訪問看護と介護 23巻6号 (2018年6月)

特集 人生100年時代の地域包括ケアへ向けて—2018年同時改定を在宅現場でどう活かす?

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「2025年を前にしたラストチャンス」といわれた診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定。

団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年をも視野に入れ、在宅医療のさらなる強化が図られました。

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日本の社会保障が直面する「少子高齢社会」の実際

 皆さんご存じのように、日本は世界で最も高齢化が進んだ社会です。

 65歳以上人口が総人口の25%を超え、さらに30%になろうという国は、日本のほかに世界中どこにもありません。

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 2018年は、6年ぶりに介護報酬と診療報酬(訪問看護療養費)の同時改定となりました。双方に関わる訪問看護ステーションでは、訪問看護体制の見直しや利用者への説明文書・料金表の変更、新たな届出などで慌ただしい日々を過ごされていることでしょう。さらに4月の報酬請求から、訪問看護療養費明細書には該当する疾病などのコード番号を記載するように変更されていますが、対応されたでしょうか。

 介護報酬の改定率はプラス0.54%、診療報酬ではプラス0.55%で双方ともプラス改定といわれますが、皆さまの訪問看護ステーションの収支状況はいかがでしょうか。

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これまでの同時改定における訪問看護の評価と効果

 ここ数年の改定においては、在宅医療の充実が必ず重点的な課題に据えられています。なかでも訪問看護については、事業所数の少なさが問題視されてきましたが、これからの訪問看護は大規模化と多機能化が必要と訪問看護連携推進会議註1が提案し、2度目の同時改定であった2012年には医療、介護、両方の保険における齟齬の解消、入院中の患者さんの外泊時や退院直後の訪問看護、週4日以上の訪問看護の対象者の拡大、介護保険における看護小規模多機能型居宅介護の新設などが盛り込まれました。

 この時期から訪問看護事業所数が一気に伸び始めています。さらに、2014年度の機能強化型訪問看護管理療養費の創設によって、10人以上の職員を置く訪問看護事業所が全体の16%になっています*1

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介護医療院とは

 2018年度の同時改定で「介護医療院」が創設されました。介護医療院は医療を内包した介護保険施設で、看取りやターミナルまでを視野に入れた終の棲家をめざすものです。2017年度末に廃止が迫っていた介護療養病床や一部の医療療養病床の受け皿を審議するなかで、創設が決定されました。介護療養病床療養機能強化型相当のⅠ型と、転換型老人保健施設相当のⅡ型、2つの類型があります。審議会では介護つき有料老人ホームなどに衣替えし、訪問診療や訪問看護のしくみで医療を外から届ける「医療外づけ型」も提案されました。直近の調査によれば、現行の介護療養病床の多くはⅠ型へ転換する意向のようです。

 今回の決定は2011年の介護療養病床の廃止に端を発しています。当時は転換先として介護療養型老人保健施設が創設されましたが、さまざまな理由で移行は進みませんでした。筆者は今回の審議会に構成員として出席していましたが、同じ轍を踏まないために、医療機関側との合意形成を丁寧に図り、適切な名称が提案されたと感じています。報酬でも移行を促進するさまざまなインセンティブが設定されています。

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病院と訪問看護の立場は逆転

 今回のこの3つの加算・療養費の変更は、ひとことで言うと、「病院が訪問看護師に頼る時代になった」ということではないでしょうか。日頃の患者さんを知っているのは訪問看護師なのだから、患者さんが入院するときも、退院に向けての支援を考えるときも、訪問看護師が舵取りをする考え方になったということです。かつて、病院は患者のことを何でも知っているかのようにふるまっていたように筆者は感じていましたが、これから立場は逆転します。

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 今回の改定では、2025年に向けて、訪問看護への期待がさらに明確になったと感じています。改定の主なところでは、中重度に対するケア、ターミナルケアの充実とより一層の在宅看取りの促進、複数名による訪問看護実施によるタスクシフト、地域包括ケアを進める多職種連携などです(図)。この改定により、訪問看護の現場で何が変わり、何が変わらないのかについて考えていきたいと思います。

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 私は、障害者施設や介護現場、相談業務を経て、2012年度より介護支援専門員の実務をしています。現在は埼玉県新座市にて、独立型居宅介護支援事業所「てつ福祉相談室」で介護支援専門員をしており、さらに、根拠と実践を明記できる「生活支援記録法」の研修を埼玉県内の介護支援専門員や地域包括支援センターに向けて開催しています。

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支える活動を後押しするもの

 私は2011年に福井県内初となる、複数名の医師による24時間365日の診療体制をもった在宅医療専門クリニックを開業しました。以来、年齢や疾患を問わず、幅広い方々の“自分らしい生き方”と向き合い、共に悩みながら、その実現に向けたお手伝いをしています。また、2016年には外来のクリニックも始め、かかりつけ医として、切れ目のない人生への関わりも続けています。

 今回の診療報酬改定では、かかりつけ医機能の強化により、在宅医療など地域のさまざまなサービスとの連携がさらに進むものと期待しています。同時に、質の高い在宅医療・訪問看護の提供に向けた評価も充実し、地域包括ケアシステムの確立に向けて、住み慣れた場所での暮らしを支える私たちの活動を後押しするものとなるでしょう。

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 2018年度は6年に一度、診療報酬と介護報酬の改定が重なる時期にあたる。さらに障害福祉サービス等報酬の改定が重なって「トリプル改定」となった。在宅医療・介護に関連する改定内容のポイントを確認してみよう。

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そもそも「園芸療法」とは

 私は20年近く、植物の持つ療法的効果について研究を進めています。たとえば、森林を散策することによってリフレッシュできる「森林浴」は多くの方がご存じだと思います。

 この森林浴も最近では多くの医科学的効果(エビデンス)が蓄積され、人の生理や心理に有効であることが明らかになってきたことから、「森林セラピー」と名前を変え、メンタルケアの治療にも適用され始めてきました。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・105

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 マギーズ東京はオープン以来、近郊のみならず、日本各地から来訪者を迎えています。相談内容によっては、その方の居住地に近い支援につながるよう、近隣施設に関する情報を提供することもあります。

 あるとき、楽器演奏者で、がん経験者のMさんが相談にみえました。その方とのご縁は、2017年10月に行なった1周年チャリティパーティの席上で、Mさんに演奏していただくというものになりました。さらに、Mさんの友人でがん闘病中のHさんを紹介したい、という話につながっていきました。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第14回

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北欧とフランスにみたデイケアのかたち

 その昔、北欧を中心に高齢者ケアを学ぶ旅を何度かしたが、いつ、どこのことだったのか、さっぱり思い出せないのが口惜しい。しかし、高齢者ケア施設の居室内トイレの広さに驚きながらも、体格の大きさや「ケアする他者」と「される自分」の個体距離(personal distance、小さな防衛領域)を考えると、これくらいのパーソナル・スペース(対人距離)があってもいいのかと思ったこととか、食堂はもとより掃除ワゴン一式に至るまで美しい色彩空間に包まれて身体がほぐれる感じとか、居住者の好奇心に満ちた目や声の響きなどは、いまも鮮明に覚えている。多分、そのときの私には、日本の高齢者施設に住まう認知症の人々の感覚・知覚情報の乏しさが同時に感じられており、何かの拍子にその感覚が新しい意味をもって思い浮かぶといったようなことだったのであろう。

 1986年のフランスの旅では、その国でも最初だという認知症中心のデイケアの様子を聞いた。家具の製作所を改装したというそのデイケアの日常を映したスライドには、4〜5人の女性と2〜3人の男性が、木材を運んだり、のこぎりを使った作業をしていたり、掃除やらトランプ遊びやら、卓を囲んで談笑する姿が映されていた。説明されなければどの人が支援者なのかもわからない、この映像を見ながら私は、なぜ、日中のケアなのか、それにどんな意味をもたせ、理念と目標をどこに置くか、民間が行なう場合の組織は、人は、ルール、秩序、手順などの決めごとはどう築いていくかなど、デイケアのケアのかたちを真剣に考えていた。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第30回

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 日本経団連は4月17日、「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」と題する報告書を公表した。介護離職を防ぐため、基本理念として「トモケア」を掲げ、「介護のあり方を『共に』考え、仕事との両立を『共に』取り組む」ことを提唱。経営トップがメッセージとして発信することや、両立しやすい制度・職場づくりなどの取り組みを促している。

連載 シンソツきらきら・第18回

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 第18回は、高知県の芝さんに、ちょうど新卒1年目が終わる時期に書いていただきました。初めての受け持ちとして単独訪問を行なった利用者への看護で、芝さんはどんなことを学んだのでしょうか。(小瀬)

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小池 , 栗原
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我が社でも、規則や規制、ルールがある日、急に設けられることがあります。良いほうに働く場合もあれば、その逆の結果に至るケースも。そもそもは現場の実態を踏まえて生まれたはずが、これまでの緩やかさがなくなり、なんだか窮屈なものになってしまったりだとか……。現場の人々の自律的な行動を支えるには、規則・規制を設けることそのものではなく、どのような規則・規制を設けるか、つまり秩序の「数」ではなく「質」こそが問われるのだと切に感じます。●さて、同時改定。こちらにも同じことが言えるのかもしれません。大きな規模のものだけに、その影響には今後も注目しておかねば。…小池

4月29・30日に開催された日本在宅医学会第20回記念大会。昨年まで弊誌でご連載いただいていたコミュニティデザイナーの山崎亮さんが領域横断セミナーに登壇されましたが、その締めの一言が忘れられません。「実務をしていると、目の前のことばかりに囚われて、仕事の波にあおられて船酔いのようになってしまうこともあるでしょう。そういうときは、目の前ではなく水平線を見るんです。そうすると、そこは動いていないことに気づく。私の場合は、自分の仕事で社会に対して何ができるかを考えます。忙しいなかでも、理想について考え直す時間をもつことが大切です」。今特集を編集中で、情報の海で溺れかかっていた自分には救命具のような言葉でした。この制度はどのような社会をめざしてつくられたのか?と考えることが羅針盤になりました。この誌面にも、何らかの水平線が描けていればよいのですが。…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
23巻6号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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