JIM臨床画像コレクション
輸血後GVHD
宮地 良樹
1
1群馬大学医学部皮膚科
pp.189
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902090
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輸血後10日ほどして,突然丘疹性紅斑とともに,発熱,下痢,汎血球減少,肝機能障害を来し,敗血症などにより不幸な転帰をとるのが輸血後GVHD (graft-versushost disease,移植片対宿主病)である.かつては,術中の新鮮血輸血による術後紅皮症として恐れられていたが,その後,増殖能力を有するリンパ球を含めば,あらゆる輸血製剤で起こることが判明した.写真(表紙参照)は,術中輸血を受けた患者の術後17病日にみられた体幹の丘疹性紅斑である.薬疹との鑑別が困難なことが多いので診断には生検が必須である.病理組織は,苔癬型組織反応といわれ,基底層の液状変性,表皮細胞の個別壊死などを呈するのでHE染色で疑診可能である.可能なら免疫組織化学的にCD 8+T細胞浸潤,ランゲルハンス細胞の消失,表皮細胞のHLA-DR陽性を証明することで診断はより確実となる.しかし,実際には緊急を要するので凍結迅速標本のHE染色のみで診断することが多い.発疹は多彩であり特異的なものはないが,放射線照射を受けない輸血製剤(新鮮凍結血漿,解凍赤血球を除く)を投与された患者に発疹が出現したら一応念頭に置くべき重篤疾患である.有効な治療はなく,輸血製剤の放射線照射が唯一の予防手段といっても過言ではない.HLAハプロタイプを共有するホモ接合体からヘテロ接合体に輸血される日本人での推定頻度は約1/600なので,本症のリスクはそれほど低いものではない.
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