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はじめに
がんは,わが国において1981年以降,日本人の死因の第1位で,現在では年間30万人以上の人が,がんで亡くなり,生涯のうちにがんにかかる可能性は,2人に1人とされている1).非常に身近な疾患であるが,がんの多くは原因が明確にされておらず,がんに対する教育も十分ではないため,がん患者の診療における課題は多い.
がん治療は,手術,薬物療法(抗がん薬,ホルモン薬,免疫賦活薬などの化学療法と鎮痛薬,制吐薬などの症状を和らげる薬物療法),放射線療法が柱となり,がんの種類や病期,全身状態を考慮し,最善の治療が行われる.薬物療法の進歩や縮小手術により日常生活への影響は以前に比べ軽減しているが,がんそのものや上記がん治療に伴う後遺症や副作用によって,さまざまな身体的障害や心理的問題を生じることがある.
無症状の早期がんは治癒も可能だが,ほとんどのがんは進行してくるまで自覚症状がなく,症状に気づいたときにはがんが進行していることが多い.進行がんは治癒することが難しく,数年または数十年後に再発や転移をする可能性があり,がんとともに生きていくがんサバイバーは年々増加し,現在500万人を超えている1,2).経年により治療内容の変更や身体・精神への影響も変化してくる.
そのため,がんのリハビリテーションでは,日常生活や社会生活,QOLを保つため,機能障害の予防や緩和,能力の回復や維持を目的に,病態や進行度に応じたさまざまな対応が必要とされる.がん患者が生活する場において,理学療法士の果たす役割は大きいものと考える.
本稿では,がん患者へのリハビリテーションの歴史,国立がん研究センター中央病院(以下,当院)の理学療法処方の推移からみた理学療法介入の現状,多職種との連携,今後の課題と展望について述べる.
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