CLINICAL CALCIUM 29巻1号 (2018年12月)

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 骨発育のスパートは1~4歳と12~17歳の2つがあり,一般的には思春期のスパートが注目されるが,最大のスパート時期は乳幼児期の1~4歳である。特に生後1年間で身長は1.5倍の25 cm増加し,ヒトの生涯において最も急速で最大の骨発育が認められる。その後3年間も身長増加が持続するが,骨発育に起因するもので,その最大の関与因子は栄養である。  一方,骨の原基は体の他の臓器と同様に器官形成期に作られるが,石灰化が最も活発化するのは妊娠第3期の出生前である。  以上のことを踏まえ,出生前の胎児期に始まり,出生後の乳幼児期から思春期,さらには最大骨量獲得時期までの骨・Ca代謝を論じつつ,骨発育について概説した。

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 妊娠・授乳中のカルシウム代謝は大きく変化する。これは胎児・出生児にカルシウムを供給するためである。妊娠中は胎盤を通じて30 gのカルシウムを胎児に蓄積し,授乳期には1日220~340 mgのカルシウムを児に供給する。  母体のカルシウムは妊娠期には消化管からの吸収を増やすことで,また授乳期には母体骨のカルシウムを供給することで児のカルシウムが賄われ,これら一連は将来の母体の骨粗鬆症の発症には通常寄与しない。  本稿では妊娠・授乳中の骨・カルシウム代謝,さらにはビタミンDや関連ホルモンに関して述べる。

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 なぜ若年女性で骨・カルシウム代謝が問題になるか,それは若年期に高い骨密度(bone mineral density:BMD)を獲得していないと将来骨密度が低下して,骨折閾値を下回ってしまう可能性があるからである。通常,最大骨量(peak bone mass:PBM)となるのが18歳前後であるため,将来の骨粗鬆症を効果的に予防するには18歳以前の介入が必要である。骨密度に影響を与える因子として,栄養・食習慣・身体活動・荷重的運動・紫外線照射・エストロゲン欠乏・加齢・生活習慣病などが挙げられる。  本稿では若年女性という骨密度の上昇に重要な時期の骨・カルシウム代謝に影響を及ぼす,低体重によるエストロゲン欠乏をきたす病態・疾患を中心に産婦人科医の立場から解説する。

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 胎児のカルシウム需要は分娩直前には300~500 mg/日に達するが,その大半は妊婦の腸管カルシウム吸収増加によって賄われ,骨吸収亢進はあっても限定的である。一方で新生児のカルシウム需要は約210 mg/日であるが,授乳婦の腸管カルシウム吸収は非妊時と同等であり,母乳へのカルシウム供給は専ら授乳婦の骨吸収によって賄われる。破骨細胞による椎体海綿骨の吸収と骨細胞周囲の骨吸収は,プロラクチンの上昇に起因する卵巣からのエストロゲン産生低下と乳腺からのPTHrP産生増加の両者によって亢進し,授乳婦は3~6カ月の授乳期間中に5~10%の海綿骨を失う。

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 妊娠後骨粗鬆症(post-pregnancy osteoporosis)は,原因が不明な稀な病態で,初産婦に多く,妊娠後期や産褥の授乳中に発症し,非外傷性の脆弱性脊椎骨折による持続する激しい痛みと行動制限を伴うことが多い。椎体X線像は多くの骨折の診断に使用されるが,magnetic resonanceは妊娠中も安全に使用可能で椎体骨折や骨髄浮腫の診断にも有用である。その診断には続発性骨粗鬆症(内分泌疾患,悪性腫瘍,慢性肝・腎疾患,自己免疫疾患,遺伝性疾患,薬剤性,悪性腫瘍など)の鑑別が重要である。妊娠後骨粗鬆症の頻度は不明であるが,1万人の妊婦のうち3人以上が発症しているかもしれない。その病態も不明であり,妊娠授乳期の生理的な骨吸収では一般的には骨折を起こさないため,骨折を起こした女性には,低体重,低peak bone mass,低栄養,遺伝など,さらなる2次的な要因があるかもしれない。

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 妊娠・授乳関連骨粗鬆症は稀な疾患である。これまでに国内外において症例報告がされてきたが,明確な診断基準がないのが現状である。しかし,問診,身体診察,画像検査を系統立てて行うことで比較的容易に診断が可能である。また,血液検査や骨密度測定も診断,治療の一助となる。重要なのは腰背部痛を主訴とした妊娠,産褥期の女性が受診した際に本疾患を疑うことである。妊娠・授乳関連骨粗鬆症の病状の進行を防ぐために,まずは適切な診断を行うことが求められる。

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 1型糖尿病,2型糖尿病ともに骨折リスクが高まる病態であるが,骨の脆弱性に与える共通の機序の一つとして慢性的な高血糖により終末糖化産物が増加し,蓄積した悪玉架橋,酸化ストレスに関連した骨質の劣化による骨強度低下が挙げられる。特に,1型糖尿病では骨芽細胞増殖因子である内因性インスリンは枯渇し,血清インスリン様成長因子-1は低下する。その結果,大腿骨近位部の骨密度は非糖尿病患者と比べて有意に低下し,骨折リスクは6~7倍増加する。周産期は適切な食事,運動療法に関する指導,またインスリン製剤による健常妊婦血糖値のnear normalを目標にした厳格な血糖コントロールが重要である。

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 ステロイドを使用するような病態を持った若年女性であっても,原疾患の活動性コントロールを行い注意深いフォローにより妊娠出産は可能である。近年では各国からステロイド性骨粗鬆症に対するガイドラインが出されているが,妊娠婦に対しては明記されていない。女性にとって児を得ることは大きな意味を持つので,個別の症例に合わせて十分なインフォームドコンセントが必要である。

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 腎機能障害合併妊娠の頻度は高齢化とその管理法の進歩により増加傾向にある。通常,腎機能障害合併妊娠で妊娠が許容されるのは腎機能軽度低下までの症例であるため,妊娠中に骨粗鬆症やそれによる脆弱性骨折を起こすことは稀である。近年,管理法の進歩により透析患者や腎移植後の女性の妊娠が増えている。ある条件を満たして妊娠すれば,早産率は高いものの生児を得ることができるようになってきた。透析患者は,一般人と比較して大腿骨頸部骨折が5倍程度多いが,骨粗鬆症の治療薬の多くが妊婦禁忌であること,早産率が高いため妊娠期間が長くないことから,妊娠中に透析患者の骨粗鬆症の予防・治療が行われることは稀である。

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 妊娠や授乳に関連する骨粗鬆症(pregnancy and lactation associated osteoporosis:PLO)は産褥期の女性に稀に認められる疾患である。成因や病態については不明な点が多く,その治療法について明確な指針はない。診断後に断乳することで骨量が自然回復する例が多いが,重篤な症例では薬剤投与も必要となる。処方時はビタミンD剤やカルシウム剤などが選択されることが多いが,重症例に対してはビスホスホネートやテリパラチドが有効であるという報告もある。挙児希望のある症例の場合,現在の治療で使用中の薬剤が次回の妊娠へ影響することを考慮する必要もある。

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 妊娠・授乳関連骨粗鬆症は妊娠後期や産褥期に発症する稀な疾患である。遺伝的背景についての報告もあるが多因子疾患と考えられ,その原因は不明な点も多い。多くは腰背部痛を主訴とする脊椎圧迫骨折であり,適切な保存療法が必要とされる。また,股関節痛を主訴とする一過性大腿骨頭萎縮症の報告も多く,一部の患者は骨折を呈し手術療法が必要となる。いずれも強い痛みを呈し,ADLが著しく損なわれる。母児の健康と長期的なQOLを獲得するためにも適切な診断・治療が求められる。

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 妊娠後骨粗鬆症は腰背部痛や多発椎体骨折を特徴とする,比較的まれな病態である。妊娠後骨粗鬆症や妊娠・授乳期の骨量低下を避けるためには,成長期に十分な骨量を獲得すること,成人後も骨量を維持することが必要である。国民栄養・健康調査の結果からは,20代・30代の女性の総エネルギー,たんぱく質,カルシウム摂取は全年代層で最も低い。また,運動習慣を持つ若年女性は1割未満である。妊娠後骨粗鬆症とともに,将来の骨粗鬆症と高齢期の脆弱性骨折を予防するために,若い女性に骨の健康を考えて十分な栄養摂取や運動習慣などの対策をすることを広めていかなければならない。

理解を助けるトレーニング問題

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(2019年1月号特集:「妊娠・授乳と骨・カルシウム代謝」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

学会レポート ASBMR 2018 REPORT

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 2018年9月にモントリオールで米国骨代謝学会(ASBMR 2018)が開催された。破骨細胞およびWntシグナルに関するトピックスを紹介する。

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 カナダ,ケベック州モントリオールで開催されたASBMR 2018について学会参加レポートを記載する。今年の学術集会も多様な研究領域にわたるトピックが報告されていたが,参加者としては同時刻の会場にはもちろん参加できず,時間的制約もあるため,本稿で記載できるトピックは限られている。また,内容も筆者の科学的興味に基づいている部分もあるが,ご容赦いただければ幸いである。

ASBMR topics 基礎系 高畑佳史 , 西村理行
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 今年のASBMRの主なトピックスの一つは,「骨・筋肉の連関」に関する研究の進歩に関してであった。適度な運動が骨の強化に関与することは臨床的に知られているが,そのメカニズムについては不明な点が多く残っている。今回のASBMRでは,Irisin,β-aminoisobutyric acid(BAIBA),Myostatin等の筋肉から分泌されるホルモンの骨格系細胞への作用に関する演題が多く見られた。特に,Irisinに関する報告が印象的であった。さらに,骨芽細胞および骨形成に関する興味深い演題も報告された。本稿では,これらの演題を中心に紹介したい。

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 2018年のASBMRは,新規骨粗鬆症治療薬の話題に乏しいものの,既存骨粗鬆症治療薬の骨質への効果やtreat-to-targetを意識した演題が多く報告された。しかし,プロバイオティクスやSARM(selective androgen receptor modulator:アンドロゲン受容体モジュレータ)など注目を集めた報告も散見された。

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 2018年のASBMRでは,骨粗鬆症やサルコペニアに関する多くの先進的研究が発表された。糖尿病における骨微細構造の変化,ビスホスホネート製剤の休薬や投与前骨密度と非定型大腿骨骨折の関連,デノスマブと高用量テリパラチドの併用療法による骨密度や骨微細構造の変化,重水素化クレアチニン,選択的アンドロゲン受容体モジュレーターおよび高用量天然型ビタミンDと筋の関連など,興味深い報告が多く見られた。

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 2018年9月28日~10月1日,カナダのモントリオールで米国骨代謝学会(ASBMR)2018が開催された。本稿では,臨床の観点から骨粗鬆症以外の骨・ミネラル代謝研究に焦点を当てる。当該分野におけるトピックスの一つは,これまで治療が困難とされてきた稀少疾患に対する研究・開発の進歩である。中でも,FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の新規治療薬であるburosumab関連の報告が多く見られた。また,筋肉,オステオカルシン,ビタミンD,腸内細菌叢をキーワードとする研究報告について紹介する。

ASBMR 2018 topics 福本誠二
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 2018年のASBMR年次総会は,9月28日から10月1日まで,モントリオール国際会議場で開催された。例年通り,骨・ミネラル代謝や筋肉などに関する数多くの演題が発表された。本学会では,診療上困難な症例の討論や若手研究者用のセッションの拡大など,新たな試みもいくつかみられた。本稿では,癌治療関連骨量減少と副甲状腺機能低下症の治療に関する演題を紹介する。

学会トピックス 寄稿 日本転倒予防学会 第5回 学術集会(ランチョンセミナーより)

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 日本転倒予防学会 第5回 学術集会が10月6,7日の両日,アクトシティ浜松で開催された。集会2日目のランチョンセミナー1で取り上げられた「サルコペニア・フレイルとビタミンD」について,演者の小川純人氏(東京大学大学院医学系研究科加齢医学・准教授)にその要旨についてご紹介いただいた。 (編集部)

連載 ミニ連載Ⅷ.細胞死と生命システム:生体恒常性の鍵としての細胞自殺

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 以前は,アポトーシスが生体における唯一の細胞死と考えられてきたが,その後の研究で,非アポトーシス細胞死の重要性がクローズアップされてきた。現在は,20種類近くの細胞死の存在とその重要性が明らかになっている。本稿では,これら多数の細胞死様式が発見されるに至った経緯や,現在同定されている細胞死について概説する。また,この中から,アポトーシスとオートファジー細胞死についてさらに詳細に概説する。

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1.骨破壊性T細胞による口腔細菌に対する宿主防御 2.骨膜にはペリオスチン制御性の高い骨再生能を有する骨格幹細胞が存在する

バックナンバー

特集予告(2月号、3月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
29巻1号 (2018年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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