JIM 7巻3号 (1997年3月)

特集 外来での抗菌薬のベストチョイス

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 感染症の起因菌を知ることが大切である.起因菌をまず推定して,その起因菌(群)によるその感染症に対して適応とされる抗菌薬を初期治療薬として選択する.起因菌判明後,より適切な抗菌薬があれば,それに変更する.

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 上気道炎の抗菌薬はかぜか否かを考えることから始まる.A群溶連菌感染症にはペニシリン系またはセフェム系抗菌薬を合併症予防のため10日間処方する.急性副鼻腔炎には,S.pneumoniae, Haemophilus influenzaeを狙った抗菌薬を7~10日間処方する.

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 市中感染性肺炎の主な起炎菌は肺炎双球菌,インフルエンザ桿菌,モラキセラ・カタラーリス,マイコプラズマおよびクラミジア・ニューモニアである.病歴,患者背景,地域背景,喀痰のグラム染色から起炎菌を推定し,狭域で的確な抗菌薬を選択し,培養結果で修正するのが理想的である.

尿路性器感染症 置塩 則彦
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 急性尿路感染症の起炎菌はほとんどグラム陰性桿菌と考えて治療を開始する.原則は単剤治療である.再発予防と慢性尿路感染症に対しては,まず基礎疾患を検索,治療し,抗菌薬は少量投与でよい.

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 尿道分泌物のグラム染色を行い,淋菌性尿道炎の診断を行う.淋菌性尿道炎はクラミジア感染が合併していることが多いので同時にクラミジアの治療も行う.また,セックスパートナーの治療も行う.STDの存在はHIV感染のリスクファクターである.

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 皮膚化膿性疾患の原因菌の多くは黄色ブドウ球菌である.ペニシリン系には耐性だが,第一世代セフェム系抗菌薬には感受性が高い.マクロライド系が第2選択となる.第三世代セフェム系は使うのは慎重にすべきである.

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 感染性腸炎の主な原因菌はカンピロバクター,サルモネラ,腸炎ビブリオ,腸管病原性大腸菌である.治療には対症療法,特に輸液を最優先する.蠕動抑制薬は原則として使わない.初期治療として適応のある例にニューキノロンかホスホマイシンを3日間経口投与する.

Key Articles 古川 恵一
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 感染症一般の診療に当たって,また抗菌薬の使い方について良き指針を与えてくれる優れた手引書をここに紹介する.これらはいずれも米国で感染症専門医やレジデントによって広く用いられているものであり,世界的にも医学界で定評のある優れた書物である.

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 外来診療において急性細菌性扁桃腺炎と伝染性単核球症は比較的頻度の高い疾患であるが,互いの臨床像が類似しているため診断,治療が混同されていることが多い.

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 重度のペニシリンアレルギーの既往のある人にはセファロスポリンとカルバペネムも投与してはならない.モノバクタム,アミノグリコシド,ニューキノロン,バンコマイシン,マクロライド,クリンダマイシンなどから適切なものを選択する.

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 妊婦感染症治療のために必要な抗菌薬の使用に関してはあまり消極的にならず,積極的に投与しなければならない.しかし,その使用に際し,妊娠週数,薬剤の種類,使用量および投与期間について,慎重な配慮が必要である.特に臨界期における使用については専門医に判断を仰ぐことも考慮に入れておく必要がある.

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 ニューキノロン系抗菌薬は緑膿菌を含むグラム陰性菌だけではなく,グラム陽性菌にも強い抗菌力を持ち,最近では呼吸器感染症などに好んで使われるばかりでなく,広い分野で使用されるようになっている.

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 金属カチオンを含有する制酸薬・消化性潰瘍用薬の併用は,程度の差はあってもニューキノロン系抗菌薬の腸管内吸収を阻害するので同時服用は避けるか服用時間を調節する必要がある.また,相互作用のない制酸薬・消化性潰瘍用薬に切り替えることも考えられる.見過ごされがちなこととして,患者が市販の胃腸薬類(金属カチオンを含有する)を常用していることがある.

JIM臨床画像コレクション

輸血後GVHD 宮地 良樹
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 輸血後10日ほどして,突然丘疹性紅斑とともに,発熱,下痢,汎血球減少,肝機能障害を来し,敗血症などにより不幸な転帰をとるのが輸血後GVHD (graft-versushost disease,移植片対宿主病)である.かつては,術中の新鮮血輸血による術後紅皮症として恐れられていたが,その後,増殖能力を有するリンパ球を含めば,あらゆる輸血製剤で起こることが判明した.写真(表紙参照)は,術中輸血を受けた患者の術後17病日にみられた体幹の丘疹性紅斑である.薬疹との鑑別が困難なことが多いので診断には生検が必須である.病理組織は,苔癬型組織反応といわれ,基底層の液状変性,表皮細胞の個別壊死などを呈するのでHE染色で疑診可能である.可能なら免疫組織化学的にCD 8T細胞浸潤,ランゲルハンス細胞の消失,表皮細胞のHLA-DR陽性を証明することで診断はより確実となる.しかし,実際には緊急を要するので凍結迅速標本のHE染色のみで診断することが多い.発疹は多彩であり特異的なものはないが,放射線照射を受けない輸血製剤(新鮮凍結血漿,解凍赤血球を除く)を投与された患者に発疹が出現したら一応念頭に置くべき重篤疾患である.有効な治療はなく,輸血製剤の放射線照射が唯一の予防手段といっても過言ではない.HLAハプロタイプを共有するホモ接合体からヘテロ接合体に輸血される日本人での推定頻度は約1/600なので,本症のリスクはそれほど低いものではない.

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 高齢者または上部消化管手術の既往を有する肺炎患者に遭遇した際は,大腸菌肺炎を念頭に置くことが必要である.臨床症状と炎症所見の改善がみられても除菌が完全でない場合は,早期再燃の危険性があるため,適切な抗菌薬の継続投与による除菌が必要と思われた.

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 筆者は開業以来,7年で44カ国,延べ13,095人の外国人患者の診察を行ってきた(表1).医師からみて外国人患者を診療するうえで問題となるのは主に言語,医療費,風俗・習慣の差異の3点である.また,外国人患者の多くが日本で医療を受ける際の問題点にとしてこれらに加え,人権とインフォームド・コンセントの欠落を指摘していることも特記しておきたい(表2).

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 わが国の慢性透析療法の現況(1994年12月31日現在)によると,糖尿病(以下,DM)腎症は年間導入患者の30%にあたる7,376名を占め,年々増加傾向にある.全体では約14万人の透析患者の約19%である2万7千人に至っている.今後も,飽食時代の象徴である糖尿病は増加しつづけることが予想させる.当院でも192名の外来透析患者のうち原疾患がDM腎症の患者は65名で約34%を占め,その外来ケアの重要性が高まっている.

ワークショップ はじめての漢方診療・5

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 太陽病は病気の開始時期に相当する.最も一般的にはかぜの初期のほとんどが太陽病である.急性熱性疾患であるかぜに漢方治療を試みることは,太陽病期の方剤に習熟するうえだけでなく証(漢方医学的診断)とその時間的変化を体得するためにも有意義である.

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 本稿では抗菌薬の臨床試験の評価法,特に同等性の証明について,その問題点と,米国のFDAから提唱された解決法を中心に述べる.

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 目的:沖縄県立中部病院にて経験した成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma;ATL)の臨床的検討から,沖縄県におけるATLの臨床的特徴を明らかにする.

 対象・方法:1982年7月より1994年8月までの約12年間に経験した201例を対象とした.悪性リンパ腫におけるATLの占める割合,また,ATLの重要な合併症である日和見感染症および高カルシウム血症について臨床的検討を行った.

 結果:抗HTLV-I (human T-lymphotropic virus-I)抗体が測定された悪性リンパ腫263例のうち201例(76.4%)がATLであり,当院の悪性リンパ腫の約3/4をATLが占めていた.日和見感染症では糞線虫症が最も多かった.急性型の74.0%,リンパ腫型の43.1%に高カルシウム血症の合併が認められ,病的骨折を併発した例も少なくなかった.

 まとめ:沖縄県の1県立病院での検討ではあるが,当県の悪性リンパ腫の大部分をATLが占めると思われた.また,他府県の症例に比較して糞線虫症の合併が多いことが1つの特徴であった.

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 防衛医科大学校(以下防衛医大)は防衛庁(自衛隊)に勤務する医師(医官)を養成・教育するために,1973年に埼玉県所沢市に設立された医科大学である.病院での専門診療のみならず,離島や艦艇,PKO (PeaceKeeping Operations,国連平和維持活動)活動地域などを含めた医務室での診療,部隊などでの健常者の健康管理,潜水医学・航空医学・熱帯医学など特殊環境医学の研究といった自衛隊医官の職務の多様性・特殊性から防衛医大は設立当初より「総合臨床医の育成」を教育的目標に掲げていた.

 しかし,実際には総合臨床の教育・診療(あるいは研究)を専門的に行う部署・スタッフがなく,卒後教育において,初任実務研修の2年間を,全科あるいは多科ローテートとするにとどまっていた.こうした中,上記の教育・研修システムの不備に対する必要性もあり,1985年に防衛医大病院に総合内科外来が開設され現在に至っている.

ひとりでできるEvidence-based Medicine・3

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 Evidence-based Medicine(EBM)では臨床上の疑問解決のため信頼のおける情報を利用する.どこにいても,たとえ地方の医師1人の診療所にいても,オンラインで医学文献データベースMEDLINEを比較的容易に検索できる.

いま開業はおもしろい

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 在宅医療のゴールは長命(キュアが関与)を長寿(ケアが関与)にすることである(表1).

診断書の書き方・4

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 今回は死亡診断書・死体検案書の概要および書き方の一部を説明する.次回,その続きを取り上げる.

目でみる当直医必須テクニック・4

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 静脈路確保を成功させる秘訣は,刺入血管を左手で皮膚の上から押さえて引っ張り動かない状態とし,右手のみで刺入することである.血液の逆流を見ながらの刺入ではなく,右手の指で感じる刺入感(手応(てごた)え)が大切である.

基本情報

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JIM
7巻3号 (1997年3月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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