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はじめに
本シリーズの各論で,アディクション=依存症について説明しました(2008年8月号)。そのなかでアディクション=依存症を一言でいえば,“行動の適正なコントロールができなくなる病気”であると説明しました。
実際に臨床現場で遭遇するさまざまな依存症は,すべてこの「コントロール障害」という概念でとらえれば,非常に簡単にその不自然な行動のパターンを理解することができます。しかしながら,それが理解できることと,正しい対応ができることは別問題です。なぜなら「依存症」という病気は,“人の情をえさにして進行する”という特徴をもっているためです。関わる人間が親身になればなるほど,それが病気を成長させてしまう恐れがあるため,サポートすることを任務とする保健師の善意は病気の格好のえさとなって巻き込まれる可能性があるからです。
本号ではアディクション=依存症についてカンファレンスします。依存症のなかでも,現在日本で各々推計200万人以上はいるだろうとされているアルコール依存症とギャンブル依存症とを取りあげます。どちらも職場や保健センターなどでよく相談を受ける依存症ですが,前者は疾病として認められているものの,後者はまだ国が疾病として認めておらず,専門の治療施設として掲げている医療機関はわずかですから,なかなか回復に結びつけてあげられないということをよく耳にします。
アルコール依存症とギャンブル依存症ともに,公的機関で関わるケースと職場で関わるケースの2つの違った環境におけるケースを例示したいのですが,スペースは限られていますので,非常に典型的な相談例2ケースを例示します。
症例を読みながら,それらの相談がみなさんに直接寄せられたならばどう対応するべきか,対応を頭に描いたあとでポイントに目を通してください。ご自身での病気の理解度が把握でき,対応方法の修練度がわかり,実際に症例に直面したときに役立つと思います。また,そのあとで仕上げとして,以前の各論を読み返していただければさらに理解が深まると考えます。
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