とびら
匠(たくみ)
増田 芳之
1
1静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科
pp.189
発行日 2017年3月15日
Published Date 2017/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200809
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小学生のとき,修学旅行で奈良の東大寺を訪れた.クラスのなかで一番背の高かった私は代表で柱くぐりに選ばれ,無事にくぐりぬけることができた.それが深層心理として残ったのかわからないが,歳を重ねるごとに古い大きな建造物を見るのが好きになった.特に神社仏閣は気持ちをリセットできる気がして出張のたびにその土地への参拝も兼ねて訪れることが多い.なかでも大きな柱を見るたびに当時の宮大工たちの「匠」を感じる.なぜ木造の建造物が200年以上建っていられるのか.度重なる天災にも耐え忍んできたその姿にパワーを感じる.
当時の匠たちは木材を見ただけで,この木はこの先この方向に捻じれるとか反るだとかがわかったらしい.それを相反するように組み合わせることで,長くゆがみのない建造物がつくられていると聞いたことがある.また,匠たちの長い経験のなかから木材の硬さや弾性などに合わせて,柱だったり梁だったりその特徴を活かした活用が適切に行われている.材木のつなぎ方も釘を使えば楽であろうに,錆びて崩壊しないよう木材同士を複雑に切り込んで接合させている.当時の匠たちがどのようにスキルを習得したのか知るよしはないが,現在も彼らの仕事ぶりが残っていることに感銘する.
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