胸部外科 69巻4号 (2016年4月)

  • 文献概要を表示

著者らが手術を行ったStanford A型急性大動脈解離90例を対象に、これらを術式により上行置換群74例と弓部置換群16例に分け、治療成績を比較検討した。その結果、1)手術時間、体外循環時間、心筋虚血時間、循環停止時間、SCP時間は弓部置換群で有意に長く、再開胸率も弓部置換群で高かった。2)遠隔期の累積生存率を比較すると、5年生存率は上行置換群68±6%、弓部置換群59±14%で、有意差はみられなかった。一方、術後5年の大動脈合併症回避率は上行置換群88±6%、弓部置換群68±16%でこちらも有意差はみられなかった。3)遠隔期大動脈合併症は上行置換群では9例に認められた。また、死亡例の2例以外に弓部大動脈拡大での再手術が3例、腹部大動脈拡大による手術が1例、仮性瘤形成による再手術が3例あった。殊に弓部置換群では3例で認め、死亡例1例以外の2例で下行大動脈拡大で手術が行われていた。尚、術後の末梢側拡大は両群間で有意差は認められなかった。

  • 文献概要を表示

著者らの心臓血管外科でadventitial inversion法による断端形成法を用いて外科的治療を行ったStanford A型急性大動脈解離48例の早期・中期遠隔成績を検討した。術式は上行または弓部部分置換術が44例、上行弓部置換術が4例であった。その結果、1)術後の早期死亡は4例(8.3%)で認められた。死因は術中心破裂が1例、重度脳障害が3例であった。2)中期遠隔成績では、5年累積生存率は74.5%、心大血管合併症累積5年回避率は90.9%、5年再手術回避率は95.2%であった。3)エントリー切除群と非切除群の比較では、心大血管合併症5年回避率、5年再手術回避率はともにエントリー切除群で有意に良好であった。

  • 文献概要を表示

Stanford A型急性大動脈解離の手術に際して、著者らはすべての吻合部にelephant trunk法を応用した人工血管を用い、中枢側吻合をstepwise法で行った。今回、82例について検討した。術式は弓部大動脈全置換術が22例、弓部部分置換術を含めた上行大動脈置換術が60例であった。その結果、1)術後在院死亡は5例(6.1%)で認められた。死因は術前CPAが2例、ほか腸管壊死、下行大動脈破裂、急性心筋梗塞が各1例であった。2)早期合併症は恒久的脳障害が5例(6.1%)、長期挿管を要する呼吸不全が9例(11.0%)、気管切開を必要とした症例が4例(4.9%)であった。3)出血により再開胸止血術を要した症例はなく、また作成した人工血管に起因する合併症も現在まで認められていない。

  • 文献概要を表示

著者らが手術を行ったStanford A型急性大動脈解離のうち、基部再建を要した21例を対象に、これらを術式別に基部置換術(Bentall手術)を行った9例(B群)とパッチ形成によるValsalva洞再建術を行った12例(V群)に分け、早期および遠隔成績を比較検討した。その結果、1)手術時間、体外循環時間、大動脈遮断時間、循環停止時間は両群間で有意差は認められなかったが、大動脈遮断時間はV群でやや短い傾向にあった。2)早期合併症は、B群で低心拍出症候群が2例、脳出血が1例認められた。また、V群でも脳梗塞は2例に認められたが、両群間で有意差はなかった。3)病院死亡はB群が3例、V群が1例で認められたが有意差はなかった。4)遠隔期合併症はB群で心筋梗塞が1例、V群で感染性心内膜炎が1例、心筋梗塞が1例を認められたものの、こちらも有意差がなかった。5)Kaplan-Meier法による8年生存率はB群が66.7%、V群が72.9%で、両群間に有意差はなかった。

  • 文献概要を表示

逆行性Stanford A型急性大動脈解離に対して胸部ステントグラフト(SG)挿入術を行った10例の治療成績について検討した。その結果、1)全例、目的部位にSGを留置できていた。SG留置に要した時間は平均75.9±10.0分であった。2)手術死亡はなく、手技に関連した血管合併症や神経合併症もみられず、全例が生存退院していた。3)上行大動脈病変の継時的変化では、大動脈径は術前に比し術後3ヵ月で有意な縮小がみられた。4)TLiは術前に比べ術後2週で有意な増加を示していたが、FLiは術前に比べ術後2週で有意な減少がみられた。5)平均21.5±8.5ヵ月(中央値19.5ヵ月)の観察期間で死亡例はなく、解離関連合併症や追加治療を要した例もみられなかった。

  • 文献概要を表示

著者らは広範囲Stanford A型急性大動脈解離に対して上行弓部置換術を行った。今回、127例を対象に術後の下行大動脈偽腔の変化による遠隔期成績および開存偽腔が残存する予測因子について検討した。その結果、1)遠隔期CTで下行大動脈に開存偽腔が残存する症例(開存群)は33例(26%)、下行大動脈偽腔が血栓化または消失している症例(閉塞群)は94例(74%)であった。開存群ではエントリー非処理率が有意に多かった。2)累積生存率は両群間で有意差は認められなかったが、大動脈関連事故回避率は開存群で有意に不良であった。術後8年の大動脈事故回避率は閉塞群が93.9%に対して、開存群は54.3%であった。3)ロジスティック回帰分析による多変量解析の結果、「50歳未満」「エントリー非処理」が有意な遠隔期開存偽腔残存の独立した予測因子であることが明らかとなった。

  • 文献概要を表示

70歳男性。突然の胸痛を主訴に救急搬送となった。経胸壁心エコーや造影CTを行なったところ、腹腔動脈(CA)閉塞と上腸間膜(SMA)狭窄による腸管虚血を合併したStanford A型急性大動脈解離と診断された。手術は自家大伏在静脈グラフトを用いたSMAバイパス術による腸管虚血解除を先行し、腹部大動脈手術(CR)は二期的に実施する方針とした。その結果、SMAバイパス術後の経過は良好であったが、術後5日目にSMA分岐直後の末梢に内膜裂口が出現し、大動脈基部から下腸間膜動脈分岐部までの全域で偽腔の再開通を認めた。そのため同日、緊急に上行大動脈置換術および弓部部分置換術によるCRを施行した。以後、経過は良好で、患者は発症から34日目に合併症なく独歩退院となった。尚、術後22ヵ月経過現在、腹部症状なく良好に経過している。

  • 文献概要を表示

著者らが人工血管置換術を行ったStanford A型急性大動脈解離のうち、術前心電図変化があった症例、または冠状動脈バイパス術(CABG)を必要とした40例について検討した。その結果、1)術前心筋虚血症状を示したのは27例で、残りの13例は心電図で壁運動に問題を認めなかった。2)心電図変化のなかった13例は血行再建が必要であった。内訳は再CABGが2例、次いで術前CAGで偶然みつかった冠状動脈末梢病変へのステント留置が2例、冠状動脈入口部の動脈形成が2例、右冠状動脈引き抜けに対する大伏在静脈-右冠状動脈バイパスが5例ほか、人工心肺離脱時に新たに心筋虚血を生じ大伏在静脈-右冠状動脈バイパスを必要とした2例であった。尚、この13例中、2例が死亡していた。3)術前心電図変化を伴った27例では、うち11例に冠状動脈再建が施行されたが、全例左+右冠状動脈症例で死亡例は3例であった。残る16例は冠状動脈に解離がなく血行再建不要であったが、手術所見からNeri分類のA型と推測されるのは4例だけであった。

  • 文献概要を表示

著者らが手術治療を行ったStanford A型急性大動脈解離336例を対象に、これらを臓器灌流障害あり群76例となし群260例に分け、術後早期・遠隔期成績を比較検討した。その結果、1)臓器灌流障害あり群はなし群と比べ、複数ヵ所の送血路の割合が有意に多く、手術時間が有意に長かった。2)臓器灌流障害あり群の30日死亡率/病院死亡率は21.1%/22.4%であった。3)臓器灌流障害の合併は病院死亡の有意な危険因子であった。4)臓器灌流障害の内訳は中枢神経が38例と最多で、次いで四肢末梢が26例、冠状動脈が13例、腹部臓器が8例の順であった。5)臓器灌流障害あり群の5年生存率は84.5%、10年生存率は41.8%で、なし群ではそれぞれ80.9%、59.3%と、両群間で有意差は認められなかった。

まい・てくにっく

胸部外科発展の軌跡 パイオニアの原著と足跡を綴る(第4回)

  • 文献概要を表示

著者らは肺悪性腫瘍に対して彎曲型ステープラー(RR)を用いて肺部分切除術を行った。今回、9例10病変について検討した。1)全例、腹腔鏡下手術であった。3ポートアプローチは6例、2ポートアプローチは3例であった。2)RR使用の理由としては、癒着例での最深部切離に使用した例が3病変、中枢側の病変で肺動静脈の近傍や最深部の切離に用いた例が7病変であった。3)原発性肺癌例の1例には同側腹腔内播種の再発、転移性肺癌の1例には他部位への新たな転移病巣出現が認められたが、ほかの7例は観察期間中に切除断端含め再発は認められなかった。

  • 文献概要を表示

症例は60~72歳の男性3例、女性1例であった。いずれも呼吸苦を主訴とした大動脈弁閉鎖不全症による心不全症状で、前医から著者らの施設へ紹介となった。術前の冠状動脈造影では全例、異常はみられなかった。1例は術前経胸壁エコーによる術前診断が可能であったが、3例は術中にはじめて大動脈四尖弁と診断された。Hurwitz分類ではtype aが1例、type bが2例、type cが1例であった。4症例とも人工弁による大動脈弁置換術が施行された。その結果、病理所見では全例で切除弁尖に粘液腫様の変性を認めた。術後経過も合併症なく経過良好で、独歩退院となった。

  • 文献概要を表示

60歳女性。転移性肋骨腫瘍に対する切除術後、第5病日目に右肺ヘルニアを発症した。喘息発作、呼吸困難が強いため同日緊急手術が行われたが、術中所見では腹壁欠損部をヘルニア門として右上葉と中葉の約半分が脱出していた。また、中葉の前壁には脱出時に肋骨断端で損傷したと思われる臓側胸膜の損傷がみられた。そこで、胸膜損傷部を縫合修復してから肺を胸腔内に還納後、次いでComposix L/P Meshを胸壁の内側に縫着し、腹壁再建を行い、手術を終了した。その結果、術後の経過は良好で、患者は術後第12病日目に退院となった。

基本情報

24329436.69.04.cover.jpg
胸部外科
69巻4号 (2016年4月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

文献閲覧数ランキング(
6月29日~7月5日
)