CLINICAL CALCIUM 28巻12号 (2018年11月)

特集 続発性骨粗鬆症

Preface

Review

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1.続発性骨粗鬆症は,何らかの基礎疾患や薬剤などを原因として,原発性骨粗鬆症と類似の骨代謝障害を生ずる病態の総称である。 2.続発性骨粗鬆症の原因には,いくつかの内分泌疾患,栄養障害あるいは特定の薬剤によるものなどがある。 3.教科書的な続発性骨粗鬆症の原因以外にも,2型糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの疾患は骨折リスクを高めることが明らかになっている。 4.続発性骨粗鬆症では原発性骨粗鬆症よりも性差が少ないので,男性でも注意が必要である。 5.骨軟化症などの骨粗鬆症の病態とは異なる骨粗鬆症類縁疾患については,その存在を知り正しく鑑別することが大切である。

生活習慣病における骨質異常 金沢一平
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 生活習慣病と骨粗鬆症は加齢とともに増加する疾患であり,今後両疾患を合併した患者の数が増えることは容易に想像できる。生活習慣病の代用的疾患である糖尿病では骨質劣化を主な病態とした骨脆弱性が存在すると考えられており,骨密度のみでの評価は過小評価に繋がる可能性がある。骨質劣化の機序に,骨基質へのadvanced glycation end productの蓄積,骨微細構造異常,骨形成低下を伴う骨リモデリング異常が関与すると考えられている。しかしながら,日常診療において骨質を評価しうる有用な指標がないのが現状であり,現時点では臨床的に骨折リスクの高い患者を選択し,積極的な骨粗鬆症治療介入を行っていく必要がある。

小児における疾患関連骨粗鬆症 道上敏美
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 小児の骨粗鬆症は成人の場合と同様に原発性と続発性に分類され,原発性骨粗鬆症には骨形成不全症などの遺伝性疾患が含まれる。一方,続発性骨粗鬆症は種々の疾患やステロイド等の薬剤投与に伴って認められ,栄養不良や身体活動性の低下,慢性炎症,内分泌機能障害などがリスク要因となる。小児の続発性骨粗鬆症は,軽症であれば,リスク要因を解決することにより骨格の成長過程で自然に改善しうる。しかしながら,骨形成不全症などの原発性骨粗鬆症や,自然改善が期待できない続発性骨粗鬆症に対しては,ビスホスホネート投与による骨吸収抑制などの治療を考慮する必要がある。小児に対するビスホスホネート投与は骨密度を増加させるが,長期的な安全性や有効性についてはさらなる検討が必要である。骨形成不全症に対する新規治療として,抗スクレロスチン抗体や抗TGF-β抗体などの新規薬剤の開発が進行中である。

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 関節リウマチ(RA)は,代表的な自己免疫疾患である。関節滑膜を中心とした免疫異常と滑膜炎症の慢性化は,骨・軟骨破壊のみならず,全身性の骨粗鬆症を引き起こし,骨折のリスクとなる。炎症滑膜におけるTNFやIL-6などの炎症性サイトカインは,破骨細胞の分化を強く誘導する一方で,骨芽細胞の分化を抑制し,骨代謝の不均衡をもたらす。近年の免疫異常の是正や炎症性サイトカインなどを標的としたRA治療は,直接,間接的に骨・軟骨破壊の進行を抑止できるが,全身性の骨粗鬆症化を停止できるわけではない。RAに早期治療・早期寛解導入をすることによって不動を回避するとともに,個人のリスク管理を徹底し,RAの骨びらん抑制効果もある抗RANKL抗体などの骨粗鬆症薬を有効に使用していく必要がある。

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 くる病と骨軟化症は,骨石灰化障害を特徴とする疾患である。これらの疾患の病因は,同一である。ただし,成長軟骨帯閉鎖以前に発症し,骨変形や成長障害を呈するものを特にくる病と呼んでいる。成人では,骨軟化症の病因としては,ビタミンD欠乏や腫瘍性骨軟化症が多く認められる。骨軟化症の診断にあたっては,くる病・骨軟化症診断マニュアルが公表されている。

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 慢性腎臓病(CKD)患者では,腎機能低下とともに高リン血症,活性型ビタミンD低下,二次性副甲状腺機能亢進症などのミネラル代謝異常を生じ,これらを背景に血管石灰化や腎性骨異栄養症(ROD)と総称されるさまざまな骨病変をきたす。CKD患者の骨折リスクは高いため,骨密度検査や骨代謝マーカーを用いて予測し,早期に予防を開始することが重要である。治療としては,二次性副甲状腺機能亢進症を良好に管理するとともに,骨粗鬆症治療薬の使用を検討する。

Topics

甲状腺機能亢進症 八十田明宏
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 バセドウ病に代表されるような甲状腺ホルモンの過剰状態によって骨吸収が亢進し,高回転型の骨粗鬆症が起こる。そのメカニズムは未解明な部分も多いが,軽微ではあるもののカルシウム代謝障害も伴い,臨床的には皮質骨優位な骨量の減少をきたす。甲状腺ホルモンの過剰状態を改善することにより基本的には骨における関連事象も解決するが,その既往により骨の脆弱性が起こる可能性も指摘されており,原発性骨粗鬆症に対するハイリスク群である閉経後女性や高齢者では注意が必要である。

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 原発性副甲状腺機能亢進症は,コモン・ディジーズのひとつであり,続発性骨粗鬆症の原因でもある。原発性副甲状腺機能亢進症は骨病変以外にも,腎結石・骨粗鬆症・筋力低下・循環器障害・精神異常等をきたすことがあり,注意が必要である。副甲状腺摘出術がもっとも確実な治療法であるが,何らかの理由で選択されない場合には,内科的治療が必要となる。その場合には,続発性骨粗鬆症に対する治療と共に,症例によっては高カルシウム血症に対する治療も必要となることがあり,注意が必要である。

ステロイド過剰症 山内美香
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 ステロイド過剰症は続発性骨粗鬆症をきたす代表的疾患として確立されており,疾患関連続発性骨粗鬆症としてのクッシング症候群による内因性グルココルチコイド(GC)過剰と,治療関連続発性骨粗鬆症としてのGC服用がこれに該当する。クッシング症候群のみならず頻度の高いサブクリニカルクッシング症候群も骨折リスクが高まるとされ,骨粗鬆症診断時には常に念頭に置く必要がある。薬剤性のステロイド性骨粗鬆症はGC投与後早期から骨密度低下,骨折リスク上昇をきたすことから投与開始時から管理を要する。ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版は,スコア法を用いた臨床使用が容易なガイドラインとなっており,広く使用されることが望まれる。

男性性腺機能低下症 小川純人
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 男性において,加齢に伴う男性ホルモンレベルの低下は加齢性腺機能低下症や男性更年期障害と関連することが知られており,続発性骨粗鬆症や筋量・筋力の低下を伴い,運動機能や身体機能の低下につながる可能性も指摘されている。男性骨粗鬆症の病態にはこうした男性ホルモンの低下が関与していると考えられているが,その程度には個人差を認める場合が多く,骨関連症状や骨代謝に対するアンドロゲン補充療法の効果・適応については確立されるに至っていない。本稿では男性骨粗鬆症における性腺機能低下症について,その診断・対策を含めて概説する。

慢性閉塞性肺疾患 渡部玲子 , 井上大輔
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 COPDは長期の喫煙が主因となる肺の炎症性疾患だが,全身性疾患でもあり,骨粗鬆症や虚血性心疾患,サルコペニアなどの様々な肺外併存症を合併する。代表的な合併症である骨粗鬆症の有病率は非常に高く,比較的症状に乏しい時期から椎体骨折を高率に認める。COPDの骨脆弱性には骨密度低下とともに骨質の劣化が関与するが,骨代謝異常の機序については明らかになっていない。COPDでは,一般的な骨折リスク因子に加え,全身性炎症やステロイド使用,ビタミンD不足・欠乏などの疾患特異的な骨折リスク因子が多く集積している。COPD患者の骨折を防止するために,ビタミンDの充足とともに積極的な骨粗鬆症に対する薬物治療が望まれる。

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 栄養吸収の場である消化管の手術や疾患により骨代謝障害が惹起されることは古くから報告されているが,認知度は高くないのが実状である。カルシウムの吸収は主に十二指腸から上部空腸で行われ,胃酸も消化吸収に関与している。胃切除術が骨代謝障害の原因となることは想像に難くない。近年増加している炎症性腸疾患に骨代謝障害が併発することも明らかとなってきている。これらの疾患に併発する骨代謝障害は決して稀とはいえず,我々臨床医はその病態を十分に理解したうえで診療にあたる必要がある。本稿では,骨代謝障害の原因となる消化管手術や消化器疾患につき概説する。

肝硬変 塩見進
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 肝硬変に対する治療の進歩に伴い患者の高齢化が進み,骨粗鬆症など骨病変は肝硬変の合併症として重要な存在になりつつある。骨病変の原因として肝でのビタミンD代謝障害,胆汁酸分泌低下に伴うビタミンDの吸収低下などがあるが,その他の種々の要因が関係している。これらの骨病変の治療に関してビスホスホネート製剤による治療が行われているが,有効性に関しては一定の見解を得ていない。近年,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増加しつつある。しかしこれらの疾患と骨粗鬆症との関連については不明な点が多く,更なる検討が必要である。

Therapy

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 閉経後女性における受容体陽性乳癌の術後や,男性においては前立腺癌において,ホルモン療法が施行される。ホルモン療法は骨密度を減少させ,骨折リスクを増大させる。骨密度測定等の骨の評価,食事や運動等の生活習慣,そして骨粗鬆症治療薬が,骨の健康状態(bone health)の維持に重要である。

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 続発性骨粗鬆症の病因において,骨粗鬆症そのものが手術適応になるものは原発性副甲状腺機能亢進症のみである。しかしながら甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などの原疾患に対する手術加療によって骨によい環境を与え,続発性骨粗鬆症が改善する可能性がある疾患もある。鑑別診断を適正に行い,手術適応を十分に議論し決定することが肝要である。

理解を助けるトレーニング問題

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(2018年12月号特集:「続発性骨粗鬆症」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

学会レポート 第20回 日本骨粗鬆症学会

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 第20回 骨粗鬆症学会が,伊東昌子会長(長崎大学ダイバーシティ推進センター センター長・教授)の下,10月26~28日の3日間,長崎ブリックホール,長崎新聞文化ホールで開催された。今回のテーマは「健康長寿を極める!~私たちのミッションとチャレンジ~」。本学会では,ユマニチュード(認知症ケア)の哲学から医療事故との向き合い方まで,骨粗鬆症との関わりの中で,よりバラエティに富んだ特別講演をはじめ,アップデートされた最新の話題を中心にした15のシンポジウム,11の教育講演(知っておきたいシリーズ)などが企画された。その中から,特別講演2「骨粗鬆症診療の発展と疫学 -広島コホート調査から-」を紹介する。

連載 ミニ連載  小胞体ストレス:小胞体が制御する細胞と個体の運命

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第20回 骨粗鬆症学会が,伊東昌子会長(長崎大学ダイバーシティ推進センター センター長・教授)の下,10月26~28日の3日間,長崎ブリックホール,長崎新聞文化ホールで開催された。今回のテーマは「健康長寿を極める!~私たちのミッションとチャレンジ~」。本学会では,ユマニチュード(認知症ケア)の哲学から医療事故との向き合い方まで,骨粗鬆症との関わりの中で,よりバラエティに富んだ特別講演をはじめ,アップデートされた最新の話題を中心にした15のシンポジウム,11の教育講演(知っておきたいシリーズ)などが企画された。その中から,特別講演2「骨粗鬆症診療の発展と疫学 -広島コホート調査から-」を紹介する。

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1.骨芽細胞は肺がん組織にSiglecFhigh好中球を供給し,その増大を促進する 2.Wntシグナル阻害因子DKK1は乳がんの肺転移および骨転移に対して異なる作用を示す

特集予告(2019年1月号、2月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
28巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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