理学療法ジャーナル 51巻1号 (2017年1月)

特集 多職種で取り組むがん診療と理学療法

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 がん患者は年々増加の一途をたどり,長年日本人の死因の1位を占めている.リハビリテーションにおいても2010年度の診療報酬改定における「がん患者リハビリテーション料」の新設以降,着実に理学療法の対象として定着してきている.がんに対しては,内科的治療,外科的治療,放射線治療などさまざまな治療が行われるとともに,緩和ケアチーム,骨転移チームなど多職種での取り組みが一般化している.本特集は,がん患者に対する多職種での多面的な取り組みを通して,理学療法のかかわり,理学療法士の視点を考えることを目的に企画した.

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はじめに

 がんは,わが国において1981年以降,日本人の死因の第1位で,現在では年間30万人以上の人が,がんで亡くなり,生涯のうちにがんにかかる可能性は,2人に1人とされている1).非常に身近な疾患であるが,がんの多くは原因が明確にされておらず,がんに対する教育も十分ではないため,がん患者の診療における課題は多い.

 がん治療は,手術,薬物療法(抗がん薬,ホルモン薬,免疫賦活薬などの化学療法と鎮痛薬,制吐薬などの症状を和らげる薬物療法),放射線療法が柱となり,がんの種類や病期,全身状態を考慮し,最善の治療が行われる.薬物療法の進歩や縮小手術により日常生活への影響は以前に比べ軽減しているが,がんそのものや上記がん治療に伴う後遺症や副作用によって,さまざまな身体的障害や心理的問題を生じることがある.

 無症状の早期がんは治癒も可能だが,ほとんどのがんは進行してくるまで自覚症状がなく,症状に気づいたときにはがんが進行していることが多い.進行がんは治癒することが難しく,数年または数十年後に再発や転移をする可能性があり,がんとともに生きていくがんサバイバーは年々増加し,現在500万人を超えている1,2).経年により治療内容の変更や身体・精神への影響も変化してくる.

 そのため,がんのリハビリテーションでは,日常生活や社会生活,QOLを保つため,機能障害の予防や緩和,能力の回復や維持を目的に,病態や進行度に応じたさまざまな対応が必要とされる.がん患者が生活する場において,理学療法士の果たす役割は大きいものと考える.

 本稿では,がん患者へのリハビリテーションの歴史,国立がん研究センター中央病院(以下,当院)の理学療法処方の推移からみた理学療法介入の現状,多職種との連携,今後の課題と展望について述べる.

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はじめに

 わが国では,2006年のがん対策基本法の施行および2007年のがん対策推進基本計画の策定により,がん診療にかかわるすべての施設での早期からの適切な緩和医療の提供が求められるようになった.また,2009年には全国のがん診療連携拠点病院(以下,がん拠点病院)に緩和ケアチーム(palliative care team:PCT)の設置が義務づけられるようになった.PCTとは,がんなどの病気をもつ患者・家族のQOLの維持向上を目的に,担当医や病棟スタッフと協働しながら専門的知識や技能を提供し,地域連携の調整や緩和ケアの啓蒙などを行う多職種から構成されるチームである.現在までに多くのPCTが活動し,疼痛の軽減やQOLの改善など活動の有効性が示されている1).しかし課題も多く,マンパワーの問題やPCT活動の周知不足,PCTメンバーが知識・技術・態度を修得するシステムが十分でないことなどが挙げられている2)

 一方,リハビリテーションについては2007年度に厚生労働省委託事業としてがんのリハビリテーション研修が始まり,ここ10年で大きく発展してきた.しかしながら高度がん専門医療機関やがん拠点病院といった施設での取り組みが多く,今後は地域の病院も含めて均一な,質の高いがんリハビリテーション医療を提供することが求められている.PCTの課題と同様に,教育体制の充実やがん拠点病院を中心とした病院間の交流,研修会の拡充,市民への啓発活動,在宅ケアなども重要な課題とされている3)

 本稿では,筆者が以前在籍していたPCTでのかかわりを報告するとともに,現在所属するPCTが存在しない一般病院でのがんリハビリテーションの現状を調査・報告し,理学療法士としてどのようにがん緩和ケアを実践し,今後に発展させていくか提言したい.

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はじめに

 がんサバイバーが500万人を超える時代を迎え,がんの診断早期から終末期までさまざまな病期において,患者の運動機能を改善し,QOLを回復・維持することがリハビリテーションに求められている1).臨床においてがんと診断された患者の10〜20%に骨転移が発見されると言われており2),骨転移患者に対するリハビリテーションへのニーズが高まっている.がん・骨転移の治療をしながら病的骨折や脊髄圧迫による神経症状などの骨関連事象(skeletal related events:SRE)発生のリスクを管理し,身体機能とQOLを向上するリハビリテーションを実践するためには,多職種で病態,リスク,ニーズなどの情報を共有し,目標を設定・検討する体制が必要である.

 本稿では,まず順天堂医院(以下,当院)で実践しているSREチームの活動を紹介し,次に理学療法士に必要な骨転移に関する基礎知識について述べる.そして骨転移患者に対する理学療法の実際について述べ,最後にチームのなかで理学療法士が果たすべき役割について記す.

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はじめに

 2006年のがん対策基本法の制定や2010年度診療報酬改定において疾患別リハビリテーションとしてがん患者リハビリテーション料が初めて認められたこと,日本がんリハビリテーション研究会の発足などの経過を経てがん患者へのリハビリテーションの提供が年々充実してきており,終末期にかかわる理学療法士,作業療法士,言語聴覚士[以下,(3職種を合わせて)セラピスト]の研究や報告も学会や研究会などで積極的に発表されるようになってきている.しかし,終末期がん患者に対するセラピストの介入はホスピス緩和ケア病棟においては緩和ケア病棟入院基本料に包括されており,個別介入に対する疾患別リハビリテーション料としての出来高算定や病棟専従配置による加算などは認められていないのが現状である.

 がんは長きにわたり日本人の死亡原因第1位にもかかわらず,がん終末期のリハビリテーションはまだまだ歴史が浅く,臨床場面であたりまえのように理学療法士がかかわっているとは言いがたい状況である.それぞれに手探りの状態で日々の臨床を過ごしている理学療法士も多いのではないかと思う.このような状況のなかでも,ホスピス緩和ケア病棟において終末期がん患者を支えるチームアプローチの一員として理学療法士に対するニーズは高く,医師から多くの処方がなされているのも事実である.

 本稿では,筆者の約14年にわたるホスピス緩和ケア領域における臨床経験に基づき,終末期がん患者を支える理学療法士に求められる視点や業務姿勢,多職種連携などについて述べるとともに,いかにして求められる“人財”を育成していくかについても私的見解を述べたい.

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横田 2010年度診療報酬改定において「がん患者リハビリテーション料」が新設され,がんは理学療法の対象として定着してきています.がんの診療は緩和ケアチーム,骨転移チームをはじめ,職種横断的な取り組みが一般的ですが,実際に他職種がどのような視点で診療にあたっているのか,具体的な中身まではなかなか知る機会がないと思います.

 本日は,薬剤師,看護師,医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker:MSW)の3職種について,それぞれの業務内容や自施設での他職種との連携の様子などを伺い,今後のがん患者の診療,ケアのあり方について考える機会としたいと考えています.初めに,皆さんのこれまでの歩みをご紹介ください.

連載 超音波で見る運動器と運動療法Q&A・第1回【新連載】

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Question

 72歳男性.右肩を下に転倒受傷.右肩に目立った腫脹はないが,痛くて腕が上がらなくなり同日受診.

 さて病態は?

とびら

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 私は埼玉県を本拠地として関東を中心に展開する戸田中央医科グループ新座病院に所属し,18年目を迎えます.上司である野宮一志部長の下,八面六臂とは言いがたい状況ですが,兎も角たくさんのことを経験し,現在に至っています.そのたくさんの経験のうち,ここ数年は「療法士教育」について携わる機会に恵まれ,密かに教育について勉強しました.その過程で知った「スズキ・メソード」が非常に興味深い内容で,大変勉強になったので,簡単に紹介しつつ私の療法士教育についての考えを伝えたいと思います.

 スズキ・メソードを知るに至ったきっかけは,私の子が通っているピアノ教室がスズキ・メソードであったことで,配布されている会員向け小冊子に目を通す機会を得たことです.スズキ・メソードの創始者である鈴木鎮一先生が書かれた文章の「導きて牽かず(礼記)」(「才能教育」第185号,才能教育研究会)にふと目が留まり,読んでいくうちに心が強く揺さぶられ,それから自宅にあるだけの小冊子を読み漁り始めました.鈴木鎮一先生の教育についての考え方,人間への信頼,生命への畏敬,能力の開発に対する深い造詣に大変感銘を受けました.「このスズキ・メソードの考え方は療法士教育にも応用できるのではないか?」と日々逞しく想像し続け,もはや小冊子を繰り返し読むにも飽き,書籍にも手を出し今や日々の想像をよりいっそう強化しているところです.

甃のうへ・第43回

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 「理学療法を科学として捉え,発展させることが重要」,これは私がこれまで師事した理学療法士の先生方が常に抱いていた想いです.しかし,理学療法士となって間もないころは,その想いの本意を十分に認識することはできていませんでした.

 私が最初に就職した職場は,理学療法士1年目から研究に携わる機会をいただける非常に恵まれた環境でした.職場には経験豊富な先生方が多く在籍し,臨床のなかで研究活動に熱意を持って取り組まれていました.そのような環境のなかで先生方の影響を受けながら,私も自然に研究に没頭していくことができました.しかし,当時は研究実践に関する知識や経験は持ち合わせておらず,自身の力のなさを痛感する毎日でした.未熟な自分を痛感する一方で,研究を追求したいという想いはますます高まっていきました.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

コンプライアンス 明日 徹
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 コンプライアンス(compliance)の語源は,動詞のコンプライ(comply)で「(何かに)応じる・従う・守る」であることから,コンプライアンスは「(何かに)応じること・従うこと・守ること」を意味し,一般的には,「法令遵守」と直訳されている.

 歴史的には,1960年代の米国において,企業,団体,組織が独占禁止法の違反などさまざまな法令違反を行っていた.その対策として企業,団体,組織は,独自に対策プログラムを作成・実践することとなり,そうした法令遵守という意味をもつ用語として,ビジネスの世界において浸透していったと言われている.わが国でこの用語が重要視されるようになったのは,2000年代以降のことである.規制緩和により民間企業の参入が促され,競争による市場活性化や経済成長を図る戦略が強く意識されてきた.しかし,さまざまな不正の発覚により,法令を守るだけでなく,社会的責任を認識し,社会的な倫理,道徳,組織の規定や規則を守り社会人として当たり前の常識をもち,行動することへの対応が余儀なくされ,コンプライアンスが重要視されてきた.コンプライアンスの対象となる規範には,① 法規範(法律,条令,その他政府の規則など),② 社内規範(社内ルール,業務マニュアルなど),③ 倫理規範(企業倫理,社会的規範など)が挙げられる.

1ページ講座 障がい者スポーツ

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 障がい者のスポーツは,リハビリテーションや健康増進,自己実現などさまざまな向き合い方や楽しみ方があり,その対象も目的も幅広い.障がいの種類や重さ,スポーツとしても多様なうえに個別性が高いため,パフォーマンス分析やリスク管理など理学療法士の専門性を活かすことができる領域である.例えば,トレーニングやスポーツ補装具の適合や工夫,障がいの予防やコンディショニング,障がいによるクラス分け,さらには障がいや道具を戦略的に考えたコーチングやマネジメントなど必要性や可能性は広域にわたるが,現状としてかかわっている理学療法士は少ない.かかわりたいと思っても,それが仕事とは別の活動であることや職場では出会うことのない障がいや特殊な補装具,経験がない競技ということで,かかわりにくさを感じているのではないだろうか.まず言えることは,最初から理学療法士として何かするのではなく,時間を共有するという“先行投資”が必要ということである.実際に現場で活動をすることで競技や障がいへの理解を深め,そこではじめて理学療法士として知識を生かした新たな試みや多角的なサポートにつなげられる.これから12回にわたって「障がい者スポーツ」を連載するにあたり,障がい者スポーツ領域で活躍している理学療法士に競技の紹介とかかわるきっかけ,そして現在の役割について紹介していただきたいと思う.

 さて,今回紹介するのは,障がい者スポーツにおけるアンチ・ドーピングへの取り組みである.ドーピングとは,薬物を使用して競技力を高める行為である.アンチ・ドーピング規則違反とは,世界アンチ・ドーピング機構によって定められた禁止物質が検体(尿や血液)から検出されることであるが,その使用を企てたり,検査を拒否したりすることも違反となる.アンチ・ドーピング活動には大きく分けて検査と教育啓発活動がある.検査は違反者をみつけるためではなく,選手が不正をしていないことを証明するためであり,スポーツの価値を守るために実施されている.教育啓発活動は,アンチ・ドーピングの正しい知識を身につけ,不慮の結果として違反にならないためにもルールを学びスポーツと向き合う姿勢を啓発している.これらアンチ・ドーピングに関するルールは全世界・全スポーツ統一であり,健常者と障がい者とを分け隔てることなく同じルールで行われている.

入門講座 「はじめて」への準備(臨床編)・1【新連載】

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はじめに

 「ベッドサイド理学療法」ときくと,まず急性期や重篤な病態,そしてリスク管理の重要性などが想起される.実際のベッドサイド理学療法には2つのパターンがある.医師からベッド上で行うよう処方される場合と,生活空間で動作練習を行う目的で理学療法士がプログラムの一環としてベッドサイドへ出向き実施する場合,である.

 いずれにしても,医療機器や点滴ライン,本人の私物や寝具などに囲まれた環境で行うので,理学療法室とは異なる工夫を必要とする.ベッドは患者さんにとっては居住空間であり,きわめてプライベートな環境でもある.その点へ配慮したマナーも忘れてはならない.

 本稿では,ベッド上で理学療法を行うよう処方された場合を想定し,各疾患問わず共通すると考えられる注意点を中心に,「はじめてのベッドサイド理学療法」で活かしていただきたいことがらを解説する.

講座 理学療法エシックス・1【新連載】

理学療法の倫理 松田 純
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はじめに

 理学療法士は臨床の現場で,さまざまな「困難事例」に遭遇する.その困難の多くは,実は倫理的な葛藤に由来することが多い.葛藤の要因は,患者の精神状態や生活環境の悪化,対人関係の悪化や家族との不和など,実にさまざまであろう.こうした困難事例に対しては,倫理的な面からのアプローチが必要なことが多い.それゆえ,困難事例を「倫理的な問題」としても意識して,葛藤をもたらしているものを明らかにし,そのうえで,倫理的にも適切な対応を見出していく力量を身につける必要がある.

 理学療法や医療に関しては,さまざまな関係法規がある.理学療法士がこれらを遵守することはもちろんであるが,法律さえ守っていればよい,というわけではない.法が規定する以上の配慮が倫理として求められる.そこで,まず,法と倫理の関係を理解する必要がある(1).また,倫理と道徳という語があるが,2つは同じものか異なるものなのかを説明する(2).倫理にはさまざまなものがあるが,ここで扱うのは,人としていかに生きるべきかという共通道徳ではなく,医療倫理であり,さらに,理学療法士という専門家にとっての倫理,すなわち専門職倫理である(3).医療倫理には非常に長い歴史があるが,この歴史のなかで現代医療倫理の原則として定式化されたものを確認したうえで(4),理学療法士の具体的な事例に即して,倫理的思考の必要性を確認したい(5,6).こうして倫理的な思考を進めていくと,そもそも医療の使命は何かが問われる.仮に健康の回復・維持・向上が医療の使命だとすると,では健康とは何かということがさらに問われる.最後に,この問題に触れる(7).

臨床実習サブノート 臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・8

がん 井上 順一朗
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はじめに

 わが国におけるがんによる死亡者数はおよそ36万8000人(2014年)であり,1981年以降,がんは死亡原因の1位を占めている.また,2012年に新たに診断されたがん患者はおよそ86万5000人であり,現在では男性の2人に1人,女性の2.5人に1人ががんに罹患し,男性の4人に1人,女性の6人に1人ががんで死亡すると推計されている.一方,診断技術や治療法の進歩に伴い,がん患者の生存率は向上してきており,2006〜2008年にがんと診断された患者の5年相対生存率は62.1%と長期にわたり生存する「がんサバイバー」数も増加してきている1)

 このような状況を踏まえ,全国で専門的ながん治療が受けられる体制づくりをめざすがん対策基本法が2006年に成立し,同法に基づき2007年に「第1次がん対策推進基本計画」,2012年に「第2次がん対策推進基本計画」が策定された.このように法的整備が行われ,がん診療体制の充実が進められるなか,リハビリテーション領域でも2010年度の診療報酬改定においてがん患者リハビリテーション料が新設された.また,「第2次がん対策推進基本計画」では「運動機能の改善や生活機能の低下予防に資するよう,がん患者に対する質の高いリハビリテーションについて積極的に取り組む」ことが分野別施策として盛り込まれており,がん自体に対する治療だけではなく,症状緩和や身体・精神面のケアから自宅療養や社会復帰支援などの社会的な側面までサポートするため,がん患者に対するリハビリテーションへの積極的な取り組みが求められるようになった.

 このような現状から,臨床実習においてもがん患者を担当する機会が増えてくることが考えられ,がんの治療やその副作用,理学療法実施の際のリスクに対する理解が必要不可欠となってきている.

 本稿では,臨床実習でがん患者を担当した際のリスク管理において,押さえておきたいポイントについて概説する.

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要旨 右開胸低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery:MICS)後に再膨張性肺水腫(re-expansion pulmonary edema:RPE)を発症し,重症化した症例に対する理学療法を経験した.MICS後に合併したRPEの報告は非常に少なく,呼吸障害が長期化する例や拘束性換気障害が残存する例の報告はない.同様に,理学療法に関する報告例は見当たらない.MICS後にRPEを発症したが,これに対し術後早期から体位呼吸療法と日本循環器学会のガイドラインに則って,段階的離床,監視型運動療法を行った.その結果,退院時では呼吸障害の残存を認めたものの,独歩退院が可能な状態まで改善した.また,1年後の胸部X線で右肺の陰影の著明な改善が認められた.本症例の理学療法経験から,引き続き症例の蓄積を行い,MICS後にRPEを合併し呼吸障害が長期化する症例に対する理学療法の効果を明らかにすることが今後の課題であると考えられた.

資料

2017年理学療法領域関連学会

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次号予告

第28回理学療法ジャーナル賞発表

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 本書は数多くある理学療法関連書籍の中でも,上肢機能に対する理学療法に特化したものであり,「神経生理学(第1章,21頁)」「上肢の機能解剖学(第2章,21頁)」「上肢の徒手検査法(第3章,42頁)」「上肢機能評価に活かす脳画像の読み方(第4章,15頁)」「各疾患への理学療法アプローチ(第5章,251頁)」の全5章から構成されている.

 本書の特徴の一つは,各疾患に対する理学療法アプローチの前段として,100頁強の紙面を割いて,上肢機能を適切に評価・治療するために必要な「神経生理学」や「機能解剖学」,「基本的な徒手検査手法」などが丁寧に記載されているところである.また,「上肢機能評価に活かすため脳画像の読み方」は他の関連書籍ではみない特徴的な章である.二つ目の特徴は,「各疾患への理学療法アプローチ」において整形外科疾患(10疾患)だけでなく,中枢神経疾患(5疾患)や末梢神経疾患(5疾患)の上肢機能に対する理学療法も含まれていることである.本書のタイトルから整形外科疾患に対する理学療法をイメージしたが,脳卒中片麻痺やパーキンソン症候群等に対する理学療法など,幅広く上肢機能障害に対する理学療法が掲載されている点も嬉しいところである.三つ目の特徴は,検査・治療場面の写真や,わかりやすいイラスト,X線写真などが数多く盛り込まれている点である.文字だけではイメージできない各種検査法や,画像診断に欠かせないX線写真の特徴など,理学療法を遂行するためには欠かせない情報が網羅されている.

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 「自分たちが学生の時に欲しかった内容をこの一冊に詰めました」という言葉が,この書籍の帯に記されている.この本のコンセプトはまさにここにある.臨床実習という,学生にとっての最難関科目において,生きるか死ぬかの苦労をされた先輩の経験や思いが詰まった,現役の学生さんや社会人学生さん向けの待望の一冊と言える.

 この本は,実習生なら必ず1週間前に行わないといけない臨床実習指導者への連絡や,実習に向けての必要物品の確認から始まり,バイザーおよびスタッフとのコミュニケーションの取り方,デイリーノートの書き方,わからない臨床上の疑問への対応,そしてレポートの作成方法,発表レジュメの作成方法,最後に実習終了後のお礼状の書き方まで,学生が施設で実習を始めようとするとき,「どうしよう,わからない!」と不安になることへ,できる限り応えようとしている労作である.

文献抄録

編集後記 横田 一彦
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 次期介護保険制度改正は2018年度になります.それに向けて厚生労働省では検討が進んでおり,その情報は多方面から読者の皆さまにも入っていることと思います.トピックスとして要介護1,2の方向け生活援助サービスを保険外とするか否か議論がありましたが,今のところ介護保険で継続することが了承されたようです.ある意味,軽症者で生活援助サービスの比率が高いことは,生活することの基盤が家庭だけではもはや十分ではなくなってきていることの証でもあるように思われ,考えさせられる事案でもあります.

 さて,今月号の特集は「多職種で取り組むがん診療と理学療法」です.「がん患者リハビリテーション料」が設定され,理学療法の対象として確立しつつある「がん」について,多職種での取り組みを通してあらためて理学療法士の視点を考える企画としました.渡辺典子先生にはわが国のがん治療の最前線の施設における理学療法士の取り組みを通して理学療法士の役割を解説していただきました.村岡法彦先生と北原エリ子先生には,所属施設で活動されているチーム医療の実践を通して,林邦男先生にはホスピス緩和ケア病棟での経験をもとに,理学療法士の役割と視点を述べていただきました.いずれの論文も多彩な多職種での取り組みが示されており,そのなかで理学療法士としてどうあるべきかを考えていくのに参考になると思います.また,他職種の取り組みや視点を知るために,薬剤師の加藤裕芳先生,がん専門看護師の林ゑり子先生,医療ソーシャルワーカーの前田景子先生にお願いし,座談会を行いました.各職種の取り組みや視点など理学療法士のあまり知ることのできないお話も伺うことができました.特にがん治療を行いながら仕事し生活するサバイバーの方々へのサポートの在り方は,これからの理学療法士の課題でもあるように思いました.身体/運動機能面,精神面だけではない,生活することの基盤を支える社会の仕組みも,今後よりいっそう必要であることが再確認できたように思います.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
51巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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