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次期介護保険制度改正は2018年度になります.それに向けて厚生労働省では検討が進んでおり,その情報は多方面から読者の皆さまにも入っていることと思います.トピックスとして要介護1,2の方向け生活援助サービスを保険外とするか否か議論がありましたが,今のところ介護保険で継続することが了承されたようです.ある意味,軽症者で生活援助サービスの比率が高いことは,生活することの基盤が家庭だけではもはや十分ではなくなってきていることの証でもあるように思われ,考えさせられる事案でもあります.
さて,今月号の特集は「多職種で取り組むがん診療と理学療法」です.「がん患者リハビリテーション料」が設定され,理学療法の対象として確立しつつある「がん」について,多職種での取り組みを通してあらためて理学療法士の視点を考える企画としました.渡辺典子先生にはわが国のがん治療の最前線の施設における理学療法士の取り組みを通して理学療法士の役割を解説していただきました.村岡法彦先生と北原エリ子先生には,所属施設で活動されているチーム医療の実践を通して,林邦男先生にはホスピス緩和ケア病棟での経験をもとに,理学療法士の役割と視点を述べていただきました.いずれの論文も多彩な多職種での取り組みが示されており,そのなかで理学療法士としてどうあるべきかを考えていくのに参考になると思います.また,他職種の取り組みや視点を知るために,薬剤師の加藤裕芳先生,がん専門看護師の林ゑり子先生,医療ソーシャルワーカーの前田景子先生にお願いし,座談会を行いました.各職種の取り組みや視点など理学療法士のあまり知ることのできないお話も伺うことができました.特にがん治療を行いながら仕事し生活するサバイバーの方々へのサポートの在り方は,これからの理学療法士の課題でもあるように思いました.身体/運動機能面,精神面だけではない,生活することの基盤を支える社会の仕組みも,今後よりいっそう必要であることが再確認できたように思います.
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