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はじめに
わが国におけるがんによる死亡者数はおよそ36万8000人(2014年)であり,1981年以降,がんは死亡原因の1位を占めている.また,2012年に新たに診断されたがん患者はおよそ86万5000人であり,現在では男性の2人に1人,女性の2.5人に1人ががんに罹患し,男性の4人に1人,女性の6人に1人ががんで死亡すると推計されている.一方,診断技術や治療法の進歩に伴い,がん患者の生存率は向上してきており,2006〜2008年にがんと診断された患者の5年相対生存率は62.1%と長期にわたり生存する「がんサバイバー」数も増加してきている1).
このような状況を踏まえ,全国で専門的ながん治療が受けられる体制づくりをめざすがん対策基本法が2006年に成立し,同法に基づき2007年に「第1次がん対策推進基本計画」,2012年に「第2次がん対策推進基本計画」が策定された.このように法的整備が行われ,がん診療体制の充実が進められるなか,リハビリテーション領域でも2010年度の診療報酬改定においてがん患者リハビリテーション料が新設された.また,「第2次がん対策推進基本計画」では「運動機能の改善や生活機能の低下予防に資するよう,がん患者に対する質の高いリハビリテーションについて積極的に取り組む」ことが分野別施策として盛り込まれており,がん自体に対する治療だけではなく,症状緩和や身体・精神面のケアから自宅療養や社会復帰支援などの社会的な側面までサポートするため,がん患者に対するリハビリテーションへの積極的な取り組みが求められるようになった.
このような現状から,臨床実習においてもがん患者を担当する機会が増えてくることが考えられ,がんの治療やその副作用,理学療法実施の際のリスクに対する理解が必要不可欠となってきている.
本稿では,臨床実習でがん患者を担当した際のリスク管理において,押さえておきたいポイントについて概説する.
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