保健師ジャーナル 65巻2号 (2009年2月)

特集(1) 保健師の「プロフェッショナリズム」を考える

ジレンマを抜け出し,気持ちよく働くために

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 保健師がさまざまな矛盾に悩んでいます。避けがたいものも多く,これをうまく乗り切るためには,プロとしての「ちえ」が必要とされます。

 健康観や職業観に「揺れ」のあるこの時代にあって,コアコンピテンシーをフルに発揮しつつ,プロフェッショナリズムを確立することは,保健師にとって重要な課題と言えましょう。

 本特集では,保健師がこれまでに蓄積してきたアセスメント,コミュニケーション,人間関係づくり,調整能力,政策形成などに関するナレッジを見直し,既存の発想にとらわれない,柔軟な仕事の方向性を探ります。

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 保健師にとって「プロ」とは何だろう ? 「専門性が高い」というのとも少し違う……。仕事を面白くできてこそプロ ? プロとして充実した保健師生活を送るためのコツやスキルを語り合う。

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 市町村合併の嵐のなかで,保健(師)活動もまた,揺れに揺れた。地域特性を生かした保健活動を進めながらの仲間との連携のなかで,いまの活動実践のなかに新たな希望を見出した。

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 時代が変わり,政策や制度が変わるなかで,保健師の専門職としての役割が問われている。その専門性は変わるのか,変わらないのか。プロフェッショナルとしての保健師にこだわってみます。

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 看護大学という「職場」には磁力があるという。看護大学のなかで筆者は,その磁力にどのように引きつけられたのか,あるいは跳ね飛ばされそうになったのか。看護大学の魅力と素顔に触れてみる。

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 産業保健の保健師は,健康課題を抱えた本人,その上司や部下,そして人事課などからも,いろいろな期待や要求を受ける。そのなかで保健師は,その関係者間のバランスをとると同時に,その期待のなかで自分自身が潰れないために,どのように対応しているのだろうか。

特集(2) 「障害調整健康余命」を保健活動に活かす

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 健康政策の立案と評価の指標として,障害調整健康余命(DALE)が注目されています。超高齢社会の今日,「長寿の実質」を問題にすべきであることは,保健医療福祉専門職間でも共通の認識となっています。そのようななか,介護保険統計を用いた47都道府県DALEの算定結果が公表され,これまでの生命の量だけを表す平均余命からは見えてこなかった質の部分が見えてきました。

 これを受けて,茨城県では健康余命の考え方を健康政策に活かす取り組みを開始しました。また,神奈川県南足柄市では,独自に健康余命を算定し,その結果を住民に示し,自分の健康について考えるきっかけとして用いています。

 本特集では,これからの健康の指標として注目を浴びるDALEとその算定過程で算出される加重障害保有割合(WDP)を紹介しながら,地域保健活動へ活かす方法を探ってみます。

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 健康余命の指標の1つである障害調整健康余命と,その計算過程で計算される加重障害保有割合の基礎的な概念と計算方法,上位と下位の都道府県の値,高齢者健康施策への活用について報告します。

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 南足柄市では,健康増進計画の推進のため,住民と行政が DALEを通じて共通の認識をもち,健康な地域づくりのための啓発活動を進めています。ここに至るまでの経過と,今後の展望と課題を報告します。

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 本稿では,DALEと WDPを活用して他の地域との比較や年次推移を調べることで,地域の高齢者の健康水準を評価し,健康課題を読み取る方法を紹介します。

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福島市は,乳幼児健診を「親同士の交流」や「親子の触れ合い」の場として有効に活用している。4か月健診では,「子育てアンケート」などをもとにしたスクリーニングシステムを導入し,虐待予防へつなげている。単なる検査だけでは終わらせない“育児支援に着目した健診”は,多くの母親から好評を得ている。

 

福島市の概況

 福島市は福島県の北部に位置し,面積767.74km2と広域です。西に吾妻連峰,東に阿武隈高地が広がり,中心部には緑豊かな信夫山,そして白鳥が飛来する阿武隈川が南北に流れています。江戸時代には蚕繭の街として賑わいましたが,現在は「いで湯とくだものの里」として知られています。

 人口は約29万5000人,年間出生数は2527人(2007年現在)です。

連載 ニュースウォーク・131

介護保険黒字3800億円の怪 白井 正夫
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 夫69歳,妻67歳の2人暮らし。年金から天引きされる介護保険料(年間)は夫が約10万円,妻が約5万円。2人とも元気で,いまのところ介護保険との付き合いは保険料納付だけで,給付を受けたことがない。喜ぶべきことなのに,近ごろ得心がいかない。夫婦で15万円を「税だから」と己に言い聞かせても思いがわだかまる。その介護保険自体が“いまや「要介護」状態にある”(2008年12月7日付,朝日新聞「耕論」)と聞いてはなおのことである。

 3年ごとに改定される介護保険の保険料や介護報酬は2009年度が改定期。この改定をめぐっていろいろな数字が躍っている。「報酬引き上げは3%」「介護保険料4%アップ」などなど。そのなかでこれって何! と思わず目を疑いたくなるのが「介護保険の黒字3,800億円」。

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 本州の人は北海道を「遊びに行くのはいいけど,住むには寒い」という。異論はない。でも,その「寒さ」は,生きる幸せの源でもあると思う。

 たとえば,氷点下まで気温が下がった冬の朝,川辺を歩けば,川面からまるで温泉のように湯気が立ち上るのをみることができる。大気の温度が水温よりも下がったために,水が蒸発して起こる「けあらし」。キーンと冷えた空気のなかで,立ち上った水蒸気は結晶となり,木々のこずえに樹氷をつくる。朝日に輝くその姿と静寂は,この世のものとは思えないくらいに美しい。

連載 対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術・9

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はじめに

 本シリーズの各論で,アディクション=依存症について説明しました(2008年8月号)。そのなかでアディクション=依存症を一言でいえば,“行動の適正なコントロールができなくなる病気”であると説明しました。

 実際に臨床現場で遭遇するさまざまな依存症は,すべてこの「コントロール障害」という概念でとらえれば,非常に簡単にその不自然な行動のパターンを理解することができます。しかしながら,それが理解できることと,正しい対応ができることは別問題です。なぜなら「依存症」という病気は,“人の情をえさにして進行する”という特徴をもっているためです。関わる人間が親身になればなるほど,それが病気を成長させてしまう恐れがあるため,サポートすることを任務とする保健師の善意は病気の格好のえさとなって巻き込まれる可能性があるからです。

 本号ではアディクション=依存症についてカンファレンスします。依存症のなかでも,現在日本で各々推計200万人以上はいるだろうとされているアルコール依存症とギャンブル依存症とを取りあげます。どちらも職場や保健センターなどでよく相談を受ける依存症ですが,前者は疾病として認められているものの,後者はまだ国が疾病として認めておらず,専門の治療施設として掲げている医療機関はわずかですから,なかなか回復に結びつけてあげられないということをよく耳にします。

 アルコール依存症とギャンブル依存症ともに,公的機関で関わるケースと職場で関わるケースの2つの違った環境におけるケースを例示したいのですが,スペースは限られていますので,非常に典型的な相談例2ケースを例示します。

 症例を読みながら,それらの相談がみなさんに直接寄せられたならばどう対応するべきか,対応を頭に描いたあとでポイントに目を通してください。ご自身での病気の理解度が把握でき,対応方法の修練度がわかり,実際に症例に直面したときに役立つと思います。また,そのあとで仕上げとして,以前の各論を読み返していただければさらに理解が深まると考えます。

連載 保健師のための経営学 シゴトの進め方の技術を学ぼう・14

キャリアについて考える 栗岡 往子
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 皆さんは,ふと「自分はこのままこのシゴトを続けてよいのだろうか ?」「このシゴトは,ほんとうに自分のしたいシゴトなんだろうか ?」と漫然とした不安を抱くことはないでしょうか ? それは自分のキャリアを考える良いチャンスです。そんなとき,今回紹介するキャリアの理論を知っておくと,シゴトでも私生活でも良い人生が送れそうです。

 筆者は,当連載の文献によく登場する神戸大学の金井壽宏先生のすばらしい授業を聴きながら,これまでのキャリアを振り返り,これからのキャリアの方向性を考えることができました。皆さんにもこの連載を通じて,自分自身のキャリアに興味をもってもらえたらうれしく思います。

連載 看護系大学・研究所からのメッセージ・50

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■History & Now

――どういう機関なのでしょう?

 目白大学は「育てて送り出す」を教育理念に,中学,高等学校,短期大学,大学,大学院,付属機関などを新宿キャンパスに有する総合教育機関です。2006(平成18)年,看護学部看護学科は,四季折々の自然に恵まれた岩槻キャンパス(さいたま市)に開設しました。広く明るいキャンパス内は,看護学部看護学科,保健医療学部,人文学部があり,活気にあふれています。看護学部看護学科の1学年定員は80名で,学生は現在3年生まで進行し,いよいよ2009年度に1回生を送り出します。変革する社会に対応しうる人間性豊かな感性を兼ねそろえた人材育成と,看護に必要な専門的な知識・技術を身につけた実践力のある看護師・保健師教育をめざしています。

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編集後記 杉之尾 , 和田
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●本誌を担当して2か月目に入った。だんだんと本誌に関する仕事量が増えてくる。普通の雑誌作りの流れとは逆行する形で,素読み,校正,入稿,原稿整理,原稿受付の順に仕事が増えてくる。ここまでに関わった仕事はいわばマニュアルどおりというか,ある程度決められた手順があるので,一を知れば十を知るような感じで慣れてしまえるものだ。しかしいよいよ,次の段階は本誌の特集と連載の企画の執筆依頼,さらに企画そのものを立てることが必要になる。

●最近,巷で話題になっている『不機嫌な職場』という本に「プロ」とは「その仕事を顧客にとって最高のパフォーマンスで提供できる人」とあった。また,「自分の仕事で最高の仕事をしたかったら,周辺分野の知見をあわせ持つこと」ともあった。NHKテレビの番組では「プロフェッショナル―仕事の流儀」という番組がさまざまに話題となる。弊誌の編集くらいではとても編集のプロをめざすなどおこがましいが,職業人としてのプロくらいはめざしたいと思う。(杉之尾)

●毎年年末に,その年の世相を現わす「今年の漢字」が発表されますが,2008年度は『変』でした。「change」を主張したオバマ次期米国大統領の当選や日本の首相の交代,株安に象徴される世界経済の変動,温暖化問題に関連する気候変動などが理由です。ちなみに,2位以下を並べると,「金」「落」「食」「乱」「高」「株」「下」「毒」「薬」。何だか続けてよむと,暗澹たる“変”な世の中を反映しているようです。

 こうやって見ると,漢字という言語は一文字で切り取ると,様々なイメージを喚起させる力を持っていることを感じます。では,「保健」というワードはどうでしょう? 「健康を保つ」というのが辞書的な意味ですが,「保」が意味する「保つ」とはどういう状態のことでしょうか? そして,そもそも「健康」とはどんな状態を意味するのでしょうか? 回答者の数だけ答えが生まれそうですね。

 今年も保健師の専門性が問われる1年になりそうです。(和田)

基本情報

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保健師ジャーナル
65巻2号 (2009年2月)
電子版ISSN:1882-1413 印刷版ISSN:1348-8333 医学書院

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