の場合,患者状態や腫瘍性状に合わせた縮小手術も治療手段としてあげられる.われわれは当院の手術例の中で,3 cm以下の原発性肺癌に対して施行された区域切除術例を後方視的に検討・解析した.手術成績について当科での区域切除に対する取組みとともに報告する.

まい・てくにっく

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大動脈弁置換術後であれば胸骨正中切開の再エントリーとなり,丁寧な癒着剝離が必要となる.人工心肺のセットアップは上行大動脈送血,上・下大静脈脱血,上肺静脈ベントを基本とし,初回手術と同様の手術視野にもっていけるように心臓周囲の剝離をすすめることとなる.右側左房切開によるアプローチを基本にするが,再手術で剝離困難な場合には,右房切開・心房中隔アプローチも有用である.上行大動脈(送血)・上大静脈(脱血)は十分に剝離可能なことが多いが,下大静脈周囲の剝離には難渋することがあり,特にテーピングが困難な場合には,大腿静脈から下大静脈まで脱血カニューレを挿入して,横隔膜の直上で下大静脈を大動脈遮断鉗子で遮断するというオプションを用いることもある.

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73歳・男性で,15年前に右肺結核で治療後,1年前から狭窄音の聴取と右肺の広範な無気肺を反復していた.

連載 専門医に必要な画像診断技術 (第7回)

3 CT―迅速・詳細な評価

冠状動脈 立神 史稔
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冠状動脈CT angiography(CTA)は,10年以上前までは心臓カテーテル検査でしか行えなかった冠状動脈の評価を非侵襲的に行うことができる比較的新しい検査法である.近年のCT装置の発展に伴い,良好な画質で比較的簡便に冠状動脈を評価できるため,ここ数年で急速に普及している.冠状動脈CTAは,冠状動脈病変に対する陰性的中率が高いことから,近年は虚血性心疾患の診断アルゴリズムの中で重要な役割を担っている.また,冠状動脈バイパス術(CABG)の術前・術後評価や冠状動脈肺動脈瘻,冠状動脈起始異常,単冠状動脈などの先天性冠状動脈奇形に対する術前の非観血的評価にも有用である.本稿では,冠状動脈狭窄病変の評価法に加え,近年開発され臨床使用が可能となっている新たなアプリケーションについて紹介する.

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はじめに 心房間交通以外に肺静脈血の出口がない患者では,十分な心房間交通が適切な肺循環に不可欠である.心房間交通以外に冠状静脈血の出口がない患者では心房間交通は必要と思われるが,検索しえた限りでは,このような例で心房間交通が自然閉鎖した報告はこれまでない.

胸部外科医の散歩道

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1973年に三重大学に入学して以来,三重県に住んでいる.「住めば都」とよくいうが,三重県の適度な田舎感が私にはあっている.そんな三重県を散歩道として紹介する.

書評

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『今日の治療薬2019―解説と便覧』が今年も発刊された.1977年に初版が発行されて以来,半世紀弱にわたり版を重ねているので,おそらく医療関係者でその存在を知らない者はいないであろう,ベストセラー中のベストセラーといっても過言ではない.かくいう筆者もレジデント時代に出張先などで一人になったとき,どんなに助けられたか言い尽くせないほどである.ましてやまだインターネットが今ほど普及していなかった時代である.誰もがスマートフォンを手にし,アプリが発売されている現代ですら,書籍版が発売され続けているということは,それだけ需要があるということを雄弁に物語っている.

基本情報

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胸部外科
72巻7号 (2019年7月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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