訪問看護と介護 20巻4号 (2015年4月)

特集 ユマニチュードは何が違うかⅠ—その有効性と可能性

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認知症ケアの新しいメソッドとして注目を浴びる「ユマニチュード」。

(1)見る、(2)話す、(3)触れる、(4)立つを“4つの柱”とする、とても具体的で実践的な150に及ぶケア技術です。

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 私の「ユマニチュード(Humanitude)」との出会いは、共同研究に取り組む大学教授の研究室で、たまたまHELP(Hospital Elderly Life Program)というせん妄予防プログラムのテキストを見かけたことに始まります。HELPに関心があったので、テキストを読みたいと教授に伝えたところ、「日本にHELPを広げようとされている本田美和子先生(p.310)をご紹介しましょうか?」と提案してくださいました。2012年の冬、初めてお会いする日、「フランスからのお客さまを同行してもよいでしょうか?」と本田医師が連れてこられたのが、ユマニチュードを考案したイヴ・ジネスト先生(p.311)だったのです。

 偶然の重なりは、「必然」かもしれません。でもこのときは、ユマニチュードにこれほど深く関わることになろうとは、思いもしませんでした。

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 2013年の夏、千葉県の施設でイヴ・ジネスト氏と本田美和子医師(p.310・311)にお会いし、ユマニチュードのケア現場を見学する機会を得ました。そのころ筆者は、親族の介護で試行錯誤を繰り返していたので、ユマニチュードの有効性を実感し、「人間愛の哲学」と「多彩な技」に魅せられました。そして、静岡大学の認知症情報学プロジェクト*1-2の中心テーマとして、本田医師のチームとの「ユマニチュードの評価」の共同研究が始まりました*3。以来、ユマニチュードについていろいろな発見をしながら、その奥の深さを学び続けています。

 ユマニチュードの認知度が上がり、賛同者は増え続けていますが、「ユマニチュードって、以前からある技法と同じでは?」、あるいは「達人のイヴさんだからできるのでは?」といった、有効性を認めつつも批判的な見方も一部にあります(p.308)。一方、「ホントに効果があるの? 科学的とは言えないのでは?」というように懐疑的な人もいるようです。そこで本稿では、情報学の観点から、ユマニチュードのケア技術と習熟度の“見える化”について述べ、「ユマニチュードは何が違うか」を考察します。

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 私は、ユマニチュードの「認知症の非薬物療法」としての可能性を感じている。しかし、これを広く普及させていくには、その効果や安全性についての科学的評価が不可欠である。そこで2014年6〜9月、郡山市医療介護病院(福岡県)における共同研究(p. 285、次号でも詳報)に参加し、ユマニチュードに関する脳科学研究を行なった。これに伴い、ユマニチュードの効果について、いくつかの仮説を立て、また脳機能を計測する近赤外分光法(near infrared spectroscopy:NIRS)を用いてその検証を試みた。本稿では、その経過の一部を報告し、ユマニチュードの科学的評価の可能性を考察する。

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「コミュニケーション障害」としての認知症を支援する

 認知症は、「いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知機能障害があるために、日常生活・社会生活に支障を来すようになった状態」と定義されます*1

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 BPSD(行動・心理症状)の多くは、他者との「関係性」のなかで生じます(p. 297)。認知症が、他者と関わるための機能—社会脳—を障害するからです。すなわち認知症は、“関係性の病”ともいえます。「社会脳」の理解は、認知症ケアにおいて最も重要な点です。

 ユマニチュードの定義のひとつに、「ケアを行なう人がケアの対象者に『あなたのことを、私は大切に思っています』というメッセージを常に発信する—つまり、その人の“人間らしさ”を尊重し続ける状況」とあります*1。“人間らしさ”とは、人と人との関係性(人間=人と人の間)のもとにあります。すなわちユマニチュードは、認知症による社会脳の障害に抗して、「互いに他者から尊重される関係性」を取り戻そうとする技法といえます。

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 初めてユマニチュードに触れたとき、「今さら、新しい教えなんて要らないんじゃないか」という感情を抱いた。説明の言葉を変えても、ケアの神髄は同じではないか。これが私の第一印象、すなわち“ユマニチュード・アレルギー”だった。

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「ユマニチュードって、心ある人なら誰でもやってる当たり前のことですよね?」

「立つのがいいのはわかりますが、転倒がこわくって……」

「やってみたけど、うまくいかないんですけど?」などなど、素朴な疑問・悩みに真正面からお答えいただきました。

当初は、認知症の方にかみつかれたり叩かれたりもした創始者イヴさんが「患者さんがケアを拒否するには何か理由があるはずだ」と35年にわたって探究してきたユマニチュードはまさに“道”。

いつでもどこでも活用できるのが、ユマニチュードの特長でもあります。

日本の専門職のケアへの姿勢に感銘を受けてやまないイヴさんと、あなたも“ユマニチュー道”を究めてみませんか?

巻頭カラーグラフ 終える命 つなぐいのち・第1回【新連載】

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※本連載は、本文のみ無料でお読みいただけます。

 写真は、冊子版でのみご覧いただけます。

 

 命を授けてくれて、ありがとう。これからをもっと大事に、おかあさんの分も……、大切に生きます」

「お疲れ様でした。先に逝ったおじいさんと、仲良く見守っていてね」

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第45回

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 もうすぐ新学期。毎年、新入生には、2人1組でアイマスクをつけた歩行実習を体験してもらっている。片方がアイマスクをつけて、片方がナビゲーター役になる。最初は廊下、それから上り階段、慣れてきたら大学の中を自由に歩いてもらう。

 アイマスクを渡して装着してもらうと、すぐに「暗い!」「これで階段とか無理!」などと、きゃあきゃあ大騒ぎになる。ナビゲーター役はたいてい横でにやにやしている。明らかに、学生たちはアイマスクをつける人が主役のように思っている。でも、実を言うとこの実習の勘所は、ナビゲーターの側なのだ。それは、実際に歩き始めるとすぐにわかる。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第49回

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杏里 今月号と次号の特集は、今、話題の認知症ケア技術「ユマニチュード」。

母さん 私もちょっと前にテレビで観て、気になっていたわ。

連載 これって、急変?Part2 なんとなく変への対処法・第4回

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本日の目標

(1)退院後の“包括的”なアセスメントができる

(2)“継続性”を意識した退院支援ができる

(3)「入院時」「入院中」「退院時」「退院後」の“時期”に則した介入ができる

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当事者研究やソーシャルスキルトレーニング(SST)などを活用した先進的な地域精神医療の取り組みで知られる「浦河べてるの家」(北海道浦河町)。「当事者中心」をとことん追求し、これまでの精神医療の常識を打ち破ってきた「べてる」が、2014年6月に精神科特化型訪問看護ステーション「マーラ」を立ち上げた。

当事者もスタッフも「ともに暮らす仲間」と呼ぶ「べてる」の訪問看護は、「地域に当事者の森を育むようなもの」!?

当事者たちと「浦河べてるの家」を立ち上げ、36年間、彼らと地域でともに暮らしてきた向谷地生良さん(ソーシャルワーカー)と悦子さん(看護師)、また、昨年3月に精神科病棟を休止した浦河赤十字病院に勤めていたマーラ所長の吉田さん、スタッフの本間さん(ともに看護師)に話を聞いた。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・67

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 鹿児島県は大隅半島にある肝付町(きもつきちょう)へ、講演に向かう道中。鹿児島市内からフェリーに乗り、さらに陸路で2時間弱の車には、看護大学3年生の2人が同乗していました。在宅看護にとても興味があるという2人、若い感性で素直な疑問を投げかけてくれます。なかでも「医師と衝突したことはあるんですか?」との質問に、印象的なシーンがよみがえりました。

連載 一器多用・第47回

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 パーキンソン病の夫を在宅で介護している奥さんから、「歩行介助」について質問を受けました。夫は家の中なら、動きはゆっくりであるものの、それほど危険なく歩ける状態でした。しかし家の前のなだらかな坂道となると、急に足取りが重くなってしまい、外出を嫌がるようになってきた、とのことでした。車いすには互いにまだ抵抗感があり、できることなら自分自身の脚で歩いてもらえるような介助がしたい、というのが要望でした。

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ニュース—看護と介護のこのひと月

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次号予告・編集後記 杉本 , 栗原
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ユマニチュードは、ケアする人の「認知行動療法」なのではないか、と思う。「よかれ」としている“ケア”が実は認知症の人を怯えさせているのに、決められたケアはせねばと、時には抑えつけたり縛ったり、つらい気持ちを押し殺す。なんて苦しいことだろう。これぞ、べてる(p.331)のいう“苦労”のパターンだ。だけど、3分うまくいかなかったら、とりあえず退却するのがルールのユマニチュードは、その理念をして“苦労”のメカニズムを示唆し、自ら「認知」を変える時間をくれる。その技術をして、本当のゴールへの「行動」をも照らす。向谷地さんは「まず自分をケアする」ことから患者さんのケアは始まると言っている。イヴさんの言葉と不思議と共鳴する。ユマニチュードは、患者さんもあなたも傷つけない。あなたも患者さんも自由にします。…杉本

「リレーショナル・アート」と呼ばれる現代美術の分野があります。1998年にフランスの美術批評家によって提唱されたもので、たとえば「自作のカレーを展覧会の来場者にふるまう」というような、人と人との関係をつくる・表わす行為や体験そのものを表現形式として、人間や社会や関係性について、新しい見方を引き出すことが目的だとか。なんのこっちゃという感じですが、「その人が人間かどうかは、周囲の人がその人を人間扱いするかどうかで決まる」というユマニチュードも、べてるのSSTも同じかもしれません。相手との関係性を表わす行動を変えれば、その人との関係自体が変わっていく。自分や相手の見方も変わる。ケアの世界にこそすばらしいアートがある!と実感した号でした。…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
20巻4号 (2015年4月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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