胸部外科 72巻6号 (2019年6月)

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全身麻酔手術の前には絶食期間が必要であり,その期間の脱水を補う目的で末梢からの点滴が一般的に行われている.近年この点滴療法を経口補水に置き換える術前経口補水療法が行われるようになってきている.これまでは腹部外科領域での報告1,2)が多く,呼吸器外科領域での報告は少ない.経口補水を行う際に懸念される合併症として麻酔導入時の嘔吐,それに伴う誤嚥からの肺炎が考えられ,呼吸器外科領域の手術で肺炎は致命的となるため,腹部手術に比べ導入がためらわれていると思われる.しかし術前経口補水療法では,絶食期間はこれまでどおり存在するものの,絶飲期間が入室2時間前からときわめて短いこと,また手術室入室時まで点滴に拘束されないでいられることから,患者のストレス軽減が期待できる.

まい・てくにっく

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もっとも多く遭遇する,下葉切除時に#11iリンパ節(LN)・#12l LN・#13 LNなどの炎症性固着を介在して気管支と肺動脈が固着しているケースを想定する.

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三心房心は非常にまれな疾患で,心房は膜様の隔壁により2腔に分かれている.さまざまな解剖学的病型を認めるが,症状の出現に関しては,左房内の交通孔の大きさや併存するその他の心疾患によって異なる.われわれは,心筋梗塞による左室拡張障害を契機に発見された三心房心の症例を経験したので報告する.

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開心術後の心外膜ペーシングワイヤー(以下,ワイヤー)迷入は非常にまれな合併症である.いくつかの報告例はある1,2)が,治療戦略およびその対策に関する文献は少ない.本例から学んだことについて報告する.

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自己大動脈弁温存基部置換術(VPRR)が1990年代前半に相次いで報告され1,2),近年日本でも積極的に導入する施設が増加してきた.日本では大動脈弁を人工血管の中に再移植するreimplantation法が普及しているが,われわれは大動脈二尖弁を伴う高度の大動脈弁輪拡張症(AAE)に対してValsalva洞壁のみを人工血管で置換するリモデリング法を行い,良好な結果を得たので報告する.

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収縮性心膜炎(CP)は,結核が減少した現在では頻度が少なく,他方縦隔への放射線照射や心臓手術後の発症が増加している.本疾患に対する外科的治療は心膜剝皮術であり,その際には下大静脈周囲を含む右房・右室の十分な心囊膜切除が重要である.さらに臓側心膜も十分切除しなければ手術の効果が得られない.左室後壁を取り囲む石灰化を有する場合は,これに対しても十分に切除を行わなければ,左室流入障害をきたす.われわれは心膜剝皮術10年後にCPが再発し,高度右心不全をきたした例に対して,残存する右室流入路および左室側の再心膜剝皮術を行い,良好な結果を得たので報告する.

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冠状動脈バイパス術(CABG)終了時には再手術に備え,胸腺組織によるグラフトの被覆・保護がしばしば行われる.CABG術後12年目に複数のグラフトに囲まれて発生した胸腺腫に対し,術中のグラフト損傷を回避するために行ったさまざまな準備が奏効した1手術例について報告する.

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胸腺腫は胸腺上皮由来の腫瘍で,腫瘍細胞の形態と随伴する未熟Tリンパ球の多寡によりA,AB,B1,B2,B3型胸腺腫およびそれ以外のまれな組織型に分類される1).通常は孤発性であり,同時性や異時性を含め,多中心性に発生することは比較的まれである.また,その組織型が完全に異なっていたという報告例は少なく,上皮型とリンパ球型が同時かつ多中心性に発生したという本邦報告例はない.われわれは,A型とB2型が同時かつ多中心性に発生したと考えられた胸腺腫の手術例を経験したので報告する.

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肺癌の画像所見は時に炎症性変化との鑑別が困難なため,経過観察とされることがしばしばある.われわれは,肝癌として切除された腫瘍がthyroid transcription factor-1(TTF-1)により肺癌の転移であることが後に判明した症例を経験したので報告する.

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われわれは妊娠中に増悪した縦隔成熟奇形腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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切除不能高位食道癌に対する喉摘食道バイパス術は,鶴丸昌彦先生(順天堂大学食道・胃外科特任教授)に着想をいただき,これまで10例少々に行った術式である.バイパスのために喉摘まで? と批判を受けるかもしれないが,適応を吟味し,患者の十分な理解と同意があれば,意義のある術式である.

連載 専門医に必要な画像診断技術 (第6回)

3 CT―迅速・詳細な評価

大血管 松永 尚文
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代表的な大動脈疾患である大動脈瘤や大動脈解離は,破裂や臓器虚血により生命の危険に陥る可能性のある重篤な疾患であるため,可及的すみやかに正確な画像診断と適切な治療を行うことが必須である.CTは比較的簡便で侵襲が低く,かつ短時間で広範囲の領域を客観的に評価でき,さらに緊急検査に対応可能であり,急性期を含む大動脈疾患における画像診断において中心的な役割を果たしている.本稿では,代表的な大動脈疾患である大動脈瘤と大動脈解離に対するCT診断を中心に,その役割と画像診断のポイントに関して解説する.

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デュッセルドルフはドイツ北西部に位置する人口約60万人の商業都市である.ドイツにおける日本企業の拠点としても知られており,在留日本人は約6,000人と,ドイツの中でもっとも多い.日本食レストランなども多く,日本人にとっては非常に住みやすい都市である.デュッセルドルフ大学心臓血管外科はドイツで最初に開心術が行われた名門大学であり,日本人心臓外科医にとってはBad Oeyenhausenで長らく活躍され,その後日本大学の教授となられた南和友先生がドイツで最初に勤務された大学としても有名である.しかし,近年は臨床的にも学術的にもactivityがかなり落ちてきており,そのため過日の栄光を取り戻すべく,39歳と非常に若いLichtenberg教授を招聘したという経緯があった.

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はじめに 急性心筋梗塞(AMI)後の合併症の中で乳頭筋断裂の頻度は比較的低いが,重篤な合併症の一つである.われわれは術前にAMIと確定診断されずに弁置換術を行い,術後にAMIと判断された1例を経験したので報告する.

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はじめに 左上大静脈遺残(PLSVC)は大静脈系の先天性異常のうちもっとも多いが,ほかの先天性心疾患を伴わない場合はほとんどが無症状であるため,心臓大血管疾患の検査時に偶発的に指摘されることが多い.また,PLSVCを伴った症例の開心術は,体外循環時の脱血管挿入様式や心筋保護液の注入方法という問題が生じるため,術前の詳細な画像診断に基づいた手術戦略が重要である.われわれは僧帽弁閉鎖不全症(MR)の術前精査時にPLSVCを指摘された症例の僧帽弁形成術(MVP)を経験したので,文献的考察とともに報告する.

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はじめに 大動脈一尖弁は非常にまれな疾患であり,文献的考察をふまえて報告する.

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はじめに 冠状動脈インターベンション治療(PCI)において,エキシマレーザーは高度石灰化病変,血栓病変,完全慢性閉塞病変などバルーン拡張が困難な複雑病変に対して有用で,かつ合併症が少ないとされている1~3).われわれは,エキシマレーザー冠状動脈形成術(ELCA)中に左前下行枝(LAD)の冠状動脈穿孔を発症し,緊急手術によって救命した症例を経験したので報告する.

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はじめに 微小髄膜細胞様結節(MPMN)は,外科切除肺や剖検例で偶発的に認められることが多く,髄膜腫と類似した微小結節である1).Mizutaniらの報告2)では,MPMNの発症年齢は平均62.3歳と比較的高齢者に多い.われわれは,若年でMPMNを合併した肺腺癌の1例を経験したので報告する.

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はじめに 気管支原性囊胞は,胎生期に前腸から発生した気管・気管支原基の異常発芽や迷入により発生すると考えられている.その発生部位はほとんどが縦隔であり,横隔膜に発生することはまれである1).われわれは,横隔膜内に発生した気管支原性囊胞の1例を経験したので報告する.

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はじめに ニューモシスチス肺炎(PCP)は,細胞性免疫が低下した患者で発症する亜急性肺炎である.PCP経過中に肺実質に囊胞性病変が出現することがあり,気胸を発症するとしばしば難治性である1).われわれはPCP後難治性気胸に対し,手術およびendobronchial Watanabe spig‑ot(EWS:Novatech社,Grasse)挿入により気胸のコントロールができた症例を経験したので報告する.

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多くのハウツー本がある中で,本書は「診療ガイドライン作成」というキーワードを中心に,文献検索の基本(特異度優先)と発展(感度優先)に関してわかりやすく,かつ実践的な解説がなされているという特徴をもった,ユニークな本である.では,その内容を詳しくみてみたい.

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本書を手にとり,まずは目次をみる.基本手技,術前準備,手術総論,手術各論と,一見よくある教科書のような構成である.しかし,ポンプオフ,止血,それぞれのポイントとその詳説の一つひとつが,細かな手順まで頭の中にスッとイメージできるように工夫されている.

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心臓血管外科手術における成績向上は,近年めざましいものがある.日本胸部外科学会の学術調査によると2014年度には66,453件の心臓大血管手術が施行され,本邦の手術成績は世界をリードしている.これはひとえに先人達のたゆまぬ努力の積み重ねの結果であり,最近の学会主導による医師教育システムの充実が大いに貢献していると思われる.心臓血管外科領域においても患者第一をめざす医療安全・質向上は必須項目であり,その枠組みの中ですべての心臓外科医は日々学術的・技術的向上の必要性に迫られ,厳しい環境のもと日々研鑽を積んでいる.しかしながら,外科医にとって技術について学ぶことは至福のときであり,それを実践して患者に還元できたときにその苦労は報われ,その深みにはまってゆく.心臓手術は一つ歯車がずれると患者の生死に直結する分野であり,慎重かつ時に大胆な判断が要求される.開胸,人工心肺確立,各術式に纏わるピットフォールが待ち受けている.それらを予見して回避する必要があり,常に瞬間的な判断を要求される.これらのテクニカルスキルは先輩医師の指導により学ぶ点も多いが,自ら学ぶ姿勢がきわめて重要で,その助けとなるテキストがあってほしい.

胸部外科医の散歩道

笑いの技術 良河 光一
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大阪国際がんセンターで,「笑いとがん医療の実証研究」と題されたプロジェクトが行われています.関西ではテレビ・新聞などで報道されましたから,ご存知の方も多いかと思います.癌患者を対象に落語,漫才などの芸能を楽しんだ群と見なかった群を比較し,癌免疫に関連するIL-12Bや遺伝子変異を検討するというものです.昔から「笑う門には福来たる」というように,笑いの持つ潜在力が科学的に解明できるかもしれません.

基本情報

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胸部外科
72巻6号 (2019年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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