CLINICAL CALCIUM 29巻2号 (2019年2月)

特集 動脈硬化とカルシウム~カルシウムパラドックスの謎に迫る~

Preface

Review

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 血管石灰化は,心血管リスクと関連する。プラークの線維性被膜中に存在する小さな石灰化は,メカニカルストレスを増加させ,プラーク破裂に繋がりやすい。中膜石灰化は,血管スティフネスを増加させ,心血管イベントを増加させる。このように,石灰化は,臨床的意義は非常に大きいが,未だ有効な治療法や予防法はない。最近までに,血管石灰化は,内膜石灰化と中膜石灰化とでは,異なる誘導因子や環境因子が関係する一方で,共通の細胞内メカニズムが存在することや,大動脈弁の石灰化は,炎症が中心的な促進因子であることが最先端のマルチオミックス解析で明らかにされた。また,多くの石灰化促進因子や抑制因子が同定され,それらを積み込む細胞外小胞(EV:extracellular vesicle)の役割,および石灰化を促進するEVの生成におけるsortilinの役割が示され,新たな治療標的として期待されている。

個体老化とミネラル代謝 黒尾
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 老化が加速する突然変異マウスの研究から,哺乳類の老化加速因子として「リン」が同定された。血中においてリンは,リン酸イオンまたはリン酸カルシウムのコロイド粒子(calciprotein particles:CPP)として存在する。血中CPPレベルは加齢や腎機能低下とともに上昇するが,CPPには炎症反応や血管石灰化を誘導する活性があるため,CPPが老化を加速する「病原体」である可能性が指摘されている。リンやCPPを治療標的とすることで実践的な抗加齢医学が創出できるか,今後の検討が待たれる。

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 骨粗鬆症は心血管疾患に対する強力な危険因子となる。それぞれの要因である骨量低下と血管石灰化には多くの共通因子が存在し,類似の機序でほぼ同時に増悪することから,骨粗鬆症治療により心血管疾患リスクを軽減しうる可能性が期待されている。そこで本稿では,血管石灰化と骨代謝に焦点を当て,その疫学,発生機序,および治療の可能性について文献学的考察を交え概説する。

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 心血管疾患は慢性腎臓病患者における重要な死亡原因であり,この進展には様々な因子が関与する。その中でも近年重要視されているのがミネラル骨代謝異常である。この中でリンは生命予後に最も強く関係する因子であり,我が国のガイドラインでもそのコントロールを第一優先とすることが推奨されている。リンは直接的に心血管系に影響を及ぼし,障害をきたすだけでなく,PTH,FGF23,ビタミンDなどその他の因子に影響を与え,間接的に心血管障害を進展させる。我々はこれらのメカニズムを理解し,CKD-MBDのコントロールを考える必要がある。

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 極度のビタミンDやカルシウム(Ca)の不足が低Ca血症を介し心不全に至るHypocalcemic cardiomyopathyと呼ばれる症例が乳幼児だけでなく高齢者でも報告されている。慢性腎臓病(CKD)合併心不全においても,低Ca血症は予後不良を予測すると報告されている。一方,活性型ビタミンDの投与を受けていると心血管イベントが少ないことは保存期CKDや透析患者で報告されていたが,これらは観察研究故に副甲状腺ホルモン(PTH)が高い患者での恩恵を見ているだけの可能性があった。日本からJ-DAVID試験が報告され,intact PTHが180 pg/mL未満の患者におけるアルファカルシドール0.5μg/dayの投与は心血管イベントを減らさないことが,はじめて無作為介入研究で示された。

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 慢性腎不全患者ではミネラル調節ホルモンの異常をはじめ,血管石灰化,骨病変など多くの異常が観察される。これらの異常が生命予後に大きくかかわることが明らかとなり慢性腎臓病(CKD)に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)という概念が定着した。なかでも腎不全患者における血管石灰化及び骨脆弱化発症機序はいまだ不明な点が多い。従来CKD-MBD発症の主因はカルシウム,リン代謝異常とされてきたが,カルシウム,リンを遵守しても完全にCKD-MBDを克服することは困難である。糖尿病やCKD患者の体内に蓄積する終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)とその受容体receptor for AGEs(RAGE)系が血管石灰化,骨脆弱化及び骨粗鬆症進展に関与しており,新たな治療ターゲットとして注目されている。

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 病理学的検討から,急性冠症候群(ACS)はプラーク破裂やプラークびらん,石灰化結節を原因とする冠動脈内の血栓形成によって引き起されることが示された。これらの原因を特定すること,特に石灰化病変の評価は治療のストラテジーを決定する上でも重要である。近赤外線を利用した新しい血管内イメージング法である光干渉断層法(optical coherence tomography:OCT)は,冠動脈プラークの定性評価・定量評価を高い解像度で行うことができることから,石灰化病変に対する治療において注目されている。

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 Computed tomography(CT)スキャンの進歩により,冠動脈CTによる石灰化プラーク,大動脈CTによる大動脈石灰化,大動脈弁石灰化の存在は,その後の心血管イベントと関係していることが明らかになった。特に冠動脈石灰化は,冠動脈の粥状硬化におけるプラークのサロゲイトマーカーとして,心血管イベントに関係する多くのエビデンスを有している。今後はCTを用いたカルシウムスキャンニングによるアテローム性動脈硬化症の同定によって,心血管疾患の予防のための薬物治療およびライフスタイル改善などに関する検討が必要である。

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 潜在性動脈硬化指標の一つとして,単純CTにより定量的に評価された冠動脈石灰化がある。一次予防において,危険因子への長期曝露の結果である冠動脈石灰化所見を用いることで,有効に動脈硬化性心血管病の発症を予測し,中等度リスク保有者の管理において治療方針の決定などリスクの層別化を行い得る可能性が検討されている。また,冠動脈石灰化は動脈硬化進展マーカーとしても用いられる。一方,冠動脈石灰化測定の費用対効果や放射線被曝の問題などでは確定的な結論が得られていない。一次予防における冠動脈石灰化の有用性の確立のために,わが国を含む冠動脈石灰化に関する研究の更なる発展およびエビデンスの集積が望まれる。

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 糖尿病は心血管病変や骨粗鬆症のリスクが高いことが知られている。血管の石灰化機序において,骨組織における骨代謝に類似した分子メカニズムが見いだされたことから,骨粗鬆症治療薬による糖尿病患者の血管石灰化予防が期待されている。しかし基礎研究や動物実験で得られた血管石灰化予防効果を,臨床では同様には認めてはいない。血管石灰化予防を主要評価項目とした,精緻に血管石灰化を評価する研究手法を用いた検討が望まれている。

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 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)におけるミネラル代謝異常は腎性骨症と呼ばれる骨病変だけでなく,血管石灰化を介して生命予後との関連性が注目されるようになり,「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-mineral and bone disorder:CKD-MBD)」という全身疾患としての概念が提唱されている。CKD-MBD管理における臨床的指標の一つとなった血管石灰化は,臨床の現場で病態の重症度や心血管病発症・生命予後を把握する上でも非常に重要な病態である。CKDにおける血管石灰化の予防と治療の中心は適切なCKD-MBD管理である。今後さらなる血管石灰化の機序の解明が進み,血管石灰化を直接防止できる治療の登場が待たれる。

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 骨粗鬆症と動脈硬化は加齢関連疾患であり,脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病により促進される。骨粗鬆症と血管石灰化の病態に関連する共通因子として老化細胞とオステオプロテジェリン(OPG)などが挙げられる。また脂質異常症は破骨細胞・骨芽細胞系の両者に作用して骨脆弱性をもたらす。一方で,脂質異常症治療薬であるスタチンは骨には保護的に作用することが報告されている。また,一部の骨粗鬆症治療薬により動脈硬化が改善する可能性も期待される。

理解を助けるトレーニング問題

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(2019年2月号特集:「動脈硬化とカルシウム~カルシウムパラドックスの謎に迫る~」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

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(2019年2月号特集:「動脈硬化とカルシウム~カルシウムパラドックスの謎に迫る~」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

連載 ミニ連載Ⅷ.細胞死と生命システム:生体恒常性の鍵としての細胞自殺

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 細胞死は生体の恒常性の維持や個体発生などに密接に関与している。これまで細胞死は,制御された細胞死であるアポトーシスと,偶発的な細胞死であるネクローシスに分類されていた。ところが近年,ネクローシス様の形態を示す細胞死の中に,制御された細胞死が存在することが明らかになってきた。本稿ではネクロプトーシス,フェロトーシスおよびパイロトーシスについて,それぞれの分子メカニズムと生体内における機能を簡単に概説したい。

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1.可溶型RANKLは卵巣摘出による骨量減少には関与しないが,成体マウスにおける破骨細胞形成には寄与する 2.RANKL逆シグナルによる骨吸収と骨形成の共役

バックナンバー

特集予告(3月号、4月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
29巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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