循環器ジャーナル 67巻3号 (2019年7月)

特集 循環器疾患の画像診断—現状と進歩

序文 陣崎 雅弘
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 CT,MRI,核医学などの非侵襲的画像診断は,1970年代から1980年代にかけて臨床現場で活用されるようになった.全身のなかでも,頭部と骨盤は動きがないので新しい技術を導入しやすい領域であった.1990年代から2000年代にかけて,多くの技術革新が行われ,動きのある心臓をはじめとする循環器領域にも応用されるようになってきた.循環器領域の画像診断は,動きの克服に加えて,形態,機能,虚血など多面的な評価が必要な領域であることから,常に多くの技術が結集されてようやく臨床応用に辿り着く感がある.技術の進歩の恩恵を最も受ける領域と言える.

 2000年代に始まったCTの多列化は,心臓CTの臨床応用を目指していたと言っても過言ではない.被ばく低減技術も心臓CTへの恩恵は大きく,近年では超高精細CTが登場し,冠動脈や末梢動脈病変の形態の診断能向上に貢献する可能性が高い.シミュレーション技術のFFRCTは虚血評価に大きく貢献することが期待できる.MRIは,臨床で使われるようになった当初から形態描出に使われてきたが,1990年代以降,ダイナミックスタディによる灌流画像,反転回復法を利用した遅延造影による虚血・梗塞評価が可能となった.また,2000年前後から定常状態グラディエントシーケンスが発達し,コントラストのよいcine画像や,呼吸ナビゲータと組み合わせたホールハート・イメージングによる冠動脈の3次元表示が可能となった.MRIは様々な撮像法を組み合わせることにより多様な情報を得ることができるため表現力の豊かさがあり,近年では心筋T1値,T2値や4D flowなど,新しい情報も追加できるようになっている.今後は,他モダリティーとの競合というよりも,遅延造影,心筋T1値,T2値,血流計測などのMRIから得られる独自の情報をいかに臨床に生かしてゆくか,という方向に進むと思われる.核医学は,長年にわたる虚血のエビデンスの構築があり,最も古くから活用されている検査法である.近年では,半導体検出器が登場し,より高分解能の画像が得られるとともに,少ない線量でも撮影可能になっている.核医学の魅力は,分子生物学等の発達により病態がより詳細に解き明かされ,新たに画像化すべき分野が増えた場合でも,薬剤合成技術を活用することで対応していく潜在力をもっていることである.

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 循環器診療における画像検査としては,20世紀末まで,主に血管造影・心臓超音波検査・心臓核医学検査が用いられてきたが,近年のCT・MRIの進化は著しく,CT・MRI・核医学の非侵襲的画像診断法が循環器疾患の診断および治療方針決定に重要な役割を担うようになっている.これらの非侵襲的画像診断法の近年の進歩とそれぞれの位置づけを概説する.

Ⅱ.虚血性心疾患

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Point

・冠動脈CTは様々な臨床シナリオに応用可能な検査だが,ガイドラインを参考に適切に使用する.

・冠動脈CTは一般的なCTよりもアーチファクトを生じやすいため,撮影原理やアーチファクトの知識が正しい画像評価につながる.

CT Perfusionを活用する 真鍋 徳子
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Point

・安静時のみの撮像では冠動脈の中等度狭窄による虚血判定ができない場合がある.

・CTで包括的に冠動脈の形態的狭窄と機能的重症度評価が可能である.

・負荷Dynamic Perfusion CTによる心筋血流定量および虚血判定のノウハウについて紹介する.

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Point

・本邦でも機能的虚血評価の有用性が示され,件数が増加しているが普及率はいまだ少ない.

・FFRCTを利用することで,より簡便に機能的虚血評価が可能となり,appropriate interventionの構築が可能となる可能性がある.

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Point

・心臓MRI検査は,様々な情報を一度の検査で得ることができる画像診断法である.

・冠動脈MRAは放射線被曝がなく石灰化病変であっても狭窄が評価可能など冠動脈CTにはない特徴を有する.

・心筋パーフュージョンMRIはSPECTと比較し空間解像度が高く,虚血診断能および予後評価に優れている.

核医学検査を改めて知る 宮川 正男
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Point

・虚血性心疾患に対する非侵襲的な診断法のなかで,心筋血流SPECTは欧米では最大の検査数を有する.

・エビデンスに基づいた心筋血流SPECTの虚血評価法を理解することが重要である.

・半導体SPECT装置と自動解析法により検査時間の短縮や被曝の大幅な低減が可能となる.

Ⅲ.心筋症

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Point

・PTSMA術前の中隔枝走行の評価に心臓CTが有効である.

・中隔枝評価だけでなく,PTSMAの適応判断の際に重要な左室形態評価やPTSMA後の治療効果判定にも心臓CTが活用できる可能性がある.

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Point

・心臓MRIでは,様々な撮像シークエンスを利用して,形態評価(冠動脈・心室壁厚),心機能解析,血流評価,心筋還流,心筋性状を評価できる.

・心筋症の診断には,cine MRIによる形態評価・心収縮能評価と遅延造影による障害心筋の評価が重要となる.

・本稿では,特に日常臨床で遭遇する肥大型心筋症・拡張型心筋症・不整脈原性右室心筋症・心臓サルコイドーシス・心アミロイドーシスについて,心臓MRI遅延造影と,最近心筋性状の新たな評価方法として注目されているT1 mapping,これらを理解するために必要な病理組織学的所見を示す.

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Point

・重症大動脈弁狭窄症に対する外科的な大動脈弁置換術のリスクが高い症例に対し,TAVIが施行されるようになった.

・CTは,TAVI術前精査において重要な役割を担い,大動脈基部,大動脈弁輪,アクセス経路などに関する有用な情報をもたらす.

・CT画像から,大動脈弁の断面に対して直交する適切な透視角度(perpendicular view)を予測することが可能である.

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Point

・CT検査は,大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁形成術などの手術の術前・術後評価に有用と考えられる.

・大動脈弁閉鎖不全症では,重要な弁尖の計測項目としてgeometric height,effective height,coaptation depthがある.

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Point

・肺循環疾患の画像診断は従来肺血管造影,シンチグラフィによって行われてきたが,多列化・高速化によるCT angiographyの画質向上やDual Energy CTやsubtraction技術によるCT perfusionの日常臨床導入により,CTの役割は大きくなってきている.

・CTは肺高血圧症診療においてスクリーニングから分類,CT perfusionを利用した重症度評価・治療効果判定にまで広く用いることができるが,特に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)を確実に拾い上げることが非常に重要である.

・CT perfusionでは従来の肺血流シンチグラフィに比べて短時間で空間分解能の高い血流画像を取得することが可能であり,最近ではCTEPHにおける肺血流評価においても肺血流シンチグラフィとほぼ同等の成績が報告されている.

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Point

・右室容積計測や肺動脈弁逆流の評価は経胸壁エコーでは難しく,MRIにより行われる.

・右室容積計測に際しては輪郭描画,血流速度・血流量の計測に当たっては撮像断面とVENC設定の最適化が重要である.

・肺動脈弁閉鎖不全がある場合には,渦流やらせん流により血流量の計測値が影響を受けることがあり,大動脈と肺動脈血流の整合性を確認する必要がある.

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Point

・肺血流シンチの原理

・肺高血圧の肺血流シンチ所見

・右左シャント率,肺血流分布フラクタル解析

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Point

・近年,大動脈解離治療ガイドラインは,手術成績向上,ステントグラフト治療導入により大きく改訂された.

・治療ガイドライン変遷に適合した画像診断ストラテジーの再構築が必要である.

・以前よりentry/reentry・ulcer-like projectionの同定が重要となり,心電図同期CTの有用性が高まっている.

Ⅶ.末梢動脈疾患

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Point

・CTAの長所・短所を把握し,他モダリティと比較した適応を考える.

・CTAは末梢動脈疾患の鑑別に有用であり,各疾患の画像所見を学習する.

・CTAは血管内治療の計画に有用であり,手技時間の短縮や治療成功率の向上につながる.

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Point

・閉塞性動脈硬化症の画像診断では,非造影MR angiographyはCT angiographyに匹敵する診断能を有する.

・非造影MR angiographyは,被曝がなく,造影剤も使用しないため,スクリーニングやフォローアップに適している.

・非造影MR angiographyは石灰化の影響を受けないため,糖尿病性血管障害や慢性腎臓病における血管性病変の評価にも適している.

Ⅷ.トピックス

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Point

・心筋ストレイン解析により局所心筋壁運動を定量的に評価することができる.

・心臓MRI,CTでも心エコーと同様に心筋ストレイン解析が可能であり,臨床応用が進んでいる.

・近年,3D心筋CTストレイン解析が可能となってきており,従来法より詳細な心機能解析が可能になると期待される.

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Point

・一般的な正常解剖モデルと異なり,3Dプリンタで制作される患者自身の心臓血管3Dモデルは,術前の疾病理解,診断,治療法の選択や疾病モデルでの手術トレーニングといったより患者に直結した心臓血管情報を提供できる3Dレポーティングである.

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Point

・血流解析は流体力学の基盤である数理理論と循環器病学の基盤である循環生理学に深く根ざした学問であり,技術開発にはこれらの基礎学問のコンセプトを要する.

・血流解析は流体力学同様「場の理論」であり,統計学や機械学習などのデータサイエンスとは異なるアプローチであるが,まだ経験の蓄積やデータが十分でない疾患の診断・治療には威力を発揮しうる.

・MRIや超音波計測に基づく血流解析は心機能診断の一環として系統的な血流診断をするべきであり,CFDシミュレーションでは非解剖学的な血行再建などの「仮想手術シミュレーション」が可能である.

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基本情報

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循環器ジャーナル
67巻3号 (2019年7月)
電子版ISSN:2432-3292 印刷版ISSN:2432-3284 医学書院

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