理学療法ジャーナル 51巻3号 (2017年3月)

特集 通院・通所における理学療法を再考する

EOI(essences of the issue)
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 地域包括ケアシステムが重要視され,最近は医療と介護の一体的な議論の場を設ける施策も始まり,今後医療から介護への移行はますます加速するであろう.地域に暮らす人々への理学療法の提供には,医療保険における訪問と外来通院,介護保険制度や障害者総合支援制度における訪問と通所がある.効率化の目的で施設などの機能分化が進んでいるが,理学療法もその役割を明確に示していく時期にきたと言える.本特集は,通院・通所に視点をあて,さまざまな制度の通院・通所における理学療法の役割を可能な限り鮮明に捉え,再考する機会とした.

エディトリアル 金谷 さとみ
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はじめに

 超高齢社会がもたらす医療費の高騰が懸念され,医療から介護への移行が着実に進められている.リハビリテーションにおいても例外ではなく,2016年度診療報酬改定において維持期リハビリテーションの介護保険への移行に関する具体的な改定がなされた.医療制度改革による医療費削減は着実に遂行されており,今後も続くであろう.

 リハビリテーションに関する改定が他の診療と比べて遅く緩やかだったのは,入院期間短縮などの医療費削減に直結するリハビリテーションの効果のほどを期待されていたことと,過去にリハビリテーション専門職の人員が少なかったためである.現在,入院期間短縮が実現されており,理学療法士の数が増え,その多くが医療機関に入職していくことを考えれば,その部分にメスが入るのは当然のことである.

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整形外科領域の外来リハビリテーション

 現在,整形外科領域の医療費は伸びており,日本の人口構造上急速な高齢化(2042年3878万人がピーク)を反映している(表1,2)1).外来1日あたりの医療費総点数は年々増加しており,総点数に対するリハビリテーションの割合も増加している(図1).また,外来1件あたりの医療総点数はほぼ横ばいであるが,それに占めるリハビリテーションの割合は微増しており,直近5年で平均0.19%増となっており,年々伸び率は小さくなっている(図2)2).高齢者人口の自然増加と介護保険への移行などを考えれば低く抑えられているようにも考えられる.

 また,傷病分類別医療費をみると,「筋骨格系及び結合組織の疾患」は65歳未満では「その他」に分類されているが,65歳以上になると3位に位置づけられることからも,高齢化が進むほど疾患別リハビリテーションや通所リハビリテーションのニーズが高まると考えられる(表3)3).さらに,要介護の主要な原因として,加齢性運動器疾患である骨折・転倒と関節疾患が合計22.7%を占め,脳血管疾患の18.5%を上回る(図3)4).それら高齢者のニーズは,60%以上が自宅での療養を希望している.そして,必要になれば緩和ケア病棟や医療機関での入院を希望しており,住み慣れた地域で生活が継続することを望んでいる5).このように,急速な高齢化や加齢性運動器疾患の増加,自宅療養など患者のニーズ,国策としての地域・在宅医療の推進などが追い風となり,理学療法士の供給数も増え患者のニーズに応えられるようになってきており,整形外科領域の疾患別リハビリテーションの医療費が徐々に増加してきている.

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はじめに

 超高齢社会に入り社会保障給付費が112兆円(2014年度)を超えたわが国では,医療費削減を目的に医療保険で行う外来リハビリテーションの継続が制限されると同時に,介護保険で行うリハビリテーションサービスへの移行が強く進められている.そのため,脳血管障害や神経変性疾患など,いわゆる「脳血管疾患等リハビリテーション料」の対象となる中枢神経疾患の外来リハビリテーションの継続が難しくなっている.このため,再発リスクを抱え,進行性である中枢神経疾患患者に必要な支援が届かないケースも少なくない.

 しかし,中枢神経疾患の維持期でも適応を選べば変化(機能改善)が期待できる練習プログラムが登場するなど,リハビリテーション技術は進歩しており,回復期以降の中枢神経疾患に対する外来リハビリテーションの必要性は確実に高まっている.そこで本稿では,御所南リハビリテーションクリニック(以下,当院)における中枢神経疾患の外来診療・リハビリテーション管理の取り組みを紹介し,「中枢神経疾患の外来リハビリテーション」の必要性について述べる.

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はじめに

 呼吸リハビリテーションは,慢性呼吸器疾患に対する治療のなかで重要な位置を占める.日本呼吸器学会の「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン(第4版)」1)でも6つの管理目標のうちの一つが「運動耐容能と身体活動性の向上と維持」と改訂され,その概念が導入されている.在宅で運動耐容能と身体活動性を維持・向上するためには,通院(外来)・通所での呼吸リハビリテーションの役割は重要である.

 長崎呼吸器リハビリクリニック(以下,当院)は呼吸器疾患に対する治療,呼吸リハビリテーションを行う専門施設として開設された19床の有床診療所である.本稿では当院における外来リハビリテーション(通院),通所リハビリテーション(通所)の現状を報告し,呼吸器疾患患者における通院・通所の利点,問題点について検討する.

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はじめに

 介護保険法の目的は,「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり,入浴,排せつ,食事等の介護,機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について,これらの者が尊厳を保持し,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため,国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け,その行う保険給付等に関して必要な事項を定め,もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」とされている.介護保険制度の利用にあたっては,介護保険サービスを使い続けることではなく,利用者の自立をめざし対応していくことが重要である.

 2015年度介護報酬改定では,高齢者ができる限り住み慣れた地域で尊厳をもって自分らしい生活を送ることができるよう,「地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みの推進が図られた(図1).そのために,① 中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化,② 介護人材確保対策の推進,③ サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築が示された.① の中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化では,今後増大することが予測される医療ニーズを併せ持つ中重度の要介護者や認知症高齢者への対応として,引き続き,在宅生活を支援するためのサービスの充実を図ることが求められている.リハビリテーションでは,活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進が求められており,リハビリテーションの理念を踏まえた「心身機能」,「活動」,「参加」の要素にバランスよく働きかける効果的なサービス提供を推進するための理念の明確化と,「活動」,「参加」に焦点を当てた新たな報酬体系の導入が行われた.また,質の高いリハビリテーション実現のためのマネジメントの徹底として生活期リハビリテーションマネジメントの再構築が行われた.リハビリテーションは,「単なる機能回復訓練ではなく,心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として,潜在する能力を最大限に発揮させ,日常生活の活動を高め,家庭や社会への参加を可能にし,その自立を促すものである」と示された.

 現在,通所リハビリテーションと通所介護の違いがわかりにくくなっているという意見も多く,ケアマネジャーであっても十分に区別してサービスを使い分けられているわけではない.本稿では,介護保険制度から振り返り,各サービスに求められていることや各サービスの役割をあらためて見つめ直し,利用者や地域のために理学療法士として何ができるのかを各々の立場で考え直すきっかけになればと考える.

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はじめに

 1981年の国際障害者年を契機にノーマライゼーション理念が普及し,障害の有無にかかわらず普通に「地域生活」が営めることを基本として福祉分野の制度が変わってきている.障害児・者の地域生活を支えるサービスの種類,量が増えるというハード面と,障害者差別解消法の施行などといったソフト面との変化により社会的障壁を取り除く方向へと進んでいる.本稿では障害福祉制度の近年の動向と,障害児・者の日中活動の中心的な場である障害福祉サービスにおける通所事業(以下,通所事業)の役割,また,そのなかで行われる理学療法士のかかわりについて,相談支援事業に従事する経験から,現状と課題について述べる.

連載 超音波で見る運動器と運動療法Q&A・第3回

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Question

 42歳男性.職業は調理師.就業中に左肘外側に疼痛を認め,受診となる.

 さて病態は?

とびら

匠(たくみ) 増田 芳之
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 小学生のとき,修学旅行で奈良の東大寺を訪れた.クラスのなかで一番背の高かった私は代表で柱くぐりに選ばれ,無事にくぐりぬけることができた.それが深層心理として残ったのかわからないが,歳を重ねるごとに古い大きな建造物を見るのが好きになった.特に神社仏閣は気持ちをリセットできる気がして出張のたびにその土地への参拝も兼ねて訪れることが多い.なかでも大きな柱を見るたびに当時の宮大工たちの「匠」を感じる.なぜ木造の建造物が200年以上建っていられるのか.度重なる天災にも耐え忍んできたその姿にパワーを感じる.

 当時の匠たちは木材を見ただけで,この木はこの先この方向に捻じれるとか反るだとかがわかったらしい.それを相反するように組み合わせることで,長くゆがみのない建造物がつくられていると聞いたことがある.また,匠たちの長い経験のなかから木材の硬さや弾性などに合わせて,柱だったり梁だったりその特徴を活かした活用が適切に行われている.材木のつなぎ方も釘を使えば楽であろうに,錆びて崩壊しないよう木材同士を複雑に切り込んで接合させている.当時の匠たちがどのようにスキルを習得したのか知るよしはないが,現在も彼らの仕事ぶりが残っていることに感銘する.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

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 Non communicable diseases(NCD)は,非感染性疾患と呼ばれ,文字どおり人へ感染する疾患ではない.

 世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,不健康な食事や運動不足,喫煙,過度の飲酒などが発生要因となり,このような生活習慣を改善することで予防可能な疾患をNCDと位置づけている.

1ページ講座 障がい者スポーツ

ボッチャ 片岡 正教
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 皆さんは「ボッチャ」というパラリンピック競技をご存知だろうか.2016年9月に行われたリオデジャネイロパラリンピックでは,日本はチーム戦(3人対3人で競う団体戦)で銀メダルを獲得したので,名前を耳にしたことがある人は増えたかもしれない.

 もともとは重度の脳性麻痺者を対象に考案されたスポーツで,ジャックボールと呼ばれる白のボールめがけて,赤もしくは青の自身のカラーボール6球を投げたり転がしたりして,相手よりいかに近づけるかを競うターゲットスポーツである.自身で投球できない選手も,ランプと呼ばれるスロープのような競技用補装具を用いて,アシスタントに指示を出すことで競技に参加することができるという点において,パラリンピック競技のなかでも最も障がいの重い選手を対象とした競技であると言える.よくカーリングにも例えられるが,ターゲット自体がボールであることから,コート内の自由な場所に投げることができ,自身のカラーボールで的を動かすことも可能であるという点で異なっている.現在は,脳性麻痺者以外にも四肢や体幹に同程度の重度の麻痺がある方も対象としている.

入門講座 「はじめて」への準備(臨床編)・3

はじめての外来指導 小原 裕次
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はじめに

 外来において理学療法士が行う指導については,大きく分けてリスク管理面の説明と,身体機能面の説明がある.これら指導の目的は,症状悪化の防止,症状改善の促進,再発予防にあると考えられる.限られた来院数のなかで,効率的に改善へ進めるためには,指導内容を患者に実行してもらうことが必要になる.そのために,外来での患者指導を行う際,配慮すべきことや注意点について,以下に解説していきたい.

講座 理学療法エシックス・3

在宅医療と介護の倫理 桑山 浩明
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はじめに

 今日,高齢多死社会のなかで地域包括ケアシステムの構築が求められ,私たち理学療法士がかかわる分野として,在宅医療や介護の現場が増えてきている.在宅分野は,病院とは違い,在宅という利用者主体の場所に医療従事者が入り込むという特殊な状況である.また,介護保険法に基づく自立支援という方向性により,利用者の思いを優先させるという傾向がある.さらに,在宅の現場は利用者の自宅という閉ざされた空間で,複数の目が存在せず,医療従事者であるから利用者の領域に入り込むというきわめて特徴的なものであり,私たちは高い倫理観をもって,現場にいることが必要である.

 日本看護協会1)では,「医療倫理の1.自律尊重原則:自律するのは患者側を指します.患者が自分で適切な意思決定をできるように,重要な情報を提供する必要があります.そして,患者が行った意思決定を医療従事者だけではなく,患者の家族も尊重するというもの,2.善行原則:患者に対して善を行うという原則です.医療側が考える善行ではなく,患者が考える最善の善行を行うというもの,3.無危害原則:患者に対しては当然のこととして“人”に対して無危害であることを求めるもの,4.正義原則:形式的な正義,実質的な正義を求めるものの4つの原則に加えて,私たち医療従事者は,誠実:真実を告げる,うそを言わない,あるいは他者をだまさない義務,忠誠:人の専心したことに対して誠実であり続ける義務を基盤にすること」を示している.

 これらの原則を意識しつつも在宅の現場では,さまざまな葛藤を生じながら,高齢多死社会における独居生活や多重介護といった環境的課題,終末期や認知症といった意思決定による課題などに多数遭遇する.今回,在宅の現場で経験し得る5つの事柄において,倫理的な課題の葛藤を中心に示していきたい.

臨床実習サブノート 臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・10

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はじめに

 2013年に厚生労働省から発表されたデータによると,認知症高齢者の数は2012年時点で約462万人,2025年には700万人を超えると推計されている1).約10年で1.5倍に増える見通しで,65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症に罹患することになる.また,認知症予備軍である軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)は約400万人存在しており,MCIの原因となる疾患を放置しておくと,認知機能の低下が続き,5年間で約50%の人は認知症へと進行すると言われている.

 このような社会情勢のなか,理学療法の対象となる主疾患に認知症を合併した患者を担当する機会が増えてきている.理学療法を十分実施し機能改善を図るためには,認知症の知識・対応を身につけることが求められる.

次号予告

文献抄録

編集後記 金谷 さとみ
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 最近になり,「退院支援」が頻繁に取り上げられるようになったが,退院時指導,退院前訪問などの取り組みは,ずっと昔からリハビリテーション科が実践してきた.今,拍車がかかっている理由は,高騰しすぎた医療費の削減のため,医療から介護への費用移行の勢いが年々増してきていると捉えてよいであろう.そして,そこには「地域包括ケアシステム」が絡んでいる.

 本特集「通院・通所における理学療法を再考する」から,このような制度変遷のなかで,わが国が示し始めた照準にリハビリテーションの軌道を合わせるための再考のよい機会になればと考える.渡邉幸勇先生には,整形外科領域における通院の理学療法について述べていただいた.本稿に書かれている「疾患別リハビリテーションでも通所におけるリハビリテーションでも理学療法士が行うことは変わらない」とは,私もよく臨床で口にする言葉である.土井博文先生の中枢神経疾患における外来の理学療法では,主に在宅の中枢神経疾患患者をクリニックで支援する先駆的で貴重な取り組みが述べられている.北川知佳先生には,呼吸器疾患領域における通院の理学療法ついて述べていただいた.呼吸器専門の有床診療所であり,在宅で生活する呼吸器疾患の患者を通院から通所,訪問まで,疾患がある程度限定されたうえで包括的に支援する形は,今後の理学療法提供のあり方を再考するうえで参考となる.島田達也先生の介護保険制度における通所の理学療法では,通所リハビリテーションと通所介護の両方について詳細に述べられている.平沼勝也先生の障害児・障害者における通所理学療法では,医療情報の得られにくさなど,介護保険制度との温度差が感じられ,福祉を基盤として進歩した場面での理学療法のあり方などの課題が山積していることを痛感する内容であった.偶然にも,入門講座で小原裕次先生による「はじめての外来指導」が取り上げられており,より新鮮に感じられる.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
51巻3号 (2017年3月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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