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はじめに
介護保険法の目的は,「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり,入浴,排せつ,食事等の介護,機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について,これらの者が尊厳を保持し,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため,国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け,その行う保険給付等に関して必要な事項を定め,もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」とされている.介護保険制度の利用にあたっては,介護保険サービスを使い続けることではなく,利用者の自立をめざし対応していくことが重要である.
2015年度介護報酬改定では,高齢者ができる限り住み慣れた地域で尊厳をもって自分らしい生活を送ることができるよう,「地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みの推進が図られた(図1).そのために,① 中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化,② 介護人材確保対策の推進,③ サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築が示された.① の中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化では,今後増大することが予測される医療ニーズを併せ持つ中重度の要介護者や認知症高齢者への対応として,引き続き,在宅生活を支援するためのサービスの充実を図ることが求められている.リハビリテーションでは,活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進が求められており,リハビリテーションの理念を踏まえた「心身機能」,「活動」,「参加」の要素にバランスよく働きかける効果的なサービス提供を推進するための理念の明確化と,「活動」,「参加」に焦点を当てた新たな報酬体系の導入が行われた.また,質の高いリハビリテーション実現のためのマネジメントの徹底として生活期リハビリテーションマネジメントの再構築が行われた.リハビリテーションは,「単なる機能回復訓練ではなく,心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として,潜在する能力を最大限に発揮させ,日常生活の活動を高め,家庭や社会への参加を可能にし,その自立を促すものである」と示された.
現在,通所リハビリテーションと通所介護の違いがわかりにくくなっているという意見も多く,ケアマネジャーであっても十分に区別してサービスを使い分けられているわけではない.本稿では,介護保険制度から振り返り,各サービスに求められていることや各サービスの役割をあらためて見つめ直し,利用者や地域のために理学療法士として何ができるのかを各々の立場で考え直すきっかけになればと考える.
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